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岩崎 保道 Iwasaki Yasumichi
本稿は、琉球大学における教員業績評価の改善の検討結果との比較検討を次の展開により行うものである。第一に、本学における教員業績評価の取り組みを紹介する。第二に、国立大学に対する教員業績評価に関するアンケート調査報告を行う。第三に、教員業績評価に関する訪問調査結果を報告する。第四に、アンケート調査結果と本学との比較検討を行う。第五に、本学の教員業績評価の改善方策を示す。
金城 かおり Kinjo Kaori
本研究では、琉球大学で勉学・研究した元留学生及び現在在籍中の留学生を対象に実施したアンケート調査の結果を基に、大学における留学生の学習環境や支援活動に関する現状と問題点を明らかにすることを目的としている。アンケートでは、本学での研究や留学生活に対する満足度、留学中の問題点や相談相手、教職員の対応や大学による留学生支援についての満足度、さらに留学の効果等について調査・分析し、琉球大学における留学生支援体制の今後の課題について考察する。
尾崎, 喜光
当研究室の任務と,これまでおこなってきた敬語行動関係の調査をまず紹介する。その後で,これまでの敬語行動調査の展開として最近おこなった「学校の中の敬語行動調査」について,調査の方法・観点・データの処理方法を概説し,面接調査の文字化のサンプルとアンケート調査の集計結果の一部を示し,そこからわかることを指摘する。
竹田, 晃子 鑓水, 兼貴 TAKEDA, Koko YARIMIZU, Kanetaka
痛みを表す言語表現のうち動詞ウズクの使用実態について,約18万人を対象に行ったアンケート調査「慢性痛とその言語表現に関する全国調査」をもとに,地域差を中心に世代差・用法差を明らかにし,その背景を考察する。
金城 宏幸 上里 賢一 前門 晃 野入 直美 鍬塚 賢太郎 比屋根 照夫 中村 完 Kinjo Hiroyuki Uezato Kenichi Maekado Akira Noiri Naomi Kuwatsuka Kentaro Hiyane Teruo Nakamura Tamotsu
研究概要:(平成19年度時点)本研究では、米国をはじめとする海外の沖縄系コミュニティと日本における沖縄社会の多様性・特殊性・普遍性を解明しつつ、その越境的かつ重層的なネットワーク化のダイナミズム、すなわち新たな社会形成と地域活性化の可能性について検証した。具体的には以下の諸点を明らかにした。(1)海外(国内)における沖縄系コミュニティに関する実態調査県人会活動などが活発な北米を主に、南米及びフィリピンなどにおいて沖縄系コミュニティの実態と越境的なネットワーク形成に関する現地調査を実施し、比較研究を視野に入れた分析を行なった。並行して、国内の主要地域における県人会組織や活動の変化について資料収集と聞き取り調査を行った。(2)「第4回世界のウチナーンチュ大会」でのアンケート調査の分析2006年10月に沖縄県において開催された第4回世界のウチナーンチュ大会で実施したアンケート調査や聞き取り調査の集計・検証を継続し、分析結果をまとめた。同時に、沖縄県および他の地域における越境的なネットワークの拠点形成に関する動向を把握した。(3)調査結果の報告及び調査資料集と研究成果報告書の刊行今後の分析や考察、情報の共有などを目的に、各人が行った過年度および今年度の調査データ等をとりまとめ、調査資料集と研究成果報告書を刊行した。また、アンケート調査などに協力いただいた県系人や関係者に成果を還元するため、最終的な成果報告書をまとめる前に英語版の資料集を作成し、ロサンゼルスとハワイにて成果報告会(フォーラム)を実施した。
神田 雅貴 Kanda Masaki
(目的)子どもの小学校入学を控える保護者を対象とした家庭教育講座の実践を、参加者のアンケートなどから、その成果と課題を明らかにし、今後の講座開催方法を考察する。(調査方法)6校で実施された「親の学習」の参加者にアンケートを実施し、156人から回答を得た。さらに、筆者及び生涯学習課職員が講座に立ち会い、参与観察を行った。(調査結果と考察)アンケートの結果から、学習目標である「小学校入学半年前という時期をふまえ、保護者が行うべきしつけや関わりについて学ぶこと」については、効果が認められた。さらに、約半数の参加者が小学校入学後の心配や不安を感じており、具体的には、子ども同士、もしくは保護者同士の人間関係であった。そのことをふまえ、人間関係構築を支援できるような講座形態・内容を実施する必要性が示唆された。
山田 恭子 盛山 泰秀 鹿内 健志 廣瀬 等
本稿では,高校生が進路を選択する際に,誰に相談しているのかを明らかにし,その結果と沖縄県,琉球大学の現状を踏まえて実施した入試広報イベントの報告を行なう。まず,沖縄県内の高校生に実施したアンケート調査により,主な相談相手は保護者であることが明らかになった。さらに高等学校へ聞き取り調査を実施し,イベントの内容を検討した。これらの結果を踏まえて,保護者・高等学校教職員向けの入試広報イベントを全学部と学生部協力のもと実施した。実施後には参加者のアンケート,参加した高等学校の教員からの聞き取りをし,課題を明らかにした。その課題に対応して次年度以降も同様の入試広報イベントを実施する予定である。
下地 敏洋 Shimoji Toshihiro
本稿は、平成22年度教員免許更新講習において、著者が担当した「教育の最新事情」を受識した沖縄県の教職員に対してアンケート調査を実施し、その結果分析に基づき、教職員の高齢者に対する理解及び高齢期に対する意識の特徴を検討することを目的とする。
