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葦名, ふみ ASHINA, Fumi
本稿は写真資料の管理と史料認識について<「憲政資料」(国立国会図書館憲政資料室)のなかの写真>を素材に検討するものである。この際、個人資料/文書(もんじよ)を中核とする、という「憲政資料」の性格に特に注意を払う。アーカイブズ界が直面している「多様な資料に同時に向き合いつつ、個別資料の特性を生かす」という問題に「憲政資料/写真」の事例から接近することが本稿の目的となる。
岩井, 茂樹
本稿は、明治末期から大正時代にかけて増加した笑った写真(本稿では「笑う写真」とした)の誕生と定着過程を明確にすることを目的としたものであり、そこで重要な役割を担った雑誌『ニコニコ』の特徴について論じたものである。
Christy Alan クリスティ アラン
ゲイル・プロジェクトとは、米国陸軍大尉チャールズ・ユージン・ゲイルによって1952 年に撮影された一連の写真を通し、アメリカによる初期の沖縄占領(1945 年から1960 年)の実態についての理解を深めようとする日米共同の歴史学的な取り組みであり、今後、アメリカと日本で写真やそれに関連する資料の巡回展を開催することが予定されている。本プロジェクトでは、沖縄における米軍のプレゼンスが形成された時代について、口述歴史調査と文献資料調査という二つの調査方法で、広範囲な歴史調査も行う。本稿では、歴史的証拠としての写真の重要性について述べると同時に、アメリカで行う沖縄の歴史の教育実践において、筆者が写真資料をどのように活用しているのかについて論じる。
三谷, 憲正
朝鮮王朝末期の王妃「閔妃」は韓国および日本を通じ、これまで多くの資料と作品の中で語られてきた。が、現在一般的に流布している「閔妃」の写真から喚起される<像>をもってしてそれらの資料と作品を読んでいいのだろうか、という疑問がつきまとう。なぜなら、従来「閔妃」の写真、と言われて来たものは、実は別人のものである可能性が高いからである。これまで流布してきた「閔妃の写真」と言われるものは、もともと、「宮中の女官」あるいはそれに準ずる女性を撮ったものだったのではないか、と推測できる。実際不思議なことではあるが、戦前の「閔妃」に言及している日本語文献の資料は「閔妃」の写真は出て来ない。
山崎, 剛 YAMAZAKI, Go
南山大学人類学博物館は、2000 年に上智大学より西北タイに関するコレクションの寄贈を受けた。このコレクションには、西北タイの生活に関わる資料だけでなく、多くの写真資料が含まれている。この報告では、特に人類学的資料として、これら写真資料についての解説をおこなう。
安井, 眞奈美
本稿は、筆者が二〇一三年九月に、山口県大島郡周防大島町沖家室島にて譲り受けた一九三〇年代の三枚の古写真を、ハワイ移民関連資料として紹介し、その歴史的な位置付けを行うことを目的としている。
江尻 有郷 米盛 徳市 下謝名 松榮 田港 朝満 安次嶺 和子 玉城 哲弥 Ejiri Arisato Yonemori Tokuichi Shimojana Matsuei Taminato Tomomitsu Ashimine Kazuko Tamaki Tetsuya
文部省支援のフレンドシップ事業として昨年度の「自然環境ホームページ作り」に引き続き,本年度は「沖縄の自然を紹介するホームページ作り」をテーマに事業を企画・実行した。中学生と一緒に沖縄ヤンバルの自然を訪ね写真撮影し,その写真を使って沖縄の自然を紹介するホームページを自らの手で作成し情報発信する試みである。昨年度のいくつかの反省に立った活動企画は一層充実した内容となり環境問題に対する生徒達の理解を深めることができた。
愛知県西尾市東幡豆町の「昔」と「今」を切り取った写真集。海辺の漁港町であるこの地域にとって、海は暮らしに寄り添う重要な存在です。そんな海 と人々のかかわりを、写真を通して素描しました。過去と現在、そこから見えてくる未来とは――。「地域のあり方」を見つめる一冊となっているの で、ぜひ読んでみてください。そしてこの本を通じて昔も今も変わらない東幡豆のよさを一人でも多くの方に知っていただけたらうれしいです。
清水, 享 SHIMIZU, Toru
本報告は巍山地区における碑文調査の概要である。巍山地区の調査を実施するまでの経緯、生態史研究における碑文資料の有効性と拓本採取・写真撮影・抄録などの調査方法について簡述する。調査地域である巍山地域の地理的歴史的概況と調査日程、補充調査の経過について触れ、調査で収集した主要な碑文をその特徴なども含めて簡単に報告する。また拓本採取・写真撮影・抄録など調査を実施上のさまざまな問題点を整理し、今後の調査の効率化を目指したい。あわせて現地の碑文の保存に関する問題点にも言及し、碑文調査の緊急性を報告する。
江尻 有郷 米盛 徳市 喜瀬 乗英 田港 朝満 Ejiri Arisato Yonemori Tokuichi Kise Norihide Taminato Tomomitsu
フレンドシップ事業の一環として,大学院生を含む教員志望の学生と附属中学校生との交流を目的としたインターネットを使った環境問題ホームページ作りを企画・実践した。ホームページ作成技術を最初に院生・学生が習得した上で,教諭と生徒の指導にあたるピラミッド型のコラボレーション体制をとった。生徒が環境問題シンポジュームや現地視察で身近な環境問題に触れ,写真を自ら撮影し,それらの写真を組み込んだ環境問題ホームページを学生と生徒が協力して作成すると言う内容である。数多くの問題点が指摘されつつも参加者全員にとって有意義な事業となった。本レポートはこれらの研究成果をまとめたものである。
近藤, 孝敏 KONDO, Takatoshi
本稿では、中庄新川家蔵『伝受次第』を翻刻・解説する。同書(以下、『伝受次第』と記す)は、「(寛文五年三月以前)伝受次第〔堺古今伝受系図〕」として整理された一紙で、整理番号は一-二一七号。鳥の子で、寸法は二九・四㎝×四四・三㎝である。端裏に「系図」と記し(写真2)、左金吾から盛里に至る古今伝受の系図を記す(写真1)。宗祇から肖柏を経て新川家五代盛里に伝えられた、いわゆる堺伝受の道統を示す資料である。本研究報告では、同書を翻し、その内容について検討を加えたい。
Miyazato Atsuko 宮里 厚子
ミシェル・トゥルニエは1986年に出版した小説の中で、主人公Idrissが北アフリカの砂漠の村を出てパリへ向かう物語を描いている。このなかで著者は現代西洋世界における映像(image)文明の行き過ぎを批判し、若者のイニシエーションが阻害されている現状を取り上げている。また西洋のimage文明のアンチテーゼとしてイスラムのsigne文化に敬意を表し、なかでも特にimageとsigne、西洋文化とイスラム文化の融合を可能にするアラビア文字書道の精神性を高く評価している。\n本稿では、自ら写真を趣味とし、写真や写真家に関するエッセイも多く書いているトゥルニエがなぜ映像文明と距離を置くようになったのか、その理由をエッセイやインタビューなどから探るとともに、彼の考えるimageの危険性とsigneの精神性について考察する。一方、その処女作『フライデーあるいは太平洋の冥界』で文明人ロビンソンの自然回帰のイニシエーションを描いた著者が、その逆の設定である砂漠の少年の西洋文明でのイニシエーションをどのように描いているのかという点にも注目し、イニシエーションという枠のなかで現代西洋世界がどのように位置づけられているのかを作品を通して見ていく。
安里 練雄 平田 永二 Asato Isao Hirata Eiji
