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仲宗根, 望 韓, 昌完 Nakasone, Nozomi Han, Changwan
本研究では、分離教育、統合教育、インクルーシブ教育の定義の違いを分析し、第一に、インクルーシブ教育は憲法的視点からどのような意味を持ち、憲法の人権規定から、教育法制にどのような形でインクルーシブ教育を取り入れていくべきかを考察した。第二に、インクルーシブ教育に関する各教育法令間の関係を分析し、システムとしてのインクルーシブ教育を評価する上で開発されたインクルーシブ教育評価尺度(IEAT)の観点から教育基本法、学校教育法にどのような視点からインクルーシブ教育を規定していくべきかを考察した。その結果、これからインクルーシブ教育を推進していくためには、教育法体系に規定していくべきであることが明らかになった。特に、教育憲法である教育基本法に規定することが重要であること、そして、今後の課題として、IEATの観点から、学校教育法について条文を精査しながら、インクルーシブ教育について具体的に規定していく文言を考察していくべきであるという結論に至った。
小原, 愛子 韓, 昌完 Kohara, Aiko Han, Changwan
重度・重複障害児の増加、インクルーシブ教育理念の導入、QOL向上のための教育等、特別支援教育を取り巻く環境は大きく変化しているにも関わらず、重度・重複障害児の教育システムを、インクルーシブ教育やQOLの観点から教育システムを分析した研究は見当たらない。そこで、本稿では、インクルーシブ教育の観点から重度・重複障害児の教育課程について対応分析し、QOLの観点から重度・重複障害児の指導法について分析した。分析の結果、指導法についてはQOLのいずれかの領域に該当したが、重度・重複障害児の教育課程においてはインクルーシブ教育の領域に該当しないものが多く、インクルーシブ教育の理念を反映したものとは言い難い結果となった。教育システムをつくる際には、何を基準とし、どのような要素を用いるかということを念頭に検討する必要性があるが、現在そのような研究は見当たらない。今後、特別支援教育の分野では、インクルーシブ教育やQOLの観点から教育システムを構築することが必要だろう。
金, 彦志 韓, 昌完 田中, 敦士 Kim, Eon-Ji Han, chang-wan Tanaka, Atsushi
韓国では、2008年に「障害者等に関する特殊教育法」が全面的に制定され、特殊教育に関する大きな法的整備が行われた。その内容としては、3歳未満の障害のある乳幼児の教育の無償化、満3歳から17歳までの特殊教育対象者の義務教育の権利、特殊教育支援センターの設置・運営の見直し等である。これは、小・中学教育を中心とした今までの制度から、乳幼児および障害成人のための教育支援に対する規定に変化したものであり、国家および地方自治団体の特殊教育支援についての具体的な役割も提示された。本論文では、韓国における特殊教育に関する法的背景を紹介し、2008年行われた「特殊教育実態調査」を参考に韓国特殊教育の現状を概観し、また、障害児教育・保育についての実態と課題を検討した。
藤原, 幸男 Fujiwara, Yukio
他大学教育学部または教育大学における教育学と心理学を統合した学校教育学科では,教育学の専門科目は理論ばかりでおもしろくない,という批判が学生にあり,そのために,専修に分化するときに心理学専修を選ぶ者が多いと聞く。教育学について一面的な理解しかないにしても,学生の批判はあたっているところもある。学生の批判を受けとめ,教育学の専門科目の授業を教育内容・方法面において再編成し,魅力あるものにしていく必要がある。今年の夏,「教育方法学」の集中講義をF教育大学で試みた。理論と実践の結合を意識して,実践事例を多く紹介したプリント資料とビデオ教材を準備したために,学生の隠れた教育学批判に結果的に応えることができた。現実の教育問題への関心の喚起,教育方法学の理論の実感的理解,教育像・授業像・教師像の変化,教育方法学観の変化などについて刺激を与えることができた。「教育方法学」集中講義の講義内容・方法を概観し,実践的試みを実施したあとでの学生の感想を中心にして,上記事項などでの影響について報告する。
名嶋, 義直
本稿では、まず日本語教育の必要性を、社会状況/保障教育/子どもの教育/複言語・複文化主義の観点から考察する。そしていわゆる「日本語教育基本法」の制定から日本語教育に対する社会的要請を読み取り、本学の日本語教育副専攻課程の存在意義を考察する。そして最後に、さらにその要請に応えるために取り組むべき課題を挙げ、本学の日本語教育副専攻課程における今後の教育のあり方についてその展開の道筋を整理して示す。
小原, 愛子 矢野, 夏樹 韓, 昌完 Kohara, Aiko Yano, Natsuki Han, Changwan
近年、特別支援教育を取り巻く状況はインクルーシブ教育の理念の導入等、短期間で新しい理念が次々と取り入れられているが、それに伴った教育体制が十分整わず、教育現場においても混乱が生じている。さらに、インクルーシブ教育の理念等が教育現場にどのように反映されているか検証した研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、インクルーシブ教育の理念の観点から作成されたインクルーシブ教育評価指標を用いることで、現在行われている知的障害教育における教育課程(学習指導要領を中心に)を分析し、インクルーシブ教育を推進する上での教育課程の課題を明らかにすることを目的とした。分析の結果、インクルーシブ教育を推進するためには、1.学習環境の改善、2.多職種との連携、3.共に学ぶ場の設定、4.公平性の確保(機会の平等)、5.インクルーシブ社会構築のためのリーダー育成の内容を学習指導要領で明確に示すことが重要であるという課題が明らかとなった。
平田, 永哲 Hirata, Eitetsu
21世紀のわが国の特殊教育の在り方が変革しようとしている。一つは子どもの就学権保障の時代からより適切な教育保障の時代への変革であり、他の一つは障害児教育という用語が特殊教育という用語に変わろうとしている。本稿では、このような変革の動きを養護学校義務制以降の特殊教育界の出来事の中から探ることにより、21世紀の特殊教育を展望し、希望を託すことにする。
韓, 昌完 小原, 愛子 矢野, 夏樹 青木, 真理恵 Han, Chang-Wan Kohara, Aiko Yano, Natsuki Aoki, Marie
1994年のサラマンカ宣言以降、世界的にインクルーシプ教育が教育政策の中心的な課題となり、日本においても、共生社会の形成に向けてインクルーシプ教育システムの理念が重要であるとされ、インクルーシプ教育の推進を行っている。しかし、その定義については暖昧なままであり、法律上は未だにインクルーシプ教育に相対する分離教育を示唆する文言が含まれている。そこで本稿では、海外と日本のインクルーシプ教育の現状を比較分析し、日本の特別支援教育におけるインクルーシプ教育の課題について検討した。日本は、インクルーシプ教育を推進しつつも、行政や研究者、教育現場においてその共通理解がないまま進められており、本研究によって、インクルーシプ教育を行うための人的・物的な環境整備等が十分に行われず、理念先行の性急なインクルーシプ教育導入への危険性が示唆された。新しい理念やシステムの導入には、その理念やシステムと社会体制や文化の適合性を学術的な検証及び環境整備が必要であり、今後、インクルーシプ教育を推進していくには、日本の社会体制や文化への適合性を学術的に検証することが最も重要であろう。
小川, 由美 上地, 完治 上村, 豊 道田, 泰司 村上, 呂里 浅井, 玲子 小田切, 忠人 加藤, 好一 藤原, 幸男 吉田, 安規良 Ogawa, Yumi Uechi, Kanji Uemura, Yutaka Michita, Yasushi Murakami, Rori Asai, Reiko Kodagiri, Tadato Katou, Yoshikazu Fujiwara, Yukio Yoshida, Akira
琉球大学教育学部学校教育教員養成課程小学校教育コース教育実践学専修は、教育課程の理念として、「早期から系統的な教育実践経験を継続的に積ませ、実践と理論とを往還的に学ぶ機会を繰り返し提供する」ことをめざしている。教育実践学専修の概要とその特色あるカリキュラムについては『日本教育大学協会研究年報』第30集にも掲載されている。本報では、その特色あるカリキュラムの中から、専修専門科目で必修の実習科目でもある「小学校教育フィールドワークⅠ」(以下「FWⅠ」と略記)及び「小学校教育フィールドワークⅡ」(以下「FWⅡ」と略記)に焦点をあて、このFWⅠならびにFWⅡが従来の教育実習体系の間隙を時系列的にも内容的にも埋めて、体系的・継続的な教育実践経験を通した教員養成のために非常に有意義であることを示したい。
神田, 雅貴 Kanada, Masaki
本稿は、埼玉県川島町の社会教育委員会識が活性化したプロセスを社会教育委員と職員との関係性、および社会教育委員と地域の教育資源との関係性を中心に記述し、その上で、この活性化に影響を与えた諸要因を考察する。社会教育委員会議の活性化は、学識経験者と連携した関係職員の働きかけが直接的な契機になっているが、その背景には、委員を選出した地域の教育資源の豊かさがある。本事例分析を通じて、社会教育主事にとって地域の教育資源を十全に把握し分析する能力が必要不可欠であることが明らかになった。
古市, 由美子 FURUICHI, Yumiko
本研究は,多言語多文化共生社会を目指して行われた日本語教育実習を取り上げる。22名の実習生の語りから,個々の実習生が新たな理念である共生日本語教育にどのように対峙し,それをどう意味づけるのか,彼らの学びの実態を解明することを目的とする。実習生の語りを質的に分析した結果,実習生の多くは,共生日本語教育を〈日本語を教えない日本語教育〉,〈周辺的な日本語教育〉と意味づけ,規範的な日本語教育との矛盾を感じたり,理念と実践を区別したりしていた。一方,共生日本語教育を〈地域を結ぶ日本語教育〉と意味づけた実習生は,自身の具体的な経験と共生日本語教育の理念を統合することによって,教師の役割や日本語教育の意味を拡張していることが窺われた。
大角, 玉樹
web3 の時代を迎え,教育のデジタル・トランスフォーメーション(以下,DX と略)が推進されている。文部科学省も,施策として「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)」を打ち出し,積極的に教育のDX を支援している。VR やAR 等のxR 技術の進歩により,メタバース(3D 仮想空間)を利用した教育のイノベーションも期待されているが,医療や言語系以外の分野では活用事例が少ない。本稿では,教育機関における最新動向を紹介するとともに,今後の若年層向けアントレプレナーシップ教育の展開を視野に,経営教育におけるメタバースの可能性を探りたい。
吉田, 安規良 田中, 洋 山田, 美都雄 Yoshida, Akira Tanaka, Hiroshi Yamada, Mitsuo
2017年(平成29年)に告示された新しい学習指導要領を踏まえた教育課程が,小学校及び特別支援学校小学部では2020年度(平成32年度)から,中学校及び特別支援学校中学部では2021年度(平成33年度)から完全実施される。2019年度(平成31年度)以降に大学に入学した教員免許取得希望者は,「教育の基礎的理解に関する科目」として「特別の支援を必要とする幼児,児童及び生徒に関する理解」に関する科目を1単位以上修得する。そこで本研究では,この新しい学習指導要領を踏まえた小学校,中学校,特別支援学校の教育課程や新しい教職課程を意識して,琉球大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻(「教職大学院」)での特別支援学校教諭養成教育の教材資料作成として,学校教育法,学校教育法施行令,学校教育法施行規則及び教育職員免許法で規定されている特別支援教育に関する事項を,「特別支援教育」という言葉が指し示す範囲,障害の種類・程度と特別支援学校,特別支援学級と通級による指導の違い,教育職員免許法との関係,教育課程編成及び教育社会学的視点という5つの観点から整理した。その上で,「特別支援教育」へと至るこれまでの経緯,今後の方向性,さらには教育だけにとどまらず社会全体における障害をめぐる制度的状況について可能な範囲で配慮するために「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」や「沖縄県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例」を学校教育関係者が理解する必要性について指摘した。
岡崎, 敏雄 OKAZAKI, Toshio
外国人年少者に対する日本語教育への本格的取り組みは近年開始されたばかりである。現場の教師は手探りでこれに当たり,その中で言語教育観が形成されつつある。本研究は,形成されつつある教師の言語教育観に焦点を当て,日本語教育が必要な金国の外国人年少者の在籍する公立小・中学校の日本語教育に関わる全教師に対して質問紙による言語教育観の調査を行った。クラスター分析,分散分析の結果,全体として(日本語教育と共に)母語保持を重視する言語教育観が教師によって高く支持され,カナダのイマージョン・プログラムに典型的に見られる継続的二言語併用型の言語教育観が形成されつつあることが示された。しかしながら他方,日本の諸条件を反映して,同時に「少数散在型」「受容型」「滞在エンジョイ型」「短期滞在者への注目型」「現行制度枠内型」という性格を備えたものであることが示され,教育制度の異なるカナダのイマージョン・プログラムでの継続的二言語併行型言語教育との相違も明らかにされた。
野田, 尚史 NODA, Hisashi
このサブプロジェクトは,(i)のような考えから出発している。(i)本当の意味で日本語教育を言語の教育からコミュニケーションの教育に変えるためには,日本語教育のための研究も言語の研究からコミュニケーションの研究に変える必要がある。 日本語教育のためのコミュニケーション研究というのは,具体的には(ii)から(iv)のような研究である。このサブプロジェクトでは,これからこのような研究を進めていく。
浦崎, 武 武田, 喜乃恵 崎濱, 朋子 Urasaki, Takeshi Takeda, Kinoe Sakihama, Tomoko
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センターは「障害児・者の支援・教育に関わる学生・教員の実践力殻成機能の充実と地域の学校や教育行政機関との協働支援を行う地域拠点の構築」と題する中期計画達成プロジェクトを実施した。プロジェクトの中核となるトータル支援活動を通して、多様な課題がより鮮明になり、今まで以上に障害児・者への支援・教育は乳幼児期から成人期までの生涯におよぶ一貫した具体的な支援・教育とともに、地域の特性に基づいた支援・教育が求められた。また、より一層の福祉、医療、保健、労働等近接領域間の連携・協働による支援・教育体制の整備やネットワークの構築が求められた。
城間, 園子 緒方, 茂樹 Shiroma, Sonoko Ogata, Sigeki
障害児者を取り巻く社会情勢は,障害者権利条約への採択や批准を含め急速に変化を遂げている。教育においても例外ではなく,学校教育法の一部改正により障害種にとらわれない特別支援学校への転換や共生社会の形成の基礎となる特別支援教育の推進,インクルーシブ教育システム構築等の法の整備がなされたことで,特別支援学校の役割の再考と各障害種に応じた教育実践の見直しが求められてきている。沖縄県においても同様であり,中でも病弱教育に関しては,医療技術の進歩や疾病治療に関する考え方の変遷の影響も大きいと言える。言い換えるならば,病弱教育はその時代的背景の影響は大きく,それに合わせた課題の解決を図っていかなければならない。そこで本稿では,県内における病弱教育の歴史的経過を踏まえ,森川特別支援学校を主とした病弱教育の現状と課題を探り,病弱教育特別支援学校が果たす役割,共生社会の実現に向けた病弱教育の新たなる展望について考察した。
道田, 泰司 吉田, 安規良 浅井, 玲子 Michita, Yasushi Yoshida, Akira Asai, Reiko
琉球大学教育学部が「質の高い小学校教員養成を強化すること」を目指して学生教育組織を改組した結果として誕生した学校教育教員養成課程小学校教育コース教育実践学専修の1期生が大学教育に何を求めているのかについて調査することを通して、教員養成学部の学生が大学教育に何を求めているかについて検討し、「教員として最小限必要な資質能力を確実に身に付けさせる」「学び続ける教員像」に対応した大学のカリキュラム改革の一助となる基礎資料を作成した。学生の声を分析した結果、小学校教員志望の学生は実践や教育実習、学校現場や教員の実際に関わる科目や実践とのつながりが見える授業を求めている傾向が見られた。科目区分ごとにみると共通教育科目では楽しく分かりやすく学習内容を、教職科目では教員として指導する立場になったときのことを考える授業を、教育学部科目では公立小学校や離島を体験したり、他者の体験を聞いたりすることを、専修専門科目では、実際の現場や実践記録など、教育実習に役立つことを学生はそれぞれ求めている傾向が見られた。
上地, 完治 村上, 呂里 吉田, 安規良 津田, 正之 浅井, 玲子 道田, 泰司 Uechi, Kanji Murakami, Rori Yoshida, Akira Tsuda, Masayuki Asai, Reiko Michita, Yasushi
本研究は、本学部教員養成課程の3年生を対象に実施した聞き取り調査をもとに、彼らが教育実習前に学部授業で学んだことで教育実習中に役立ったと感じたことや、実習前に学んでおきたかったことについて分析することによって、学部教員養成教育と教育実習との接続に関する問題点を明らかにし、学部教員養成教育のあり方を再構築するための手がかりを得ようとする試みの一環である。
上地, 完治 村上, 呂里 吉田, 安規良 津田, 正之 浅井, 玲子 道田, 泰司 Uechi, Kanji Murakami, Rori Yoshida, Akira Tsuda, Masayuki Asai, Reiko Michita, Yasushi
本研究は、本学部教員養成課程の3年生を対象に実施した聞き取り調査をもとに、彼らが教育実習前に学部授業で学んだことで教育実習中に役立ったと感じたことや、実習前に学んでおきたかったことについて分析することによって、学部教員養成教育と教育実習との接続に関する問題点を明らかにし、学部教員養成教育のあり方を再構築するための手がかりを得ようとする試みの一環である。
温山, 陽介
従来から多く実践・研究がされてきた就業キャリアのキャリア教育(狭義のキャリア教育)に対し、 ライフ・キャリアのキャリア教育(広義のキャリア教育)は、実践・研究が乏しい。特に、大学教育 におけるライフ・キャリアのキャリア教育は、学業と学卒後の生活を繋げ、大学生活での学習や経験 に対する意欲を高めるという意味で、より一層の実践・研究が望まれる。そこで本研究では、大学に おけるライフ・キャリアのキャリア教育プログラムを開発・実践し、その教育的可能性について検討 した。検討にあたっては、ライフ・キャリアのキャリア教育と生涯学習との理念的な接近性に着目し、 生涯にわたり学ぼうとする視野(ビジョン)と学習のための主体的な態度(アクション)の涵養とい う視点で、受講者の提出物の記述を読み取った。開発したプログラムは、特に、受講者の学習のため の主体的な態度(アクション)に影響した可能性などが考えられる。本プログラムのこうした教育的 可能性について、今後実証的な研究が望まれる。
韓, 昌完 小原, 愛子 韓, 智怜 青木, 真理恵 Han, Chang-Wan Kohara, Aiko Han, Ji-Young Aoki, Marie
近年の障害者に閲する国際動向や国内における取り組みの進展を受け、2013年9月、第3次障害者基本計画が閣議決定された。一方、韓国においても特別支援教育における基本方針を示した最も新しい施策として、「第4次特殊教育5ヵ年計画」を2013年に策定した。制度・政策に対する批判的評価や今後の課題を提示する際には、日本と類似した制度・政策を実施している国を比較・分析し考察を行うことが有効的な一つの方法であることから、本研究では日本の「第3次障害者基本計画」と韓国の「第4次特別支援教育5ヵ年計画」を比較・分析し、「障害者基本計画」の考察を行うことで、今後の日本の特別支援教育施策についての発展的課題について提示することを目的とした。比較分析の結果、両国ともに、特別支援教育を取り巻く現状が大きく変化しているのに伴い、特別支援教育を必要とする児童・生徒の増加、インクルーシブ教育の強化、特別支援教育教員専門性の向上等の共通点があった。しかし、日本の特別支援教育に関する施策内容は、韓国と比較すると具体的な方針については示されていないことが明らかとなった。これは、日本における特別支援教育に関する施策が「障害者基本計画」の中の「教育分野」として位置付けられていることに対し、韓国は、「特殊教育5ヵ年計画」として特別支媛教育に絞った基本計画を策定し施策内容を示しているからであろう。今後、日本では「特別教育基本計画」として特別支援教育の具体的な施策を提示することが必要であろう。
下地, 敏洋 城間, 盛市 SHIMOJI, Toshihiro SHIROMA, Seiichi
本報の目的は、教職科目「学校教育実践研究2」における指導内容が、「学校教育実践研究1」の導入後、教育実習に対してどのような効果があったのかについて報告することである。特に「学校教育実践研究2」において、学生は教員としての教科指導力の基礎・基本を習得するため、年間指導計画や学習指導案の作成及び模擬授業に取り組んでいる。対象学生は、平成20年度から平成23年度の期間に著者の「学校教育実践研究」及び「学校教育実践研究2」を受講した254人であった。対象学部等は教育学部生涯教育課程、法文学部、理学部、農学部、工学部、観光産業科学部であった。研究方法としては、教育実習事後指導の中で「教育実習所感」としてグループ討議及び発表した内容を「教育実習期間中、困ったこと、改善してほしいこと」、「教育実習を経験して感じたこと」、「大学での事前・事後指導で改善してほしい点、または良かった点」、「これから教育実習を受ける後輩に望むこと」に分類、年度別に集約した。その内容を「学校教育実践研究1」導入前の平成20年度及び21年度と導入後の平成22年度及び23年度について比較検討した。結果は、「学校教育実践研究2」における学習指導案作成や模擬授業の実施は、教育実習での教科指導に有益であることが明らかになった。しかしながら、模擬授業は実施時間が短く、実施時間の拡大、実施回数の増の必要性などの改善が求められている。そのため、自主的に模擬授業を実施することの必要性や実施報告書を提出させるなどの改善が必要であると考えられる。また、学校現場においては、教育実習生に対する評価も高まる一方で、教職に対する意欲の欠如など、教師としての資質に課題のある学生がいることも指摘されている。従って、「学校教育実践研究2」における指導内容の一層の工夫・改善、関係学部間の連携協力の強化を図ることで、資質の高い教員養成の取り組みが求められている。