伊藤, 雅光 ITŌ, Masamitsu
このアンケート調査は1991年現在における海外のテキスト・アーカイヴの管理・運営状況を明らかにするとともに,その問題点を抽出して,今後のテキスト・アーカイヴ開設の可能性を討議する際の資料を提供する目的で行われた。主な問題点としては次の諸点が浮び上がってきた。
Shibata Miki 柴田 美紀
日本全土の約0.6%にすぎない沖縄県に在日米軍基地の75%が集中している。本研究では、米軍基地の教育的利用の可能性について沖縄県の英語教員にアンケート調査とインタビューを行った。アンケート調査に参加したのは、県内の中学校、高等学校、大学で英語を担当する日本人教員210名、うち22名にインタビューをした。本研究は文部科学省の科学研究費の助成を受けて行われた研究の一部で、実施したアンケートには13項目あったが、ここではアイデンティティーに関わる7項目の分析結果を考察する。アンケート結果は、日本人英語教員が持つ複数のアイデンティティーが基地の教育的利用の可能性に対し複雑に関与していることを示唆している。生徒の英語力上達を目指す英語教員としてその可能性を否定しない一方で、「教員」という公的な役割と沖縄社会を構成する県民として英語教育の目的であっても米軍基地に公に働きかることや自らが交流を働きかけることに消極的であり、基地はやはり政治的・社会的な問題であり教育とは切り離すべきであるという態度が明らかになった。また、英語教員のインタビュー回答から、県内にある米軍基地と沖縄社会は、フェンスという物理的な隔たりがあるだけでなく、沖縄県民にはその存在は心理的にも遠く、基地の教育的利用の可能性は公には皆無に近いと考えられる。
島村, 直己 SHIMAMURA, Naomi
本稿は,児童の漢字学習の仕方に関して行ったアンケート調査の報告である。児童が漢字を使用する(読んだり書いたりする)機会そのものが,漢字を学習する(または学習し直す)重要な機会でもあるという考えから,児童の無自覚的な漢字の学習行動を対象としたところに特色がある。本稿の構成は,次の通りである。
福本 晃造 Fukumoto Kozo 小林 理気 Kobayashi Riki 宮国 泰史 Miyaguni Yasushi 杉尾 幸司 Sugio Koji
幼児(5歳児)を対象とした幼稚園での科学実験教室を実施し,授業前後でのアンケートを取ることで科学実験教室前後での幼児の意識や行動の変化について調査を行った。調査の結果,授業前に「電気」や「宝石の作り方」などまだ幼児が具体的なイメージを持っていないことがらについて質問した場合,幼児は他者と同じ回答を選ぶ傾向が強く,一つの選択解に集中する傾向があることが示された。一方で、具体的なイメージを持つことができた授業後には,他者の回答よりも自分が授業で取得した具体的イメージに基づいて回答する幼児が増え,選択解は授業前アンケートより分散する傾向が見られた。この結果は幼児期において様々な「体験」をすることが,幼児自身が自分の意見を述べることに有益な影響を与えている可能性を示す。
中山 睦子 丹野 清彦 Nakayama Mutsuko Tannno Kiyohiko
本稿の目的は,基礎的・汎用的能力のアンケートを通して,沖縄の公立中学校のキャリア教育の課題を検討することである。アンケートの調査は,宮古島市,那覇市,沖縄市の3地区,公立中学校で行った。3地区それぞれ規模や地域の特色の違いもあるが,共通するプラスの傾向と課題が浮き彫りとなった。プラスの傾向として人間関係形成・社会形成能力が挙げられる。一方,ストレスマネジメントや忍耐力と言った自己理解・自己管理能力は低い傾向を示し課題であると言える。那覇市の1校は,6月と12月の2回実施することで変容の分析を試みたが,さほど変化は見られなかった。それは何を意味するのか。教育的な意図の必要性とPDCAサイクルで実践するキャリア教育の重要性を論じた。
本村 真 Motomura Makoto
沖縄県内の児童養護施設における被虐待児童へのケア技術の実態に関する県内の直接処遇職員全員を対象にしたアンケート調査及び、同職員を対象にした研修会、そしてそれら研修会実施後の研修内容に関するアンケート調査を実施した。これらの分析から、被虐待児童へのケア技術として基礎となる職員自身が冷静さを保つ技術や、コミュニケーション技術等に関して、沖縄県内の現状及び課題を明らかにしていく。そして、その課題を克服し、今後更に被虐待児童へのケアを向上させるために有効であると考えられる理論や具体的ケア技術を特定していく。\nこれらを分析していく上で、本研究ではトラウマ記憶論理を中心に据えた。被虐待児童及び職員自身のトラウマ記憶が日常的なケアに及ぼす悪影響を軽減し、信頼関係の形成と問題行動への効果的な援助を行うために必要な知識・技術としてどのようなものが必要なのかを考えていく。
比嘉 俊 Higa Takashi
本研究は,持続社会に向けた市民育成のために外来生物を教材化し,その実践を生徒アンケートから考察した報告である。外来生物を教材化するにあたって,外来魚と在来魚の混合飼育,地域フィールドにおける外来生物の確認調査を行った。これらの調査結果をまとめ,外来生物に関する教材を作成し,試行授業を行った。授業後の生徒のアンケートから,生徒は外来生物の知識が身についたこと,外来生物の授業を肯定的に評価していることが確認できた。また,外来生物への対応策として生徒は,個人でできることと社会でやることの両面から対応策を提案していた。対応策についてはよく行われいる殺処分を良しとせず,外来生物の立場になって考え,生き物の命を大切にする生徒コメントもみられた。外来生物を通して市民として今の環境をどのように保全するかについての話し合いを生徒は行っていた。外来生物を教材とした理科授業実践はまだ少なく,今後の実践の蓄積が期待される。
