本稿は,本誌12号に掲載した筆者の論考(朱京偉2002)の後を受け,明治初期以降,つまり,西周と『哲学字彙』初版以降の哲学用語と論理学用語の新出語を特定し検討することを目的とする。そのために,考察の範囲を明治期の哲学辞典類から哲学書と論理学書に拡大して,選定した31文献の範囲で用語調査を行い,個々の用語の初出文献をつきとめた。また,新出語の特定にあたり,抽出語を「哲学書と論理学書共通の用語」と「哲学書のみの用語」「論理学書のみの用語」に3分類した上,その下位分類として,さらに,「出典なし」「『漢詞』未見」「出典あり」「新義・分立」の4タイプに振り分けた。それぞれの所属語の性質を検討した結果,明治初期以降の新造語として,191語をリストアップしておいた。ただし,本稿で用いた方法は,哲学と論理学にしか使われない専門性の強い用語については,その初出例を求めるのに有効であるが,一方,哲学と論理学以外でも使われるような汎用性の高い用語については,哲学書と論理学書の範囲で初出例が明らかにされたとはいえ,他の分野でも使われている可能性があるため,今後は,その初出例の信憑性を検証しなければならない。