小原, 愛子 後藤, 彩夏 韓, 昌完 Kohara, Aiko Goto, Ayaka Han, Changwan
近年、肢体不自由特別支援学校において、スヌーズレンを授業に取り入れる学校が増加している。しかし、スヌーズレンが教育として明確に位置づけられたのは極めて最近であるため、指導法として体系化されておらず、スヌーズレン教育の実践報告も少ないという現状である。そこで、本研究では、沖縄県の肢体不自由特別支援学校で行われているスヌーズレン教育の実践報告を収集し、スヌーズレン教育の定義と教育課程の位置づけに基づいて整理・分析を行うことで、スヌーズレン教育の現状を把握し、課題を明らかにすることを目的とした。その結果、1.注意力向上、2.保有する感覚の活用促進、3.リラックスや情動の安定、4.感情の表出、といったスヌーズレン教育の実践成果や、1.スヌーズレンの環境整備、2.環境整備のための予算と教室確保、3.教材研究の推進、4.評価基準・評価方法の確立、といったスヌーズレン教育の課題があることが明らかになった。今後、実践報告の蓄積と分析が、スヌーズレン教育の指導法の体系化につながると考えられる。
韓, 昌完 矢野, 夏樹 米水, 桜子 Han, Changwan Yano, Natsuki Yonemizu, Sakurako
本稿は、インクルーシブ教育評価尺度(IEAT)の構造と特徴や評価方法、活用可能性について解説するとともに、これまでの開発過程を報告したものである。IEATは、インクルーシブ教育システムを評価する尺度である。IEATの構造は、権利の保障、人的・物的環境整備、教育課程の改善の3領域11項目から構成されている。インクルーシブ教育システムについて評価するため、11項目についてインクルーシブ教育システム構築の達成度に合わせ評価者が1~5で段階的に評価する。IEATは、領域別評価を行うことで、インクルーシブ教育システム構築の進捗状況に合った目標設定の手助けになると考えられる。また、研究者及び教育現場による研究及び実践の領域において具体的な目標を立てる際に活用することも考えられる。今後、IEATを科学的に検証し、実際に使用することで、インクルーシブ教育システムの現在の問題と今後の課題を明らかにすることができるであろう。
藤原, 幸男 Fujiwara, Yukio
小・中・高校での授業体験から、授業とは、公定的知識を子どもに効率的に伝達し、子どもがそれを覚えてできるようになることだと、学生は思っている。この授業観ならびにそこで駆使される教育方法観をくずさなければ豊かな授業ならびに教育方法は形成されていかない。そこで、教職科目「教育方法」において、「教師の人間性と教育方法」という単元を組んで4回にわたって、講義・説明のほか、授業観ならびに教育方法観をくつがえすような論文を読み、ビデオを見せていった。そのなかでの学生の感想・レポートを中心にして、学生の授業観ならびに教育方法観変革の様子について以下で報告する。
大角, 玉樹 Osumi, Tamaki
キャリア教育汚染ともいうべき状況が続いている。平成22年2月25日に改正された大学設置基準等を受けて制度化されたキャリア教育は、文部科学省の予算措置(就業力GPや産業界ニーズGP)を受けて、一挙に拡大することとなった。しかしながら、明確な目的ないしビジョンを欠き、単なる科目新設やインターンシップ等の増設にとどまっているケースも多く、場合によってはキャリア教育といいながら就職活動教育に矮小化されているケースもある。また、キャリア教育関連科目の行き過ぎた増設により、大学本来の専門教育や教養教育がおざなりになっている傾向もみられる。まさに、ビジョンなきキャリア教育が大学教育を汚染していると言っても過言ではないだろう。本稿では、従来のキャリア教育ではあまり重視されてこなかった概念である、「レジリエンス」に注目し、試行として実施した起業体験プログラムのプロセス、結果から、今後の産学連携教育の方向性を探っていきたい。そうすることによって、将来、ミスマッチングがあっても克服する、乗り越えていく力の醸成が可能となり、場合によっては、国策で示されている起業大国、イノベーション大国につながる人材育成が可能になるかもしれない。日本の若者は、失敗を極度に恐れているという調査があり、また、日本の文化も失敗に対する許容度が低い文化である。レジリエンスを高める起業家教育は、このような状況を打破する橋頭堡になるかもしれない。
城間, 園子 緒方, 茂樹 Shiroma, Sonoko Ogata, Sigeki
特殊教育から特別支援教育に転換され,2003年の今後の特別支援教育のあり方では,「家庭及び地域や医療,福祉,保健,労働等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で児童又は生徒への教育的支援を行うために,個別の教育支援計画を作成すること」が義務づけられた。各都道府県及び市町村等では特別支援教育を推進するツールとして個別の教育支援計画の作成と活用について取組を進めている。沖縄県においても同様に個別の教育支援計画の作成と活用を図ってきた。特別支援学校においては様式の統一を図るための校務支援システムへの導入や作成マニュアルの提示。小中学校においては,各市町村及び中学校区単位で様式の統一や作成や活用に関する研修に取り組んできた。しかし,個別の教育支援計画の作成においては,担任教師の負担感や保護者・関係機関との連携の不十分さなど多くの課題が挙げられている。特に共生社会の実現のためのインクルーシブ教育システムの構築では,個別の教育支援計画への合理的配慮の明記や家庭,福祉,教育が連携した体制づくり「トライアングルプロジェクト」における活用の促進など法的な整備がなされる中,学校現場等ではその対応に苦慮している状況がある。そのため,各地域において個別の教育支援計画の作成と活用における課題の解決を図っているが十分であるとは言いがたく,改善策を模索しているのが現状である。本稿では個別の教育支援計画の作成と活用における,全国及び沖縄県の現状と課題を探り,その活用促進についての課題の改善策として,緒方ら(2008)が提唱しているシステム教育学のモデル図を参照に試案を作成し分析・考察を行い,個別の教育支援計画の活用の促進に繋がるようなシステムの構築を図った。試案したモデル図とフローチャート図は,活用促進のための情報共有ツールとしての機能を個別の教育支援計画に持たせたことで,有効的な目標の設定や支援方法の提示,保護者及び関係機関との効果的な連携を促すことに繋がると考えられる。また,学校現場において個別の教育支援計画の作成と活用が徒労感にならず支援の形骸化を防ぐことにも繋がると考える。
武田, 喜乃恵 Takeda, Kinoe
今回は、幼稚園で行ったトータル支援の要素を活かした教育実践から、幼稚園教育要領の5領域に照らし合わせて、どのような子どもたちの姿がみられたか記録をもとに整理し、5領域への活用の有効性を考察した。幼稚園教育要領には「遊びを通しての指導を中心としてねらいが総合的に達成されるようにすること」とあり、エピソード1、エピソード2、表1に示した具体的な子どもたちの姿を整理することからトータル支援の要素を活かした紙ひこうき遊びによる教育実践が、「健康」、「人間関係J、「環境」、「言葉」、「表現」の5領域の内容を総合的に達成できる要素を有しており、有効であることがわかった。本研究における教育実践を5領域に照らし合わせて考えることで、トータル支援の要素を取り入れた教育実践が小学校の教育実践の基礎となる豊かな育ちと学びの基盤を有していると考えらえた。幼・小の一貫した教育実践を実現していくためにも幼稚園での実践のみならず、「遊び」を活用した教科教育の実践を小学校で、も積み上げていくことが今後の課題である。
渡辺, 雅子
本稿では、日米仏のことばの教育の特徴を比較しつつ、その歴史的淵源を探り、三カ国の「読み書き」教育の背後にある社会的な要因を明らかにしたい。まず日米仏三カ国の国語教育の特徴を概観した後、作文教育に注目し、各国の書き方の基本様式とその教授法を、近年学校教育で養うべき能力とされている「個性」や「創造力」との関係から比較分析したい。その上で、現行の制度と教授法、作文の様式はどのように形作られてきたのか、その革新と継続の歴史的経緯を明らかにする。結語では、独自の発展を遂げてきた各国の国語教育比較から何を学べるのか、日本の国語教育はいかなる選択をすべきかを、「国語」とそれを超えたグローバルな言語能力に言及しながら考えたい。
宜保, 健 神谷, 和子 桑江, 利恵子 上地, 亜希乃 仲宗根, 未華 知念, 真美 比屋根, 勇太 浦崎, 武 Gibo, Takeshi Kamiya, Kazuko Kuwae, Rieko Ueti, Akino Nakasone, Mika Tinen, Mami Hiyane, Yuta Urasaki, Takeshi
本村でも、これまで特殊教育の中で知的障害、視覚・聴覚障害、言語障害、病弱、肢体不自由といった様々な障害の種別や状況に応じて、教育環境の整備や教材・具体的指導の工夫・改善を図りながら、障害をもつ子ども達の教育機会の充実に取り組んできた。それを踏まえ、現在村内における幼稚園、小中学校においてLD、ADHD、高機能自閉症を含めた発達障害のある児童生徒の生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行う特別支援教育の充実に努めている。その一環として各小中学校における校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの設置など、学校現場との連携のもとで具体的な支援体制の構築を進めている。その体制の整備とともに本村では発達障害を持つ、あるいはその傾向を示す児童生徒の学校生活全般における支援の人材として、各小中学校に1名の特別支援教育支援員を配置している。今回、琉球大学教育学部附属障害児教育実践センターにおける実践トータル支援活動の中で、特別支援教育支援員が自ら考え、自ら創意工夫をこらしながら、児童生徒や保護者との個別的な関わり方を通した支援、集団場面における活動場面での個に応じた関わりなど、さまざまな状況での創意工夫や臨機応変な対応から、特別支援教育における支援者にもとめられる資質や実践力について考えていくこととする。
竹田, 和花 吉田, 安規良 Takeda, Waka Yoshida, Akira
本研究では,パラオハイスクールの理科授業で用いられていたワークシートなど入手可能な資料や現地調査の結果をIntended Education(意図された教育),Implemented Education(適用された教育),Achieved Education(獲得された教育)へ整理し,パラオ共和国での理科教育の実態の一片を把握した。その結果,パラオ共和国内に教員養成課程をもつ高等教育機関がなく,初等中等教育を担う人材に求められる資質・能力に明確な基準がないことに加えて教育全体の目標や理科の単位数はあるが,理科で何をどのように児童生徒へ学ばせるのかということまでは定められていなかったことがIntended Educationとして整理された。高等教育を経ていない教員も多く存在し,質の高い教員の採用体制が未構築であることと,Lesson Plan(教育内容)は,各授業担当教員が決定し,教科書やワークシートは英語版を用いており,テストも英語で出題・解答されていたことがImplemented Education に挙げられた。また,各種テストの結果から児童生徒の学力が高くはないと判断されていることがAchieved Education として整理された。一方,学力測定に用いられているテストの内容と教育課程,指導内容・方法や児童生徒の英語の語学力との関係を明らかにすることや,より多くのパラオ共和国における理科教育実践を観察する必要性があることが課題として示唆された。
村末, 勇介 Murasue, Yusuke
2020年より,教育現場でのがん教育が制度上本格的にスタートすることになった。だが,新型コロナウイルス感染症の拡大のタイミングとも重なった現在,学校ではそのことを考えるゆとりさえ奪われている。国民の2人に1人が罹患し,3人に1人の死亡原因となっているがんについて知ること,そしてそのことを通して「いのち」について考えることは,本来ならこの混乱期における重要で有効な教育実践となり得るものである。そこで,本論では,現在とり組まれているがん教育実践の特徴と課題を押さえた上で,筆者が長年とり組んできた「いのちの授業」実践を分析することで,がん教育を積極的に展開していくための課題を,①がん教育における子どもの学びの必要性,②がん教育の実践主体の問題,③がん教育における「死」の位置づけという3つの視点から整理した。
鈴木, 美加 SUZUKI, Mika
本稿では,日本を含む世界各国における教育改革が進む中で,学校教育に位置付けられた日本語教育の目標設定を行う際に,認知領域だけでなく,情意領域と精神運動領域にも目を向ける提案を行った。まず,最近の教育改革を推進するATC21S(Assessment and Teaching of 21st Century Skills)が打ち出した21世紀スキル(Griffin et al. 2012)と,教育心理学において1950年代から続く教育(学習)目標の3領域(Bloom (ed.) 1956, Guilbert 1987)について概観した。次に,日本語教育のCan-doリスト2種から,Can-do記述を例として取り上げ,それらの特性について,ブルーム他の教育(学習)目標の3領域を参考に検討を加えた。検討結果から,各レベルの到達目標としてのCan-do目標は認知領域,精神運動領域に関する記述が見られること,Can-do目標を支える下位Can-doでは認知領域,精神運動領域,情意領域の全領域とのかかわりがあることを示した。結論として,現在のアカデミックな日本語運用能力を育てる意図で行う日本語教育において,その目標設定を教育(学習)目標の3領域を活用して行うことが有用であると述べた。
陳, 麗婷 森, 浩平 田中, 敦士 張, 瑋容 Chen, Liting Mori, Kohei Tanaka, Atsushi Chang, Weijung
日本における高等学校での特別支援教育については、校内委員会やコーディネーターの設置といった基礎的な体制整備は徐々に進んできてはいるがまだ不十分であり、実際には機能していない場合もあり、量的な体制の確立だけでなく支援の質の担保が望まれる。それに対して、台湾では高等学校のうち、普通教育を主とする普通科高校や、職業教育を主とする専門高校でも特別支援教育が可能となるよう配慮がなされている。こうした台湾での教育システムが、日本における今後の特別支援教育体制の強制を考える上で少なからず参考になると考えられる。本稿では、台湾の普通科高校と専門高校における特別支援教育についての現状及び専門高校における新学習指導要領を紹介し、本要領の意義と課題を紹介した。
吉田, 安規良 山口, 剛史 村田, 義幸 原田, 純治 橋本, 健夫 八田, 明夫 河原, 尚武 立石, 庸一 會澤, 卓司 Yoshida, Akira Yamaguchi, Takeshi Murata, Yoshiyuki Harada, Junji Hashimoto, Tateo Hatta, Akio Kawahara, Naotake Tateishi, Yoichi Aizawa Takuji
長崎大学教育学部で開講された「複式教育論」の講義に琉球大学教育学部の「複式学級授業論」担当者が出張し,沖縄県のへき地・複式教育を概説し,長崎県で実際に行われた複式学級での授業実践を追体験しながらその内容を分析するという2つの取り組みを行った。受講学生の講義内容に対する評価は有意に肯定的であった。とりわけ模擬授業分析については「もっと学びたい」という意見が多かった。
吉田, 安規良 山口, 剛史 村田, 義幸 原田, 純治 橋本, 健夫 八田, 明夫 河原, 尚武 立石, 庸一 會澤, 卓司 Yoshida, Akira Yamaguchi, Takeshi Murata, Yoshiyuki Harada, Junji Hashimoto, Tateo Hatta, Akio Kawahara, Naotake Tateishi, Yoichi Aizawa, Takuji
長崎大学教育学部で開講された「複式教育論」の講義に琉球大学教育学部の「複式学級授業論」担当者が出張し,沖縄県のへき地・複式教育を概説し,長崎県で実際に行われた複式学級での授業実践を追体験しながらその内容を分析するという2つの取り組みを行った。受講学生の講義内容に対する評価は有意に肯定的であった。とりわけ模擬授業分析については「もっと学びたい」という意見が多かった。
菊地, 智裕 與世原, 朝史 呉屋, 智之 西原, 琢哉 春木, 明子 平田, 優
本報告は、2010 年度から始まった那覇市の小中一貫教育の取組について、これまでの小中一貫教育の経緯を踏まえ、2019 年度と 2020 年度の取組を中心にまとめ振り返ったものである。これまでに、本取組において、義務教育 9 年間を通して、計画的かつ継続的に教科指導や生徒指導を行ってきた。
市瀬, 広武
大学で動物を扱う学生に対して、動物実験の「教育訓練」の実施が義務付けられています。琉球大学における動物実験の教育訓練をより効果的に進めるために、実験動物シミュレーターを取り入れた教育を、共通教育等科目「動物実験の基礎」において試行しました。実験用動物を初めて扱う学部学生に対して、動物生体を扱う前にモデルを用いた操作を体験させることは、教育上、そして実験動物に対する配慮上、重要かつ効果的であると考えられるため、今後も実践していきます。
長谷川, 裕 Hasegawa, Yutaka
本稿の課題は、中内敏夫の教育理論が「能力主義」をどう捉えそれとどう向き合おうとしてきたのかを検討することである。中内は、能力主義は、教育領域にそれが浸透すると、教育による人間の発達の可能性の追求を断ち切ってしまうものとして捉えこれを批判し、一定水準の能力獲得をすべての者に確実に保障するための教育の実践と制度の構築をこれに対置して提起した。1990年頃中内は、近代になり〈教育〉という特殊な「人づくり」の様式が誕生・普及したが、そこには能力主義的・競争的性格が根源的に抜き難く刻み込まれているという論を押し出すようになるが、しかしその後も、上記のようないわば〈教育〉の徹底による能力主義への対峙という主張を基本的に変えていない。すなわち、〈教育〉は能力主義社会・競争社会に生きる人間の自立を助成する営みであらざるを得ないとの前提に立ち、その上で、「義務教育」としての「普通教育」においては、その社会を渡っていけるだけの「最低必要量」の能力獲得の保障を徹底させる、そのことが可能になるように〈教育〉の効力を向上させる―これが中内の能力主義に向き合う際の基本的スタンスである。本稿はこのように論じた上で最後に、中内の教育論とビースタのそれとを比較対照し、それを踏まえて〈教育〉がどのように能力主義と対峙すべきかについての筆者自身の見解を述べた。
權, 偕珍 太田, 麻美子 韓, 昌完 Kwon, Haejin Ota, Mamiko Han, Changwan
近年、インクルーシブ教育を推進していく上で、特別支援学級の役割が重要視されてきている。しかしながら、特別支援学級の教育課程については、通常の小・中学校に準ずることが表記されているのみである。また、特別支援学級においては、様々な授業実践がなされているものの、インクルーシブ教育の現合、を取り入れた特別支援学級の教育課程の編成に関する研究は見当たらない。そこで本研究では、インクルーシブ、教育制面指標(lEAI)を用い、インクルーシブ教育の観点から、日本の特別支援学級における制度・政策の分析を行った。また、特別支援学級で行われている実践事例を分析し、インクルーシプ教育の観点に基づ、いた日本の特別支援学級における教育課程編成の課題を明らかにすることを目的とする。IEAIの領域と実践事例を対応分析した結果、IEAIの観点である「権利の保障」領域においては、「教科外活動の保障」や「公平性の確保」、「人的・物的環境整備J領域においては、「共に学ぶ場の設定」や「多職種及び保護者との連携」、「教育課程の改善」領域においては、「地域社会への参加促進」や「障害理解の促進」、「リーダー育成」の観点を踏まえ、教育課程を編成する必要がある事が明らかになった。
武田, 喜乃恵 浦崎, 武 Takeda, Kinoe Urasaki, Takeshi
「トータル支援」における幼稚園の幼児への応用、幼児教育の方法の確立をめざし、支援教育の企画の具体的な実践を通して幼稚園での取り組みへの応用について考察した。さらに幼稚園での実施に向けて幼稚園教育要領への位置づけとして、「健康」、「環境」、「人間関係」、「言葉」、「表現」の5領域の各領域への応用を検討した。その結果、幼児期から学童期を対象にしてきた「トータル支援」の実践を幼稚園教育の5領域において位置づけて実践することが可能であり、その成果が生じると考えられた。幼・小の一貫した移行期の教育への有効性を確認することができた。
城間, 園子 緒方, 茂樹 Shiroma, Sonoko Ogata, Sigeki
「共生社会の実現」に向け,障害者差別解消法の施行等,特別支援教育を取り巻く社会情勢はめまぐるしく変化をしてきている。それに伴い教育は,インクルーシブ教育システムの構築に向け様々な取り組みがなされている。「学校間連携の推進」における特別支援学校のセンター的機能の充実もその一つである。特別支援学校が果たすセンター的機能は,域内における特別支援教育推進のリーダーとして,特別支援教育コーディネーターをはじめ全教職員で遂行をしなければならない。それを牽引していく特別支援教育コーディネーターや教育支援部は,障害のある幼児児童生徒への指導・支援に関する専門的な知識やカウンセリング技能等の向上に努め,域内の幼小中高等学校からのニーズに応じた学校コンサルテーション力を習得していくことが必須となる。しかしながら,年々増加をしている域内の幼小中高等学校からの教育・就学相談への対応やセンター的機能については,各特別支援学校独自での取り組みがなされ教職員が専門性の向上を図り,推進しているとは言いがたく,特別支援教育コーディネーター個々の力量に任されているのが実状である。本研究では,特別支援学校におけるセンター的機\n能の充実のため,教育専門機関である大学が,教育委員会との連携・協働を踏まえ,継続的,弾力的な研修(自主講座)及び体制整備のプログラム(試案)を作成し,特別支援学校における専門性の向上と体制整備について考察した。