緒方 茂樹 Ogata Shigeki
本研究では、宮古圏域における公立学校を対象とし、通常の学級に在籍すると思われる特別な支援を必要とする子どもや特殊学級の実態、あるいは教員の抱えている困難や悩み、支援ニーズを把握することを目的とした悉皆調査を実施した。また調査結果とあわせて、地域ニーズを踏まえた今後の特別支援教育における養護学校のセンター的役割についてもまた考察を加えた。アンケートの回収については宮古養護学校との共同研究として進めたことから、全体で7割を上回る高い回収率を得ることができた。調査の結果、特別な支援が必要と思われる子どもが学級にいると回答した学級担任は、小学校では約26.83%、中学校では25.00%、幼稚園では5.56%、全体では24.41%となっていた。またその人数は対象人数5445人中66人で、その割合は1.21%であった。一方、養護学校に期待する機能として「情報提供機能」が最も多く、次いで「教育相談機能」、「コンサルテーション機能」となっていた。今回のアンケートで得られた結果は、今後宮古養護学校が地域のニーズを踏まえた特別支援教育センター校としての役割をさらに充実させるための基礎的資料となるものと考えている。
神谷 大介 Kamiya Daisuke
研究概要(和文):沖縄県の離島市町村を対象とした社会調査をもとに、主として観光との関わりから地域の渇水問題を整理・構造化した。そして、地域社会環境変化と水需要構造の変化の分析、および観光用水量の明確化を行った。これらをもとに、座間味島における観光客増加等に関するシナリオ分析を行った。また、4つの離島市町村を対象としたアンケート調査より、島嶼環境の違いと水に対する意識の相違点、さらには水利用実態の違いを明らかにした。
嘉数 朝子 上地 亜矢子 新城 直美 永山 加奈子 Kakazu Tomoko Ueti Ayako Sinjyo Naomi Nagayama Kanako
那覇市立Y幼稚園で行われた子育て支援晦業、未就園児の親子登園を対象として、アンケートや参与観察および参加者へのインタビューなどを行い、保護者のニーズを明らかにし、沖縄県の公立幼稚園における子育て支援のあり方を考察した。子育てをする際に必要な支援についてのアンケート調査からは、母親のニーズは子どものための場、親のための場、相談・情報、金銭の4つに分類された。未就園児親子登園についての8ヶ月におよぶ参与観察とインタビューの結果から、Y園の「ゆるやかな集団で制約が少なく自由」な特性が明らかになった。幼稚園における子育て支援の4課題;(1)教諭の専門性、(2)物理的環境整備、 (3)行政との協力体制、(4)子育て支援の効果(+-の両))が検封された。
内藤 重之 藤田 武弘 大西 敏夫 佐藤 信 網藤 芳男 室岡 順一 大浦 裕二 片岡 美喜 Naitoh Shigeyuki Fujita Takehiro Onishi Toshio Sato Makoto Amifuji Yoshio Murooka Junichi Ooura Yuuji Kataoka Miki
研究概要:(平成19年度時点)全国47都道府県の教育委員会・農政部局・学校給食会及び人口5万人以上都市の教育委員会を対象として昨年度に実施したアンケート調査の結果を分析した。その結果、1.ほとんどの都道府県が地産地消型学校給食を推進する事業・施策を実施しており、地産地消推進計画や食育推進計画にもそれを明確に位置づけていること、2.都道府県学校給食会でもそのほとんどが県産米や地場産物を使用した加工・冷凍食品を取り扱うようになっていること、3.人口5万人以上都市では単独調理方式と共同調理方式を併用する自治体が増加しているが、生鮮品の食材購入は単独購入方式が多く、約9割の自治体が市内産野菜を使用するなど地場産物の使用が伸展していること等々を明らかにした。また、先進事例分析として「共同購入+共同調理方式」の北海道帯広市、「単独・共同購入併用+単独・共同調理併用方式」の群馬県高崎市、「単独購入+単独調理方式」の大阪府寝屋川市・和泉市、「単独購入+共同調理方式」の沖縄県名護市及び県学校給食会を中心に地産地消型学校給食の推進に取り組む埼玉県を対象に実態調査を実施し、地産地消型学校給食の推進に向けた取組の内容ならびに関係主体の連携と役割分担のあり方について解明した。さらに、地元農産物を学校給食に導入している高崎市内小学校4校の5~6年生児童(約500人)及びその保護者(約500人)に対してアンケート調査を実施し、地産地消型学校給食が食生活に及ぼす効果(農業、食に関連する知識量など)について明らかにした。また、児童自身が野菜を栽培し、収穫物の一部を学校給食の食材として活用している大阪府寝屋川市の小学校を対象に、その食育効果についてアンケート調査及び児童作文をデータとしたテキストマイニングによって解明した。その結果、近隣の農業者による施設栽培(生産物)への驚きと尊敬、自分の収穫物を給食や家庭に供することへの自尊感情や達成感などの効果が見いだされた。
名護 麻美 タン セリーナ 當間 千夏 東矢 光代
