生後70-120日令の白色レグホン種およびニューハンプシヤー種鶏を用い, Tp感染に対する態度を経口, 心臓, 筋肉および腹腔内など, 接種ルートを変えて比較検討し, 次の如き結果を得た。1.接種ルートの如何に拘わらず, 何れの場合も接種2∿7日目から流血中にTpが現われ, 感染の成立することを認めた。特に経口感染の可能な点興味ある所見である。2.感染鶏はほとんど無症状に耐過する。稀に発症する例では発熱を伴なう元気, 食欲の消失と, 脚麻痺等の症状を呈して斃死し, 各臓器には多数のTpの増殖がみられる。3.血中抗体価は概して低く, 大部分8倍以下である。心臓内接種でほゞ1週間後, 腹腔内接種で2週間後, 筋肉内接種で3週間後にそれぞれ抗体がはじめて検出され, 経口投与ではほとんど抗体の産生が認められず, 接種ルートによってその態度を異にしている。4.一定期間後, 初回に比して大量のTpの再接種を行なうと, 接種部位の組合わせによって成績は幾分趣を異にするが, 初感染によって抗体価は低くても, かなり抵抗性が賦与されていることが明らかである。5.Tpの体内分布状況は接種ルートによって特に異ることなく, 感染後ほぼ1∿2ケ月前後でTpは体内からほとんど消滅されるものと思われる。しかしそれ以後でもなお, チストの型で潜在し, 生体に変調を来たした時, 急激に増殖して生体を発症斃死せしめうる可能性が考えられる。6.剖検上著明な変化を認めたのは比較的少数であったが, 一般に肝における白斑形成が多くみられ, また肝, 脾の腫脹等もかなり多数に認められた。7.産卵開始期に感染を受けた鶏では, 卵巣等を介して卵へTpが移行しやすいように解され, 検索した卵12ケ中3ケの卵黄にTpの移行を確認した。