岡﨑, 威生
本稿では、情報科学演習の位置付けを紹介するとともに、共通教育におけるこれからの情報教育の果たすべき役割と実施について論じる。
八木, 公子 YAGI, Kimiko
教師の言語教育観は,自身の教育実践に反映されるとともに,教師が自己の教育実践を振り返る際の自己評価の基準としても働く。その意味で,教師が自己の言語教育観を客観的に把握し,検討し続けることは重要である。本稿では,119名の現職日本語教師に対する質問紙調査の結果をもとに,現職日本語教師の良い日本語教師像とそこに見られる言語教育観,自己評価基準を分析した。因子分析の結果,「授業技術」「学習者支援」「関係知識」「授業への意欲」「授業直結知識」の5因子が抽出されたことから,これらが,現職日本語教師の考える良い日本語教師像の枠組みであり,また,自己の教育実践を評価する際の基準であると考えられる。
佐和田, 聡 Sawada, Akira
本研究では、まず特別支援学校における知的障害児の「個別の教育支援計画」を対象に、子ども本人・保護者のニーズやそれに基づいた長期目標、短期目標の設定内容について学部毎に調査しその作成過程における課題を探った。得られた所見に基づき、特別支援学校においてこれまで行われてきた、個別の教育支援計両と個別の指導計両の活用に向けた実践的な取り組みについて再吟味し、特別支援教育への移行期に生じた混乱とその原因、あるいはそれに対する改善策等について整理した。これら過去の特別支援教育への移行期に特別支援学校で生じた混乱が、インクルーシプ教育が提唱されている今の普通学校において同様に生じている可能性がある。これまで特別支援学校で培われてきたノウハウを、現在の普通学校において積極的に取り込むことが有効な手段のひとつであることを指摘した。個々の子どもに対して「個別の教育支援計画」が適切に作成・活用されることで、はじめて子どもが本来在籍して最も効果的な教育が受けられる教育環境を十分に保障することが可能となる。今後の実践に当たっては、目的(目標)と方法を明確にした計画に基づいて、子どもの成長を願う情緒を合わせ持ちながら教育実践に取り組むことが肝要であろう。
岡本, 牧子 新垣, 学 福田, 英昭 小野寺, 清光 清水, 洋一 Okamoto, Makiko Arakaki, Manabu Fukuda, Hideaki Onodera, Kiyomitsu Shimizu, Yoichi
「ものづくり概論」は、普通教育におけるものづくり教育の役割とその理論的背景、具体的な授業実践例を紹介するとともに、素材を活かした様々な製作活動を通して、ものづくり活動の教育的有用性を検証する授業として実施している。本論文では、その内容や学生の反応について報告する。
照喜名, 聖実 田中, 敦士 森, 浩平 Terukina, Mitami Tanaka, Atsushi Mori, Kohei
本研究では、田中・照喜名・細川ら(2015) により「西表島の複式学級を有する小規模校においては、インクルーシブ教育が自然な形で実践されている」という訪問調査の結果を受けて、八重山圏域におけるインクルーシブ教育の取り組みを客観的な指標を用いて評価することを目的とした。まず、田中・照喜名・細川ら(2015) が収集したインクルーシブ教育に関する事例を、韓(2014) が開発したインクルーシブ教育評価指標(Inclusive Education Assessment Index: IEAI) の項目に当てはめ、事例対応表を作成した。このインクルーシブ教育事例対応表を用いて、八重山圏域の小中学校で勤務する教員を対象とした質問紙調査を実施し、八重山圏域におけるインクルーシブ教育に関わる実践事例を収集した。各学校が意識的に取り組んでいる項目を集計することで、八重山圏域におけるインクルーシブ教育実践の傾向を明らかにした。調査項目として、フェイスシートの他、勤務校におけるインクルーシブ教育に関する取り組み」、それに関連して「最も成果を挙げている取り組み」を設定した。インクルーシブ教育に関する取り組みにおいて、「1.学習環境の改善を行っている」、「2.学習権を保障している」が多くみられた。学校におけるインクルーシブ教育に関する取り組みと勤務校における複式学級の有無については、「2.学習権を保障している」に関してのみ、複式学級の有無との関連で有意差が見られた。「インクルーシブ教育の達成度は学級規模によって左右される」という仮説を部分的ではあるものの一定程度は支持する結果が得られた。
藤原, 幸男 Fujiwara, Yukio
教師は教職についてから退職するまでにさまざまな経験をする。そのなかで教師としての職業的アイデンティティと教育実践の力量を獲得するとともに,そのありようをしだいに変化させていく。この過程は教師の生涯発達といわれている。最近の教師教育研究において,教師に採用されるまでの教員養成の過程だけでなく,教職活動のなかでの職業的アイデンティティの形成と教育実践の力量の獲得が問題になってきている。今年の夏に,認定講習で中堅の現職教員を対象として「教育方法」を担当することになった。この機会に教師の生涯発達と教育方法の変化・発展について講義を試みたので,その実践を報告する。
藤原, 幸男 Fujiwara, Yukio
教師は教職についてから退職するまでにさまざまな経験をする。そのなかで教師としての職業的アイデンティティと教育実践の力量を獲得するとともに,そのありようをしだいに変化させていく。この過程は教師の生涯発達といわれている。最近の教師教育研究において,教師に採用されるまでの教員養成の過程だけでなく,教職活動のなかでの職業的アイデンティティの形成と教育実践の力量の獲得が問題になってきている。今年の夏に,認定講習で中堅の現職教員を対象として「教育方法」を担当することになった。この機会に教師の生涯発達と教育方法の変化・発展について講義を試みたので,その実践を報告する。
岩橋, 培樹 Iwahashi, Roki
先進諸国の教育制度を比較すると、能力別選抜によって専門化を実施する年齢、そして専門コースごとの学生比率が意外なほど多様であることに気づく。本論文では、生徒が早期に専門化することのメリットとデメリットによって特徴付けられる理論モデルを展開し、このような教育制度設計の多様性を説明する。理論モデルにもとづいて、20ヵ国のデータからカリブレーションを行った結果、教育制度の異質性が概ね良好に再現された。とりわけ、政府が生産性最大化を意図して設計した教育制度と、政府と家計によって民主的に設計した教育制度とを比較し、後者の方が現実の説明力が高いことを示した。
浦崎, 武 武田, 喜乃恵 崎濱, 朋子 瀬底, 正栄 宮脇, 絵里子 Urasaki, Takeshi Takeda, Kinoe Sakihama, Tomoko Sesoko, Masae Miyawaki, Eriko
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センターでは特別な支援を必要とする地域の児童生徒を支援すること、その支援を通して発達支援や教育に携わる現職教員、保育士、学生への実践力養成プログラムとして遊びによる集団活動から実践力を考えていく「トータル支援教室(集団適応教室)」、「実践事例研究会」、「発達支援教育相談支援」等を行ってきた。こうした大学を拠点として蓄積した実践のシステムやその成果を離島・へき地で展開することを模索してきた。そこでこのたび琉球大学教育学部の21世紀おきなわ子ども教育フォーラムの一環として八重山教育事務所と連携し、八重山地区における出前トータル支援教室を開催することが実現し、今後の離島・へき地への発達支援教育における実践力養成システムの展開に向けて検討する機会が得られた。離島・へき地のニーズや特色を生かした遊びや日常生活のなかで活かせる実践力を身につけるプログラムを作成し、地域運営型の実践研修の場を立ち上げ、地域に実践力養成システムを構築し、大学と連携して人材を育成する一連の展開の道筋が示された。
韓, 昌完 Han, Changwan
児童生徒の教育活動の成果は、知識の習得といった学力だけで測定することは難しく、生活面での教育成果も評価することが必要となっている。生活面に関する教育活動は、児童生徒のQOL向上に大きく関与していることが考えられ、QOLの観点から児童生徒の生活面を測ることが注目されている。しかしながら、現在、教育分野では、学力だけでは測ることの難しい生活面に関する活動の成果評価を包括的に測定できる尺度はほとんどない。また、教育分野におけるQOLの用語は、その定義があいまいなまま使用されており、特に教育分野に特化したQOLの定義は存在しない。そこで本稿では、医療や福祉等といった教育分野以外も含め、①QOLの定義、②QOL尺度、③QOLの変遷を整理することで、教育分野における成果評価の観点からQOLを『人聞が置かれている客観的な状況の中における主観的な質のレベルであるということを前提条件として、身体的、情緒的、社会・経済的など、人間の生活に関わるあらゆる領域のレベルを主観的かつ段階的に評価するもの』と再定義した。
白尾, 裕志
1960年代から1970年代にかけて,東京都の公立小学校教諭として活躍した鈴木孝雄の教育実践『一年生の四季』に焦点をあて,その分析を通して教育実践の特長を明らかにした。『一年生の四季』における教育実践は,1960年代の後半から1970年代の前半に取り組まれたものであり,その内容は生活科の先駆的な実践でもある。本論では,鈴木の教育実践の特長について,教育内容に加えて教育方法の観点から分析,検討を進め,その特長として,個別指導を起点としたグループ指導に加えて,表現活動を重視した教育実践の舞台として家庭や地域が明確に位置付けられていたことを示した。 また,生活科との関連からは,生活科の教育内容としての遊びや動植物の観察や飼育等の「もの」や「こと」に対して,それら自体と自分自身への気付きに止まらず,それらと他者(友達・保護者・地域の人々等)との人間関係を含めた中で認識し,表現していく学習活動によって,鈴木の教育実践の継承が可能であることを示した。
大角, 玉樹
本稿では、コロナ禍を契機に急速に展開されている大学教育のDX(デジタル・トランスフォーメーション)において、注目度が高くなっているメタバースiの利活用について、教育的意義と導入時の課題を整理する。また、筆者自身の過去3年間の琉球大学「教育改善等支援経費」採択事業の成果と国立情報学研究所が主催する「大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム」iiで紹介された最新事例等を踏まえて、大学教育におけるメタバースの導入にあたっての課題を探る。現在のところ、メタバースを積極的に利用しているのは理工医学系と語学系にとどまっており、文系や文理融合分野での活用に対する期待にも触れる。
山城, 郷士 緒方, 茂樹 Yamashiro, Satoshi Ogata, Shigeki
本研究では、沖縄県でこれまでに行われてきた特別支援教育ネットワーク構築の過程を見直す\nことで現状を把握し、さらにこれまでに生じた様々な課題について整理をする。最終的には、そ\nれらに基づいて今後の沖縄県の特別支援教育の有機的なネットワークを構築していくための手が\nかりと方向性を明確にすることを目的とする。具体的には県内6教育事務所の所管地域における\n特別支援教育ネットワークの異同をまず明らかにし、平成17年度から翌18年度の沖縄県の特別支\n援教育ネットワーク構築の変遷について検討を加えた。地域レベルのネットワークについては、\n教育事務所ごとに設置された地域特別支援連携協議会により、各地域における特別支援教育のた\nめの関係諸機関とのネットワーク構築については、その大枠がほぼできたことが明らかとなった。\n学校内の特別支援教育体制を見てみると、小中学校の教員に関しては年々特別支援教育の理解が\n進んでいる反面、子どもの実態把握が未だに充分とはいえず、校内体制の整備についても今後の\n課題とされた。学校レベルにおいては特別支援教育に関する体制作りは未だなお発展途上の段階\nと言わざるを得ない。これらのことから、平成17年度はいわば「特別支援教育体制推進のための\n準備期間」、一方平成18年度については「特別支援教育体制推進の大枠形成」の時期であったと\nいえる。これら地域や学校レベルの具体的な課題を認識しつつ、今後は県全体を統括する広域特\n別支援連携協議会においてもまた、各地域のニーズに応じた支援を県レベルで指導・推進してい\nくことが重要な課題であるといえよう。
田中, 敦士 照喜名, 聖実 細川, 徹 森, 浩平 Tanaka, Atsushi Terukina, Mitami Hosokawa, Toru Mori, Kohei
本研究では、八重山諸島西表島内のすべての小中学校の管理職者並びに八重山諸島の市町村教育委員会の担当者を対象に聞き取り調査を実施し、複式学級における特別支援教育の「困り感」および「よさ」 を集約することを目的とした。調査項目として、「特別な支援を要する児童生徒の有無とその対処」、「特別支援教育に関する離島ならではの取り組み」、「複式学級における特別支援教育のよさ」、「複式学級での特別支援教育への困り感」、「沖縄本島に発信したい取り組み」 の計5項目を設定した。その結果、小中学校における特別な支援を要する児童に対する対処について、適切に行っている学校と困り感を有している学校の二つに大きく分けられた。小規模校における複式学級においては、自然な形でインクルーシブ教育が行われている一方、複式指導や特別支援教育に関する教員の専門性の問題も浮き彫りとなった。
小泉, 友則
現代日本において、子どもの性をよりよい方向に導くために、子どもに「正しい」性知識を教えなければならない・もしくはその他の教育的導きがなされねばならないとする“性教育”論は、なじみ深い存在となっている。そして、このような“性教育論”の起源がどこにあるのかを探求する試みは、すでに多くの研究者が着手しているものでもある。しかしながら、先行研究の歴史記述は浅いものが多く、日本において“性教育”論が誕生したことがいかなる文化的現象だったのかは多くの部分が不明瞭なままである。そこで、本稿では先行研究の視点を引き継ぎつつも“性教育”論の歴史の再構成を試みる。
新田, 保秀 仲間, 正浩 沖田, 憲生 Arata, Yasuhide Nakama, Masahiro
本学部における小学校教員養成課程をとりまく情報教育環境を知る目的で、小学課程学生を対象にアンケート調査を行った。その結果、学生はコンピュータに対する関心は非常に高く、教育、趣味等の広い分野において、それを活用したいと思っているが、実際の情報関連科目の履修状況はきわめて低いことが明らかになった。そのギャップを埋め合わせ情報教育の推進を計るためには、教育学部において小学課程の学生を対象に、コンピュータの初歩的利用法、CAIソフトの利用法及び作成、マルチメディアの教育への活用等、学生の要求に沿うような、あるいは興味をそそる様な、魅力ある情報関連科目のクラスを開設する必要があろう。
与那嶺, 匠 Yonamine, Sho
本研究の目的は、シティズンシップ教育のプログラムには教育を受ける側のみならず教育を行う側にも有益な学びが存在し、その学びは市民的資質を生涯にわたって向上させることに有効であることを明らかにするものである。中学生を対象としたシティズンシップ教育に教育支援で参加した大学生たちからは、ファシリテーターとして権利と責務を擁護する存在へと変容し、反省的実践を行いながら自律的に公的な活動へと参加するためのスキルを身につけようとする様子が観察された。ただしそれらの学びは課題解決を目指すカリキュラムや異質な者同士による対話を重視したグループ活動、授業検討の場や裁量性を確保することが条件となる。
呉屋, 淳子 Goya, Junko
近年,学校教育のなかで民俗芸能が積極的に行われている。学校教育で教えられている民俗芸能を見てみると,その在りようは,年々多様化している。特に,2006(平成18)年の教育基本法改訂に伴い,『新学習指導要領』のなかで「伝統の継承」に関する文言が明記され,正規の教育課程でも「伝統と文化」に関わる教科・科目の導入が顕著となってきている。本稿で取り上げる沖縄県八重山諸島石垣島に所在する3つの高等学校で導入された八重山芸能も,『高等学校学習指導要領』改訂に伴う教育課程の再編成によって実施されている。
吉田, 安規良 藏滿, 逸司 田中, 洋 山田, 美都雄 Yoshida, Akira Kuramitsu, Itsushi Tanaka, Hiroshi Yamada, Mitsuo
琉球大学の教職大学院に,特別支援学校教諭専修免許取得用科目「特別支援教育の教育課程・授業特論演習」を開設する際の教材資料を想定し,特別支援教育の教育課程及び障害特性の理解と指羽・支援に役立つ授業論に関連して,①特別支援学校.特別支援学級と通級による指羽についての教育課程と学級編制.②個別の教育支援計画,個別の指羽計画と個人情報保護,③教育実践上の留意事項と教員及び幼児・児童• 生徒集団の文化という教育社会学的視点の3点について,学修者である教職志望者及び現職教員に意識させる事項を具体的方法とあわせて学修内容として整理した。①として.指羽要録を教材にしながら,障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るための教育課程が編制されるため,各教科の目標及び内容についての差が存在し,その指羽について障害の状態や特性及び心身の発達の段階等を十分考慮するとともに,障害の状況に応じた配慮が求められていること.及び学級編制基準との関係性の理解が挙げられる。②として.「個別の教育支援計画」,「個別の指導計画」の具体的な様式や記入例,活用事例を示したり,実際に作成させたりしながら,その意味の違いを理解し,個人情報の保護という視点から学修を深めることが挙げられる。③として,「診断名(障害名)に囚われすぎないこと」と「作成した計画を指導に生かす」ことに留意し,文化的側面についても意識的に配慮し,適宜対応を図る姿勢が求められることが挙げられる。
浦崎, 武 鈴木, 陽子
国連から指摘されている特別支援学級の増加の教育課題の軽減に向けて障害者と健常者がともに生きる「共生社会の形成」のための「インクルーシブ教育」の実現に向けた取組を行った。具体的には、①障害を有する子どもや貧困等の養育環境の影響を受ける多様な子どもを含めた包括的な教育課題の解決に向けて支援体制の構築のあり方を検討すること、②その支援体制に基づいた「自己肯定感」の促進に繋がる「ともに学ぶ」、参加し易い学級づくりや授業づくりを重視する支援・教育の実践を検証すること、を通して、養育環境の影響を受ける多様な子どもへの支援・教育実践アプローチの開発について考えた。
Han, Chang-Wan Tanaka, Atsushi 韓, 昌完 田中, 敦士
韓国では、2000年「障害者雇用促進及び職業リハビリテーション法」が改正され、障害者雇用促進に関する大きな法律的、制度的整備が行われた。この影響を受け、教育分野から職業的自立への移行が社会的要求となり、移行支援計画に基づく学校から職業への移行の重要性が話題になっている。しかし、各個人に適切な移行支援計画の作成やその方法に関する専門家の確保と関連機関との連携などに改善点が多い状況である。今後、障害のある生徒の職業教育に関する専門家(職業リハ教育専門教師)の養成、地域で活用できる職業教育内容の開発と多様な教育方法やプログラムの増加、また、教育、福祉、雇用それぞれの分野のさまざまな雇用支援が、就職前から就職後にわたり、各障害者を中心として整合'性のあるシステムが必要である。
市嶋, 典子 ICHISHIMA, Noriko
本稿では,日本語教育学会の学会誌『日本語教育』に掲載された「実践研究」の質的変化を分析し,問題点を考察した。分析の結果,(1)1966-1979年には,「実践と教育理論の関わりをそれほど重視しない」論文が掲載されていた,(2)1980-1989年には,教授法や理論を前提とした論文が現れた,(3)1990年以降,(2)の研究に加え,仮説検証型,実験型の研究や,教室内でのインターアクションや自己の内省に基づいた論文も見られるようになってきた-という傾向が浮かび上がってきた。また,問題点としては,多くの論文が,自身の教育観や教育実践のプロセスを示すデータ・次の実践への示唆を明らかにしていないという点が明らかになった。
西本, 裕輝
本稿の目的は、2020 年4月に実施した大学院生調査をとおして、大学院教育の成果、特に高度専門教育プログラムの成果を把握することである。調査項目としては、「満足度」「スキル・能力の修得度」等であったが、すべての項目において、8割を超える肯定的な回答が得られた。よって結果から、高度専門教育プログラムに限らずすべてのプログラムにおいて成果があがっていると判断できた。
名嶋, 義直 Najima, Yoshinao
日本語教育は,「他者と共に生きる人」の育成を目指す民主的シティズンシップ教育にいかなる貢献をすることができるだろうか。民主的シティズンシップ教育を視野に入れた日本語教育が可能かどうかに焦点を当て,政治的な内容のテクストを使ってケーススタディを行った。宜野湾市長選をめぐる新聞記事を批判的談話研究の姿勢で分析したところ,字義的な表面的意味を理解するだけでは見えてこない特徴を明らかにすることができた。分析や考察において中立性を保つことも可能であった。教室活動として行えば,批判的な読解力・批判的な思考力などが育成されるであろう。留学生と日本人学生とが共習する授業であればお互いの読みを共有し,共に考え議論することで相乗効果も見込める。それは「他者と共に生きること」を目指すために必要な調整能力,政治能力を伸ばすことにつながる。批判的談話研究の視点を取り入れた活動は民主的シティズンシップ教育に貢献できる。日本語教育にも取り入れるべきである。
淡野, 将太 中尾, 達馬 廣瀬, 等 城間, 吉貴
本研究は,教員養成課程における入学前教育の実施と評価を行なった。6名を対象に入学前教育を実施し,事前及び事後の変化に関する自己評価を検討した。その結果,思考力,表現力,大学で学ぶ意欲,小学校教育に対する意欲・関心,及び,小学校教員としての適性について6名全員が向上したと回答し,有意水準5%の二項検定は有意だった。判断力に関する自己評価は5名が向上したと回答し,有意水準5%の二項検定は有意ではなかった。ただし,判断力が向上しなかったと回答した参加者の自由記述は,入学前教育によって判断力の向上が動機づけられたことを示した。これらを総合して本研究の入学前教育の有効性を考察した。
小川, 千里 OGAWA, Olivia C.