研究概要:本研究は、平成6〜8年度にかけて、南西諸島の荒廃原野について、育林技術や森林施業計画の改善に必要な基本的課題の摘出を試みたものである。南西諸島の主な荒廃原野は、沖縄本島中・南部地域に多いギンネム、ススキ生地と小島に多い風衝林地である。ギンネム生地等の実態を調査して育林技術上の課題を空中写真やLANDSAT-TMデ-タの画像処理を試みて森林施業計画に必要な荒廃原野や林相の区分に関する課題を検討した。 (1)沖縄本島中南部地域のギンネム原野は、一般的に、樹高は低く、直径が小さい、本数が極めて多い異齢単純林である。ギンネム林内での他の樹種の生育は非常に困難である。ススキは草丈が4mを越えて巨大化し、他の植生を被圧する。 (2)LANDSAT-TMデ-タを用いて、小規模のギンネム原野のエリア区分を試みた。1ha未満の小区域を正確に区分することは困難である。クラスタリングで概略的に区分することはできるが、誤った区分も多い。 (3)ギンネム原野等の区分について、空中写真の判読と画像処理の適応性について検討した。実体鏡による判読の精度は、非常に良好である。しかし、写真をコンピュ-タに取り込んで画像処理した場合のクラスタリングや教師付き分類法による精度は低い。 (4)空中写真の画像処理によって、ギンネムなどの荒廃原野や山地での風衝林地、林相の区分を行う場合には、斜面方位や傾斜角度などの地理的要素を加えて検討する必要がある。 (5)LANDSAT-TMデ-タを利用して、約1、500haの島について、風衝林地や林相の区分を行った。分光反射特性に基づく植生指数と教師付き分類法により、実用的な成果を得た。
平田 永二 安里 練雄 寺園 隆一 Hirata Eiji Asato Isao Terazono Ryuichi
本調査は、空中写真の判読と画像処理によって、どの程度の精度でススキ、ギンネンム生地及び広葉樹林等の分布が識別できるのかについて検討したものである。調査の結果を要約すると次の通りである。1) 空中写真の実体鏡のよる判読の精度は、かなり高く平均約90%に達している。特にギンネム生地、畑、建造物及び緑化木では殆ど100%に近い判読精度を示している。2) 教師付き分類法による画像処理の結果では、その分類精度は27.3%&amp;acd;88.9%で、平均51.3%である。最も分類精度の悪かったススキ生地では、その約41がギンネム、約18%がサトウキビにそれぞれ間違えて分類されており、トレーニングエリアの取り方に問題があったと考えられる。3) クラスタリングによる分類の精度は、11.1%&amp;acd;75.0%で、平均56.8%となって、教師付きに比べていくらか高い値を示しているが、実用的には、さらに誤差を小さくする工夫が必要である。4) ランドサットTMデータを用いてクラスタリングによる分類を行った結果は、空中写真の画像処理による分類よりも精度がかなり悪く、その平均はおよそ30%程度である。5) 写真判読、教師付き分類法、クラスタリング分類法及びランドサットデータによる分類法で各分類項目の面積を推定した結果、教師付き分類以外の方法ではほぼ近似した値となった。
小椋, 純一 Ogura, Junichi
高度経済成長期を契機とする植生景観変化とその背景について,岡山県北部の中国山地(津山市阿波),京都市北部郊外(左京区岩倉付近),伊勢湾口の離島(神島)の3つの地域を例に,写真や文献類,また古老への聞き取りなどをもとに考察した。
李, 成市 Lee, Sungsi
平壌楽浪地区貞柏洞364号墳から出土した『論語』竹簡は,1990年に初元4年楽浪県別戸口簿木牘や「公文書抄本」と共に発見されたが,2009年に至るまで,その詳細な学術的な情報がなかったため研究対象になりえなかった。本稿は,まず貞柏洞364号墳出土の『論語』竹簡の基礎的なデータが公表に至る経緯を明らかにし,そのうえで,貞柏洞364号墳の性格や遺物から被葬者の性格を検討し,被葬者が現地出身の楽浪郡属吏であることを裏づけた。また,貞柏洞364号墳に副葬された『論語』竹簡については,発掘当初に撮影された2枚の写真と,さらに発掘に関わった機関の証言に基づきつつ,出土した『論語』竹簡は,写真での確認は先進31枚(557字),顔淵8枚(144字)に止まるが,元来,先進篇・顔淵2篇の全文120枚程度が存在したと推定される。
久保木, 秀夫 KUBOKI, Hideo
東大史料編纂所蔵写真帳のうち「(伝)後伏見天皇宸翰」(六一三一―二○)と題される一冊は、従来知られていなかった歌集の残簡である。巻子本一軸、もとは列帖装の六半本の零葉とみられる。文献操作によって、その一紙四面分の料紙三枚の状態にまで復元することが可能である。
Samimi Sayed Abdul Basir Ando Tetsuya Kawish Khojesta サミミ サイード アブドゥル バシール 安藤 徹哉 カウィッシュ コジェスタ
本研究は、2017年に撮影された高解像度(30cmX 30cm)の衛星写真を用いて、ヘラート市内のドーム状ヴォールト屋根伝等住居の分布を分析するものである。衛生写真の分析の結果、ヘラート市内には11、 754件のドーム状ヴォールト屋根伝統住居が存在することが明らかになった。またヘラート市内には、7 か所のドーム状ヴォールト屋根伝等住居が高密度に分布する地域があることが明らかになった。文献調査と現地調査により、それらの集中地域は1)伝統的なモニュ-2228-メントの周辺地域、2)1960年代以前に形成された運河沿いの伝統集落、3)1960年代以降に形成された比較的新しい周縁集落に三分類されることが分かった。ドーム状ヴォールト屋根伝統住居はヘラート市の伝統的最観の基層をなすものであり、地域の文化遺産ともいうべき存在である。今回の調査により初めて明らかとなった伝統住居の分布は、今後の最観保全計画策定のための基礎データとして極めて重要である。
柴崎, 茂光 Shibasaki, Shigemitsu
本報告では,観光雑誌・ガイドブックとして知られている「旅」や「るるぶ」の文字情報や写真情報を活用しながら,1993年に世界自然遺産に登録された屋久島の観光イメージの変遷を明らかにした。その結果,時代ごとに観光地「屋久島」のイメージが変化してきたことが明らかとなった。1950年代には秘境としての屋久島が強調され,山域よりも里の暮らしなどが観光資源と表現されていた。国立公園に編入された時期を除いて,1980年代までは里の温泉や滝が主要な観光資源として頻繁に写真などにも掲載された。しかし 1990年代以降になり,世界遺産登録も一つの契機となり,観光イメージの中心が,縄文杉や白谷雲水峡といった山域に移行した。とりわけ近年は,エコツーリズムを活用した新たな観光形態が紹介されるようになる。例えば,太鼓岩やウィルソン株のハート形の空洞などに代表される新しい観光資源が誕生し,観光地「屋久島」イメージの変化にも影響を与えていた。
王 怡人 Wang Yi Jen
本稿の目的は、訪日観光客の大半を占める中国人旅行者の旅行先での写真撮影行動について、撮影状況( 内容と枚数)、ネットメディアでの投稿状況、そして観光経験といった側面から実証データを使って検証することである。 さらに検証結果に対して考察を行い、観光地の運営に関して「非日常を演出するための動態的資源開発」、「観光客と観光地における物事・人々との関係性構築」、「パフォーマンスを活用した観光地魅力度の風化対策」と「観光客の情報発信に関連する試み」といった4 つのインプリケーションを見出した。
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日本政府は、南洋群島と内地、外地を結ぶ航路を日本郵船に請け負わせた。西回り線、東回り線、東西連絡線、サイパン線の 4線があり、1934年当時、西回り線とサイパン線は年に17便、それ以外の線は6便であった。なお、群島間の航路は、南洋貿易が請け負った。筑後丸(サイパン線)、山城丸(西回り線)など3千トン級の船舶が使用され、本資料には客室内部の珍しい写真も載せられている。
竹下, 義人 TAKESHITA, Yoshito
元禄五年成立の岸本調和の前句付俳諧資料の一つ、国文学研究資料館蔵『調和前句付巻』を翻刻紹介する。解題では、とくに本巻と内容上密接な関係にある勝句集『五句附 洗朱』との関連に留意しつつ、成立年等の考証や内容上の問題点についていささかの考察を試み、あわせて本巻の資料的価値等について言及した。翻刻の後には、原資料の面影を伝えるべく写真を付載した。
フィリピン・パナイ島に水揚げされた商業・混獲魚類132科597種を911枚のカラー写真で紹介した図鑑です。フィリピン初のすべて標本に基づく、網羅的な魚類の記録です。本書に掲載された少なくとも19種はフィリピン海域からの初めての記録で、他にも複数の未記載種(新種)が掲載されています。597種すべてにそれぞれ科名、学名、英名、形態、分布、生息環境、大きさ、分類学的備考や種間比較などを付記しました。