この事例報告では、2021年3月に実施した世界展開力強化事業のオンライン型短期研修プログラム(「太平洋島嶼地域特定課題プログラム」)の概要を紹介するとともに、プログラムの自己点検・評価をふまえた質保証を伴う教育効果を分析し、効果的なオンライン型研修プログラムを構築するための取り組みの整理を試みる。教育効果に関する分<br/>析は、BEVI(Beliefs、 Events、 and Values Intentory)によるアセスメントと学生への事後アンケート調査を用いた。分析結果から、海外連携大学の学生、日本人学生ともに社会的開放性が元々高い参加者の集団で、研修後はさらに環境への関心や異文化理解に通ずる国際志向性が向上したということがわかった。またアンケートの質的回答からも本<br/>プログラムに対する参加者の満足度が高かったことが伺える。本研修の取り組みが今後オンライン型研修プログラムを実施する際に参考となりえる。
安藤 由美 Ando Yoshimi
本稿では沖縄の都市家族を対象に、家族規範意識の構造と要因についての分析を行う。まず、沖縄の家族意識への接近方法について検討した後、家族意識のアンケート調査結果の集計分析を行い、これを川崎市ならびに沖縄県北中城村を事例とした先行研究と比較する。つづいて、家族意識の構造と要因を多変量解析により析出する。結論として、父系直系制家族規範意識は、同居・扶養および位牌継承の側面にみられることが明らかにされる。
西原, 鈴子 NISHIHARA, Suzuko
文はその論理的命題内容のほかに,「言外」の意味を多く含んでいる。それらの中から話者の価値判断を選び,モダリティーの概念の中でそれを把握し,慣用的含意として語の意味素性,法演算子,および表現意図として抽出,分類することを試みた。さらにそれらの諸要因が,異言語間伝達にどの程度耐えるかを探る目的の一環として,日→英翻訳の可能性についてアンケート調査を行なった。本論はその報告である。
山野 善正 平松 修一 玉城 一 酒井 映子 YAMANO Yoshimasa HIRAMATU Shuichi TAMAKI Hajime SAKAI Eiko
苦味、渋味食品の健康への影響について、女子大生に対し実施したアンケート調査の中で、ゴーヤについてはBMIやその他の健康指標に良い結果を与えている可能性があることが示唆された。味覚センサーで測定したゴーヤの部位の味は明確に異なった。また、品種、系統によっても各種の味は異なり、それぞれの調理適性に対し有用な示唆が得られた。本研究の一部は、平成23年度南方資源利用技術研究会研究助成金により実施した。
山元 淑乃 金城 尚美 Yamamoto Yoshino Kinjo Naomi
本研究は、ハワイ在住の沖縄県系人に焦点を当て、日本語学習意欲と学習目的、留学に対する意識、沖縄文化に対する関心度を調査することにより、沖縄県系人にとっての日本語学習ニーズ、継承言語または外国語としての日本語学習の位置づけ、沖縄文化に対する興味と留学希望との係わりを明らかにし、沖縄県系人の沖縄留学促進のための課題を探った。アンケート調査により、世代の推移に伴い日本語運用能力の低下がみられる反面、日本語学習や沖縄留学に対する意欲は若い世代の方が高くなる傾向があるという結果が得られるとともに、今後の沖縄留学促進に向けた課題が浮き彫りになった。
中村 真也 森 麻里子 宜保 清一 Nakamura Shinya Mori Mariko Gibo Seiichi
糸満市字与座を対象に農村公園整備にむけての住民の意識を把握するためにアンケート調査を実施し、 以下の結果を得た。与座地区では、 湧水の「与座ガー」および「与座馬場」は地域資源として高く評価されている。「与座ガー」は親水空間として、 「与座馬場」は健康空間および自然と親しむ場としての整備が期待されており、 これらの整備は、 利用しやすいように散策道も併せ計画されることが望まれる。与座区では村づくりに対する住民の参画意欲が高いので、 農村公園のような施設の整備後の維持・管理に期待が持てる。
望月 道浩 Mochizuki Michihiro
2009年度から2011年度にかけて、琉球大学の教職科目(「教育課程」科目)を履修する学生に対し、各自の小学校・中学校・高等学校時代を振り返ってもらいながら学校図書館の利活用経験に関するアンケート調査を実施した。調査対象者は390名(回答者数262名)である。学生の学校図書館の授業での利活用経験の実態は、「図書館の利用の仕方」、「本の並び方(分類)」、「本の探し方(目録)」、「百科事典などの使い方(索引)」については、概ね学習経験があるものの、「レポートの書き方」、「引用の仕方」については、8割以上学習経験がないと回答した。教職課程を履修している学生にとって、高等学校段階までの学校図書館利活用経験がない場合、教員として最低限必要と思われる図書館機能への理解度についても否定的な回答をしていることが明らかとなった。
Chen Bixia Nakama Yuei Konoshima Masashi 陳 碧霞
本部町の備瀬・今帰仁村今泊・渡名喜島などに現存するフクギ屋敷林は、その推定樹齢から、その多くが18世紀の30年代以降に、王府によって計画的に造成されたものであることが、これまでの調査研究でわかってきた。フクギ林が選抜された最大の理由は、フクギのもつ多機能性(たとえば、潮害や台風からの防備、津波などからの防災、防火樹、建築材、染料など)に起因している。しかし、これらのフクギ林は、沖縄戦と終戦直後の木材不足による乱伐や開発によってそのほとんどが消滅した。現在では、一部の地域でその面影をみるのみである。フクギ屋敷林をどう保全し、今後、どのように活用すべきか、その方策に関する研究はほとんど見られない。本報告の目的は以下の2つである。第1は、フクギ屋敷林について、地域の住民がどのような意識をもっているか、アンケート調査から、この点を明らかにすることである。第2は、CVMの手法を用いて、フクギ屋敷林の多面的な価値の評価を行い、それによって住民や行政による保全対策の在り方を考察することである。