本研究の目的は,教育現場において教員やスクールカウンセラーが,教育者および心理援助職の立場であると同時に,児童・生徒・学生である才能教育下のアスリートに研究協力を得る際に生じる可能性のある多重関係について,その留意点およびベネフィットについて検討することである。本研究では多重関係に関する諸説,および才能教育下にあるアスリートの特徴を整理し,教育現場において教員が彼らに心理的支援を行い,研究協力を得る際の留意点とベネフィットについて議論した。諸説を集約した結果,倫理的配慮として多重関係を避けるのが望ましい。しかし,教育現場では,心理的支援や研究を実施する場合に,彼らとの多重関係が生じやすい。よって,多重関係に入る場合には,彼らとの信頼関係の構築の困難さや心理的発達の幼さ(小川 , 2013, 2015)を考慮して,彼らの人権の尊重を第一とし,多重関係を避けられない場合やベネフィットがある場合のリスクマネジメントを十分に行い,インフォームド・コンセントを得ていくことが重要である。
白尾, 裕志 Shirao, Hiroshi
社会科は1947 年の創設直後から,道徳教育の振興との関わりからその改善を問われてきた。「道徳教育振興に関する答申」(1951 年1月4日)では,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の全面主義が確認され,学習指導要領での「社会科の意義」として示された。「社会科の改善に関する教育課程審議会答申」(1953 年8月7日)では,社会科の教科としての特質を踏まえた問題解決学習の過程での道徳性の育成が明確化された。この二つの答申によって,その後の教育課程審議会にどのような影響が出たかについて,「文部時報」等の文部省側の文献を中心に明らかにしていき,社会科が学習指導要領として整理される過程で明らかになった特設道徳に伴う社会科の変化について考察する。
獺口, 浩一
本稿は、高度なデジタル化とビッグデータの利活用が急速に進む今日にあって、近年、国を挙げての取り組みが進む「数理・データサイエンス・AI教育強化事業」の全国的な展開の概要を紹介するとともに、同事業の協力校となっている本学の数理・データサイエンス教育強化事業のこれまでの取組内容や、本学における現在の数理・データサイエンス教育のあり方を検討する体制などを整理している。
米盛, 徳市 玉那覇, 清 Yonemori, Tokuichi
企業におけるOA化が進展するなか、商業高等学校の情報教育(商業教育)は、啓蒙・開発・試行の段階から本格的な実施段階に突入し、文部省は教育現場に新たな教育内容への転換を要求している。沖縄県の具志川商業高等学校が、実践的商業教育の新しい試みとして「事務実務」を平成2年4月に開設した。本科目で商業教育の集大成を図り、中途退学に歯止めを掛けることである。新たな模索は、生徒自身が実会社「具商デパート」を設立し、実運営することで、企業の機構や活動の厳しさを学ばせ、「理論から実践」、いわば「座学(机上)学習から本物志向の実践学習」への脱皮を図った。著者らが開発した「実践デパート・レジシステム」は「本物志向の実践学習」を支援するシステムで、実務面ではパソコン数台による取扱商品約1万品目、1日当り売上金額1千万円程度の多角的な会計処理、かつ教育面ではCAI技法、特にKR情報の音声出力、電光掲示板的な表示等を駆使した。公開授業(平成4年9月25日)やリサイクル祭&販売実習(平成4年11月29日)の実務実践で数多くの示唆を得ることができた。
緒方, 茂樹 Ogata, Shigeki
本研究は障害児教育における「音楽を活用した取り組み」をより効果的に行うための実践的、基礎的研究を目指して計画した。長期的な展望にたって「音楽を活用した取り組み」を考えた場合、この報告はその第一歩となるものであり、今後の障害児教育における「音楽を活用した取り組み」に対する研究的アプローチの指針を示すことを目的として行った。本報告ではまず障害児教育におけるいわゆる「音楽療法」の位置付けを再確認し、次に本研究のスタートとして全国の特殊教育諸学校における「音楽を活用した取り組み」について総覧するために、既成のデータベースを基に文献的な検討を行った。その結果、特殊教育緒学校では、1)障害種別として知的障害を対象とした取り組みがきわめて多くみられた。2)教科としての教育課程の枠組みで、器楽や合奏といった指導方法内容を用いながら、集団形成を指導目的として音楽を活用した取り組みが多くなされていることが明らかとなった。3)特に養護学校においては、教科における音楽活動のみならず、養護・訓練や生活単元学習など他の教育課程の枠組みにおいても少なからず音楽を活用した取り組みがなされていることが明らかとなり、実際の教育現場において個々の子どもの実態に即した教育的対応が様々な形で工夫されていることが推定できた。これらのことを踏まえながら最後に、改めて本研究を進めていくに当たっての基本的な考え方や課題について整理し、今後の指針ン研究的アプローチの方策〃明確にした。
森, 浩平 田中, 敦士 Mori, Kohei Tanaka, Atsushi
本研究では、特別支援教育に携わる教員におけるメンタルヘルスの現状を明らかにすることを目的とする。特別支援学校教諭免許状を未取得で特別支援教育に携わる教員に対する精神健康度(GHQ28) の分析結果から、特別支援教育に携わる教員の約60%が精神健康に何らかの問題があることが明らかとなった。また、男女差と精神健康度、教職経験年数と精神健康度には関連性がないことが示唆された。また特別支援教育に携わる教師の専門性において、特に教師がストレスにつながるとした項目について検討を行った。
北, 政巳
明治日本の近代技術教育の発展において、スコットランド人技術者や教育者が果たした役割がいかに大きかったかについて、わが国では、あまり知られていない。
峯松, 信明 MINEMATSU, Nobuaki
「自然に聞こえる発音を身に付けたい」と考える学生が多い一方で,発音教育,特に韻律教育に当てる時間が限られている。また教師本人が発音(韻律)教育を受けていないために,効果的な指導方法を模索せざるを得ない状況にある。発話の自然さを上げるためには,フレージング(句を単位として「へ」の字型のピッチパターンを意識して発声させる)+ポージング(「へ」と「へ」の間には意識的にポーズを置く)の習得が重要になる。より自然な発声を目指す場合,フレーズを構成する個々の単語のアクセントも習得することが望ましい。しかし日本語は文脈によってアクセントが頻繁に変わる特性を持ち,このアクセント変形に十分対応した教材は存在していなかった。本研究では,日本語音声教育,特に,イントネーション+アクセント教育を強力に支援するインフラストラクチャであるオンライン日本語アクセント辞書(OJAD)を開発した。現在,世界中の日本語教育機関で利用されるに至っている。
金, 彦志 方, 貴姫 韓, 智怜 韓, 昌完 Kim, Eon-Ji Bang, Gui-Hee Han, Ji-Young Han, Chang-Wan
障害学生のための文化芸術教育が特殊学校において様々な形で実施されているが、障害学生のための具体的かつ長期的な支援策が設けられていないのが現状である。これにより学校現場での文化芸術教育活性化に困難があると言える。本研究では、障害学生の文化芸術に関する先行研究の考察と特殊学校における障害学生文化芸術教育の実態把握を通じて、今後の学校教育課程における障害学生文化芸術支援の方向に対する政策案を提示した。特殊学校文化芸術教育の実態調査では、韓国の特殊学校153校を対象に実施しており、音楽教科の場合、118校(77.1%)の担当教師181人が回答し、美術教科の場合、98校(64.1%)の担当教師154人が回答している。アンケート調査の結果をもとに、芸術教科担当教師の専門性の確保、芸術教科プログラムの多様性の確保、文化芸術教育環境の改善と専門人材のネットワーク構築など、特殊学校で適用可能なサポートの方向を提示した。
城間, 園子 緒方, 茂樹 Shiroma, Sonoko Ogata, Sigeki
インクルーシブ教育システム構築を促進していくためには、これまでの特別支援教育の推進のための特別支援学校のセンター的役割を一眉充実させなければならない。そのためには域内の小中高等学校の特別支援教育に関する現状と課題を把握し、ニーズを明確にした上でのセンター的役割の再構築を図ることは重要である。本稿では肢体不自由教育が必要な小中学校の児童生徒の現状を、肢体不自由特別支援学級数や在籍者数、沖縄県内の特別支援学校への相談状況及び肢体不自由教育に関する相談内容等から分析を行い、肢体不自由特別支援学校のセンター的役割について検討を加えた。共生社会の実現のため肢体不自由特別支援学校が域内での中核的な存在として特別支援教育を推進していくためには、肢体不自由に関する障害特性への理解、教育資源を活用した支援体制の整備を図ることが要求されており、そのためには肢体不自由特別支援学校全ての教職員の専門性の向上とセンター的役割を機能させるためのシステムの構築が必要不可欠となる。
照喜名, 聖実 田中, 敦士 細川, 徹 森, 浩平 Terukina, Mitami Tanaka, Atsushi Hosokawa, Toru Mori, Kohei
本研究では、八重山教育事務所圏内の小中高等学校に勤務する教員の複式学級における特別支援教育への「困り感」と「よさ」を明らかにすることを目的とした。問題が山積する複式学級を有する小規模校において、複式学級における特別支援教育の実態を把握するため、質問紙調査を行った。調査項目として、フェイスシートのほか、「複式学級という学級形態が特別な支援を必要とする子どもに与える影響」、「離島ならではの特別支媛教育に閲する取り組み」の2項目を自由記述形式で設定した。更に、前者の回答結果は「特別支援教育に関する困り感」と「よさ」の2つの観点に分けて分析した。その結果、複式学級を担当する教員の多くが複式指導と特別支援教育の2つの困り感を抱えていること、よさとして、複式学級における異学年との関わりが児童生徒に良い影響を生むと多くの教員が考えていることが明らかとなった。そのようなよさには豊かな自然環境や地域・家庭と学校の結びつきが深く関わっていることも明らかとなった。
平田, 幹夫 Hirata, Mikio
第15期中央教育審議会第一次答申で,これからの教育は「ゆとりの中で生きる力をはぐくむことが基本である」という21世紀の教育の方向性が示された。その中で,これからの変化の激しい社会を「生きる力」を子ども一人ひとりにはぐくむために,「授業内容の厳選」と「横断的・総合的な学習の推進」を新しい教育課程の改善に求めた。これを受け教育課程審議会では「総合的な学習の時間」のねらいや学習活動等についての答申がなされ,平成14年度から小中学校において「総合的な学習の時間」が導入されることになった。そこで,本研究は「総合的な学習の時間」について多様な視点から検討した。
服部, 洋一 Hattori, Yoichi
現在、教職系大学で教員養成の最終的ブラッシュアップ科目として取り組まれている「教職実 践演習」の目的と意義について、まず文科省の意図を掲げ考察する。次に国立大学法人琉球大学 教育学部音楽教育専修において、同科目とその前提科目として位置付ける「教職実践研究」の 2 科目の内容を「地域連携教育」に焦点を立てた取り組みとした経緯について述べ、ケーススタデ ィとして、地域の小学校における地域連携教育の実態観察記録を踏まえ、この授業を通して本学 学生が、地域連携教育をどのように理解し、意義を見出し、自らの将来においてどのように役立 てていこうとするヒントを得ているかについて本論は、地域連携教育を教職実践演習に取り込ん でいくことは、非常に意義深く、教員養成課程最終段階にいる学生たちの教員資質向上のために 効果が高いことを詳述するシリーズ論文である。
村末, 勇介
2020年6月に政府の性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議において,「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」が決定され,2020年度~2022年度の3年間が性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」とされた。学校現場においての「生命(いのち)の安全教育」は2023年4月から本格的にスタートとなる見通しである。本稿では,性犯罪・性暴力対策のためには,そもそもの「性」に関する学習保障のための「性教育」が必要不可欠であるとの認識から,「生命の安全教育」 を性教育として展開していくための課題を,文部科学省による「指導の手引き」の分析から導き,その実際の活用の視点について整理した。その際,具体的な実践展開に向けての養護教諭の性教育への問題意識,および解決策の手がかりとしての具体的実践について取り上げた。
下地, 敏洋 城間, 盛市 Shimoji, Toshihiro Shiroma, Seiichi
本報は、教職科目の「教職指導」と「学校教育実践研究」の指導内容に工夫・改善を図ることが、教師を希望する学生にどのような効果があるのかについて報告することが目的である。最初に、「教職指導」においては、教師の基本的な資質である教科指導技術を養成することに加えて、学校現場で突施される「学校一日体験プログラム」を通して教科指導、学級経営、そして部活動などを総合的に関連させることができる。そのことにより、教育に対する視点が学生から教師としての立場へ移行することで、将来の教師像を客観的に見つめる機会となるばかりでなく、課題などの把握にも寄与していることが明らかになってきた。次に、「学校教育実践研究」においては、教師の現状や課題などを理解することで、教師としての使命感を高め、教育実習の事前指導として「模擬授業」を実施した。そのことにより、教科指導に必要な基本的技術の習得、学習指導案の作成を通して、教科書の活用方法、生徒の学習活動、板書計画の在り方などの研究に加え、教育基本法など教育関連法規や学習指導要領の理解に寄与していることが明らかになった。昨今の教育基本法の改正、学習指導要領の全面改定などに象徴されるように教育環境は常に変化しており、教師に求められる力量も実践的コミュニケーション能力や組織マネジメントなど多様な変化に対応するものとなってきている。従って、教職科目においても教育墳境の変化を見据え、教師の力量を高めるための指導内容となる一層の工夫・改善が必要であると考えられる。
比嘉, 麻莉奈
本研究は英語教育実践研究の観点に立ち、拡大円圏である沖縄に生まれ育ち英語帝国主義の影響を受けた個人、そこから沖縄の大学の英語教育実践に取り組む大学教員である個人の内的体験にもとづいた英語教育(ELT: English Language Teaching/Training)に存在する言語イデオロギーとしての語母語話者主義の記述をおこなうことを目的とする。非英語圏における英語教育が英語帝国主義の影響から脱却するためには、教育機関、ひいてはそこの地域社会が英語帝国主義・英語母語話者主義に立ち向かうことが重要であり、それにはまず従来の日本―沖縄における英語学習や英語使用そのものが学習者/教員にどのように捉えられているのかを明らかにすることが求められる。英語は現在リンガ・フランカのひとつであり世界中で使用されている。政治・経済・研究・軍事等に対する英語の影響力は絶大であり、それゆえに英語母語話者/非母語話者間に言語のみならずさまざまな格差が生まれている現状がある。本研究では、英語教育に存在する言語的人種的権力構造を含んだ英語イデオロギーの影響力を考察するうえでも、個々の具体的な英語使用がなぜ行われるのかを分析するうえでも有効な分析概念として、「英語母語話者主義 native speakerism」(Holliday, 2005)を援用し、個人のライフストーリーを分析した。分析の結果、生育環境、留学体験、英語母語話者主義の影響、沖縄の大学英語教育の問題点、教育理念と実践を表す5つのカテゴリが抽出され、「国際的に活躍できる人材の育成」を国策としてうたう日本の英語教育方針と併せて、拡大円圏であり米軍基地を有する土地でもある沖縄において英語母語話者主義という言語イデオロギーは英語教育と非常に緊密に存在していることが明らかになった。カテゴリをさらに追究した結果、研究協力者の語りからは、非英語母語話者が英語母語話者主義を内在化する一因に「正しい英語」イデオロギーがあること、そのイデオロギーは社会構造の影響はもちろん自己/他者の比較から生まれるが、その乗り越えも他者との関係性の中に見ることができることが分かった。そして英語教育現場においては「英語の多様性」を重視した実践と、教員だけでなく教育機関、そして学生においても母語話者を偏重しない態度が求められていることが分かった。
西本, 裕輝 Nishimoto, Hiroki
全国的に少人数学級化の動きが加速している。それは学級規模が小さければ小さいほど教育効果は高まるとする仮説に基づいていると言える。しかしながら、こうした仮説を支持する研究データはほとんどない。そうしたことから本研究では校長・教員を対象とした全国調査の結果から、学級規模と教育効果の関係について検討を行った。\n分析から、学級規模が小さくなるほど教育効果は高まるという結果が得られた。これは校長調査の結果も教員調査の結果も同様である。このことから、少なくとも校長や教員の意識の上では、少人数教育の効果はあると結論づけることができる。\nただし、この結果からただちに「少人数学級化によって教育効果は高まる」「学級規模が小さいほど教育効果は高まる」と結論づけるわけにはいかない。今後行う児童生徒調査の結果も踏まえて、慎重に結論を出す必要がある。
吉田, 安規良 Yoshida, Akira
2005年度から日本でも特別支援教育がスタートするが,実施に向けては様々な問題を抱えている。2003年度末になっても,学校現場には各種報告書やマスコミ報道から得られる基本方針以外,実施のために必要な具体的情報や方策が伝わってきていない。さらに直接子どもと対応する学校現場では,通常学級を担当している教職員への研修があまり進んでいない。本報では,特別支援教育実施についての問題点を整理した。また,そうした問題点を解決するために必要な通常学級担当教員の研修の一形態として行った通常学級担当教員と特殊学級担任とのチームティーチングについて,筆者の「科学的ものづくり」を取り入れた実践を例に報告する。これは,2000年4月より北海道滝川市立開西中学校で行なわれている,今までの障害児教育の取り組みとは異なる形での教育実践である。それは,通常学級を担当する教員が,通常学級の1クラスを担当するのと同じ要領で週に1~2回特殊学級で障害児への授業を行う。この教育実践は通常学級担当教員と特殊学級担任のチームティーチング形式で行い,通常学級担当教員が主として授業を実践している。通常学級担当教員は,特殊学級担任が培ってきた障害児に必要な配慮や支援の方法を実践から学ぶことができた。\n授業実践後の各担当者から,特別支援教育を実施していくためには教材や指導法への工夫が通常学級以上に必要であることが報告された。この教育実践は問題点の改善へと直接つながるものではないが,このような学校現場で即実践可能な活動は,特別支援教育実施に向けての障害児教育への携わり方を学ぶ教職員の研修の機会として有効かつ適切であった。
金城, 昇 宮里, 春江 浅井, 利眞 Kinjo, Noboru
本稿で対象とした実践は、「エイズ」を扱った授業としては先駆的な実践であり、多大な評価を受けている。この実践は、エイズ教育と性教育の狭間で必ず問題にあげられる「感染経路としての性交」を教育内容として、小学校段階に位置づけた点で興味ある実践である。本稿では、分析の視点を「感染経路としての性交」にしぼり検討を行った。
浦崎, 武 瀬底, 正栄 Urasaki, Takeshi Sesoko, Masae
トータル支援教室における集団支援の場で実施した支援企画と、その支援企画を授業実践へと還元し交流学習として実施した教育課程の研究授業の題材を整理することで、トータル支援教室の集団支援と教育実践の共通点と相違点を検討し、今後の集団支援の取り組みを教育実践へと還元することについて考えた。トータル支援教室における「支援観」は、「過ごす」という支援姿勢を重視し、その場での子どもたちが「自分の存在を実感できる手応え」のある体験を支えることであり、教育実践における「指導観」は教育が「めざす」という子ども像に近づけることを重視し、その目標に導く「指導の観点」として考えられた。しかし、本研究で取り上げた交流学習、教育実践において、トータル支援教室の支援企画を学校現場で実践することを通して、子どもたちが集団の場で楽しく「過ごす」ことにより心地よい「手応えのある体験」が得られること、さらに物事へと「向かう力」が引き出されていくことで、教育実践が重要視する能力の獲得としての「めざす力」、「得る力」の生成へと結びついていくことが示され、トータル支援教室の支援企画を教育実践へと還元していくことが可能であると考えられた。
米盛, 徳市 Yonemori, Tokuichi
近年の小・中学校の教育現場で数多くのCAIオーサリングシステムが普及しマルチメディア・ハイパーメディア化が進行するなか、CAI教育の原点に戻った独自の研究を進める上でCAIオーサリングシステム「Quick CAI」(教室LAN対応)の自主開発を行ってきた。教育学部学生への授業での試行、沖縄県コンピュータフェアでのCAIセミナー、教材製作に協力を頂いている県内の小・中学校での教育実践を通し、数多くの示唆を得ることができた。そこで、これらの示唆をもとにスタンドアローン型利用によるチュートリアル型ドリル学習用のバージョンアップを図った。
小林, 善帆
本稿は、明治初中期、いけ花、茶の湯が遊芸として捉えられながらも、礼儀作法とともに女子教育として高等女学校に、条件付きで取り入れることを許容された過程を考察するものである。手順としてまず教育法令の変遷を遊芸との関係から確認し、次に跡見学校、私塾に関する教育・学校史資料の再考、続いて欧米人による記録類や、欧米で開催された万国博覧会における紹介内容をもとにして、検討を加えた。
金城, 克哉 Kinjo, Katsuya
本論文は、近年注目を集めているコーパス言語学の概要を示し、同時に言語教育への応用とフリーソフトウェアを用いた分析方法を紹介するものである。コーパス言語学は、コーパスを利用して言語分析を進める研究方法の分野として近年盛んに議論され、様々な論考もすでに多くある。ここでは短いながらもどのような研究分野があるのか、それが日本語教育と英語教育にどのように応用できるのか、また実際の分析はどのようにすればよいのかを論じる。
許, 佩賢
本論では、日本統治時代台湾教育史研究に関する基本史料と研究動向を概説することで研究の手引きとしたい。全体を4節に分け、前半2節では、当時刊行された史料と各行政機関の文書を紹介する。第3節では近年刊行された台湾教育史に関する大部な史料集成を取り上げ、最後の第4節では最近の研究状況について触れる。本論を通して、台湾における台湾教育史の基本的な知識を提供するものである。
林, 璋 Lin, Zhang
本文は中国福建師範大学における日本語教育の現状と今後の変革の方向を紹介するものである。これまでの日本語教育は中国における外国語教育の縮図と見ることができ、語学能力の向上だけを目標とし、しかも読み書きの練習が中心であった。これからの変革の方向としては、学習者の「聞く、話す、読む、書く」の語学能力を偏りなく向上させ、その上で専門的知識をも学べるようにカリキュラムを編成する方針である。
李, 卓
本稿は中日両国の女子教育のいくつかのちがいについて比較的に論じるものである。
日熊, 隆則 岡本, 牧子
琉球大学教育学部附属小学校パソコンクラブでのドリトルを用いたプログラミング教育の内容と,2018年度教員免許更新講習(石垣)で行ったドリトルとBBC micro:bitを連携させたゲーム制作について紹介する。
獺口, 浩一
本稿は、高度なデジタル化とビッグデータの利活用が急速に進む今日にあって、近年、国を挙げての取り組みが進む「数理・データサイエンス・AI教育の全国展開の推進」事業の概要と、同事業の特定分野校(社会科学)及びダイバーシティ推進校に選定された本学の事業計画や取組内容を、これまでの経緯とともに紹介する。その上で、本学に新たに設置された数理・データサイエンス・AI教育推進室をはじめ、同事業の実施と数理・データサイエンス・AI教育の全学的な展開を検討する体制などを整理する。
白尾, 裕志 Shirao, Hiroshi
生活科は1989(平成元)年3月に公示された「学習指導要領」で低学年の教科として創設された。その成立の経緯は1970年代の中央教育審議会での教育課程の再検討に関する答申が起点となっている。成立前の教育課程審議会では,社会認識や自然認識をベースにした低学年社会科・理科を統合する方向が示されたが,1987年の教育課程審議会答申では,社会認識や自然認識はその目標から捨象され,低学年社会科・理科は廃止することを明らかにした。生活科の実施にあたっては,教育方法としての「気付き」を強調しながら,子どもが生活とのかかわりを考えること通して生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ,自立への基礎を養うことがめざされた。しかし20年以上に及ぶ生活科の実践の中で,「気付きの質」が問われるようになり,その過程で「知的な気付き」の必要性と併せて「認識」が再評価されてきた。そうした生活科において,1950年代の終わりから1980年代にかけて実践を展開した日本生活教育連盟の若狭蔵之助による生活教育の実践は示唆に富むものであり,そこでの理論を科目の内容に加えることで,学生が生活科の構想をよりリアルにつかむことができることを明らかにする。
井川, 浩輔
組織におけるコーチングの重要性は高いが,コーチング・スキルに関連する課題も指摘されており,そのような課題の解決につながるコーチング・スキルのトレーニングを新たに開発する必要がある。本稿では,コーチング・スキルのトレーニングに関する教育プログラムを開発・実施し,教育プログラムにおける学習者の反応を具体的に示すことで,トレーニング開発において考慮すべき教育プログラムの効果や課題について考察を試みた。
村末, 勇介 Murasue, Yusuke
若年出産率の高さに代表される,沖縄県における若者の性と性教育を巡っての課題を念頭に置きつつ,中学校\n男子の性教育の内容構成について検討した。性教育の総合情報誌である『Sexuality』誌の分析を踏まえ,沖縄県\nA市内の公立中学校での特別授業においては,若者の男性に広がりつつある「射精」への否定的態度を克服する\nための科学的な内容について取り扱った。生徒らの授業評価,感想文等から,授業内容を積極的・肯定的に受け止\nめる中学生男子の姿を確認することができ,男子の性教育内容の構成にとって必要となる視点と課題を明らかにした。
宮城, 利佳子
以前の沖縄型幼児教育では、保幼小接続において以下の4つのメリットがあったと捉えられる。1)公立幼稚園への入園は、親が子どもを自分のために預けるということではなく、子どもの教育のために通わせているという意識を高めていた、2)公立幼稚園入園までは教育を受けていなかった子に対して幼児教育へのアクセスを保障していた、3)幼小接続期における友達関係を安定させ、降園後・放課後の生活に連続性を持たせた、4)保育者や小学校教員にとって情報共有をしやすくした、以上の4点である。このようなメリットがあるからこそ、日本の保育制度と異なる部分があっても、沖縄型幼児教育として沖縄社会の中で認められてきたと考えられる。
林, 慶花