出利葉, 浩司 Deriha, Koji
ここ二十年近く,北米あるいはオーストラリア地域で政治的に問題化され,人類学的課題としても議論されてきたことのひとつに,先住民から収集し博物館などに保管されてきた「資料」の,先住民社会への「返還運動」がある。そして,返還される「資料」については,これを文字記録や写真にまで拡大してとらえ,「Knowledge repatriation」として考えていこうとする動きもある[Krupnik 2002]。
片岡 淳 Kataoka Jun
研究概要:本研究は、平成5年度から8年度まで沖縄県教育委員会から調査嘱託委員として調査した織物品378点、染物品139点のデータベースの構築を行うことであった。平成10年度・11年度、その情報の入力作業をしていく内に、服装の採寸調査項目の不備、繊維鑑定の見解の相違などがわかった。正確なデータを入力するためにも再検討・再調査を加えた。そして12年度は、繊維の顕微鏡写真の収集に力をいれた。その結果、琉球服装の調査項目を改善し、両身頃を調査した結果、大袖衣について物差を使わない「手度法」であることを確認できた。また、胴衣の袖と脇あきに特色があることがわかった。沖縄県各地の織物組合の素材以外にも、各島々に芭蕉・苧麻・木綿の染織品があることがわかった。その織物技術は、織密度や意匠が優れたものであり、またその多様性は広く今後、公開していきたい。歴代宝案や混効験集に見られる緞・細嫩蕉布・蜻蛉羽衣等、どのような染織布であるか、断定はできないが、資料の収集と拡大写真のデータが得られた。研究対象が神衣装であり、教育委員会や個人の協力により、さらに各島々に残る染織資料を調査研究していきたい。
武井 弘一 玉城 史彬 平良 林子 燃脇 杏花 屋 将太 吉山 慎吾 上原 麻妃 平安座 ほたる 平安名 盛ー 上原 敏 新垣 絵美 Takei Koichi Tamaki Fumiaki Taira Rinko Moewaki Anzu Oku Syota Yoshiyama Shingo Uehara Asahi Heianza Hotaru Henna Morikazu Uehara Satoshi Aragaki Emi
松岡家は、中世より肥後国八代(現熊本県八代市)において活躍してきた名望家である。2009年 4月から琉球大学近世史ゼミナールのメンバーを中心に同家が所蔵する古文書の整理が始まり、同家の文書群を「肥後国八代郡高田手永松岡家文書」と名づけた。総計 364点の文書は、近世(藩政、土地、商業・金融、家・私信)と近代(家、私信、写真、書籍・短歌)に分類できる。全体の 67%を近代文書が占め、そのなかでは書籍・短歌がもっとも点数が多い。
村石, 眞澄 Muraishi, Masumi
伊興遺跡をはじめとする足立区北部の発掘調査に携わる中で,微地形分類をおこなった。微地形分類は空中写真を判読し,比高差・地表の含水状態・土地利用を基準として分類を行い,発掘調査での土層堆積の観察所見や旧版の地形図を参照した。こうした微地形分類により,埋没していた古地形を明らかにすることができた。そこでこの埋没古地形の変遷を明らかにするため,花粉化石や珪藻化石などの自然科学分析から植生や堆積環境の検討を行った。
鹿内 健志 上野 正実 橋口 公一 能勢 行則 岡安 崇史 Shikanai Takeshi Ueno Masami Hashiguchi Koichi Nohse Yukinori Okayasu Takashi
軟弱地盤を走行する農機、建機などの研究において、車輪下の土の変形を解明することは走行性の向上のため重要である。そこで従来法と比較し精密に走行車輪下の土の変形を計測できるシステムの開発を行った。すなわち、土槽側壁の内側に設置したマーカの土に伴う動きを連続的に写真撮影し、平面位置検出装置により土中の変位分布を計測し、これより有限要素解析における方法を用いて土中ひずみ分布を算定する。砂地盤上で剛性車輪を供試して走行実験を行い、土中のひずみ分布を明らかにし、その特性を論じた。
小椋, 純一 Ogura, Jun'ichi
森林や草原の景観はふつう1~2年で大きく変わることはないが,数十年の単位で見ると,樹木の成長や枯死,あるいは草原の放置による森林化などにより,しばしば大きく変化する。本稿では,高度経済成長期を画期とする植生景観変化とその背景について,中国山地西部の2つの地域の例について考えてみた。その具体的な地域として取り上げたのは,広島県北西部の北広島町の八幡高原と山口県のやや西部に位置する秋吉台である。その2つの地域について,文献類や写真,また古老への聞き取りなどをもとに考察した。
栗山 一孝 宮崎 泰司 波多 智子 Kuriyama Kazutaka Miyazaki Yasushi Hata Tomoko
平成15-17年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書 / 研究概要:急性骨髄性白血病(AML)の治療は、化学療法と造血幹細胞移植に加えて遺伝子異常に基づく分子標的治療を中心とした個別化治療が指向されている。個別化治療の本格的到来に備え成人白血病治療共同研究グループ(Japan Adult Leukemia Study Group ; JALSG)においても、従来の形態学的分類、(FAB分類)から染色体・遺伝子異常を組み込んだWHO分類へ転換を図っていく必要がある。すなわち WHO分類を基点とした中央診断システムを再構築して、WHO分類の特徴と有用性を検討し、我が国におけるAML/WHO分類のEvidence Based Medicine(EBM)を確立するとともに形態診断の質を高めるために細胞形態をデジタル画像化して診断情報に組み込みJALSG参加施設へフィードバックするシステムを新たに構築することも本研究の目的とした。\n15年度に購入したデジタルカメラ付顕微鏡の撮影条件を確立したことを受けて、 16年度は、染色標本撮影画像の配信について検討を開始した。その結果、画像情報は文字診断情報と共に診断報告システムに組み込むことにし、e-mail によって希望施設に配信を開始した。次に画像配信システムを合理化するためにJALSGのwebサイトに「形態診断セントラル・レビュー結果報告」を開設しJALSG参加施設の了承を得、診断情報の機密保持を確立(ID、パスワード発行)して各施設への報告を開始する体制を整えた。17年度は登録症例の末梢血・骨髄塗抹標本を検鏡し所見とデジタル写真をwebサイト「形態診断セントラル・レビュー結果報告」にアップロードしていき、結果報告と同時にAML 症例の形態デジタル写真と形態所見のデータベース化を図っている。またAML-97プロトコールの形態診断結果に基づく予後判定システムについて米国血液学会で発表した。
上里 健次 Schinini Aurelio Nuñez R Eduardo Uesato Kenji
アルゼンチン北東部のハチドリの生息地に2ヵ年滞在して、ハチドリの行動生態に関する現地調査と写真撮影を行った。とりわけ魅力的で空飛ぶ宝石とも呼ばれるハチドリの飛翔姿態については、著者のみならず、何人にも認められる自然の宝物のひとつである。着任後しばらくはハチドリの飛翔を目にしても、写真撮影のチャンスは治安の悪化情勢もあって、全く考える余地はなかった。その中で専門分野の熱帯花木の開花状況を調査中に、合わせてハチドリの飛翔習性の把握にも努めた。生息する数種のハチドリの一種、コモンハチドリ一種が留鳥として、冬季間も飛来活動を続けることの知見が得られたことも幸運であった。飛翔習性と冬季に開花する植物との関連性の理解、花蜜でない昆虫捕食の活動についても目視できた。これらの現地調査の結果、各植物の花とホパリングの組合わせ、昆虫の空中での捕食、巣と卵の確認などそれぞれに貴重な記録が得られた。留鳥か渡りかの周年の動き、生息するハチドリの種の違いなどにも知見が得られた。ハチドリは鳥類の中では最小最軽量、胸筋が発達して飛翔能力に優れていることから、空中飛翔時に停止後退が可能で、そのことによる飛翔姿態の優雅さが注目される特別の野鳥である。まさしく生きた宝石で、最も魅惑的な野鳥として評価されることは当然である。ハチドリのホパリング撮影は難事なだけに、少なくとも中南米旅行でそのチャンスがあれば留意を望みたい。最後に、ハチドリの飛翔行動の一連の観察調査ができたことは、JICAのシニアボランテイアとしてアルゼンチンに派遣されたことが基点で、アルゼンチンJICA事務所に感謝したい。また種々の便宜を受けた北東大学農学部植物学研究所の、スタップのおかげである事も記して謝意としたい。