CVMとは、一般の市民に対してアンケートを行い、仮想的な条件を想定し、環境保全や改善のために支払ってもよいと考える最大金額、すなわち支払意志額(Willingness to Pay; WTP)等を質問し、環境価値を評価する手法である。沖縄県でフクギの屋敷林が最も多く残されている3つの地域(沖縄本島北部の備瀬、粟国島、渡名喜島)でアンケート調査を行った。アンケート調査の結果、圧倒的多数の人が(91%)、フクギの屋敷林の存在意義を認めている。また、多くの住民の回答者や行政の回答から、フクギ屋敷林は住民の私的財産に属すると考えてもいることが分かった。回答者の約半数が、屋敷の所有者またはその村落共同体、地方自治体がフクギ屋敷林の保全に責任を負わなければならない、と答えている。屋敷林管理の放棄(たとえば空屋敷など)は、コミュニティ全体の集落景観や緑の空間によってもたらされる快適性の恩恵を大幅に低下させてしまうのではないかとの懸念もみられる。フクギ屋敷林を守っていくために「フクギ屋敷林保全基金」といったものを設立すると仮定し、回答者にフクギ屋敷林の保全基金にどの程度の支払い意志(WTP)があるのかを調査した。それによると支払い意志額(WTP)の1世帯当たりの平均値は,1、451円となった。なお,中位値を計算すると1、000円となった。支払い意志額の分析から,住民たちは全体としてフクギ屋敷林を評価していることが分かった。推計結果を見ると、「安定した収入源がある」と回答した者は,より大きなWTPを示していることが確認できた。また、「フクギ屋敷林を活用すべき」と回答した人のWTPも比較的高い数値を示した。以上のことから、フクギ屋敷林の保全に関しては、その評価に対する潜在的な意識は高く、新たな活用法を開発し、地域住民自ら保全活用する施策を見出して、それを行政側が支援して行く体制の構築が、今求められている。
DONG Erwei Arakawa Masashi 荒川 雅志
余暇(レジャー)が人々の健康に及ぼす影響について異文化間において検証された研究はこれまでほとんどみられず、日本において余暇活動および制約要因と健康との関係を明らかにしたものはない。本研究では、長寿地域として知られる沖縄県を対象に、本島都市部郊外部の間に位置し県高齢化人口比率に近似する北中城村において、余暇活動および余暇制約要因と健康に関するアンケート調査を実施した。調査表の回収総数は250(男性134名、女性116名)、回答者の平均年齢は71.1歳であった。分析の結果、余暇活動と制約要因と心身の健康に有意な関連が認められた。年齢、教育レベルと余暇活動および余暇制約要因にも関連が認められた。社会経済因子と健康には関連が認められなかった。ケースが少なく更なる調査が必要であるが、社会経済要因や文化背景要因が異なるアメリカ、台湾、韓国、中国で筆者らが実施してきた先行研究と比較可能な研究と考えられる。
葦原 恭子 Ashihara Kyoko
琉球大学では,独自に導入したURGCC というカリキュラムの学習教育目標の達成を目指し,外国人留学生が対象の生のニュース番組を題材とした聴解や口頭発表などの教室活動を実施する授業が提供されている。本稿は,このような授業の教室活動の一環として実施された「ニュース発表」を考察対象とする。まず,先行研究とURGCC から見た「ニュース発表」について述べ,次いで,活動に参加した学習者に対するアンケート調査の結果を分析した。その結果,本活動は,特に「自律性」「国際性」「コミュニケーション・スキル」を高める可能性があることが明らかとなった。
吉田 浩之 Yoshida Hiroyuki
児童生徒の生命・身体の安全を脅かす重大ないじめ事件が発生している。いじめは、緊急の教育課題であると同時に、社会問題化している。社会から注目される事件が発生する度にいじめ対策が強く求められ、文部科学省や自治体では対策が講じられている。本論では、大津市のいじめ事件を契機として動きがみられた文部科学省と自治体によるいじめ対策を取り上げるとともに、毎年文部科学省が実施するいじめ件数調査が実態を反映していない問題点を指摘しながら、今後のいじめの把握と解消にむけた方向性を示した。また、学校現場におけるいじめの把握にむけた課題を探るために、教師に対して著者自作のアンケート調査を行った。その結果、中学校に比べて小学校の教員が、いじめ件数の公表をすることによって教育活動に影響があると感じていることが示唆された。
新田 保秀 仲間 正浩 沖田 憲生 Arata Yasuhide Nakama Masahiro
本学部における小学校教員養成課程をとりまく情報教育環境を知る目的で、小学課程学生を対象にアンケート調査を行った。その結果、学生はコンピュータに対する関心は非常に高く、教育、趣味等の広い分野において、それを活用したいと思っているが、実際の情報関連科目の履修状況はきわめて低いことが明らかになった。そのギャップを埋め合わせ情報教育の推進を計るためには、教育学部において小学課程の学生を対象に、コンピュータの初歩的利用法、CAIソフトの利用法及び作成、マルチメディアの教育への活用等、学生の要求に沿うような、あるいは興味をそそる様な、魅力ある情報関連科目のクラスを開設する必要があろう。
深澤 真 Fukazawa Makoto
