(1)ビルマ植民地。イギリス帝国主義はビルマ植民地の森林資源(チーク林)を独占的に支配するために,まず森林資源の国家的所有を実現し,民間商社のチーク林伐採は政府発行の特許によって行ない,それは主に自国独占商社に与えられた。その結果,ビルマ人民の自主的経営は禁止され,全ビルマのチーク林資源はイギリス帝国主義の独占的支配下におかれたのである。このようにして経済的価値の高いチーク林資源はイギリス帝国主義に収奪され,それはビルマ人民の経済からまったく遊離することになったのである。(2)マレー植民地。イギリス帝国はマレーの植民地化に際して,全マレーの土地・森林を国有した。イギリス帝国のとったマレーの植民地政策は,国際的ゴム景気の影響によって,独占資本が森林をとらえた時に,そこには木材生産を主目的とする生産形態でなく,栽植農業を中心としたゴム開発に主力がそそがれ,そのため国有林は農業開発資本と結合して独占利潤追求に奉仕するようになった。そのことは栽植農業(主にゴム)に対するイギリス投資が全投資額の約9割近くに達し,森林資源が豊富に存するにもかかわらず,林業開発に対するイギリスの投資がみられないといったことから明らかであろう。それはまた農業開発に伴って成立した林政が林業生産面で消極的であったこと,および木材生産の担い手が主に支那人で,彼らによる木材生産は国内需要を十分にみたし得なかったこと,などからもわかろう。このようにマレー林業の後進性をもたらした最も基本的な原因は,イギリス帝国主義のとった産業政策の偏倚性,すなわち森林開発=農業開発という政策のあり方に起因していたと言えよう。(3)タイ国半植民地。純然たる植民地における独占資本の森林開発は,宗主国の国家的林野所有を舞台にして展開されるので,森林資源の独占的開発はきわめて容易に進行するが,領土的支配までにいたらない半植民地タイ国の森林開発では,森林がイギリス帝国の所有でないので,同帝国はもっぱら強力な資本力をテコに,まずは林政改革の実権を掌握して,自国独占資本による森林の支配の活動を有利に導き,他の資本を圧倒して森林資源(チーク林)の独占的開発を可能にして行ったのである。イギリス独占資本の支配力は森林の生産過程はもとより,流通過程にまでおよんでいるので,チーク林からの独占利潤の享受は大きかったと言えよう。以上のようなメカニズムを通じてタイ国半植民地の森林資源は,ヨーロッパ資本,なかでもイギリス独占資本の開発下におかれたのである。