鈴木, 貞美
日本の一九二〇年代、三〇年代における(狭義の)モダニズム文藝のヴィジュアリティー(視覚性)は、絵画、写真、また演劇等の映像だけではなく、映画の動く映像技法と密接に関係する。江戸川乱歩の探偵小説は、視覚像の喚起力に富むこと、また視覚像のトリックを意識的に用いるなど視覚とのかかわりが強いことでも知られる。それゆえ、ここでは、江戸川乱歩の小説作品群のヴィジュアリティー、特に映画の表現技法との関係を考察するが、乱歩が探偵小説を書きはじめる時期に強く影響をうけた谷崎潤一郎の小説群には、映画的表現技法の導入が明確であり、それと比較することで、江戸川乱歩におけるヴィジュアリティーの特質を明らかにしたい。それによって、日本の文藝における「モダニズム」概念と「ヴィジュアリティー」概念、そして、その関係の再検討を試みたい。
杤尾, 武 TOCHIO, Takeshi
夏目漱石の原稿用紙の意匠は双龍文様をあしらったものである。このような意匠は原稿用紙の作者である橋口五葉や発案者であろう漱石の意識の中にどのように形成されたかを明らかにしようと考えた。双龍文様は中国では紀元前から見られ、日本でも奈良時代には伝っており、神社仏閣はもとより、日常目に触れる様々な物品に見ることができる。この稿では五葉や漱石が目にすることのできそうな物品を取り上げ、一部図版を掲げることにより視覚の面からも原稿用紙創作の秘密を探ろうと考えた。文中竜字を用いず龍字を用いたのは象形文字であるこの字が論を進めるに当って必要なためであった。図版の冒頭を飾った原稿用紙の図版と紙型の写真は貴重な資料と自負するものである。
平田 幹夫 Hirata Mikio
本研究は、幼稚園から絵と作文を一度もかいたことがない小3男児に対して、Coと担任が連携しシングルセッションでカウンセリングを行った事例の経過報告と考察を目的としている。担任とシングル・セッション・カウンセリングの介入シナリオの検討を行い、以下のようなカウンセリングを行った。1.給食の様子を写真撮影に来た大学の先生という場面を設定を行った。2.笑顔で語りかけ、笑いを共有した。3.他の子どもより優れているところをみんなの前で誉めた。4.学級の仲間をカウンセリングの援助者に位置づけた。5.描画場面においては、描画に対する自己効力感を高めるために「他の人よりも感じる力があり、それを表現するすごい能力を持っている」と何度も伝えることを行った。その結果、絵を描けるようになり、短文ではあるが作文も書けるようになった。また、小3男児の描画について考察を行った。
林 弘也 垂内 朋美 古橋 健一 Hayashi Hiroya Tareuchi Tomomi Furuhashi Kenichi
写真上でデジタイザを用いる方法と顕微鏡と接眼マイクロメータを用いたポイントカウント法を併用して、 沖縄島産の広葉樹散孔材7樹種について横断面の管孔径、 構成要素の面積割合を計測し、 1生長輪内の分布状態を検討した。散孔材の管孔径は、 1生長輪内の位置によって大きく変動する樹種、 ほぼ一定である樹種がある。クスノキ、 シバニッケイ、 ヤブニッケイ、 ホウノキ、 カツラ、 エゴノキ材は変動し、 イスノキ材は一定であった。管孔径、 管孔の面積割合は早材と晩材とでは明らかに異なり、 いずれも早材が晩材よりも大であった。散孔材の構成要素の割合は管孔と木部繊維が0.70&amp;acd;0.85を占め、 生長輪内の位置による変動もある。その他の構成要素の割合は小さく、 生長輪内の位置による変動も比較的小さかった。クスノキ、 シバニッケイ、 ヤブニッケイ材の管孔は管孔径に関係なく、 ほぼ一定の面積割合を示す傾向にあり、 イスノキ材は面積割合に関係なく、 ほぼ一定の管孔径を示す傾向にあった。
高橋, 則子 TAKAHASHI, Noriko
歌舞伎『東海道四谷怪談』の正本写し合巻として、文政九年刊『名残花四家怪譚』、文政十一年刊『東海道四ツ家怪だん』、天保三年刊『東海道四ツ谷怪談』、天保八年刊『東街道四ツ家怪談』が存在する。これらは、『名残花四家怪譚』の板木を利用しつつ、表紙を変え、前年上演歌舞伎の役者似顔の象嵌をしたり、演出の変化を反映させたりしながら、後摺り刊行されたものである。これらの後摺り本の相違は、歌舞伎演出上の変化や、浮世絵と通底する社会事情等を反映させているが、『国書総目録』・『古典籍総合目録』の表記では諸本は混在している。諸本間の違いは、全板本の全丁写真版を詳細に比較検討することによって初めて知り得る。同外題板本で、一見同一本と見られるものであっても、調査収集の必要性を説かれる近世板本の、特殊な刊行事情が窺われる一例と捉えることができよう。
宮田, 公佳 松田, 政行 Miyata, Kimiyoshi Matsuda, Masayuki
博物館は文化財及び歴史資料のみならず,写真,書籍,調査研究報告書,論文等に至るまで,多種多様な資料を有している。後世に永く伝えられるべきこれらの資料は,それ自体が情報であるだけでなく,新たな情報を獲得するための情報資源である。近年では博物館情報資源の多くがデジタル化されており,その有効活用のためには情報機器や各種技術が必要となっている。高性能かつ安価な情報機器と高度な関連技術を用いることによって,従来では実現困難であった博物館情報資源の活用方法が見出されている一方で,技術的に可能なことが適法であるとは限らない状況が生じうる。したがって,博物館情報資源を活用するためには,技術的な課題と法律的な対処方法との両立が求められる。そこで本論文では,両者を比較対比することで相互の関連性について理解を深め,さらに博物館情報資源を機能的に活用する手法について議論する。
安里 練雄 狩野 渉 平田 永二 寺園 隆一 生沢 均 Asato Isao Karino Wataru Hirata Eiji Terazono Ryuichi Ikuzawa Hitoshi
荒廃原野の育林技術に関する研究の一環として、小規模のギンネム原野について、ランドサット衛星のリモートセンシングデータを用いてエリア区分を試みた。1. 沖縄島南端部に、600×600mの解析対象区域を設定し、その中の小規模ギンネム原野を空中写真と現地調査で図面上に区画した。2. 対象区域を含む735haのトレーニングエリアについて、ランドサットTMデータを用いてクラスタリングを行い、その結果と実際の分布とを比較した。3. 32クラスでのクラスタリングの結果、クラス3、4、5で分類される区域がギンネム原野に関連ずけされた。4. クラスタリングでギンネム原野を概略的に区分することはできる。しかし、一部のギンネム原野を分類できなかったり、他の植生をギンネム原野と誤って分類することもある。5. ランドサットTMデータを利用して、1ha未満の小規模ギンネム原野の区域や面積を正確に区画することは困難である。6. ギンネム原野とその周辺の植生の分光反射特性は近似している。このことと、TMデータの分解能が、小規模なギンネム原野のエリア区分の精度に影響している。
鹿内 健志 Shikanai Takeshi