本稿は、植民地期朝鮮の言語政策における唱歌の位相を普通学校の唱歌教育を分析することによって明らかにし、それとは対自的に存在した朝鮮語教育と朝鮮語唱歌との関係を、民間主導でなされた文字普及運動や『朝鮮語読本』レコード製作に焦点を合わせて追求したものである。
佐久間, 正夫 Sakuma, Masao
本稿は、本学教育学研究科の改革に伴ない新設された授業科目である、「学校教育の理論と実践Ⅰ」において、筆者が担当した授業の実践報告を行なうものである。これにより、大学院生がどのような学びを追究したのか、についての解明を試みる。それによれば、以下のことが明らかにされた。第一に、筆者が取り上げた、体罰という教育問題に対して、大学院生の興味・関心が非常に高かった。現職教員も含めた大学院生は、筆者が行なった調査結果に基づく、体罰をめぐる種々の事実に驚き、本授業テーマにより一層、興味・関心を強く抱いたようである。第二に、本授業には現職教員も含まれているため、グループ討論を行なうことによって、体罰という問題を理論面と実践面の両方から追究することができた。以上をとおして、体罰という教育事象は理論面と実践面の両方から検討され、大学院生は体罰の問題点だけではなく、学校教育における教員のあり方も追究することができた。
道田, 泰司 Michita, Yasushi
批判的思考教育が効果的に行われるために必要なものは何か。そのことを検討するのが本稿の目的であった。批判的思考と関わる先行研究からは,教師も教育方法も批判的思考も,絶対的に捉えるのではなく,かといってすべてを相対的にのみ捉えるのでもなく,常によりよいものを求め続けるという姿勢が重要であることが示唆された。批判的思考と直接的に関わらない教育心理学研究からは,教師の客観的態度,本来の自分でいられることで未来に対して楽観的な態度を保つこと,非随伴経験が少ないこと,保護者がネガティブな情動を受信していること,親や教師が安心感などのサポートを与える必要があることが示唆された。これらを踏まえ,批判的思考教育を支える基盤となるものについて考察を行った。
宮国, 泰史 福本, 晃造 杉尾, 幸司 前野, 昌弘 山城, 康一 濱田, 栄作 古川, 雅英 Miyaguni, Yasushi Fukumoto, Kozo Sugio, Koji Maeno, Masahiro Yamashiro, Yasukazu Hamada, Eisaku Furukawa, Masahide
琉球大学では、科学に強い興味関心のある児童・生徒を対象に先進的な科学教育プログラムを提供する「琉大ハカセ塾」を、平成29年度より実施している。令和2年度については、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、従来の教育プログラムの一部を非対面方式に変更した。本稿では、非対面方式で実施したプロブラム内容について報告するとともに、過去の実施方法等との比較を通して、非対面方式で科学教育プログラムを実施する際の問題点や改善点の把握を試みた。実施内容とその結果から、非対面方式での科学教育プログラムは、従来行われてきた対面方式でのプログラムと比べて短所だけでなく長所も持ち合わせており、様々な分野において、新しい授業スタイルの工夫につながる可能性が示唆された。
長島, 祐基 NAGASHIMA, YUKI
本稿では、1972(昭和47)年から2002(平成14)年まで東京都の社会教育事業として都立多摩社会教育会館(立川市)に設置されていた、市民活動サービスコーナーに関する資料を分析する。その上で、当該資料をアーカイブズとして記述・編成、保存・公開していく方法、意義、諸問題について考察する。
崎濱, 朋子 末吉, 麻紀 内間, 貴秋 武田, 喜乃恵 浦崎, 武 Sakihama, Tomoko 崎浜, 朋子 Sueyoshi, Maki Uchima, Takaaki Takeda, Kinoe Urasaki, Takeshi
様々な環境の変化や学校生活の中で見せる彼らの状況から、教師らは、「子ども達の学校生活をより豊かなものにしたい。」と強く願った。そこで、琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センターの「トータル支援教室」から得られた「誰かと楽しみを共有することの大切さ」を、普通小学校における「遊びを主体とした集団活動」として教育課程に位置づけて実践した。
緒方, 茂樹 宮内, 英光 福田, 孝史 Ogata, Shigeki Miyauchi, Hidemitsu Fukuda, Takashi
奄美圏域及び宮古圏域における特別支援教育の実態と動向について、これまで行われてきた調査・研究から得られた所見について比較対照しながら、各々の異同について明らかにする。それらを総合的に検討することで、離島における今後のよりよい特別支援教育の在り方について新たな手がかりを探ることを目的とした。奄美圏域、宮古圏域共に島嶼地域であることから、専門医の不在など各種リソースの不足は否めないことも改めて明らかとなった。宮古圏域における福祉・医療・教育等の関係諸機関が連携した相談体制の一本化は、「少ないリソースをいかに有効活用するか」という視点に立って行われたものである。大島養護学校が独自に進める「子どもの発達を支援する相談会」は、「離島の離島」に対する教育相談事業として特筆すべきものであった。大島養護学校と宮古養護学校のセンター校的役割と公立小中学校との連携について、「今後は養護学校に対して何らかの支援を求めていきたい」というような、将来的なニーズの高さが共通して伺えた。また両圏域の小・中学校において、特別支援教育コーディネーターは全ての学校に配置されていたが、校内委員会の実質的な機能充実ということに関してはいずれもこれからの課題であるとされていた。地域特別支援連携協議会あるいは市町村教育委員会で行われている就学指導委員会との連携や、特別支援教育コーディネーターの役割の明確化などが今後の取り組みの糸口となろう。
平野, 宏子 HIRANO, Hiroko
1節では,本研究が国立国語研究所共同研究プロジェクト「日本語教育のためのコーパスを利用したオンライン日本語アクセント辞書の開発」の一部であり,web辞書構築の土台となる韻律教育の効果を,紙媒体を使って検証してきたものであることを述べた。2節では,音声の特徴と,学習者の日本語らしい音声習得へのニーズの高さについて述べた。3節では,日本と中国で学習者の日本語音声に対する関心は高くても,音声教育が体系的に行われていないこと,従来の教科書には単音や語のアクセント型の記述はあっても,連語のアクセントや文のイントネーションの記述は少ないこと,しかし最近は韻律の重要性の認識が高まり,韻律学習を目的とした教材の出版が顕著に増えているが,現在のカリキュラムや教材の中で音声教育が自然に導入されることが理想的であることを述べた。4節では,中国語話者の日本語発話の韻律的特徴について述べた。中国語話者のピッチパターンでは,文節ごとの急峻なピッチの上下変動がみられ,音響的な意味のまとまりの形成を阻害すること,日本語にはないアクセント型が出現しやすいことを述べた。5節では,従来の音声教育の問題点を踏まえ,web辞書OJAD開発に関わる教育効果を検証するために,開発と並行して行ってきた紙媒体での音声教育の実践方法について述べた。6節では,音声教育実践の効果についてアンケート調査をもとに分析を行った。ゼロ初級からの音声教育は従来のカリキュラムを変更することなく行え,韻律視覚化教材使用によって教師と学習者間で音声に関して様々な気づきと対話が生まれ,教師は基準をもとに自信を持って指導することができるようになり,学習者は音声学習を負担に感じるよりむしろ面白いと答えた。7節では,教材のweb化,OJADの開発について紹介した。
杉尾, 幸司 宮国, 泰史 Sugio, Koji Miyaguni, Yasushi
新中学校学習指導要領では,理科の指導においてもその特質に応じて,道徳について適切に指導する必要があり,道徳教育の要としての特別の教科である道徳科の指導との関連を考慮する必要があることが示されている。この道徳教育を行う際の理科における配慮の内容としては,環境保全や生命倫理に関連する内容と研究倫理に関する内容とに区分されるが,後者に関しては,小中学生を対象にした取り組みは行われていない。そこで,アクティブ・ラーニングの視点に立った「対話的な学び」を通して研究倫理について考えを深める理科教育と道徳教育の連携を目指す授業実践を試みた。本研究の結果,小・中学校段階の児童・生徒の持つ「悪い研究者」のイメージは,異なるグループ間でも共通した内容に集約することが示され,多くの部分で一般的な研究倫理テキストに適合することが明らかになった。また,KJ 法を活用した「対話的な学び」は,対象とする事象に関する受講者の理解を深めるだけで無く,受講者の研究倫理観を授業者がより深く理解するためにも有効だと考えられるため,理科教育と道徳教育を連携させた授業実践として有効であることが示唆された。
韓, 韡
本論は、従来の研究で注目されてこなかった清末「日本型教育体制」の成立における女子教育と日本モデルという問題を、女子手芸科目という視点から考察した。その結果、清松の女子師範学堂および民国の女子中学校と女子師範学校のカリキュラムに組み込まれた手芸科目「編物・組糸・嚢物・刺繍・造花」が、明治三十四年文部省発布の「高等女学校令施行規則」における随意科目の手芸内容の模倣であることを明らかにした。そして、富国強兵の方策を模索していた清末の教育視察者が、実業技能として教授された明治期の手芸が女性の職業と結びつき、国家の産業発展に貢献しているのを見て、またそれが伝統的な婦徳にも合致するため、中国でもこれを実現しようと意図的に中国の女子教育に組み込んだ結果であることを論証した。
米盛, 徳市 Yonemori, Tokuichi
沖縄県内の保育園でもパソコンを用いた幼児教育が普及しつつあるなか,「Ouick CAI」を用いたドリル学習用幼児教育ソフト「いろとかたち」の研究開発を行った。現在,数カ所の保育園で4才以上の園児教育に利用している。本幼児教育ソフトでは,システム側の学習実行エギュゼキュー夕が学習履歴を管理する個人用データフロッピーをもとにジャンル別(左右弁別・鏡絵,折り紙展開,影絵,隠し絵等)のコースウェアを自動生成できるように考案した。ゲーム性を持たせるため,時間設定やジャンル設定が,幼児の学習中であっても自由にコントロールでき,正答率7割以上で次ジャンルヘの自動進行,さらにKR情報用としての効果音(ピポピポ音,ブブー音)で,幼児の興味,関心,集中度を高めるように工夫した。本論文では特にソフトウェア概要と指導法において考察を行った。
小原, 愛子 韓, 昌完 田中, 敦士 Kohara, Aiko Han, Chang-Wan Tanaka, Atsushi
本稿では、行政資料から慢性疾患児の現状を把握した上で、慢性疾患児の社会的自立の視点から教育的対応の研究動向について文献的に整理するとともに、今後の教育的対応の在り方について一考察を加えた。近年、医療の進歩に伴い慢性疾患児の病態も多様化しており、慢性疾患児が社会的自立を果たす為にも個々に合わせた教育活動がきわめて重要な役割を果たしている。しかし、慢性疾患児に関するほとんどの先行研究は文献研究にとどまっており、実態調査や実践研究が少ないことからも慢性疾患児の具体的な実態把握が不十分であることが明らかになった。今後は、特別支援学校や通常学校へ通う慢性疾患児の実態についてエピデンスの伴った把握をきちんと行ったうえで、教育的支援の在り方について検討することが重要な課題である。
村末, 勇介
わが国の教育内容は,学習指導要領により規定されている。その基準は,原則的には最低限の内容という位置づけであるが,性教育(性に関する指導)についてのみ,「はどめ規定」なる制約が存在している。多方面からの指摘があるように,この規定は,子どもたちの現実からすすめる性教育にとってマイナスの役割を果たすものとなっているが,これについては文部科学省も次の4つの留意点-①児童生徒等の発達の段階を踏まえること,②学校全体で共通理解を図ること,③保護者や地域の理解を得ること,④集団指導と個別指導の連携を密にすること-が満たされれば,学校の判断において実施可能と述べている。こうした4要件の撤廃が,子どもたちにとっての性教育を学力保障として展開していくための前提であることに変わりはないが,子どもたちの性の現実を知る1人として,それまで手をこまねいて待つわけにはいかない。そこで,4条件のうちの「学校全体で共通理解を図ること」に焦点化し,包括的性教育の展開に向けた実践課題について探った。学校の教職員が共通認識に立つために,①子どもの権利条約を法的根拠として位置づけ,②「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」による性教育の包括性を共通の認識とすることを前提として,その具体的実践例としての小学校社会科における試みを紹介した。
崎原, 正志 Sakihara, Masashi
ハワイのシマクトゥバであるハワイ語の言語復興以後、NEO Hawaiian と呼ばれる第二言語話者が話すハワイ語が普及しており、伝統的なハワイ語 TRAD Hawaiian を圧迫している。琉球列島におけるシマクトゥバにおいても沖縄島中南部を中心に新しいかたちのシマクトゥバNEO Okinawan が生まれつつある。大学などの学校教育におけるシマクトゥバ教育がそれぞれの地域に存在する多様なシマクトゥバたちの標準化・画一化を助長する可能性があるため、シマクトゥバの最大の魅力である多様性を残しながらのシマクトゥバ教育でなければならない。
手代木, 俊一
明治期盲人教育におけるキリスト教と音楽について「宣教」、および「宣教師」という観点から論をすすめた。
緒方, 茂樹 Ogata, Shigeki
今回は特に沖縄県内の特殊教育諸学校に在職する全ての教員を対象として、障害児教育に関わる琉球大学大学院への進学に関する意識調査を行った。調査の結果、「琉球大学大学院教育学研究科、学校教育専攻内に障害児教育コースが設置されていることをご存じですか」という項目に対して、「知らなかった」とする場合が全体の45.97%を占めていた。さらに、「県から現職教員を琉球大学大学院へ派遣するという制度があることをご存じですか」という項目に対して「知らなかった」とする場合が全体の39.41%を占めていた。これらのことから、県内の特殊教育諸学校に在職する現職教員の約半数は、琉球大学に障害児教育に関わる修士課程が設置されていることを知らなかったという現状が明らかとなった。また「今後条件が整えば障害児教育に関わる大学院で勉強をしようとする希望がありますか」という項目に対して、現段階で明確に進学希望を打ち出している教員数(36.52%)に、「これから考える」という教員数(36.52%)も含めれば、全体の70%以上の教員が今後の大学院進学を考慮していることが明らかとなった。ここで特に大学院の進学について「これから考える」という回答が数多くみられたことは、今回の調査を通じて改めて琉球大学の大学院、あるいは派逝制度の存在を知ったことによるものと考えられる。以上のことから、本調査によって結果的に琉球大学に障害児教育に関わる大学院修士課程が設置されていること、さらに県からの派遣制度があることなどを改めて個々の現職教員にインフォメーションすることができたものと考えられる。このことはすなわち、県内の現職教員の潜在的なニーズの発掘に役立ったものと考えられ、県からの派遣制度を利用できれば大学院への進学を考慮するという意見が少なからず認められたことも考慮して、今後は現職教員から琉球大学大学院への進学希望者が増加することが期待される。
大角, 玉樹
AI やXR 関連技術を活用した先進的かつ実効性の高い大学教育のDX が期待されている。しかしながら,大学だけでは急速に進歩するデジタル技術に迅速に対応することは極めて困難である。産業界と連携した高度人材育成や先進的な技術を活用した教育手法の開発が期待されているものの,文系学部に所属していると民間企業との共同研究の機会を得ることが極めて難しいのが現状である。筆者自身,近年のデジタル技術を活用した新たな教育手法の開発には強い関心を持っていたが,技術的な支援や予算が不足しており,なかなか一歩を踏み出すことができなかった。このような状況のもと,2023 年度に,民間企業と共同研究する機会を得ることができた。本稿では,研究ノートとして,その経緯と概要を紹介しておきたい。教育効果の詳細な分析や効果的なデジタル教授法については,稿をあらためて議論したい。
城間, 園子 緒方, 茂樹 Shiroma, Sonoko Ogata, Sigeki
特別支援教育がスタートして10年が経過しているが、特別支援教育に関する体制整備は未だ十分であるとは言いがたい。特に関係機関と連携・協働した体制の整備は、お互いを繋ぐ役割を担う特別支援教育コーディネーターなど、個人の専門性や資質に委ねられており、結果的に学校及び地域間の格差を招いている。さらに共生社会の実現のためインクルーシブ教育システムの構築を推し進めていくことが求められることから、学校にはさらなる外部機関との連携と協働を図った取組が要求されている。この連携・協働を推進していくためには、繋ぐという機能の存在が果たす役割は極めて大きい。先に述べたコーディネーターもその一人ではあるが、繋ぐという機能を明確にしていかなければ、支援体制がシステムとして機能していくことは難しくなり、場合によっては構築したネットワークシステムの形骸化を招いてしまうことになりかねない。本稿では関係機関と連携したネットワークシステムを学校及び地域での体制整備の方策を考慮しながら、境界関係システムRelational Interface Sysytem(Ris)の動きと、繋ぐということについて改めて考察をする。Risの存在は、学校・地域における体制整備に大きな影響を与えるものであり、Risの果たす役割を明確にしたネットワークシステムを構築していくことが重要である。さらにRisは人のみならず個別の教育支援計画のように一つのツールが担うこともあり、その役割を明確にした上で活用していくことが特別支援教育のみならずインクルーシブ教育システム構築の促進に繋がると考える。
吉田, 安規良 呉我, 実香 Yoshida, Akira Goga, Mika
沖縄県教育庁八重山教育事務所管内の2つの小学校の変則的な複式学級設置校での授業実践から、変則的な複式学級での教育実践に何が必要かを考察した。(1)2つの小学校とも、教育課程や校内人事を工夫し、授業運営を可能な限り単式化していた。(2)国語の複式授業では、変則的な複式学級特有といえるような特別な工夫は見あたらず、「わたり」や「ずらし」といった複式学級一般で用いられる手法が利用されていた。少人数のため徹底的に個に応じた指導が行われており、「変則的な複式学級だから必要とされる資質・能力」というより、「目の前の子どもに寄り添った指導」ができることが重要である。
吉田, 安規良 呉我, 実香 Yoshida, Akira Goga, Mika
沖縄県教育庁八重山教育事務所管内の2つの小学校の変則的な複式学級設置校での授業実践から、変則的な複式学級での教育実践に何が必要かを考察した。(1)2つの小学校とも、教育課程や校内人事を工夫し、授業運営を可能な限り単式化していた。(2)国語の複式授業では、変則的な複式学級特有といえるような特別な工夫は見あたらず、「わたり」や「ずらし」といった複式学級一般で用いられる手法が利用されていた。少人数のため徹底的に個に応じた指導が行われており、「変則的な複式学級だから必要とされる資質・能力」というより、「目の前の子どもに寄り添った指導」ができることが重要である。
白尾, 裕志 Shirao, Hiroshi
「自由研究」は1947年3月20日に公示された「学習指導要領一般編(試案)」 で「教科課程」の1教科として創設された。しかし1951年の学習指導要領で廃止され、「教科以外の活動」及び「教育課程」が成立した。本稿では自由研究の廃止過程の経過と当時の文部省で自由研究の推進と1951年の学習指導要領における幕引きにあたった「木宮乾峰」による教育課程概念の特徴を明らかにしていく。自由研究は、教科課程における位置づけや運用方法において混乱や停滞が生じた。文部省は、自由研究の実践が困難に陥った状態をふまえて、自由研究の運用解釈を変化させていき、1951年6月の教育課程審議会答申での「自由研究廃止」となった。しかし1949年の教育課程審議会では、木宮らが中心となった自由研究と「内容はかわらない」とされた「選擇学習」の両構想があったとされる。「教科の学習の発展」として独自の目的をもった領域を教育課程の中に位置づける方向性が模索されていたその構想は実現しなかったが、教科の学習の発展にかかわる領域の教育課程への位置付けがなくなったことは、教科自体の知識の総合化のための時間や単元がない状況で、教科の学習の発展が困難になっていったことにつながった。その結果、教科による総合性という実践展開の可能性を狭めていったのである。
與座, 亜希子 玉城, 葉月 上原, 方希 緒方, 茂樹 Yoza, Akiko Tamashiro, Hatsuki Uehara, Masaki Ogata, Shigeki
本研究では障害児教育において活用される機会の多い音楽を一つの辛がかりとし、実際の教育実践場面において、子どもの実態を把握するための評価に関する方法論の構築を目的とした。障害児教育の教育実践場面において、子どもの現段階での音楽に関わる発達を客観的に評価し、その後指導を行う上での次の目的や具体的な取り組みの方法内容を知る方策があれば、将来的に、音楽を通じて子どもの全体的な意味での発達支援へ繋げていくことができると考えられる。このことから、音楽に関わる子どもの発達についての客観的な評価を行うための「アセスメントツール」4点、及び教育実践場面において具体的に「音楽を活用した取り組み」を考案するための「実践ツール」3点を試作した。具体的な開発過程と実際の試用事例を示すことで、今回開発したツールの有効性を明らかとし、今後さらに改良を進めるに当たって考慮すべき課題について指摘した。
一ノ瀬, 俊也 Ichinose, Toshiya
本論は、京城師範学校卒業生四五名が一九二四年四月、朝鮮龍山歩兵第七九連隊に一年現役兵として入営した際、各人が教育の一環として日々書かされた日記より主要な部分を抜き出して一年三六五日分の「軍隊日記」に編集、除隊後の二五年公刊した『凝視の一年』の内容分析である。第一次大戦後、まさに反戦反軍思想が最も昂揚した時期の兵営内で、未来の小学校教師として「国民教育ト軍隊教育トノ連携」者たることを期待された兵士たちは、軍隊の存在意義についていかなる説明を受け、どのように理解していったのだろうか。
城間, 園子 佐和田, 聡 Shiroma, Sonoko Sawada, Akira
知的障害教育特別支援学校のカリキュラム・マネジメントについて、沖縄県内の知的障害教育のみの特別支援学校での実践と文献等から、その方向性と取り組み内容について分析・考察を加えた。県内の知的障害特別支援学校では、各学校ともそれぞれの特色を生かした形で教育課程の表記がなされていた。しかしながら、カリキュラム・マネジメントに関連する教育目標やめざす幼児児童生徒像からは、具現的な取り組みを見いだすことが十分に行えなかった。今後はカリキュラム・マネジメントの舵取りとなる管理者のリーダーシップや全ての教職員との協働を意識したマネジメントが重要になってくる。これらのことを踏まえてカリキュラム・マネジメントの機能化に向けたカリキュラム・マネジメントシステム図の作成を試みた。求められる育成すべき資質・能力のキーワードやポイントを参照とすることで、カリキュラム・マネジメントの時間的な流れや舵取りとして関わる関係者についての動きを整理することができた。今後はシステム図を活用した実践を行いさらなる工夫改善が必要になるであろう。また、知的障害教育の授業づくりについては、これまでの取り組みを新学習指導要領を踏まえて再確認し整理することが、カリキュラム・マネジメントを実施する上でも重要であると考えられる。学校現場の管理者のリーダーシップと全教職員の主体的な取り組みがカリキュラム・マネジメントを機能させていくためには必要不可欠な条件であることを指摘した。
前村, 佳幸 新里, 夏菜 福田, 英昭 片岡, 淳 Maemura, Yoshiyuki Shinzato, Kana Fukuda, Hideaki Kataoka, Jun
琉球大学教育学部では「21世紀おきなわ子ども教育フォーラム(21COCEF)」の活動を行っている。筆者らはそのプロジェクトの一環として、「教室で和紙を漉いてみよう!-紙漉きによる表現活動と用具製作による教師の特技開発-」を実施しており、主体的に教師が児童・生徒と関わることのできる技能としての紙漉きの有用性について模索している。本稿では、紙と紙製品づくりに取り組んでいる、沖縄県立大平特別支援学校・高等部の「作業学習」実践を通じて、特別支援教育における紙漉きの教育的特性と課題について検討した。また、工程や用具に関する提案および地域の素材を活かした和紙と紙工芸品の展開について示した。
浦崎, 武 武田, 喜乃恵 瀬底, 正栄 崎濱, 朋子 金城, 明美 大城, 麻紀子 久志, 峰之 本間, 七瀬 運道, 恵理子 Urasaki, Takeshi Takeda, Kinoe Sesoko, Masae Sakihama, Tomoko Kinjyou, Akemi Ooshiro, Makiko Kushi, Takayuki Honma, Nanase Undou, Eriko
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センターにおいて、発達障がいのある子どもたちを対象とした集団支援について、特に自閉症スペクトラム障害児・者への<向かう力>と<受け止める力>の<能動―受動>の相互性について焦点を当てて、支援教育の在り方について検討した。自閉症スペクトラム障害児・者が他者に受け止めてもらう体験、あるいは他者が自閉症スペクトラム障害児・者に受け止めてもらう体験は、「誰かと何かを共有する」という他者との関わりの積み重ねから生じてくることが確認される。当事者が述べているように子どもたちの外側から見た言動ではなく、彼・彼女らの今、ここにある内側の体験に思いを巡らせて、支援・教育を実践していく姿勢が今、求められていると考える。ここではTSGの実践で重要視してきたテーマについて、当事者の内側の体験の語りを参考にして<向かう力>と<受け止める力>について検討し、<能動ー受動>の相互性に関する支援教育論の基盤について検討した。
金城, 満 Kinjo, Mitsuru
本稿は、沖縄戦をテーマにした二つのアートプロジェクトを通して実践した新たな平和教育の記録である。アートプロジェクト「石の声」、「鉄の記憶」は、沖縄の戦後史と未解決な諸問題を、高校生に自ら考えさせることをねらいとして、1996 年〜2000 年に実施した。二つの実践とも黙々と単純に繰り返す表現行為であるが、結果として自己や他者との対話を生むことから、今後の平和教育のひとつの方向性として提案した。
池田, 菜採子
アメリカの構造主義言語学者バーナード・ブロック(Bernard Bloch)作成のSpoken Japanese(以下、SJと略す)は、日本語教育関係者のごく一部に知られているに過ぎず、太平洋戦争後の日本語教育に、どのような影響を与えてきたかということは評価がなされないまま今日に至っている。
瀨底, 正栄 Sesoko, Masae