本研究は, 2020年に小学校で導入される教科としての英語(以下小学校英語)に向け,評価に対する教員の意識が外国語活動に比べどのように変化するかを調査し,小学校英語教育の一助とすることを目的としている。この目標のもと国公立の小学校12校の教員を対象に,外国語活軌,および小学校英語における9つの評価項目の重要度や活用する評価方法に関するアンケート調査を4件法で行った。調査結果の記述統計を検討するともに,外国語活動における評価の意識と小学校英語に対する評価の意識の変化を見るため平均値の比較も統計的に行った。その結果,小学校英語では,外国語活動に比べて,読む能力,書く能力,文法の知識の重要度が高くなる傾向にあることがわかった。また,活用する評価方法に関しては,筆記テストや小テストなど読む能力や書く能力を測る評価方法や,話す能力を測るパフォーマンステストなどの活用を考えていることもわかった。これらの結果を基に,小学校英語を評価していく上での教育的示唆を行う。
岡本, 沙紀 落合, 哉人 OKAMOTO, Saki OCHIAI, Kanato
絵文字は,1999年ドコモ「iモード」サービス開始以降日本で普及し,GメールやiPhoneが日本参入しUnicodeに登録されたことから世界中に広まった。以来,絵文字は単なる感情や挿絵を付加する記号の枠を超え,語用論的な研究の対象になっている。しかしながら,これまでの絵文字の用法に関する調査は,小規模なものや,自然言語処理的な手法のものが多かった。本研究では絵文字に馴染み深いと思われる15~40歳を対象に,1680個の絵文字の用法について,「体・用・相のうちどれを表すのに使うことができるか」を複数選択可のアンケートで調査した。その結果,顔の絵文字は体言性が弱く相言性が突出して強いこと,交通手段を用いる絵文字では用言性が顕著に高いこと,また食べ物と動物は共通して強い体言性と弱い相言性が見られたが食べ物の方が用言性が強いことなど,絵文字の意味によって特徴ある分布が見られた。
金城 克哉 副島 健作 Kinjo Katsuya Soejima Kensaku
平成15年度前期のまとめの活動として初級レベルの日本語クラスでプロジェクトワークを行った。中学校を訪問し、 留学生が自国について紹介するという活動である。本稿ではその過程について述べ、 その後の留学生へのアンケート調査の結果をまとめ、 地域との交流をとおしたプロジェクトワークの試みの教育的効果や問題点を検討した。調査の結果、 留学生は今回のプロジェクトワークを高く評価していることがわかった。とくに、 教室で学んだ日本語を応用したり、 発表の技能を身に付けたりすることができたという言語技能が向上したという達成感が得られ、 日本の中学生について知り、 また自国を紹介することで、 異文化理解が深まったと学習者が感じていることがわかった。一方で、 1) グループ活動として適切なテーマ設定だったか、 2) プロジェクトワークを行う時期として適切だったか、 3) 発表の技能の指導が十分だったか、 といった問題点も明らかになった。
小柳 正弘 田中 朋弘 中村 直美 永田 まなみ 小川 寿美子 本村 真 Koyanagi Masahiro Tanaka Tomohiro Nakamura Naomi Nagata Manami Ogawa Sumiko Motomura Makoto
研究概要:この研究は、「自己決定」の原理を理論的かつ実証的に検討したものであり、\n実証的には、医療従事者の自己決定認識に関して医師や看護師を対象にアンケート調査を行い、\n理論的には、思想史における自己決定概念の系譜を探索するとともに自己決定の現状を批判的に分析した。こうした調査・探索・分析が総合的にあきらかにしたのは、自己決定は、原理的にいって、(他者をしりぞける)「「私」の自己決定」と(他者をとりこむ)「「私たち」の自己決\n定」の両者が錯綜したものであるということであり、こうした考察をふまえて、私たち人間が\n(「私」でも「私たち」でもあるという)社会的自我であることを、自己決定が有意義なもので\nあるための前提となる自由の理念(「私-たち」の自由)として提起した。
Shibata Miki 柴田 美紀
本研究は、プロセス・ライティングによる英作文の授業で日本人英語学習者の英作文に対する意識がどのように変化するのかを調査した。プロセス・ライティングでは、最終的なドラフトに至るまでの過程を重視し、客観的に自分のドラフトを評価し推敲していく。本研究では、2年次の英作文の授業を履修した大学生11人を対象にアンケートを実施し、分析した。結果は、プロセス・ライティングの指導を通し作文に関わるプロセス及びステップを理解することはできたが、客観的に自分のドラフトを推敲していくことにはかなりの困難が見られた。また、学習者は、英作文を推敲するため英作文の教員に具体的な指示を求めていることもわかった。この結果は、日本人学生がこれまで受けてきた最終原稿を評価の対象とする英作文指導とプロセス・ライティングとの間にギャップがあることを示唆している。アンケートを回答した学習者は、これまで中学校・高校の英語の授業では作文においても文法的な正確さが重視され、自分の意見を英語で表現する機会はほとんどなかった。つまり、プロセス・ライティングで必要とされるクリティカル・シンキング(批判的思考)が教育現場において強調されることがなく、「自分のドラフトを客観的に見る」とはどういうことかに対する理解の欠如が、プロセス・ライティングが日本の英作文指導ではうまく機能しない理由として考えられる。
大田 伊久雄 鎌倉 真澄 Ota Ikuo Kamakura Masumi