本論文は軟弱地盤において作業を行なう農用車両の走行性に関して、 車輪と土の力学的相互作用の面から究明し、 さらに、 耕盤を有する圃場の車両に対する支持力特性について解明し、 農用車両走行部の力学的設計に不可欠な基礎的知見を提示したものである。まず、 車輪と土の力学的作用を把握するため走行車輪下の土の変形計測システムの開発を行なった。本システムにより気乾豊浦標準砂を対象に車輪走行実験を行い、 走行車輪下の土の変形およびけん引力、 接地応力など走行性に関する力学的諸量の計測を行なった。また、 車両の支持力特性について、 すべり線法による理論解析を行なった。耕盤を有する圃場の車両に対する支持力問題を、 剛盤上の摩擦性塑性体の二つの近接する荷重に対する支持力問題と理想化した。荷重間隔、 荷重幅および耕盤深さに応じて五つのすべり線場を設定し、 これらに基づき支持力の計算を行なった。以下、 各章ごとの総括と結論を述べる。第1章において、 新たに開発した走行車輪下の土の変形計測システムの構造と特徴について論じた。厚さ25μm、 直径5mmのポリエステル製の円形マーカを土槽側壁の内側に設置し、 マーカの土に伴う動きを透明な土槽側壁を通し連続写真撮影した。2軸X-Yテーブルと拡大CCDカメラからなる平面位置検出装置により写真からマーカ座標を読取った。これにより土中の変位分布を計測し、 さらに有限要素解析における方法を用いて土中ひずみ分布を算定した。計測の不確かさ解析により、 従来の土の変形測定法に比較し、 簡易な方法で、 微小変形から大変形にわたり高精度で計測が可能であることが確認された。また、 新たに開発したマーカは薄いポリエステル製で周辺土壌へ影響を与えることなく、 また、 含水比が比較的高い一般の圃場の土に対して使用可能である。第2章では、 土の変形解析システムにより計測した走行車輪下の土の変形解析結果について述べた。車輪は剛性車輪を対象とし、 車輪表面材の摩擦係数による違いを比較するため、 鋼鉄製車輪と鋼鉄製車輪の表面に加硫したクロロプレンゴムを5mm厚さでコーティングしたゴム被覆車輪の2種類を供試した。静的沈下時の土粒子の動きの変位ベクトルは、 ゴム被覆車輪および鉄製車輪とも車輪中心を通る鉛直線を中心軸として対称に分布する。車輪が回転すると、 変位ベクトルは車輪前方部で、 前向きの水平成分を持つものと後向きの水平成分を持つものの二つの領域に分けられることがわかった。
樹下, 文隆 KINOSHITA, Fumitaka
国文学研究資料館蔵『四座御役者手鑑』は、乾坤二冊の内、下巻のみ残存する刊本の零本ながら、『国書総目録』に唯一所載の鴻山文庫旧蔵本であり、他に存在を聞かない孤本である。観世座十六名・宝生座十七名・御部屋役者衆十名・惣役者衆取次(触流)四名、計四十七名の役者を収録する本書は、記事内容より、貞享三年から貞享四年にかけての事情を反映したもので、刊行時期もその頃と推定できる。宝生九郎を「当世日出の大夫」と称賛する本書は、取り上げた役者の数が江戸期を通して四座の筆頭だった観世座よりも宝生座の方が多いことに象徴されるように、綱吉時代の宝生流繁栄のさまを顕著に描いており、零本ながら将軍綱吉に贔屓された宝生座を始めとする当時の能界の雰囲気が窺える好資料である。本書を翻刻紹介するに際し、原資料の面影を伝えるべく写真を付載し、本書に関する書誌的な解題と収録役者について内容に関する若干の注釈を試みた。
藤原 綾子 渡口 文子 Fujiwara Ayako Toguchi. Fumiko
沖縄県における大学生以上の男女を対象にして年間の着衣パターンについて調査を行なった結果、次のようなことがわかった。1.衣服の種類についてみると、男女とも洋服着用者が圧倒的に多く、和服着用者は男女とも1~2%である。また女子では70才以上に琉装の着用がある。2.男子の着衣パターンは上着の場合、5月から10月までの6ヶ月間を半袖上着ですごしている。下着は気候にあまり影響されず年代によって異なり、若い年代程薄着であ3.女子の着衣パターンは、上着、下着ともパターンの数が多く若い年代程多い。上着の着衣パターンは気候に影響されている。下着は若い年代程ファウンデーション下着の着用が多く、年をとるに従って少ない。下着の着用パタ-ンは気候に影簿されず、むしろ年令等によって決まっている。最後に-年間にわたる長期間にもかかわらず調査に御協力いただいた方々に深く感謝いたします。又写真撮影に協力して下さり話をきかせて下さいました那覇市首里平良町の久場様に深く感謝申し上げます。
森 力 仲座 由一郎 Mori Chikara Nakaza Yuichiro
小学校学習指導要領(平成29年告示)で「『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善」が示された。この「授業改善」を具体的に進めていくにはどのようにすればよいのか。よりよい授業にしていくためには,教師の授業に対する見方・考え方といった授業観がよりよく変容していく必要があると考えた。すると,ある現職教師から「どのように授業改善すればいいのか」という方法が問われた。そこで,本研究では,教師が授業を具体的に振り返り,授業観の変容を捉えるために「授業リフレクション」に視点を当てることにした。具体的には,算数科の3回の授業実践を行い,その都度,「授業リフレクションの効果」「授業観の変容」について考察を進めた。結果として,「リフレクションシート」「板書写真」「ビデオ記録」といった方法を取り入れることと,「対話リフレクション」を行うことは授業改善に有効であった。本稿は,授業リフレクションにおいて,得られた気づきを通して,効果的な授業リフレクションのあり方及び授業観の変容の捉えについて報告するものである。
遠藤 光男 Endo Mitsuo
物体が最初に認識されるカテゴリーレベルを物体認識のエントリーポイントという。一般的な物体においては基礎レベルが最も早く認識され、基礎レベルがエントリーポイントとして機能している。顔などの熟達したパターン認識においては、下位レベルへのアクセス性が促進され、両者が同等になることが知られている。しかし、顔認識過程のエントリーポイントが基礎と下位レベルの両方にあるのか、下位レベルにあるのかについては明らかになっていない。今回は顔認識過程の基礎レベルがエントリーポイントとしての機能を失っている可能性について呼称課題を用いて検討した。もし、顔認識過程の基礎レベルがエントリーポイントとしての機能を失っているならば、通常の上位レベルが意味ネットワークを介してアクセスされるように、基礎レベルへのアクセスは下位レベルから意味ネットワークを介して行われることになる。その場合、人名からの基礎レベルへのアクセスと顔写真からの基礎レベルへのアクセスに正の相関があることが予測されたが、実験の結果、そのような正の相関は得られなかった。したがって、顔認識過程の基礎レベルがエントリーポイントとしての機能を失っている積極的な証拠は得られなかった。
宮田, 公佳 Miyata, Kimiyoshi
撮影画像から被写体の分析を行う画像解析の手法を文化財へ応用するための基礎検討を行った。画像解析を行うためには専用の装置が必要となることも多いが,近年では高性能化した画像機器を測定器として活用できる可能性が高くなったことで,画像解析に対するハードルは低くなっている。本研究では,科学的あるいは化学的な分析手法との連携を視野に入れ,一般的な写真撮影技術を基本とした簡便な手法によって資料分析に有用な情報を抽出することを目指している。そのための基礎検討として,画像撮影時に使用する光源とフィルタによって,画像化に寄与する光の波長を選択する手法に着目した。対象資料として,研究用資料である火縄銃と錦絵を用いている.本研究は基礎検討の段階であるため,抽出された資料情報が分析上有意であると結論づけるのは困難である。しかしながら,画像解析の有用性の検証には事例の積み重ねが必要であり,本研究による結果もその一例として位置付けられる。本研究で使用した波長選択が可能な光源,あるいは画像処理技術との組み合わせによる画像解析事例を収集し,有効性を継続検討する必要がある。
渡邊, 三津子 古澤, 文 遠藤, 仁 片倉, 邦雄 藤本, 悠子 河田, 尚子 アナス・ムハンマド, メレー 石山, 俊 縄田, 浩志
小田, 亮