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会において「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」(文部科学省 2016)において、「主体的・対話的で深い学び」をもたらす指導方の重要性が指摘され、教員一人一人が、子どもたちの発達の段階や発達の特性、子どもの学習スタイルの多様性や教育ニーズと教科等の学習内容、単元の構成や学習等に応じた方法について研究を重ね、ふさわしい方法を選択しながら、工夫して実践できるようにすることが重要であると述べられている。本研究はこれまでに、新しい教育実践力の開発についての取り組みを、小学校での授業を通して、子どもたちや教師の変容過程を考察することで検討してきた(瀬底,2014,2015,2016)。しかし「主体的・対話的で深い学び」を観点にした教師による協働の授業開発の企画を行うことは少なかった。そこで本研究では、子どもたちの発達の段階や発達の特性、子どもの学習スタイルの多様性や教育ニーズの違う小学校に設置されている特別支援学級4学級に対して、教育実践力の育成として国語科における「何を知っているか」にとどまらない「何ができるようになるか」を意図した主体的・対話的な授業づくりを行い、子どもたちの授業での様子と担任の教材開発や指導方の改善、評価について考察することで、「子どもの視点」から考えていく「主体的・対話的な学び」にふさわしい授業開発の企画につて検討を行った。その結果「子どもの視点」から変化させていく主体的・対話的な学びの授業には、担任の学習に対する子どもとの併走的な対応が重要な要素であることが、協働の授業研究の中で確認された。
新里, 里春 上原, 盛文 米盛, 徳市 Shinzato, Rishun Yonemori, Tokuichi
当附属教育実践研究指導センター(以下実践センターと略記)の事業の一つに「教育実践に関する研究」がある。本報告はその事業の一環であると同時に、将来、実践センターが学部の教育実習に関わる可能性や可能な領域を模索・検討するデータとして活用する目的でこの研究は行われた。しかし、いろいろな理由で実践センター紀要の発刊が延び延びとなり、本報告が九州地区教大協で報告(平成2年)されてからこれまでの間に、学部では教育実習に関する改革が検討され、実習の段階にはいった。その改革は大きく分けて三点にある。その一つは「事前・事後指導」の単位化と、実習の学年を4年次から3年次に下げたこと。そして実習を附属学校のみで行うことである。改革の論議にこのデータがあまり生かされなかった感を否めないが、この機会に資料としてここに報告することは意義があると思う。
比嘉, 俊 Higa, Takashi
沖縄県は亜熱帯地域に属し,その気候や生物相は日本本土と異なり,特有である。この特有な地域で,学校ではどのような生物教育が目指されているかを報告する。報告の基になっているのは沖縄県立教育総合センターの長期研修員による研究報告書である。昭和47年度から平成28年度までの研究報告179点を俯瞰した。その結果,小学校教員の報告数の多さ,教材開発研究の多さ,授業実践の少なさ,沖縄固有種扱いの少なさが明らかになった。また,研修員研究の流れは,基礎研究,教材開発,教育方法と推移してきた。さらに,授業実践も近年は行われるようになってきた。沖縄の子どもたちにより還元できる研究になってきているのだが,沖縄固有を教材とした実践が少ない。今後の沖縄の生物教育を鑑みると地域の素材を活かした教材や授業展開がもっと増えるとよいと考える。
竹村, 英二
近代日本の知識層の「知的基盤」「“隠然たる”知的習慣」の醸成要素として、江戸中~後期の儒学/漢学教育があったことを指摘する研究は、とくに教育史、思想史、そして文学研究に存在する。しかし、儒学/漢学教育の何が、ドのような能力を鍛錬・醸成し得たかについて、史料が語る教育事実の具体的様相の呈示をもって実証し、その上でしかるべき理論・知見をもって読み解く研究は少ない。本稿ではまず、江戸中~後期の学習「制度」のみならず、学習の「仕方」の具体相を検討し、とりわけ下見、講釈、質講/会読(輪講)、後見(復読/返り視)といった包括的学習課程が熾烈な競争的勉学を奨励していたこと、また、下見―会読―復読が学習効果を高めるための一体的な教育課程として実践されていたことなどを先行研究も勘案しながら検証する。その上で、「被」教育者が各々の漢学学習について語った記述を検討し、これら二つの方向からの考察を重ねあわせ吟味することをもって、企図された学習方法がどの程度実践され、いかなる知的習慣の醸成に寄与したかを検討する。さらに、「漢學修習の遺風」が洋学学習において大いに継承された(平沼淑郎の言)が、漢学学習のどのような鍛錬手法が近代知識層のいかなる知的基盤醸成に寄与したかも考察する。
緒方, 茂樹 城間, 園子 佐和田, 聡 大城, 由美子 Ogata, Shigeki Shiroma, Sonoko Sawada, Akira Ohshiro, Yumiko
本研究では、従来試行錯誤的に行われてきた関係諸機関との連携と、子どもの支援に関わるアプローチをより効率化することを目的として、特別支援教育におけるネットワークシステムの構築と支援プロセスのモデル化を試みた。まず、特別支援教育における関係諸機関同士のネットワークシステム構築のモデルとして「空間モデル(横断型)」を考えた。このモデルについては、沖縄県内各地で実際にネットワークシステムを構築してきた過程を踏まえながら可能な限り汎用性のあるシンプルなモデルの作成を試みた。さらに具体的な子どもに対する支援システムをいかにして構築するかといういわば「手順(プロセス)」を明確にするために、「時間モデル(縦断型)」を考えた。このモデルでは、教育相談を積み重ねる中で培ってきた経験等を生かしながら支援システム構築のフローチャートの作成を試みた。ここで示したモデルは、文部科学省あるいは県教育委員会等からの「トップダウン的なモデルの提示」というよりはむしろ、実際に地域等で構築してきたネットワークシステムを基にした「ボトムアップ的なモデル\nの提示」であったと考えている。これらの考え方は、システムエ学の考え方を参考にしたものである。本研究は、特別支援教育をシステムとして捉え直すことで、これまでむしろ経験的に行われてきた人的、組織的な繋がりや支援プロセスの流れについて整理し、さらにモデルを提示することで汎用化を図ろうとした。本研究ではこのようなアプローチを当面「システム教育学」と呼びながらその可能性を考えていきたいと考えている。
藤原, 幸男 Fujiwara, Yukio
沖縄は終戦後すぐにアメリカ占領統治下に置かれ,アメリカ的な教育の側面を織り込みながら,日本本土とは相対的に独自な歩みをしてきた。ところが1969年に日本復帰が決まり,1972年の日本復帰によって日本本土の教育と同じ歩みが要求された。財政的援助によって学校施設・設備は全国水準に近づいたが,他方で,これまで国費学生制度・米国留学生制度によって沖縄県内の選抜で大学進学できたのが,急に全国の学生と対等に競争することになった。そのため,学力の低さが自覚され,学力向上を希求する意識が高まり,そこから学力問題が浮上してきた。また県教育庁は文部省中央の指示・助言を受けて全国並みの教育施策の実現に力を注いだ。授業についていけない子どもは,旧来の沖縄のテーゲー(適当・いい加減)文化に加えて,急速な観光地化にともない,金銭恐喝・集団暴行などの問題行動に走った。その背後に教師の体罰があるとも言われ,校則・体罰・人権が大きく取り上げられた。以下で,第一期(1972年~1981年),第二期(1982年~1987年),第三期(1988年~現在)に時期区分して,日本復帰後23年の沖縄における学校教育の展開を概観する。
大角, 玉樹 Osumi, Tamaki
本稿の目的は、起業家プログラムの観察から得られた知見を参考に、実効性の高い先進的なアクティブラーニング・プログラムを開発・実践し、次世代型キャリア教育モデルをデザインするための基本的なアイデアを整理することである。それらを基盤としながら、将来的には、「レジリエンス(強靭さ、失敗から立ち直る力)」と創造力の醸成に有効な起業家育成プログラムの成果と「文脈的な教授・学習(CTL:Contextual Teaching & Learning)」の理念を取り入れ、専門教育とキャリア教育の一体化を図ることにより、21世紀型能力とされる「生きる力」、「イノベーションを創出する力」を自然に修得できる、科学的根拠に基づいた次世代型キャリア教育(キャリア教育3.0)の構築と検証、及び標準化を試みたいと考えている。本学においても、平成25年度より、琉球大学産学官連携推進機構及び起業コンサルタントと連携して開設した共通科目「ベンチャー起業入門」が、本年度3年目を迎えた。第一期の受講生から学生起業が二件生まれるという成果はあったものの、同科目履修を前提とした「ベンャー起業実践」を継続受講する学生が非常に少ないことが課題の一つになっている。また、特別な予算がなくても、持続可能な講義にするための協議を行った結果、平成27年度は、世界的に展開されている起業体験イベントである、"Startup Weekend" と連携した、産学官民連携型の講義デザインとなった。本稿では、本年度の講義デザインとプロセス、アンケート結果を振り返り、21世紀型能力の修得を促進する次世代型キャリア教育モデル、すなわちキャリア教育3.0を構築していくためのヒントを探りたい。Startup Weekendは、洗練された起業家育成プログラムであり、まさに能動的なアクティブラーニングであるだけではなく、短期間に、一生忘れられない学びを体験するデイープ・ラーニングの要素も含まれている。これを契機に、専門科目とキャリア教育の一元化を図り、アクティブラーニングという講義形態だけではなく、講義の質の深化につながるデイープ・アクティブラーニングの先進的なプログラム開発も試みたい。
井上, 講四 Inoue, Kohshi
公立学校の完全週5日制がスタートして、早1年半が過ぎた。かなりの混乱も予想されたが、およそ10年間の地ならし期間があったこともあり、個別には様々な問題点・課題もあるようではあるが、表面的には、まずは順調な滑り出しといったところか。こうした中、近年、「学社融合」という用語が多用され、これまでの「学社連携」を超えた、新たな学校教育と社会教育の緊密な連携・協力体制づくりが進められている。だが、現時点までの「学社融合(連携)」は、両者の事業・活動の重なり合うところを「融合部分」と称しての、かなり限定的あるいは表層的な関係の中での、協働プログラムの創出に重きが置かれているのではないか。そこに、「何のために、そうした事業や活動を行うのか」あるいは「お互いの教育機能や成果を、何故、組み合わせる必要があるのか」等が、双方にとって等しく共通理解されていなければ、それにかける時間や労力の割には、さほどそのメリットや成果が現れないのではないか。本稿は、以上のような問題意識に基づいて、完全学校週5日制時代における教育のあり方を、改めて「学社融合」を目指す「地域教育経営」の重要性という観点から検討を加えるものである。
長谷川, 裕
本稿のテーマは,生活指導・集団づくりを中心に教育研究を行ってきた日本の著名な教育学者・竹内常一の理論の変遷を追い,その過程において,どのように「ケアの倫理」的な考え方に重要な位置づけが与えられるようになったかを検討することであり,それを通じて,教育という営みの中に「ケア」をどのように位置づけるべきかについて考察を深めたいと考えている。検討の結果,1980年代に竹内が用い始めた「権力的・暴力的なもの」─意識・身体・言動・関係性など人びとの日常世界に表れる,一方で社会の支配・権力が日常生活に浸透することで生み出され,他方で人間存在の根源的な性質に根ざして発生する,人びとの権力的・暴力的な傾向性─についての認識が深化する中で,それを統御するためにはケア的な働きかけ・関わりが何よりも必要であると考えこれを重要視するようになるという形で,竹内の教育論においてケアの倫理への焦点化がされるようになったことが明らかになった。
道田, 泰司 Michita, Yasushi
本稿では,問いのある教育がどのようにありうるのかについて,いくつかの教育実践や実践研究を取り上げ,主に思考力育成という観点から考察した。質問書方式の実践では,大学生の8割以上が疑問を持ち考えるようになったことが示されている。質問の質を高める方法としては,質問語幹リスト法が挙げられ,これを用いた実践研究が検討された。また,わからないときだけでなくわかったつもりでいるときに質問を出すことの必要性も論じられた。最後に,小学校における質問力育成教育をいくつか概観し,質問力を育成するための示唆を得た。最後にこれらをいくつかの観点から整理し,今後の課題を検討した。
井崎, 重 道田,泰司 Izaki, Sigeru Michita, Yasushi
本稿の目的は,ある小学校教師が,附属小学校勤務経験を通して,どのように自身の教育観を変容させたかについて検討することである。そのことを通して,どのようなときに教育観が変容するのかについて示唆を得るとともに,附属小学校というある意味特殊な環境が,職員にどのような影響を与える場でありうるのかについて,検討を行った。検討の結果,2年目の出来事を契機としてさまざまな要因が重なって教育観が変容していることが明らかとなった。それらを踏まえ,教師本人による自己分析と,先行研究との対比を通した考察が行われた。
西本, 裕輝
2020年度前期、コロナ禍という特殊な状況によって突然始まった本学における遠隔授業は、学生・教員双方とも不慣れなこともあって、多くの混乱をもたらした。そこでグローバル教育支援機構大学教育支援部門においては、2020年度後期以降の教育改善のためのエビデンスを得るため、「学生による授業評価」において遠隔授業に関する質問項目を多数設け、Web調査を実施し、その分析を行った。遠隔授業についてのネガティブな評価により授業満足度の低下等が危惧されたが、データで見るとポジティブな評価も多いことがわかった。2020年後期以降に向け、問題点を改善し、良い点はより充実させていくためのエビデンスを得ることができた。
田原, 美和 Tahara, Miwa
この論文は「琉球大学教育学部紀要」(第72集,2008.3,p207-215)に掲載された論文を査読により論文タイトルを修正し、「研究論文集-教育系・文系の九州地区国立大学間連携論文集-」(第2巻第1号(通巻第2号),2008年9月)に採択されたものである。
緒方, 茂樹 Ogata, Shigeki
本研究は障害児教育における「音楽を活用した取り組み」をより効果的に行うための実践的、基礎的研究を目指して計画したものであり、本報告はその第二報となる。本報告では全国で数多く行われている「音楽を活用した取り組み」について新たにデータベースシステムの構築をはかった。今回作成したシステムは、いわゆる研究目的で使用するばかりでなく、むしろ現職教員が教育実践の場面で実際に使用することを目的として構築されている。本報告では第一に、「音楽を活用した取り組み」に関して、今回新たに作成したデータベースシステムの構築内容や使用方法などの実際について述べた。第二に、全国で行われている「音楽を活用した取り組み」についてさらに詳細な現状を知るために、今回作成したデータベースに含まれる全国の特殊教育緒学校等に由来する文献のうち、収集可能であった320件全てを対象として個々に内容を検討し、1)「音楽を活用した取り組み」は小学部で数多く行われており、中学部がそれに続いていた。2)教育課程の枠組みについては教科としての音楽科で行われることが多かったが、一方で他の教育課程の枠組みでも幅広く取り入れられていた。3)対象となった子どもの実態はきわめて多様であり、「音楽を活用した取り組み」が様々な障害特徴をもつ子どもを対象として行われていることが改めて明らかとなった。最後にデータベースをめぐる今後の方策と課題について、教育現場との連携の重要性やネットワークへの発展なども考慮しながら考察を加えた。
下條, 満代 城間, 園子 喜屋武, 睦 緒方, 茂樹 Shimojyo, Mitsuyo Shiroma, Sonoko Kyan, Chikashi Ogata, Sigeki
本研究では、まず沖縄県における病弱教育に焦点を当て、これまで県内の病弱児教育の中核をなしてきた森川特別支援学校における在籍児童•生徒数の歴史的な変遷について、生理・病理学的な疾病分類(障害種別)の観点から検討を加えた。具体的には施設併設型の養護学校としてスタートした黎明期から、精神障害(発達障害を含む)の受け入れを始めた最近の動向について、年代を追って在籍児童生徒数の変遷をみた。開設当初大半をしめていた筋ジストロフィーの在籍は減少している一方で、近年では精神障害の在籍数が増加していることが明らかとなった。森川特別支援学校では、現在個に応じた手厚い教育的対応がなされており、高校では不登校だった精神障害の子どももしつかりとした学びの場を確保できていた。従来病弱教育を担ってきた森川特別支援学校では、新たに精神障害の子どもの対応の在り方を模索する必要に迫られていた。次に、箪者が高等学校の特別支援教育コーディネーターとして過去に支援を行った精神障害について事例的な検討を行った。事例的な検討を通じて、今後の病弱教育における精神障害への対応について、特に関係諸機関の連携のあり方の観点から考察を加え、保護者への支援と、学校における進路支援が特に重要であることが改めて明らかとなった。
古澤, 健太郎 神園, 幸郎 田中, 敦士 緒方, 茂樹 大沼, 直樹 内田, 芳夫 片岡, 美華 雲井, 未歓 Furusawa, Kentarou Kamizono, Sachiro Tanaka, Atsushi Ogata, Sigeki Onuma, Naoki Uchida, Yoshio Kataoka, Mika Kumoi, Miyoshi
琉球大学および鹿児島大学では、平成19年10月より、専門職大学院等教育推進プログラム「生きる教師力を育む特別支援学校教員養成」を実施した。特別支援教育の定着と充実を図るため、先ずはこれにかかわる指導者の養成を喫緊の課題とし、教員養成を目指す事業である。本稿では、学生が大学に期待するサービス等について、質問紙調査の結果の概要を紹介した。これは事業開始翌年度の琉球大学における実態を把握するものである。その結果、将来現場で活躍する教師となるため、どのような教育サービスを受けたいと学生が考えているのか、そうした期待がどのように推移しているのかが明らかになった。
佐藤, 一樹
日本人にとって、修辞、典故を踏まえた正統的漢文を書くのは、実際のところ、容易なことではなく、明治初年代、中等教育から漢作文を排除する井上毅の方針は、教育関係者にすんなりと受け入れられた。しかしながら、長年にわたり文体ヒエラルキーの頂点に君臨していた漢文が、単なる教育課程の再編だけで、文化的、社会的役割が一挙に変化するわけでもない。本稿では、政府が力を入れた正史編纂事業の成果である『稿本国史眼』、および漢文体著作の最後のベストセラーである漢文戯作『東京新繁昌記』を取り上げ、明治前・中期の退潮期に、漢文体著作がどう変貌していったかを検証する。
長谷川, 裕 Hasegawa, Yutaka
本稿は、生活指導・集団づくりを中心に研究を行ってきた日本の著名な教育学者である竹内常一が最近の著書『新・生活指導の理論―ケアと自治/学びと参加』(2016 年)の中で提起している、「集団づくりのケア的転回」について詳細に解釈・検討を行い、それを通じて、教育という営みの中に「ケア」をどのように位置づけるべきかを考えることをテーマとしたものである。
相澤, 眞理 上間, 茂樹 田場, 由高 中村, 真紀子 野里, 宏美 真喜屋, 祥子 浦崎, 武 Aizawa, Mari Uema, Shigeki Taba, Yoshitaka Nakamura, Makiko Nosato, Hiromi Makiya, Shoko Urasaki, Takeshi
本校は、平成18年度・19年度の2年間、浦添市教育委員会指定を受けたことを契機に校内支援体\n制を構築し保護者および琉球大学教育学部附属障害児教育実践センターの実践トータル支援活動\nとの連携を進めてきた。本研究はその連携支援における実践報告であり、自分の感情・行動のコ\nントロールが苦手で、市の就学指導で『通常学級での配慮ある指導(集団参加への適応において)\nが望ましい』と判定された男子への支援についての報告である。本校は取り組みの主題である\n「一人一人が伸びるための特別支援教育をめざして」、副主題「児童の特性に添った支援と学習指\n導法の創意・工夫を通して」という視点に基づく教育的支援を行ってきた。そこでその支援方針に\nより本研究では保護者・担任・ヘルパーとの信頼関係から、集団の中で支援対象となる子どもが適\n応していく過程および支援における手だてについて検討した。そのことにより実践トータル支援\n活動との連携における効果が確認でき、専門機関としての大学との連携の重要性が示唆された。
金城, 昇 我如古, 直哉 新垣, 美央 上原, 直子 後呂, 健二 嘉陽, 宗芳 野原, 賢一 金, 福柱 Kinjo, Noboru Ganeko, Naoya Arakaki, Mio Uehara, Naoko Ushiro, Kenji Kayoh, Muneyosi Nohara, Kenichi Kin, Fukutyu
県内では12月1日のエイズデーに因んだ特設授業の取り組みは多いものの、エイズ教育の充実という視点からの検討はあまりなされてこなかったように思われる。確かに何百名規模の全校児童生徒集団を対象にすることを考えるとその内容構成や展開方法からしてその効果に限界を感じざるをえないのが実情である。しかし、これだけ毎年実施されることからすると、このことを肯定的に\n捉えて新しい発展方向を検討することは意義あることだと考える。今回県立糸満高等学校生約1300名を対象にした性・エイズ特設授業を実践する機会を得たので、従来のエイズ教育の内容や方法の分析をもとに、行動変容をも視野に入れた特設授業のあり方について検討を加えた実践を試みたので報告する。尚、本実践報告は本学大学院教育学研究科保健体育専修の科目である「保健体育科教育特論演習II」及び「保健体育科授業開発・同授業研究」の一環として実施したものである。
ハットトワ-ガマゲ, ガヤトゥリ HATHTHOTUWA-GAMAGE, Gayathri
本稿では,海外での漢字学習状況を代表する一例としてスリランカを取り上げ,スリランカの日本語学習者の漢字学習に対する態度や困難点を問う意識調査の結果を報告する。意識調査はスリランカの学習者にみられる全体的な傾向と教育機関別の漢字学習意識の差異という二つの点から分析した。分析からは,スリランカの学習者は一般的に漢字学習に対して楽観的な態度を持ち,漢字を学習するのは面白いと認識しているが,自立的な学習意識が欠けていることが明らかになった。また一般教育機関での学習者が,高等教育機関や中等教育機関の学習者より肯定釣な態度を持つことや,既習漢字数が増えるにつれて漢字学習の難しさを感じ,積極的な意識が欠落する傾向が見られた。今後,この調査結果を認知心理学的観点から検討するとともに,どうすれば漢字学習環境を豊かにできるかについて考えていきたい。
道田, 泰司
教職大学院で教員の授業実践力をどのように高めることができるのか,筆者が教職大学院の講義や実習,課題研究を通して試行錯誤してきたことを元に検討した。実習の様子をみながら講義の改善を行った結果,教師の教育観が変わらないと教授行動も変わりにくいことがみえてきた。そこで,現職院生が何を感じているかを知り,教育観や教授行動がどのように変容するかを検討した。その結果,①知識や経験で行動は変わらない,②一度できても,別の場面でできるとは限らない,③どこかで行動や教育観が大きく変容するタイミングがある,ということがみえてきた。それらを,ビリーフ・システムの変容,という観点から考察した。
城間, すみ恵 浦崎, 武 Shiroma, Sumie Urasaki, Takeshi
本研究では,特別支援学校の教育課程である自立活動を,通常の学級の教育課程に取り入れるため.まず知的な遅れがない自閉症スペクトラムを持つ児童が在籍する自閉症・情緒障害特別支援学級において教育実践研究を行う。その際.通常の教育課程の中で自立活動と関わりの深い特別活動.生活科の教育課程の比較検討を行う。それを基にして,小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級およびその他の支援学級.通常の学級において,快の共有体験に基づいた自立活動の内容を取り入れた授業実践について検討し,自閉症スペクトラムを持つ児童の他者との関係性の変容過程を考察する。授業内容は児童の興味• 関心・強みを取り入れ.児童の実態に基づいた授業計画によるものとし.集団の自立活動「トータル活動」の年間計画を作成し.自立活動の授業内容と同じ流れで通常の学級の高学年(学級活動).低学年(生活科)の学習指導案も作成し実施・検討する。快の共有体験に基づいた授業を実践し,担任として関与観察を行い自閉症スペクトラムを持つ子の他者との関係性の変容過程を.快の共有に向けた取り組み.他者との関係性,快不快の体験.特性の変化他に視点をおいて分析する。他者との関係性の変化の出現時期や出現順序をとらえ. 2事例の自閉症スペクトラムを持つ子の行動特徴と時系列的関連性を整理する。そして相互性の移り変わりを軸に関係性の変容過程に焦点を当てて1期「他者との関係がとれない」時期, 1期「他者に気づき自分に気づく」時期. m期「他者と快の共有ができる関係」時期の3段階に整理した。他者との快の共有体験に基づいた自立活動の教育実践が.通常の学級で授業を受ける自閉症スペクトラムを持つ子ども達及び,その他,特別な教育的支援を必要とする子ども達と,その担任にとっての一助になることを目指してその意義を検討する。
関川, 雅彦 山口, 亮 SEKIKAWA, Masahiko YAMAGUCHI, Ryo
国立国語研究所はこれまで方言,語彙,日本語教育等の様々な調査や研究プロジェクトを実施し,その過程で数多くの研究資料を収集・作成してきた。これらの貴重な研究資料は現在研究資料室に収蔵されているが,国立国語研究所の使命を考えれば研究所内外に広く公開し,日本語の研究・教育活動のために役立てられることが望ましい。
西本, 裕輝
2020 年前期、コロナ禍という特殊な状況によって突然始まった本学における遠隔授業は、学生・教員双方とも不慣れなこともあって、多くの混乱をもたらした。そこでグローバル教育支援機構大学教育支援部門においては、後期の教育改善のためのエビデンスを得るため、学生による授業評価において遠隔授業に関する質問項目を多数設け、またそこで得られた自由記述の分析を行った。多くの学生から改善の要望が寄せられた一方で、遠隔授業について積極的に評価するポジティブな意見も多く寄せられた。2020 年後期以降に向け、問題点を改善し、良い点はより充実させていくためのエビデンスを得ることができた。
大角, 玉樹
コロナ禍への対応として,大学もオンライン教育を余儀なくされ,極めて短期間の準備期間を経て実施された\nが,教育の継続性は担保された反面,その質に関しては玉石混交である。本稿では,筆者の実践したオンライン講\n義をもとに,デジタル化を前提とした講義デザインとZOOMを活用した効果的なアクティブラーニングのヒントを\n整理する。また,今後期待されているブレンディッド・ラーニングの展開に向けた展望を述べる。
小須田, 雅 木本, 一史 漢那, 初美 Kosuda, Masashi Kimoto, Kazufumi Kanna, Hatsumi