我が国において森林認証制度の普及はあまり進んでいないが,その原因として川下側では認証制度の認知度が低位であること,川上側では認証製品への価格プレミアムがないために認証取得のメリットが感じられないことが考えられる。そこで本研究では,消費者を対象としたアンケートと認証木材製品の販売実験により,価格プレミアムの存在可能性を検証した。アンケートはインターネットを用いて行い,20代から60代までの432人から回答を得た。その結果,森林認証制度を知らなかった人は全体の8割を超えたが,制度の解説をした後に認証製品に対する上乗せ価格の許容限度を尋ねたところ,5%までが24.1%,10%までが13.4%など合計で44.9%の人が上乗せ額を許容すると回答した。また,インターネットショップにおいてヒノキまな板の認証製品と非認証製品を同時に販売する実験を行ったところ,認証製品価格を10%高くしたときは10.1%,5%では28.0%の購入者が認証製品を選んだ。アンケート結果と販売実験結果は直接的に相関するものではないが,販売実験の結果からは価格プレミアムの存在が実証された。
中山, 恵利子 NAKAYAMA, Eriko
1997年,1998年に厚生省(当時〉がカタカナ語の適正化を図るための通達を出したにもかかわらず,2000年に導入された介護保険制度の用語にはカタカナ語が目立つ。そこで,実際の現場で高齢者に対してどの程度カタカナ語が使われ,高齢者がどの程度理解しているのかを,高齢者と介護サービス提供者双方へのアンケート調査ならびに聞き取り調査により調べた。その結果,次のようなことがわかった。(1)介護現場では,カタカナ語のほかにカタカナ略語,カタカナ語の辞書的説明,生活場面に即した言い換え語などさまざまな言葉が併用されている。(2)高齢者に対する介護サービス提供者のカタカナ語の使用には配慮が見られるものの,高齢者が理解していないのにカタカナ語が使われている可能性も高い。(3)厚生省が通達した言い換え語は介護現場ではあまり使われていない。(4)カタカナ語に拒否反応を示す高齢者は少なくない。
金 彦志 方 貴姫 韓 智怜 韓 昌完 Kim Eon-Ji Bang Gui-Hee Han Ji-Young Han Chang-Wan
障害学生のための文化芸術教育が特殊学校において様々な形で実施されているが、障害学生のための具体的かつ長期的な支援策が設けられていないのが現状である。これにより学校現場での文化芸術教育活性化に困難があると言える。本研究では、障害学生の文化芸術に関する先行研究の考察と特殊学校における障害学生文化芸術教育の実態把握を通じて、今後の学校教育課程における障害学生文化芸術支援の方向に対する政策案を提示した。特殊学校文化芸術教育の実態調査では、韓国の特殊学校153校を対象に実施しており、音楽教科の場合、118校(77.1%)の担当教師181人が回答し、美術教科の場合、98校(64.1%)の担当教師154人が回答している。アンケート調査の結果をもとに、芸術教科担当教師の専門性の確保、芸術教科プログラムの多様性の確保、文化芸術教育環境の改善と専門人材のネットワーク構築など、特殊学校で適用可能なサポートの方向を提示した。
志村 健一 牛窪 潔 與那原 建 Shimura Kenichi Ushikubo Kiyoshi Yonahara Tatsuru
研究概要:研究では経営戦略論的視角からの実証分析を行い、成功した中小企業は問題解決活動を通じたノウハウの蓄積(直接ルート)と、日常業務活動を通した副次的なノウハウの蓄積(業務ルート)をうまくミックスさせながら情報的資源を蓄積しているという特徴を確認した。また管理者の管理責任行動については、コーチング・マネジメントを取上げアンケート調査などから、コーチングによりTQM活動で必要とされるコア・コンピテンシーが強化されること、さらに「参加と協働」の強化にも繋がる示唆が得られた。またTQM活動を組織学習論の立場から検討することを考え、Marchにより提案された相互学習モデルについてコンピュータ・シミュレーションと、理論的な検討を行い、このモデルの基本的特徴を明確にした。
金沢, 裕之 KANAZAWA, Hiroyuki
動詞の否定の連用中止法は,一般には,「~(せ)ず,…」の形が正しく,助動詞「ない」を使った「~(し)なく,…」の形は規範的でないとされている。しかし近年,一部の用例にではあるが,この形式が認められ,それらの用例を観察してみると,先行する動詞句,あるいは「動詞+ない」全体が状態的な意味を表す場合に多く用いられていることがわかった。大学生に対するアンケート調査でも,この観察の妥当性が概ね確認された。この現象を通時的変化の流れから考えると,否定の助動詞における「ず」から「ない」への移行が最終的な段階を迎えようとしていることの予兆として捉えられる可能性がある。
俵, 匠見 TAWARA, Takumi
現代短歌は、字余りでもリズムの乱れを感じにくい場合がある。「名前のみ読み上げられる祝電のしゅうぎいんぎいんさんぎいんぎいん 松村正直」の下の句は8・8だが、リズムに乗って読むことができる。このような字余りの現状や特徴を捉えるため、現代短歌のアンソロジー歌集に収録された約2000首を分析した。また、全国の歌人にアンケートを取り、字余りの感覚を調査した。結果、初句は字余りになりやすいが結句はなりにくい、字余りの場合は二重母音[ai]が句末に現れやすいなど、いくつか顕著な傾向が見られた。これらの現象を説明するためには、言語学の切り口が必要だと考えた。本論文は、現代短歌の字余りを分析することで、日本語のリズムを考察するものである。
林 泉忠 Lim Chuan-tiong