日本人における配偶相手の好みにみられる性差を、結婚相手募集広告の分析から研究した。一九九七年一〇月から二〇〇〇年一月までに個人広告雑誌に掲載された七八〇件(男性によるもの五七七件、女性によるもの二〇三件)の広告を分析対象とした。要求または提示されている特徴を比較すると、男性では要求された特徴と提示された特徴の数に違いはないが、女性は提示数よりも要求数の方が多かった。また女性は男性よりも要求数が多く、提示数は少なかった。男性は自らの経済的状況あるいは社会的地位を提示する傾向があり、女性はそれを要求する傾向があった。家庭への投資に関しては提示には偏りがなかったが、女性の方がより要求する傾向があった。身体的な特徴については要求、提示のどちらにも性による偏りがみられなかったが、相手に写真を要求するのは女性の方が多かった。連れ子の拒否については偏りがなかった。一方男性の方が女性よりも連れ子を受け入れる態度を示す傾向があった。男性は年下の女性を相手として好んだが、女性については充分なデータが得られなかった。これらの結果を先行研究ならびに質問紙を使った調査の結果と比較検討した。
福武, 亨 FUKUTAKE, Tooru
本稿では、愛知医科大学の事例を中心に実務的な立場から私立医科大学の現状と課題を把握し、今後の私立医科大学における大学アーカイブズの展望を示すため,アンケート調査と取材を行い他大学との比較を通して考察を試みる。私立医科大学アーカイブズは,機関アーカイブズと収集アーカイブズの側面から課題がある。機関アーカイブズにおける課題は、アーカイブズが法人文書の廃棄、移管について関わっている大学が少ないことである。そこには大学アーカイブズ側と文書を流入させる側の課題がある。大学アーカイブズ側の課題は、大学アーカイブズが法人文書の評価選別を行う際の課題であり,大学内の特定の個人や集団に由来した偏りのある判断を避け,学内外に説得的であることが重要である。文書を流入させる側の課題は,各部署による大学アーカイブズへの移管がうまくいかず廃棄されるという課題であり、大学アーカイブズは、各部署に出向いて現物をみる、現況等を聞くといった各部署とのやりとりが重要である。次に、収集アーカイブズにおける課題は、所蔵点数が少ないことである。愛知医科大学アーカイブズの事例に加え、聖路加国際大学の事例では,学生への広報を取り上げ,金沢医科大学の事例では,所蔵点数の多さを裏付ける出版物、写真等の自動的収集について取り上げる。今後の展望として医科大学においてはカルテ等も大学アーカイブズの収集対象になりえることも触れる。
泉 裕巳 秋永 孝義 Izumi Hiromi AKinaga Takayoshi
サトウキビ収穫機の設計に当っては、 サトウキビの茎幹の理工学的な性質や、 動切断抵抗に関係する多くの要因の影響を知る必要がある。そのため、 茎幹の動切断抵抗に関する要因のうちから、 切断角、 周速度、 進行速度、 茎幹の直径、 収穫後の経過時間について実験検討を行った。また同時に、 高速度カメラを用いて切断現象の解析を行った。供試材料には、 沖縄県下で栽培されている、 一般的な品種であるNCo 310と376を用いた。測定結果から得られたサトウキビの茎幹の動切断抵抗に影響する要因について、 以下に要約する。1)サトウキビの茎幹の動切断抵抗に影響を与えると考えられる要因相互間の関係を知るために、 切断角、 回転刃の周速度、 進行速度、 茎幹の直径、 収穫後の経過時間を因子にL_&lt;27&gt;3^&lt;13&gt;の直交型実験を行った。その結果、 切断角、 周速度が大きくなるほど動切断抵抗が小さくなり、 進行速度か速いほど動切断抵抗が増加することが認められた。2)切断角を0度から50度の間で変化させて、 切断現象を高速度写真に撮影した。その結果、 最もきれいに切断できる切断角は50度であることが解った。3)動切断抵抗の値のバラツキの要因分析の結果、 回転刃の周速度と進行速度の間には交互作用が認められた。4)この実験の結果から判断すると、 切断抵抗が最も小さい切断速度比は、 60付近にあると考えられる。5)今後さらに、 切断刃の材質とサトウキビの摩擦特性について検討する必要があると考えられる。
田中 , 樹
園田, 直子 Sonoda, Naoko
和紙の当初の製法は溜漉法で,原料の繊維は予め短く切断された後,臼などで搗かれてから使用されていた。繊維を短くし,フィブリルを発生させることによって,しなやかで,よく結合しあう繊維に変えていたのである。一方,現在の手漉和紙では流漉法を主流とし,原料の持ち味をなるべく損なわないように生かして使っている。紙を特徴づける普遍的で客観的な基準を導きだすための準備として,ここでは,紙の代表的な原料の繊維の形態の特徴をまとめた,標準となる写真資料を作成した。その際,原料の持ち味を生かして漉いた紙(コウゾ,クワ,ガンピ,ミツマタ,竹,稲わら)のみならず,古代の溜漉法に準じて原料を処理してから漉いた紙(アサ,カラムシ,コウゾ,クワ,ガンピ,クララ)の繊維も試料とし,原料本来の形態の特徴が繊維の切断・叩解などの処置を経た後,どの程度まで残っているのかにも注目している。偏光顕微鏡での単ニコル・直交ニコル下の観察と合わせて,染色後の繊維の観察も含めた。これらの繊維の形態の特徴が,紙から繊維を採取することなく,紙表面を観察することのみでどこまで読み取れるかの検討も行なっている。また,試料を採取せずに行なえる方法の検討の一環として,紙の特徴(厚みの均一性,糸の目・簀の目の有無とその間隔,繊維の分散の様子など)の記録に関し,画像瞬間校正紙の可能性とその限界を調べた。
古謝 瑞幸 Koja Zuiko
古謝 瑞幸 Koja Zuiko
古謝 瑞幸 Koja Zuiko
Кoнaгaя, Юки  堀田, あゆみ
新谷, 尚紀 Shintani, Takanori
太田 麻美子 矢野 夏樹 井口 佳子 小原 愛子 Ota Mamiko Yano Natsuki Iguchi Kako Kohara Aiko
近年、知的障害児者に対する特別支援教育の術要は高まり続けているが、実態把握や環境整備を含めた指羽・支援が的確でないことが指摘されている。そこで本研究では、自立や社会参加、QOLの観点から教育成果を評価することのできるSNEAT(Special Needs Education Assessment Tool)に基づいて、知的障害のある児童生徒を対象とした指羽・支援方法を分析することで、日本における知的障害児者に対する指導法の特徴を考察することを目的とする。分析の結果、日本における知的障害児の指蒋法の特徴としては、「心の健康」に関する指羽が多く、「体の健康」に関する観点を取り上げた指羽が少ないことが明らかになった。また、各領域の指羽法の特徴として、「体の健康」領域では、自身の体の状態を理解するための指導が多く行われており、「心の健康」では、学習への集中力や意欲を高めるために、写真や絵カードなどの視覚情報を用いたエ夫が多く行われていること、強化子を用いた指羽が多く行われていた。また、「社会生活機能」では、カードの使用やマカトンサインを用いた言語的コミュニケーション以外の方法も用いたコミュニケーション手段を用いる指導法が多いといった特徴があった。本研究の限界として、研究論文を中心とした指導・支援を対象としたため、教育現場での指導案や実践報告集などの分析には至っていない。今後の研究課題としては、それらの実践報告集に加え、海外論文を分析し国際比較を行うことでさらに知的障害児への効果的指羽法を考察する必要がある。また、現在の知的障害の定義は、適応機能に焦点を当てたものになっているため、適応機能の観点から指導法を考案・検証していく必要もあろう。
広田, 勲 富田, 晋介 中西, 麻美 縄田, 栄治 HIROTA, Isao TOMITA, Shinsuke NAKANISHI, Asami NAWATA, Eij
