沖縄を含む太平洋島嶼地域にとって, 観光産業は対外受け取り総額の20-70%を占ある基幹産業であると同時に, 今後の成長産業でもある。観光は貴重な「外貨」を稼ぐ「サービス産業」であると同時に,「平和産業」,「文化産業」であり, これらの島嶼地域のもつ, ユニークな自然, 気候風土, 文化, ニッチ市場, 人的資源をフルに活用しうる複合・連携型産業である。島嶼観光は, 水, 電気, 交通・通信, ゴミ処理施設などの生活インフラはむろんのこと, 島嶼の限られた, しかも壊れやすい自然環境資源と人々の「ホスピタリティ・マインド (社会的心理状態)」に大きく依存していることもあって, これらの観光資源の社会的キャリング・キャパシティが課題になって久しい。特に沖縄への入域観光客数は,「沖縄ブーム」の追い風を受けて, 復帰後の35年間に12倍, 県人口の4倍に達し, 予想以上のペースで成長していることから, 受け入れのキャパシティが問われている。沖縄県は今後10年間で, 一千万人 (県推計人口の7倍) の観光客受け入れを目論んでおり, 観光のもたらす経済効果と同時に, そのマイナス面も議論する時期にきている。果たして, 沖縄の自然環境, 生活インフラは, (水だけでも県民の3倍もの量を消費すると言われている) 一千万人の観光客を収容しうる環境容量があるかどうかが問われている。本論の目的は, 成長が持続する沖縄観光に焦点をあて, 島嶼観光の現実と課題, その持続可能性, キャリング・キャパシティについて, 利用可能なデータを駆使して検証する。特に沖縄観光のキャリング・キャパシティについて, 種々のアプローチを試みた。キャリング・キャパシティの制約要因の中で, 座間味村ですでに顕在化しているように, 水供給と環境汚染に加えて, 過度の財政支出が最も深刻な問題になることが考えられる。これらの問題を解決する手法も提示した。沖縄観光のキャリング・キャパシティについての測定は限定的ながらすでになされているが, しっかりした理論フレームの下での信頼できる膨大なデータ収集が要求されることから, 個人レベルでの研究には限界がある。ここで提示したデータとアプローチは, その初歩的な段階であり, 今後のフォローアップに期待したい。