本研究において地盤の水平に対し種々の軸方向を有する不撹乱の島尻層泥岩供試体を切り出し, 一軸圧縮試験および圧密圧25kg/(cm)^2までの圧密非排水三軸圧縮試験を行い, 強度, 間ゲキ水圧, 強度定数および変形係数への方向性の影響について明らかにした。本研究の応力範囲内で得られた結果をまとめると次のようになる。1.低圧密圧においてセン断によるダイレイタンシーは破壊に先行して生じる。特に水平供試体において先行する度合が大きい。しかし, 圧密圧が増大するとダイレイタンシーは破壊と同時に生じるようになる。2.強度は供試体の軸方向によって異なる。鉛直方向供試体の強度を基準にすると, β=30°, 45°において約10%の強度減少, 水平軸供試体において約10%の強度増加を示す。3.間ゲキ水圧は方向性の影響を受けて, セン断に伴う発生間ゲキ水圧は同一圧密圧に対して鉛直供試体で最大, 水平供試体で最小値を生じる。4.間ゲキ水圧の異方性により, 全応力による強度定数C_<cu>, φ_<cu>も方向性を示す。同様に有効応力径路も方向性の影響を受けるが, 有効応力による強度定数C', φ'は方向性の影響をあまり受けない。5.変形係数と強度の比は圧密圧25kg/(cm)^2の範囲の平均値で示すと, β=90°, 60°に対し120 : 1,β=45°で150 : 1,β=30°, 0°で170 : 1である。以上の結果は圧密圧25kg/(cm)^2までであり, 過圧密領域にある。この泥岩を正規圧密圧領域に移行させるにはさらに大きな圧密圧を必要とするので, 正規圧密圧領域を含めた応力範囲で実験を行うことにより, セン断特性におよぼす異方性の影響はより明らかになると考えられる。