ラオス北部ウドムサイ県La郡Houay Phee村において焼畑休閑林と保全林とを比較することにより、焼畑休閑植生の変化を調査した。焼畑の火入れ後1~8年の休閑地と保全林(休閑期間20年以上の二次林)において、20m×20mのコドラートを設け、胸高直径3㎝以上の木本種について毎木調査を行い、優占樹種上位5種及び多様度指数を求めた。また、全天写真を撮影しコドラート内の開空度を求めた。木本のバイオマス量は火入れ後2年間緩やかに増加したが、3年目から急激に増加し、8年目まで増加し続けた。初期のバイオマス増加量に最も寄与していたのはタケであった。一方、保全林におけるタケのバイオマス量は全バイオマス量の5%以下であったが、タケ以外の木本種のバイオマス量は年数の経過に伴い緩やかに増加した。種構成については、保全林以外においてはトウダイグサ科の植物が優占した。その一方で、火入れ後年数の経過とともに、この地域の極相種として知られるブナ科やクルミ科の植物がみられるようになった。保全林においてはこれらの極相種が多く見られた。多様度指数は保全林で最も高かった。以上より、本調査地の焼畑休閑林の木本種はトウダイグサ科の種がまず現れ、休閑年数が増えるに従い、それらに代わってブナ科やクルミ科の樹種が現れるようになった。また休閑林全体を通じてタケがバイオマス量の大部分を占めた。今後タケのバイオマス量が急激に減少するとは考えにくく、さらにタケが木本種より初期成長が早いことから、休閑期間が減少すれば火入れのたびにタケが繁茂する可能性がある。その結果、主として休閑林から採取され、現金収入源として重要なNTFP (非木材森林産物) や自家消費用の植物資源が減少する可能性が示唆される。
三浦, 励一 倉光, 源 竹中, 祥太朗 Tembo, Elias Miura, Reiichi Kuramitsu, Hajime Takenaka, Shotaro Tembo, Elias
津波 高志 池田 榮史 町田 宗博 後藤 雅彦 石田 肇 土肥 直美 稲村 務 Tsuha Takashi Ikeda Yoshifumi Machida Munehiro Ishida Hajime Doi Naomi Inamura Tsutomu
研究概要:(平成18年度時点)研究第二年目にあたる本年度は調査対象地を奄美諸島のうち、徳之島と奄美大島に設定した。4月はまず琉球弧において洗骨儀礼が現在観察可能な与論に行き、洗骨儀礼の観察を行った。次に、概念構築のための比較例として沖縄側の墓制の変遷が明確に辿れる久米島を調査した。その後、徳之島・奄美大島に赴き、現地研究者との情報交換や聖地・葬地の踏査を行いながら、前年度に引き続き徳之島伊仙町面縄地区を中心に聖地・葬地の基礎的な調査を実施した。面縄地区は先史時代から近現代の葬地まで確認することができ、本研究の研究課題である聖地と葬地の関りを時間軸の中で捉えることができる地域として重要である。これらを踏まえて平成19年2月に伊仙町面縄地区において8日間の考古学的調査を実施した。考古班(後藤)は面縄の按司墓と伝承される積石遺構の実測と周辺地形の測猛調査を実施し、実測図を完成させた。また、徳之島でアムトと呼ばれている祭祀場において、所有者の了解を得た上でレーダー探査などの初歩的な調査を行った。文化人類学班(津波・稲村)は葬地を中心としたデジタル・データベースの構築と聖地・葬地に関するインタヴュー調査を行った。また、奄美大島では以前から継続調査をしている大和村において葬墓制に関する親族、儀礼、伝承の調査を行い、関連する文献資料の収集も行った。これらの資料はデジタル化された形で整理されている。形質人類学班(石田)は徳之島伊仙町における既知の出土人骨に関する情報を収集・検討を行い、町田は聖地、葬地および現在の集落、墓地などの関連性について航空写真や現地情報をもとに地理情報学的にGISを駆使して分析をすすめた。また、各分野での調査成果の共有と仮説や問題点の検討のために現地での打ち合わせを行い、今後の研究のフレームワークの構築を図った。
新城 俊也 Shinjo Toshiya
未風化島尻層泥岩について圧密圧60kg/(cm)^2までの圧密非排水セン断および25kg/(cm)^2までの圧密排水セン断を行い、 セン断特性を明らかにするとともに、 そのセン断特性におよぼすBjerrumによる地質学的履歴の効果を考察して次のような結論を得た。1.島尻層泥岩は微細な板状の粘土粒子が凝集してシルト径大のペッドを形成し、 そのペッドの集合によって構成されている。2.供試体の間ゲキ圧係数Bは1で、 飽和状態で平均2.3kg/(cm)^2のサクションを有する。3.セン断によるダイレイタンシーは破壊時付近に生じ、 明確な単一のすべり面付近に限定される。しかし、 高圧レベルでは破壊と同時に間ゲキ水圧が増加する。4.破壊包絡線はかなりわん曲を示し、 破壊規準としてMohrの規準が適用できる。5.Skemptomの間ゲキ圧係数A_fは圧密圧の増加により60kg/(cm)^2における0.49まで増加する。また、 間ゲキ水圧、 強度および破壊時の応力比から、 この泥岩のとりうるA_fの最大値は0.53として推算される。6.残留強度の定数はφ_γ=23°&amp;acd;25°である。7.鋭敏比はおよそ4で、 練返しにより結合力は破壊される。このことは逆に未風化泥岩のセン断特性に結合力が影響していることを示唆している。8.続成作用による結合力が力学特性におよぼす効果からこの泥岩の強度特性および間ゲキ水圧特性の説明ができる。また、 先行圧密荷重に相当する荷重は応力履歴と結合力の影響が消失する荷重と見なすべきである。9.変形係数と強度の比は練返し供試体に対し105 : 1、D-Testに対し70 : 1であるが、 CU-TestにおいてE_&lt;50&gt;=10.8(σ_1-σ_3)^&lt;1.635&gt;_&lt;max&gt;(kg/(cm)^2)の関係が成立する。終りに、 この研究を行う上で、 御助言と実験の便宜を取り計らって頂いた京都大学赤井浩一教授に心から感謝の意を表します。また、 顕微鏡写真は京都大学嘉門雅史講師の御好意によった。併せて謝意を表する次第である。
鈴木, 正崇 Suzuki, Masataka
伝承という概念は日本民俗学の中核にあって,学問の成立の根拠になってきた。本論文は,広島県の比婆荒神神楽を事例として伝承の在り方を考察し,「伝承を持続させるものとは何か」について検討する。この神楽は,荒神を主神として,数戸から数十戸の「名」を単位として行われ,13年や33年に1度,「大神楽」を奉納する。「大神楽」は古くは4日にわたって行われ,最後に神がかりがあった。外部者を排除して地元の人々の願いを叶えることを目的とする神楽で秘儀性が強かった。本論文は,筆者が1977年から現在に至るまで,断続的に関わってきた東城町と西城町(現在は庄原市)での大神楽の変遷を考察し,長いサイクルの神楽の伝承の持続がなぜ可能になったのかを,連続性と非連続性,変化の過程を追いつつ,伝承の実態に迫る。神楽が大きく変化する契機となったのは,1960年代に始まった文化財指定であった。今まで何気なく演じていた神楽が,外部の評価を受けることで,次第に「見られる」ことを意識し始めるようになり,民俗学者の調査や研究の成果が地域に還元されるようになった。荒神神楽は秘儀性の高いものであったが,ひとたび外部からの拝観を許すと,記念行事,記録作成,保存事業などの外部の介入を容易にさせ,行政や公益財団の主催による記録化や現地公開の動きが加速する。かくして口頭伝承や身体技法が,文字で記録されてテクスト化され,映像にとられて固定化される。資料は「資源」として流用されて新たな解釈を生み出し,映像では新たな作品に変貌し,誤解を生じる事態も起こってきた。特に神楽の場合は,文字記録と写真と映像が意味づけと加工を加えていく傾向が強く,文脈から離れて舞台化され,行政や教育などに利用される頻度も高い。しかし,そのことが伝承を持続させる原動力になる場合もある。伝承をめぐる複雑な動きを,民俗学者の介在と文化財指定,映像の流用に関連付けて検討し理論化を目指す。
縄田, 浩志 西尾, 哲夫 片倉, 邦雄 藤本, 悠子 河田, 尚子 古澤, 文 渡邊, 三津子 遠藤, 仁 石山, 俊
縄田, 浩志 片倉, 邦雄 藤本, 悠子 河田, 尚子 郡司, みさお 古澤, 文 渡邊, 三津子 遠藤, 仁 石山, 俊
山田, 慎也 Yamada, Shinya
死者儀礼においては,人の存在様態の変化により,その身体の状況と取扱い方に大きな変化がおきてくる。身体を超えて死者が表象される一方,身体性を帯びた物質が儀礼などの場でたびたび登場するなど,身体と人格の関係を考える上でも死はさまざまな課題を抱えている。
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本資料は、外務省外交史料館が公開している所蔵資料のうち、沖縄関係の資料を琉球大学島嶼地域科学研究所の我部政明教授が収集・整理し、独自のメタデータを付与したうえでウェブ公開するものである。