大学の数理科学科の授業では基礎ゼミや卒業研究のような小人数による討論の時間や十分な演習時間が設けられており、主体的・対話的で深い学びが実践されていると考えられているが、その体験を持つ筈の卒業生は大学とは異なる中等教育の現場で、その実践に苦労しているようである。中等教育の教員の養成機関としては、中等教育と同規模の人数での協働的な学びを経験させることで、卒業後教員になる学生達にモデルを提供できるように授業の改善方法を提案する必要がある。そういった背景から、本年、大学初年次の科目である線形代数学とその演習において、大教室内でのグループ学習を取り入れた協働的な学びの実践を試みた。同時に、個々人の演習の一部をE-ラーニングとして提供した。本稿では、それらグループワークとE-ラーニングを組み合わせた指導を取り入れた授業改善の実践報告を行い、中等教育での協働的な学びとデジタルネイティブと呼ばれる世代に対してWeb教材の与え方についての考察と提言を行う。
並木, 美砂子 Namiki, Misako
博物館教育の理論構築には,利用者主体の学習論が役立つが,とりわけ歴史展示を中心に考える上で,以下の3つの学習論の採用を提案した。
藤原, 幸男 Fujiwara, Yukio
近年,家族のなかで行われている教育行為の反教育的機能に関心が寄せられている。親の期待や愛情という名のもとで強制的方向づけがなされ,子どもは親の愛情や期待に応えようと懸命に努力した結果,他者との人間関係の取り方に歪みが生じたり,期待に応えきれない自分を責め,親と子の密着的共依存が生じてきたりする。私は大学の授業で,この問題を山岸涼子の漫画作品(「天人唐草」「鬼子母神」)の検討をとおして考えさせようとした。以下は,その実践報告である。
城間, 盛市 下地, 敏洋 Shiroma, Seiichi Shimoji, Toshihiro
琉球大学では,2007年度入学生から新たなカリキュラムで教員養成が図られた。また,教育職員免許法および同法施行規則改正(2019年4月1日)の施行に伴い,履修内容を充実した教職課程が開始された。本稿の目的は,2007年の導入から2019年の新教職課程導入までの13年間に,大学の教員養成が当初の意図した計画通り実施されたのか,また学生の質が十分保障されたのか,について検証することである。 「教職指導」は,教師の適性,教師の役割や使命感,悩み,実際の現場の観察など多様な内容を網羅した講義内容で,学生自身が教職に対する意識が大きく変化したことが把握でき,教職に真剣に向き合う姿勢が成就されているように考えられる。特に,学校現場での一日体験は,受講生からの評価も高いものがある。 「学校教育実践研究I」は,学習指導案の作成,模擬授業,模擬授業後の授業研究会が主な内容であり,授業評価アンケートで「模擬授業を全員に課したことは良かった」は4.48(最高は5.00),「教育実習における授業実践につながる内容であった」4.72,「授業全体を通して,意欲的に取り組める授業内容であった」4.61で,総合的にも高い評価を得たことが考えられる。 従って,1年次で実施する「教職指導」と3年次「学校教育実践研究Ⅰ」は,4年次の「学校教育実践研究Ⅱ」に繋がる重要な位置づけと捉えることができる。今後,資質の高い教員養成の取り組みが求められている「学校教育実践研究Ⅱ」の授業及び授業後の授業評価アンケートを考察することで,本来の目的を達成する授業構築になっているか検証したい。
石川, 隆士
本稿では、グローバル津梁プログラム副専攻の概要について説明すると共に、本プログラムが備えている、これからの高等教育プログラムに求められる機能についても、その背景を交えながら言及する。
富士栄, 登美子 Fujie, Tomiko
高齢者介護の問題は国際的にも大きな社会問題の一つとなっている。高齢者を介護するシステムはどうあるべきか,福祉をどう連携させたらよいのか。OECDの会議での合意である[aging in place]を実現する福祉の感覚を今の高校生に育てておきたい。介護の問題はひとつの側面ではあるが,社会が今どう取り組もうとしているのかを知ることは,家庭科教育の中で社会の福祉ニーズにあった教育を進めていくのに役立つと考えた。
石本, 隆士 緒方, 茂樹 Ishimoto, Takashi Ogata, Shigeki
本研究は、長期的な不登校の状態にある児童に対して行われた取組を取り上げ、特別な支援教育に必要な概念構造を発展させることを目指して計画した事例研究である。通常、学校現場における事例研究は、注目すべき事例の経過報告という形で終わるものが多い。そこで、本稿では、取り上げた事例が学級担任制をとる小学校において実践された意義をふまえ、特に組織の役割とその在り方について焦点を絞り検討を行った。本稿は、事例の中に存在する様々な要素を統合し、いくつかの概念としてまとめ上げていこうとする試みであることから、学校現場における事例研究の方法論的なモデルを示す試みでもある。今回の事例において通常学級に在籍する児童に対する特別支援教育の要素として抽出されたものは、1)状況に対する枠組みの継続的な捉え直し、2)システム論的な観点に立った支援体制の形成、3)こころの有り様に注目し自発的な変容を促す児童中心の関わりの3つであった。そして、支援組織に関する総合的な考察を行う中で、特別な支援教育の発想を具現化していくために必要だと思われるいくつかの方向性について整理した。そこでは、これまで特殊教育と呼ばれる分野で培われてきた専門性を、通常の教育の場において子どもに日常的直接的に関わる教育職員と共有する際の専門性について検討することが必要だと考えられた。また、そのような専門性共有のコミュニケーションに関して検討する際には、時間や空間の共有過程で専門家同士の間に起こっているプロセスに注目していくことが重要であるとも考えられた。本事例では、支援組織の調整役である情緒障害通級指導教室担当者が行ったことを吟味する中で、特別な支援教育を推進していく者の立つ位置として「隙間(を埋める)」という位置がいかに適切であるかということが確かめられたと考えている。
中山, 睦子 丹野, 清彦 Nakayama, Mutsuko Tannno, Kiyohiko
本稿の目的は,基礎的・汎用的能力のアンケートを通して,沖縄の公立中学校のキャリア教育の課題を検討することである。アンケートの調査は,宮古島市,那覇市,沖縄市の3地区,公立中学校で行った。3地区それぞれ規模や地域の特色の違いもあるが,共通するプラスの傾向と課題が浮き彫りとなった。プラスの傾向として人間関係形成・社会形成能力が挙げられる。一方,ストレスマネジメントや忍耐力と言った自己理解・自己管理能力は低い傾向を示し課題であると言える。那覇市の1校は,6月と12月の2回実施することで変容の分析を試みたが,さほど変化は見られなかった。それは何を意味するのか。教育的な意図の必要性とPDCAサイクルで実践するキャリア教育の重要性を論じた。
比嘉, 俊 Higa, Takashi
小学校理科の教科書に「自然の池や川にメダカを放したり,水草をすてたりしない。」と記載されている。この文言を主発問とした授業実践を行った。この主発問を解答するためには外来生物の知識が必要となる。そのために,本実践では沖縄での外来魚グッピーと在来魚メダカを教材とした外来生物を児童に学習させた。学習前後の児童の解答を見ると,生物放逐禁止を視点とした解答は学習後に有意に増えていた。本実践から小学生に外来生物の教育は有効と考える。また,外来生物教育は,持続可能社会を形成する市民の育成にもつながる。今後,学習者の発達段階に応じた外来生物教育の体系化が望まれる。
宮国, 泰史 福本, 晃造 杉尾, 幸司 Miyaguni, Yasushi Fukumoto, Kozo Sugio, Koji
大学が児童生徒を対象にした高度な学びの機会を提供する際に、eラーニングシステムを活用すれば、大学からの地理的距離に関係なく等しい教育プログラムを提供でき、受講者の地理的な格差を減ずる効果が期待できる。ただし、このような是正効果は、学習者の学習行動に、地域間差がないか、大学に近い学習者よりも遠い学習者の活用度が高い場合にのみ発揮される。琉球大学が実施している「ジュニアドクター育成塾事業」の受講生のアクセスログを解析し、受講生の居住地とeラーニングシステムの活用頻度の関係を調べたところ、大学から遠い学習者ほど、学習コンテンツへのアクセス日数とアクセス回数が増加することが明らかになった。この傾向は、教育施設から離れた場所から通う受講生ほどeラーニングシステムをより活用していることを示唆する。本研究の結果は、LMSを用いたオープンな教育環境の整備が、学習者と学習地の空間的距離を埋める効果を持ち、教育格差の是正に一定の効果を発揮する可能性があることを示した。
前村, 佳幸 岡本, 牧子 仲間, 伸恵 福田, 英昭 片岡, 淳 Maemura, Yoshiyuki Okamoto, Makiko Nakama, Nobue Fukuda, Hideaki Kataoka, Jun
沖縄県は和紙の一大産地ではないけれども,芭蕉紙など独自の紙づくりが息づいている。他方において,都市化が進展した地域では自然の素材を活かしたものづくりに触れる機会も少ない。地域文化の担い手の理解と支援を受けながら,和紙抄造の重要な工程である紙漉きを小・中学校の教育現場に導入するための要素や条件を検討し,その実践に向けて推進してきた。その教育上の意義と課題について,これまでの活動を整理し検討を加えた。
吉田, 安規良 柄木, 良友 富永, 篤 YOSHIDA, Akira KARAKI, Yoshitomo TOMINAGA, Atsushi
平成22年度に引き続き、平成23年度も琉球大学教育学部附属中学校は「体験!琉球大学 -大学の先生方による講義を受けてみよう-」と題した特別講義を、総合的な学習の時間の一環として全学年の生徒を対象に実施した。「中学校で学んでいることが、将来どのように発展し社会や生活と関わるのか、また大学における研究の深さ、面白さを体験させる」という附属中学校側の意図を踏まえて、筆者らはそれぞれの専門性に裏打ちされた特別講義を3つ提供した。そのうちの2つは自然科学(物理学・生物学)の専門的な内容に関する講義であり、残りの1つは教師教育(理科教育学)に関するものである。今回の3つの実践は、「科学や学問の世界への興味、関心を高める」と「総合キャリア教育」という観点で成果が見られ、特に事後アンケートの結果から参加した生徒達の興味を喚起できたと評価できる。しかし、内容が理解できたかどうかという点では、全員が肯定的な評価をしたものから、評価が二分されたものまで様々であった。
吉田, 安規良 西島, 彩子 Yoshida, Akira Nishijima, Saiko
安価な小型ビデオカメラを「授業者目線カメラ」として用いて中堅教員と教育実習生の授業実践を記録した。さらに実践を自己分析してもらう過程を通して,教育実習生や若手教員の授業実践力向上のための支援のあり方について整理した。1. 「授業者目線カメラ」の映像記録から,机間指導時や全体指導時の映像に,子どもたち全員がまんべんなく映っている場合は,授業者が全体に視線を向けていると考えられる。反対に,特定の子どもが多く映っている場合では,その理由を考えることが指導の仕方を見直すきっかけになる。授業者目線カメラは授業者とともに移動するので,子どもたちの表情や作業を近くから捉えることができる。さらに,机間指導中でのノートの映り具合から,机間指導中に授業者がどれだけ子どものノートに目を向けていたかを確認できる。2. 琉球大学教育学部附属小学校教諭と教育実習生の授業実践後の自己分析の結果から,映像記録の活用法には授業者目線カメラと第三者目線カメラの映像を往来して授業を振り返る方法と授業者目線カメラの映像のみで授業を振り返る方法がある。前者では,授業者が見ていなかったものを知ることができ,後者では,授業者自身が見ていたものを再度振り返ることで,より子どもたちの表情や発言に注目するような分析がされていた。附属小教員は,授業者目線カメラを自ら活用して授業を振り返ることができていたが,教育実習生には,自己分析をする際に注目する点などを提示する必要があった。
小林, 茂子
本稿は、開戦前後すなわち、日米開戦をはさんだ一九三〇年代後半から一九四〇年代初頭におけるマニラ日本人学校の教育活動の内容を検討する。マニラ日本人学校は、戦前期フィリピンの日本人学校十八校のうち(在外指定を受けたのは十六校)、いちばん早い一九一七年に設立され、また、南洋における日本人学校の中で最も現地理解教育に力を入れた学校といわれていた。このマニラ日本人学校では開戦をはさんで、日本軍の占領後、軍政下に至る過程においてどのような変容が見られたか。現存する資料『フィリッピン読本』(一九三八年四月)、『比律賓小学歴史』(一九四〇年三月)、『比律賓小学地理』(一九四〇年五月)、『とくべつ児童文集』(一九四二年八月)を手がかりに同校の教育活動を明らかにすることが本稿の目的である。
Shibata, Miki 柴田, 美紀
日本全土の約0.6%にすぎない沖縄県に在日米軍基地の75%が集中している。本研究では、米軍基地の教育的利用の可能性について沖縄県の英語教員にアンケート調査とインタビューを行った。アンケート調査に参加したのは、県内の中学校、高等学校、大学で英語を担当する日本人教員210名、うち22名にインタビューをした。本研究は文部科学省の科学研究費の助成を受けて行われた研究の一部で、実施したアンケートには13項目あったが、ここではアイデンティティーに関わる7項目の分析結果を考察する。アンケート結果は、日本人英語教員が持つ複数のアイデンティティーが基地の教育的利用の可能性に対し複雑に関与していることを示唆している。生徒の英語力上達を目指す英語教員としてその可能性を否定しない一方で、「教員」という公的な役割と沖縄社会を構成する県民として英語教育の目的であっても米軍基地に公に働きかることや自らが交流を働きかけることに消極的であり、基地はやはり政治的・社会的な問題であり教育とは切り離すべきであるという態度が明らかになった。また、英語教員のインタビュー回答から、県内にある米軍基地と沖縄社会は、フェンスという物理的な隔たりがあるだけでなく、沖縄県民にはその存在は心理的にも遠く、基地の教育的利用の可能性は公には皆無に近いと考えられる。
Shibata, Miki 柴田, 美紀
2008年1月25日より2月2日まで香港大学、香港中文大学、香港教育大学を訪問し、教員養成プログラムに携わる教員へのインタビューや授業参観を行った。香港政府は、教科に関する専門知識、英語力、授業運営能力をバランスよく身につけた英語教員の養成に力を入れている。英語教員になるためには大学で英語教育を専攻し、言語、語学教育、指導理論を徹底して学び、同時に政府が課している語学能力試験に要求される英語力もつけなければならない。私が視察した3大学では入学時に英語力による選抜が行われるため、学生はある程度の英語力を持って入学してくる。英語専攻においては大学の授業は全て英語で行われ、授業でのペアあるいはグループワーク、全体のディスカッションもほぼ全てが英語で行われる。専門の授業は、「ライティング指導法」「教室でのインタラクション」「英語の指導法」など専門知識をつけるには必要不可欠な講義が1年次から提供されている。講義時間は2時間程度であり、学生は学習した知識や理論を自分たちの経験に照らし合わせ、クリティカルな視点から検討する時間が十分にある。さらに、教育実習は1年次から行われ、3年次、4年次では8週間の教育実習が課せられている。香港での視察は、これからの日本の英語教員養成課程がどうあるべきかを考えるよい機会となった。
佐和田, 聡 城間, 園子 Sawada, Akira Shiroma, Sonoko
特別支援学校においては、子供たちの障害の重度化・多様化に伴う指導改善に向けての取り組みに加えて、保護者からの教育に対する期待度の高さ、多様な要望への対応等といった教育に関する様々な対応が求められているのが現状である。学校組織マネジメントはこうした学校の諸問題を効果的かつ効率的に解決し、加えて学校教育の確かな成果を導き出す方法である。本稿では第一筆者自らの特別支援学校経営実践を通して、学校組織の体質を踏まえたマネジメント手法の導入を容易にする手立てについて探ろうとするものである。そのための第一段階として今回は、特に組織マネジメントや学校経営に関する理念や理論的な内容について整理をした。まず教育効果の観点から見て、子どもの学習活動を内面的に支える人的環境(教師・学友等)は極めて重要な要素であることが再認識された。その上で、教職員間のいわゆる協働意識や学び合い、学校経営への参画意識などの職場風土の形成、換言すれば成熟した組織づくりが学校経営を行う校長の役割の一つであることを明らかにした。さらにカリキュラム・マネジメントの導入にみられるような、マネジメントの視点よる授業構想やさらに大きく、「教育課程におけるカリキュラムデザイン」への意識を高めながら、学校経営に対して取り組むことが重要であることを指摘した。
武田, 喜乃恵 Takeda, Kinoe
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センター(以下、センター)では、2006年10月から学校で気になるといわれるような学童期の子どもたちを中心に個別及び集団によるトータル支援教室を行ってきた。主に遊びを通して子どもたちと関わり、支援者も子どもとともに楽しむことを重視し、支援の方法やかたちありきではなく、子どもたちに合わせて関わりや支援内容、構造を柔軟に変化させながら対応してきた。支援教室での要素を学校現場で取り入れ、特別支援学級で集団活動を行った。子どもとともに楽しむ教育実践を通して教師と子どもがどのように関わりあい、変容をしていったのかその過程を明らかにし、考察した。
浅井, 利眞
教育現場にいる教師が常に考えることは、子供達にとって質の高い教材を用い、わかる授業を創造することである。本研究では、そのために授業をシステムとしてとらえ、評価を重視した教育工学的手法を取り入れた授業設計、実践を試みた。内容的には、一問一答になりやすい算数科の問題を発展的に取り扱うことにより、問題をオープンにした。第6学年の「立体」の授業実践を基に問題を発展的に取り扱うことの有効度を検証し、報告する。
迫田, 久美子 小西, 円 佐々木, 藍子 須賀, 和香子 細井, 陽子 SAKODA, Kumiko KONISHI, Madoka SASAKI, Aiko SUGA, Wakako HOSOI, Yoko
本稿は,共同研究プロジェクト「多文化共生社会における日本語教育研究」が進めている多言語母語の日本語学習者の横断コーパス(通称I-JAS)について概説した。
大角, 玉樹 Osumi, Tamaki
1.はじめに 平成24年度沖縄県「産学人材育成ネットワーク形成促進事業において、沖縄県の自立的経済発展及び地域活性化のために必要とされる人材像ならびに新たな産学官連携の在り方が調査検討された。その結果、1.イノベーションを担う人材が不可欠であること、2.そのためには、起業家精神を有する人材の早期育成が必要であり、3.この実現のために、産学官が連携したネットワーク構築と沖縄の地域特性を踏まえたイノベーション・エコシステムの形成の有用性が確認された。起業家育成教育が効果的であることも関係者から指摘されているものの、長期に渡り、起業家教育は会社を設立するための実務教育であると勘違いされ、本来、起業家精神を醸成し、起業家的なものの見方や考え方と行動特性、すなわち、マインド・セットとスキル・セットを習得するための教育であることが忘れられているようである。筆者が座長を務める同事業検討委員会では、他大学の先進的な起業家育成教育ならびにビジネス・プランコンテストの視察、県内ベンチャー企業が実施しているシリコンバレー派遣プログラムの視察、県内教育機関の取組状況に関する調査と意見交換が行われ、何よりも、県内教育機関には、正規のカリキュラムの中に、ベンチャー育成や起業家育成の講座が提供されていない点が指摘された。この状況を打破し、時代や社会が求めている起業家及び起業家精神に溢れる人材の育成を加速するために、まずは県内大学と高等専門学校が連携した実践的なベンチャー講座が開設できないかという提案がなされた。この提案を受けて、琉球大学が過去5年にわたって実施してきた「沖縄学生アイデア・コンテスト」と、平成24年度に実施したビジネス・トライアルコンテストの内容を再検討し、平成25年度より、琉球大学の共通科目として、「ベンチャー起業入門」と「ベンチャー起業実践jが開設されるに至った。本稿では、ベンチャー講座開設の契機となった沖縄学生ビジネス・アイデア・コンテストとビジネス・トライアルコンテストの概要を紹介し、学生アンケートの分析を参考に、今後の改善点と課題について議論している。
大角, 玉樹 Osumi, Tamaki
平成22年2月25日に大学設置基準等が改正され、教育課程内外を通じた「社会的・職業的自立に向けた指導等(キャリアガイダンス)」の制度化が行なわれ、平成23年4月1日から施行された。これを受けて、平成22年度に文部科学省「大学生の就業力支援事業」がスタートした。これは、近年の長引く不況と雇用環境の悪化を背景に、大学が産業界等との連携による実学的専門教育を含む、学生の卒業後の社会的・職業的自立に向けた取組に対する国の支援事業であり、全国で180校が採択された。一般に、GP(GoodPractice)と称される、大学教育改革の優れた取組を支援する事業である。時代や経済・社会が大きく変化しているにも関わらず、大学教育は旧態依然としていて、社会や学生のニーズから大きく乖離しているという批判はよく耳にするところである。中でも、大学を卒業しても就職できない、あるいは就職してもすぐに離職してしまうという現実は、大学教育の抜本的な変革を迫っていると言える。このような状況の中で、企業や社会が求める人材像も大きく変化し、大学に対しても、学士としての資質はもちろんのこと、卒業後も自らの未来を自分自身で切り拓いていくことのできる能力が身に付く教育を実践してほしいというニーズが高まった。つまり、四年間の教育課程の中で、就業力が確実に習得できるようなカリキュラムやプログラムを策定し、学内・学外の有機的な連携を深めることによって、それらを実施することが、これからの大学に課せられた新たな役割となったのである。この改革を推進するために、文部科学省は大学設置基準等を改正し、社会的・職業的自立に向けたキャリアガイダンスを制度化し、その支援のために、「大学生の就業力育成支援事業」の公募が行われ、本学の観光産業科学部の事業案も採択された。本稿では、観光産業科学部が就業力育成事業に応募するに至った経緯および事業内容を紹介し、今後に向けた課題を整理している。
加納, 千恵子 KANO, Chieko
非漢字圏の初級レベルの学習者がどのような漢字に関する知識や運用力を身につけているのかを分析的にテストし,効率的な漢字習得のための形成的評価として使用することを目的とした漢字語彙処理能力テストを開発中である。漢字および漢字語彙を処理するために必要な能力として,字形の識別,意味理解,読み処理,書き処理,用法処理,音声処理などの能力を想定し,それらを測るためのテスト問題を作成して,筑波大学留学生センターおよび米国カリフォルニア大学において実施した。このテスト開発の経緯,2つの教育機関におけるテストの実施結果,その分析から得られた知見について報告し,このような成果をどのような形で実際の教育方法の改善などに生かしていくことができるかについて考察する。また,教育現場における実践研究のあり方についても考える。
岩橋, 法雄 Iwahashi, Norio
ニュー・レイバーは、弱者への援助としての能力向上施策を強力に遂行してきた。これが教育を第1のプライオリティとしたブレア労働党政権の教育政策である。しかし、その本質は、あるがままの弱者に対する社会的公正の観点からの富の再分配的支援というよりは、富を自分で勝ち取らせるための支援の推進である。このいわゆるハンズ・アップ (hands-up) 支援は、機会の提供という「支援」を通じて自助を費用効果において組織しようとするものであり、結果としての「到達」の不平等の存在は自己責任というイデオロギーを必然として伴うものである。こうしてサッチャーからの「旅立ち」に映ったブレアの被剥奪者への配慮の思いは、そのレトリックとは裏腹に、教育を通じて被剥奪者の内の「有能」者を能力主義的価値観の社会に「包摂」する(「動員」する)側面にますます転化し始める。よって、その「社会的包摂」は、公正を旨とする平等と決して同じものではない。
金城, 尚美 Kinjo, Naomi
日本人または日本人学生と留学生に教育的な交流の場を提供し,参加者相互の異文化理解を促進する教育実践がさまざまな形で行われているが,その意義と効果を明らかにする実証的な研究の蓄積は少ないことが指摘されている(岩井2006)。そこで本研究では,小学校で行った6年生(32名)と留学生(13人)の交流活動の事前と事後に調査を行い,小学生の留学生に対するイメージの変化と,異文化を受容する態度の変化を調査し検証した。その結果,留学生に対するイメージの変化と異文化受容態度の変化に統計的に有意な差が現れ異文化理解を目的とした教育の効果が示された。また留学生との交流前に手紙の交換,ビデオ・レターの交換,質問交換などの事前のやり取りを通し,小学生が留学生と交流することについて感じている不安を軽減することができ,交流活動がより円滑に進められることがわかった。この結果から,交流会前のやり取りの重要性が示唆された。
金城, 昇 嘉陽, 宗芳 野原, 賢一 後呂, 健二 金, 福柱 Kinjo, Noboru Kayoh, Muneyosi Nohara, Kenichi Ushiro, Kenji Kin, Fukutyu
2003年6月から7月にかけ、沖縄県内のS小学校4,5,6年生を対象に、ライフスキル形成を目的とした喫煙防止教育を行った。本実践は初めに、タバコの害や影響に関する知識を深め、それに基づきタバコの広告分析の授業、喫煙を勧められた際の良い断り方の習得を目指した授業へと系統立てて実施した。児童から出されたアイディアや授業後の感想をPPモデルで分析した結果、児童は喫煙による急性影響、長期影響、環境タバコ煙の影響についてそれぞれ理解し、その知識を基に家族とのタバコに関する対話がなされたことが示された。さらに、喫煙による事実とタバコ広告に隠されたテクニックとを対比し、その矛盾点を明らかにするとともに、喫煙を勧められた際に、相手を尊重しつつ自分の意思をはっきりと伝えるスキルの一定程度の習得がみられた。尚、本実践研究は、本学大学院教科教育専攻保健体育専修の科目である「保健体育科教育法特論」「保健体育科授業研究・教材開発」の一環として、S小学校から依頼のあった喫煙防止教育について院生が中心となり実践・分析・検討してまとめたものである。
村上, 呂里 Murakami, Rori
幼小のなめらかな接続のために、まず幼稚園教育要領「言葉」と小学校学習指導要領「国語」の内容について比較考察し、前者が内言領域の耕しに重きを置き、後者が社会的実用的な「言葉の教育」に重きを置いていることを導き出した。この断層が学びの「つまずき」へとつながらないために、保育者と小学校教員がどのような「言葉の教育」観を共有すべきか、浜本純逸の提起する「言語化能力」概念や谷川俊太郎らによって編まれた入門期教科書『にほんご』(福音館書店、1979年)を手がかりに考究した。『にほんご』は、言葉の本質や働きへの「気づき」(メタ認知)を生むことによって「一次的なことば」から「二次的なことば」への離陸を支えようとして編まれている。この成果を幼児教育にも生かし、幼小のなめらかな接続を具現化するものとして、⑴言葉が生まれる〈場〉を体験し、言葉と体の関わりについて気づく、⑵言葉と気持ちの関わりについて気づく、⑶音韻意識を育み、文字と楽しく出会う、⑷想像し、物語が生まれる楽しさを味わう、⑸多言語に親しむ、の5つの活動プランを提案した。
小川, 千里 Ogawa, Olivia C.