安達, 文夫 青山, 宏夫 田中, 紀之 徳永, 幸生 Adachi, Fumio Aoyama, Hiroo Tanaka, Noriyuki Tokunaga, Yukio
博物館の所蔵資料には,あるまとまりを以て資料群をなすものがある。この中には数千から数万の資料で構成されるものがある。また,文献資料では,その書面が10万におよぶものがある。このような大量の資料画像を公開するには,利用者が探そうとする画像の候補を効果的に提示することが大きな課題となる。
大城 史帆 Oshiro Shiho
近年メタンハイドレートなどの海底天然資源の海洋開発の進展により、深海探査が不可欠になっている。深海探査の他にも海洋養殖モニタリングやマリンレジャー等での水中ドローンも利用されており、世界中で自立型無人潜水機(AUV: Autonomous UnderwaterVehicle)の研究・開発が盛んになってきている。AUV の最大の利点はテザーケーブルを使用せずに完全に自立型で行動する無人潜水艦である。これらの研究・開発で必要不可欠となる水中音響通信は問題が多くあるが、その中でも以下の3 つの問題に焦点を当てた。(1) 問題1 : 有線長による探索エリアの制限現在の水中ドローンはほとんどの機種が有線接続で使用されており、探索エリアがワイヤーの長さによって制限されてしまう。有線接続での問題は探索範囲が制限されること以外にも岩場での断線の可能性などもあるため、無線化されたAUV が要求されている。(2) 問題2 : 定期的にAUV を母船へ回収する必要性問題1 でも提示した通り、現在使用されているAUV のほとんどが有線接続のため、テザーケーブルなしで使用するAUV を動作させるにはAUV 本体を定期的に回収し、中に入っているデータを回収する必要がある。(3) 問題3 : 海面や海底の反射波で発生するマルチパス水中で通信を行う際に発する送受信波は、垂直通信の場合、干渉はあまり発生せずに受信できるのだが、水平通信の場合は海面や海底に反射し、マルチパスが発生する。この問題が最も解決が困難とされており、マルチパス対策は必要不可欠となる。本研究はこれら3 つの問題に対して各自解決策を提案し、シミュレーション及び実験を行った。本論文は全6 章で構成されており、第1 章では研究背景と目的を述べる。第2 章では、本研究に使用する技術の基礎概要を述べている。第3 章では、問題1 と問題3 を解決するべくサイクリックプレフィックス(CP : CyclicPrefix)なしSTBC-MIMO OFDM による水平水中通信を提案した。従来、直交周波数分割多重(OFDM : Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を使用する際はシンボル間干渉(ISI : Inter Symbol Interference)やキャリア間干渉(ICI : Inter CarrierInterference)を防ぐため、CP をOFDM シンボルの下部から上部に付加して使用する。しかし、CP を付加することでOFDM のデータ容量が減少してしまう。そこで、CP を付加することなく干渉を対策し、OFDM 通信を行う事が可能かどうかを検討した。ISI はLeft Null Space の直交基底を使用して削除できる。ICI は最小平均二乗誤差(MinimumMean Square Error)の重みを使用することで削除する事ができる。実際にMATLAB にて2送信3受信及び2送信4受信のシミュレーションを行い、マルチパスによる遅延を改善する事ができた。第4 章では、先行研究を基にCP なしSTBC-MIMO OFDM による水平水中通信の研究をさらに改良し、斜投影(OB : Oblique Projection)方式を採用した性能向上を提案した。この方式は、最小二乗法(LS 法 : Least Squares Method)及びハウスホルダー変換によるQR 分解ベースのOB 演算子を使用して構造化ノイズを完全に削除することができる。シiiiミュレーションでは2 送信3 受信及び2 送信4 受信で行い、2 マルチパスと多マルチパスの環境で比較を行った。両環境でもマルチパスによる遅延を抑圧する事ができた。実際に静岡県沼津市の内浦湾で行われた海洋実験では、従来通りのCP ありOFDM システム、何も対策していないCP なしOFDM システム、そして提案したCP なしSTBC OFDM システムのこれら3 つの環境で比較実験を行った。従来方式は何も問題なく通信する事が可能であり、何も対策していないCP なしOFDM システムは干渉の影響を最も受け通信が不可能だった。提案したCP なしSTBC OFDM システムでは遅延を抑圧する事ができており、従来方式同様安定した通信を可能とした。第5 章では、問題1 及び問題2 に焦点を当て、32kHz 帯域幅の水中小領域音響ネットワーク(USAAN : Underwater Small Area Acoustic Network)を使用したプロトタイプの無線水中ロボット制御システムを開発した。このテーマは沖縄高等工業専門学校、その他複数の民間企業と共同研究しており、水中ドローンチームとシステム開発チームに分かれて行った。琉球大学が担当したのはシステム開発チームである。時分割複信(TDD :Time Division Duplex)及びドップラー補正を使用したシステム構成となっており、1 つの基地局と複数のユーザー機器(UE : User Equipment)で無線サービスエリアを作成し、基地局は1.0 秒毎のダウンリンク(DL : Down Link)を送信する。そして、空きスロット中にUE の1つがDL 信号と同期し、アップリンク(UL : Up Link)信号を送信する方法である。今回はTDD-USAAN の有効性を確認すべく、CP は付加したまま行った。シミュレーション結果はドップラー補正が働いており、コンスタレーションの乱れは改善した。静岡県沼津市内浦湾のバージで行われた海洋実験では、16QAM のコンスタレーションは正常に確認された。その後、プロトタイプ無線水中ロボットに組み込み、水中ロボットを実際に制御することに成功し、水中ドローンで撮影した240x213 ピクセルの水中写真をリアルタイムでアップロードする事に成功した。第6 章では、問題1 から問題3 の全てに焦点を当て、2 つの先行研究を基にチャネル伝達関数(CTF : Channel Transfer Function)と初期同期を備えたUWA OFDM 通信システムを提案した。データを受信した際、初期伸び縮み係数β1 を検出するため、OFDM 信号の先頭へ2 つの長いチャープ信号を挿入して周波数差を検出する。その後その値を初期値に適用する事でドップラー補正を行う。CTF ではコンティニュアス・パイロットを使用して検出した値と本来の値のずれを計算し、修正したCTF を使用して等化した結果を出力する。シミュレーションでは提案する方式の方が安定して通信できており、コンスタレーションも歪みを改善する事ができた。無反響プールでの実験はCTF 補正ありとなしを比較し、CTF 補正ありの方がコンスタレーションもクリアに受信できた。最後に第7 章では本研究の成果についてまとめ、冒頭で掲げた3 つの問題点に対応した提案の有効性を明らかにする。そして、今後の展望を述べる。
山田, 慎也 Yamada, Shin'ya
現代の葬送儀礼は,告別式の成立と葬儀産業の成長が基底にあって構築されている。告別式は人口の流動性の高い都市に合致した葬儀形態であり,葬儀産業は,流動化によって弱体化した地域コミュニティーを補完することで成長していった。これらの変容は,近世以来継続した葬儀の中心的儀礼である葬列が肥大化した結果,近代化の中で流動化する都市住民の葬儀としては適合しなくなることで次第に廃され,告別式に代替していったことは,近代の葬制研究のなかで明らかにされている。よって当時の葬列の肥大化の解明は,その後の葬儀の変容を考える上で重要な要素であり,より詳細な検討が必要とされる。
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