才能教育下にある大学生アスリートは,幼少期からライフスタイルと家族らとの関係が限定的であるという点で特異性がある。この特異性が,彼らの心の発達に影響し,心理的依存が生じる可能性が高い。本研究は,幼少期から才能教育下にある大学生アスリートを対象とし,その心理的依存と自立に対する支援について,関連する研究の動向についての検討することを目的とする。このため、スポーツ選手の心理的問題とその支援に関する先行研究について、主としてスポーツ心理学領域,臨床スポーツ心理学領域から概観した。競技力向上を主眼とした研究では,自己形成を支援しようとしていても,競技力向上とのバランスの難しく,選手の心の成長に欠かせない家族・家族的立場にある人(監督・コーチなどの指導者ら)との関係性が明らかになりづらかった。しかし,臨床心理学的観点から選手の内的世界を検討した小川(2013)の研究から,才能教育下にある大学生アスリートの依存と家族・家族的関係の関連性,心の発達の未熟さが鮮明になっていた。最後に才能教育下のアスリートの心の発達,研究の将来性,隣接分野への適用について議論した。
道田, 泰司 Michita, Yasushi
本稿の目的は,学校教育において考える力を育てるための基盤が何かについて検討を行うことである。学校教育や思考力に限定せずに幅広く示唆を得るために,力をつける指導として,筋力トレーニング,ならびにクラブ活動等における指導を検討した結果,適度な過負荷を継続的に与えながら随所に考える場を作ること,学びや能力に関する考え方を伝え,変容を促すこと,安心感や自信を高めるための関わりを行うことの3つが見いだされた。これら各々について,指導のあり方や思考との関連について,適宜心理学的研究などを参照しながら検討した。これらを踏まえ,学校教育のなかで大きな視野をもって思考力を育成することについて論じた。
葦原, 恭子
琉球大学では,1998年から2020年にかけて世界42カ国・104の協定大学から1,150名の留学生を受入れてきた。この間に,留学生の受け皿は,留学生センターからグローバル教育支援機構国際教育センターに移行した。移行に伴い,留学生対象の日本語教育科目についてカリキュラム改革が実施された。このことにより,留学生にはより幅広い授業の選択肢が与えられ,自律的な授業選択が可能となった。本稿は,留学生対象の日本語科目の中から「聴解C1S」という授業を取り上げ,授業実施前と実施後に受講生の自己評価を調査した結果と共に実践報告するものである。当該授業においては,Can-do statementsのすべての項目において,受講生の自己評価が高まったことが明らかとなった。
Goya, Hideki
社会変化に呼応しその育成すべき人材像が変容する中, 2015年12月の答申において中央教育審議会は, 次世代\nの学習観を養うことのできる教員養成の重要性を示した。つまり教員養成課程を通じて能動的かつ協働的に解のない課題解決に取り組める教師の育成が大学教育では求められている。本研究では, これからの初等中等教育に必要な英語教員養成課程の質的再整備を目的とし, アンケート調査を用いて現行のプログラムを検証した。参加者は教育実習を終えた英語の教員免許取得希望者(n = 32)で, 教員養成課程内外での活動を振り返ってもらった。分析の結果, 実習後の教職希望者数に変化はみられないが, 教職への適正があると答えた学生の割合は実習前の42.42%から実習後では33.33%と低下していた。KJ 法を用いた質的分析の結果, 教職課程内外の体験的学習は教授スキルや授業実践を向上させ, 教育実習時の緊張を和らげていることが分かった。一方で対象とする生徒の多様性や実際の教育現場の理解は十分とはいえず, 教職への自信低下を示していた。この結果を鑑み本研究では,アクティブ・ラーニングの手法の一つであるサービスラーニングを導入し, 実際の学校や地域における自主的活動へ積極的に参加し, より豊かな社会的交流を通じて実際の生徒の多様性や実情に触れ, 更なる生徒理解や教職理解, 自己効力感の向上を促す必要性が示唆された。
上江洲, 朝男 江藤, 真生子 里井, 洋一 Uezu, Asao Eto, Makiko Satoi, Yoichi
伊良波は,「琉球大学教育学部附属中学校研究史~理論変遷と校内研の在り方~(上)」において,琉球大学教育学部附属中学校(以下,附属中)の創立期から第10 期までの34 年間の研究史を紐解いて概観し,第4期までの研究を分析,考察した。その結果,行動主義から構成主義の研究にどのように移行していったのかを明らかにした。 本論では上記「2『全体総論』の変遷」に引き続き,第5期から第10 期までの研究の理論変遷と研究の在り方について述べていくこととする。
森, 浩平 山見, 有美 田中, 敦士 Mori, Kohei Yamami, Yumi Tanaka, Atsushi
高等教育機関での発達障害学生の数は年々増加しているが、その発達障害学生の支援率については近年減少傾向にある。発達障害学生の受け入れは進んだが、受け入れた病虚弱、発達障害学生への支援が行き届いていないと考えられ、発達障害の学生への修学支援の必要性の周知、及び早期の支援体制の確立が望まれる。そこで本稿では、今後の修学支援体制の整備を考える上での参考とすることを目的とし、日本の高等教育機関における発達障害学生の困難や支援の現状について紹介した。
Ikehara, Atsuko Shayesteh, Yoko 池原, 敦子 シャイヤステ, 榮子
現在,アメリカ合衆国では,社会の移民の人口増加に伴い,学校教育における多文化教育の必要性が問われている。音楽教育においても,音楽を通しての異文化理解と国際理解の実践が提案されている。児童の異文化音楽に対する興味や関心は,多文化音楽教育を実践するにあたって重要な影響をあたえる。同様に,異文化音楽の指導方法を研究するのも必要である。当報告は,アメリカ合衆国の小学校第2学年の児童40名を2つのグループに分け,沖縄伝統音楽を教材とした多文化音楽授業を行い,そのなかで2種類の指導方法,1.受け身的鑑賞指導のみ 2.鑑賞に加えて,エイサー太鼓のダンス指導を取り入れた体験学習,を比べ,児童の異文化音楽における興味と指導方法に対する態度をアンケートによって採取したものである。結果は,2つの指導効果に有意差は見られなかったものの,両グループ共に異文化音楽に対する興味や関心を示した。受け身的鑑賞指導と体験学習については,継続的な指導のもとに,体験学習の指導効果が期待できると考えられる。
與儀, 峰奈子 Yogi, Minako
本研究は小渕フェローシップの支援によって実施された遠隔教育の実践結果に基づき、遠隔通信\n技術がもたらす小学校英語教育の可能性について\n考察することを目的とする。2005年1月28日、琉球大学、米国東西センター、ハワイ大学を結び「テレカンファランス2005-クロスロード・イノベイションに向けて-」と題する遠隔通信会議が実施された。その成功を受け、同年2月19日、琉球大学附属小学校が主催する千原初等教育研究大会の分科会において、この遠隔通信システムの小学校英語教育への導入の可能性を提案し、5月26日実際に琉球大学附属小学校とハワイプナホウ小学校の児童による遠隔交流会を実施した。更に7月22日には、千原初等研究大会において附属小学校とハワイ東西センターを結ぶ遠隔通信を行った。\nこの遠隔地でのやり取りを可能にしているIP通信技術は、“e-Japan''から"u-Japan"へと矢継ぎ早に策定される国家規模の戦略の下、より安価で高速なものへと急成長を続けている。この技術の進歩は刮目に値するもので、特に通信の体感速度には驚嘆させられる。音声に時間的ズレはほとんどなく、映像もスムーズで一頃のテレビ電話が想起させるコマ送り映像の面影はない。このような技術革新に伴ってITもICT(Information Communication Technology)とその名称を変化させている。この付記された"C(コミュニケーション)''は、情報収集等に重きが置かれていた従来の受動型の」情報化社会から自己参与型への移行を示しており、今回の遠隔交流の実践もその潮流の中にある。海外とのリアルタイムの交流は英語教育にとって測り知れないメリットを生む。教室での学習が時空間を超えた生の体験の中で実践されていくのである。本研究では、国際理解教育にも関連付けて議論したい。
Goya, Hideki 呉屋, 英樹
近年、文科省の推し進めるアクティブラーニングは多くの研究者や教育関係者の注目を集めている。本研究は外国語として英語を学ぶ日本人大学生の批判的思考能力と言語能力の育成に目標を定めたプロジェクト型学習を行い、両方の能力におけるその教育的効果を調べた。対象となった授業は英語ライティングの入門講座で、1 6週間に渡り、英語母語話者との交流を通じて議論を行いながら、自らで選択したトピックについて調べ、発表し、議論し、そしてエッセとしてまとめた。事前事後テストの結果より、全体的に言語能力の成長が見られ、特に中級程度のレベルの学習者では、上級レベルの学習者では見られなかった言語能力の向上が見られた。その結果をもとに教育的示唆と理論的示唆が示された。
池上, 大祐
本稿は、教員養成を意識した大学における歴史教育の在り方を考察することを目的とする。具体的には、琉球大学歴史学講義科目「歴史総合」を事例に、非教育学部系における歴史学専門カリキュラム構成、科目特性、講義内容、講義方法、講義に対する学生の反応を分析する。2022年度から新高等学校学習指導要領にもとづき、知識・技能、思考力・判断力、主体的に学びに向かう姿勢といった、いわゆる「学力の三要素」を涵養する「歴史総合」「世界史探究」「日本史探究」が順次新設されることを受けて、これらの新科目を担当できる教員の資質とは何かを、教員養成課程を設置している歴史学専門教育はどのような講義構成の工夫が必要になるのか、改めて考察する必要があることを指摘する。
瀬底, 正栄 武田, 喜乃恵 浦崎, 武 Sesoko, Masae Takeda, Kinoe Urasaki, Takeshi
本研究はこれまで、琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センターで、発達の気になる子どもたちゃ、学校生活等で支援の必要な子どもたちを対象にしたトータル支援教室で行われている集団支援活動での活動企画を、小学校の特別支援学級で授業として実践を行い、その支援での子どもたちの変容過程を考察してきた。本研究では、6つの特別支援学級のある小学校で、の合同学習として、集団支援活動での活動企画「まちをつくって遊ぼう」を実施し子どもたちの<向かう力>とくともに楽しむ場を共有する>ということを大切にした授業を通して、子どもたちの変容や参加のかたち、特別支援学級担任の変容について考察を行った。合同学習では、くともに楽しむ場を共有する>ことで子どもと教師が相Eに巻き込み、引き出される「向かう力」がダイナミックな授業の展開や大きな集団の力となって重層的な他者との遊びの魅力を生み出し、子どもたちの手ごたえのある体験者E得ることに繋がっていった。このことから、これまでの教師自身が形成してきた教育観への揺さぶりや新たな視点を獲得する機会となり、教師の教育実践の新しい展開を生み出す素地に繋がるものと考えられた。
崎濱, 朋子 Sakihama, Tomoko
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センターでは、発達障害のある子ども達等を対象とした「トータル支援教室」においてくともに楽しむ>集団支援を行っている。筆者は長年支援スタッフとしてその活動に関わる中で、くともに楽しむ>集団支援を学校現場に取り入れようと考え、特別支援学級において「遊びを主体とした活動」による自立活動として教育課程に位置づけ、教育実践した。その結果、教職員の変容が子どもたちの他者との関わりを活発にし、『向かう力』を引き出したと述べた。(崎漬ら2015)今回は、肢体不自由特別支援学級(以下、肢体不自由学級)と知的障害特別支援学級(以下、知的学級)、自閉症・情緒障害特別支援学級(以下、情緒学級)の合同授業において、専門機関や専門家と連携・協働による「ともに楽しむ」授業づくりの実践を行った。そして、支援者の気づき・関わり・題材の工夫を記述し、教職員の専門性の向上と「楽しみを共有」する授業づくりの意義について考察した。その結果、ともに楽しむ実践が、相互の信頼関係や温かい人間関係、自分の考えや思いなどを安心して表現できる支持的風土のある学級集団づくりにも生かせる有効な実践となることが示唆された。
緒方, 茂樹 Ogata, Shigeki
将来的な特別支援教育の充実のために、沖縄県の地域特徴である島嶼地域に焦点を当てながら、地域における関係諸機関のネットワークシステム構築の参考となる資料作成を目的とした。ここでは特に宮古圏域に着目しながら、地域における関係諸機関が復帰後に歩んできた歴史を再確認し、同じ時間軸の上に関連する出来事(イベント)を、教育、医療・保健、福祉、労働等の分野毎に平行に並べながら、いわゆる「年表形式」に纏めた。この年表を元に各分野間を横断的に概観することによって、宮古圏域における障害児に関わる関係諸機関の歩みを多角的かつ総合的に捉えることができる。このことを踏まえて、関係諸機関各々がもつ役割を明確にしながら効率的な役割分担の在り方を探り、さらに関係諸機関の歴史的背景を明らかにしながら過去の様々な経緯を知る。これらのことを通じて、今後の特別支援教育の展開に向けてよりよい連携の在り方を考える手がかりを得ることができると考えられる。
本間, 七瀬 武田, 喜乃恵 浦崎, 武 Honma, Nanase Takeda, Kinoe Urasaki, Takeshi
琉球大学教育学部附属発達支援教育実践センターの統括の下, トータル支援に携わって6年になる。その後, 地域の支援者で企画と運営を行うことになり地域主導のトータル支援教室が始まった。今回はトータル支援教室に参加している高機能自閉症のある男児の変容過程を学校生活の様子と照らし合わせながら振り返ることを通して, 子どもと関係性を紡いでいく支援のあり方や支援姿勢について検討した。
久保, 慶明
本報告では、政治学を必ずしも専攻しない大学生を対象とした政治教育について、琉球大学共通教育科目(社会系)「現代政治の課題」の実践例を紹介する。この授業は、鬼ごっこや道路のモデル化を通じて、政治を疑似的に体験することから始まる。講義では、様々なテーマを広く扱うのではなく、少数のテーマを掘り下げていく。さらに、模擬選挙への参加を通じて、実際の政治プロセスを疑似的に体験する。
後藤, 雅彦 主税, 英徳
博物館関係授業では博物館の展示の企画・広報から実際の展示という流れの中で、実践的な取り組みが求められる。令和3年度大学教育支援経費(教育改善等支援経費)の交付をうけ、琉球大学の大学博物館である風樹館を活かして、展示紹介動画やワークシートの作成を行った。そこで、本稿では本取り組みをふまえて、展示紹介動画とワークシートの作成について主に取り上げ、今後の展開も含めてその有効性について検討した。
中野, 真樹 渡辺, 由貴 NAKANO, Maki WATANABE, Yuki
今日,先行研究の検索・参照等のために,様々なリファレンスデータベースが作成されている。国立国語研究所は2011年に「日本語研究・日本語教育文献データベース」を公開した。このデータベースは日本語学・日本語教育研究の文献に特化している。このような特定の専門分野の文献にしぼって作られている「専門特化型」データベースが,独自の観点から情報の収集・選択・整理を行っているという特性を生かし,多分野にわたる文献をナビゲートしている網羅的なデータベースとともに活用されることが,それぞれのリファレンスデータベース,また,各学界の進展に寄与すると期待される。
比嘉, 広樹
本稿では、令和3年度大学教育改善等支援経費で採択された電気電子系コースのデータサイエンティスト人材養成事業の概要と成果について報告する。
浦崎, 武 Urasaki, Takeshi
広汎性発達障害をもつ子どもたちの体験する世界が、成人の高機能広汎性発達障害者が述べた\n自伝や幼児期の回想のように恐怖に満ちた内的世界であることを考慮すると、特別支援教育にお\nいても彼らの内的世界に歩みより理解を深めながら教育や支援を行っていくことが重要な課題と\nなる。幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校における通常の学級の特別支援教育の\nスタートにより試行錯誤の取り組みが教育現場で行われている。しかし、集団としての子どもた\nちの前で常に関わっている学校の教師たちの忙しい現実のなかでの子どもたちの関わりは、障害\nの特性を理解した上での関わりということよりも自分自身の経験や教育観による自己流の関わり\n方での対応のみになってしまう傾向がある。その場合、子どもの様々な問題が生じてきたときに\nどのように指導するかというスキルや方法論が求められ優先されてしまうことになり、結果とし\nて子どもたちの内的世界への理解が抜け落ちてしまうことによる2次的な障害が生じてしまう可\n能性がある。そこで本研究では小学校における学校生活において内的世界への理解をもった重要\nな他者としての学生支援員がアスペルガー障害のある子どもとの関係の形成による支援を行った。\nその支援を行うなかで生じてくる現実的な課題について検討しさらに、重要な他者との関係性と\n専門機関との連携の必要性について考察した。その結果、重要な他者としての具体的な対応のあ\nり方と教師と支援員との連携を行う上での障害の理解に基づく支援方針の設定など専門機関との\n連携の必要性の根拠が示された。
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