研究概要:(平成19年度時点)19年度は、本研究プロジェクト「『辺境東アジア』住民のアイデンティティをめぐる国際比較調査研究」の3年目で、予定通り、沖縄での調査をはじめ、台湾政治大学と香港大学の協力を得て、11月に沖縄、台湾、香港、そしてマカオにおいて電話による同時アンケート調査を順調に実施した。過去2年間の質問を踏襲した上で、四地域それぞれの特性を考慮し地元に関する質問を大幅に増やした。調査は、文化的・民族的帰属意識と政治的・国家的帰属意識と大きく二つのカテゴリーに分類して行った。調査結果に関しては、過去2年間のそれに比べ、四地域それぞれ若干の変化が見られると同時に、アイデンティティ構造は四地域共に比較的に安定していることが調査から分かった。すなわち、エスニック・アイデンティティに関する質問群の回答結果から、地元意識の強い順は、台湾・沖縄・香港・マカオとなり、またナショナル・アイデンティティについて、国・中央政府への求心力の強い順は、マカオ・沖縄・香港・台湾になっている。とりわけ、若者の政治的自立志向に関して、台湾は最も強く、最も弱いマカオや沖縄と対照的な結果になった。 3年目の調査結果の一部はすでに11月27日に沖縄県庁にある記者クラブで開かれた記者会見で公表し、台湾と香港の協力機関もそれぞれ現地のマスコミに報告した。沖縄では、沖縄タイムス、琉球新報、RBC(TBS)ラジオ放送、RBCテレビ放送の取材も受けた。また、学術報告に関しては、アジア政経学会、青山学院大学国際研究センター、JICA移民資料館、台湾政治学会、WAPOR Regional Seminar(インド)、北京大学、南開大学(天津)、復旦大学(上海)、上海師範大学などで、調査で得た知見に基づき、研究発表を行った。さらに、三年間の研究成果として報告書をまとめ、「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを呈示している。
宮内 久光 Miyauchi Hisamitsu 由井 義通 Yui Yoshimichi
本研究は,沖縄県内のコールセンターで働く女性の就業状況を明らかにすることを目的としている.研究方法としては,228 人のインフォーマントから回収したアンケート票を集計して,定量的な考察を行うと同時に,聞き取りで得た彼女たちの語りから定性的に就業の状況を紹介することで実態に迫るアプローチを採用している.本研究で明らかにしようとしている就業状況とは,コールセンターに就業するまでの経路,コールセンターへの通勤状況,コールセンターでの雇用形態,コールセンターでの勤務状況,そして,勤務目的と職場評価の6 点である。これらの就業状況について,アンケート集計から全体の結果を紹介するとともに,女性を世帯タイプや居住地,雇用形態の違いにより特性分類したうえで,特性分類別に比較検討した。最後に,コールセンターで働く女性が仕事と生活をどのように両立させているのかを,聞き取りから紹介する。
山口 喜七郎 新城 和治 Yamaguchi Kishichiro Shinjo Kazuharu
沖縄県下の小学校,中学校および高等学校の理科担当教員を対象にして,NHKテレビ学校放送理科番組の利用状況と利用についての意識ないし評価および今後の利用意志についてアンケート調査を行った。その結果を報告する。\n今後理科番組を利用したいとする意志は全般的につよいが,小学校では積極的に利用したいとするものと,適当に利用したいとするものが半々であるのに対し,中学校および高等学校では適当に利用したいとするものが多く,上級学校・上級学年ほど番組の内容と生徒の実態との隔りのため利用に困難さが加わってくるようである。また中学校では番組を分断したり部分的視聴を行うなど制御的な利用を考えている傾向がつよいが,これはテレビ番組利用学習と理科の探究学習の間に介在する問題点を意識しての結果であると思われる。
篠崎, 晃一 小林, 隆 SHINOZAKI, Koichi KOBAYASHI, Takashi
本稿では,言語行動の地域差・世代差を把握するために,全都道府県を対象に実施したアンケート調査の中から,買物場面における挨拶行動について考察する。買物の流れに沿った一連の挨拶行動を捉えるために「店に入るときの挨拶」「客を迎えるときの挨拶」「レジでの声掛け」「細かいお金が無いときの断り」「店を出るときの挨拶」「客を送るときの挨拶」の6場面を設定し,(1)挨拶自体をするか否か,(2)するとしたら何と言うか,(3)その言語形式のもつ機能はどうか,といった観点に着目して分析を行った。その結果,高年層・若年層で異なった傾向が認められた。また,従来他の言語分野で認められてきた地域差のパタンが確認されると同時に,都道府県ごとの細かな差異も存在することが明らかになった。
深澤 真
新型コロナウイルスの感染拡大により、2020 年度前期から琉球大学における大学英語の授業は、急遽オンラインでとなった。本研究では、大学英語のオンライン授業におけるスピーキング活動とオンラインテストについて学生がどのような意識を持っているかを明らかにすることを目的としている。オンライン授業とオンラインテストを実施した2020〜2021 年度の大学英語2 クラスの学生を対象にアンケート調査を行った。その結果、学生はオンライン授業でのスピーキング活動を概ねやりやすいと考えているが対面での活動の方が少しやりやすいこと、実施したオンラインテストは受けやすく、リスニング、リーディング、ライティング、語彙の力を測る妥当なテストと考えているが、信頼性をやや不安視していることなどが明らかになった。本研究で明らかとなったことをもとに、オンライン授業におけるスピーキング活動や評価についての教育的示唆についても検討する。
金, 順任 KIM, Soonim
本稿は日韓の社会人を対象としたアンケート調査を用い,日韓の第三者敬語運用のメカニズムの一端を実証的に明らかにすることを目的としている。分析の結果,聞き手が同等か目下の場合,日本語では第三者敬語はあまり使われないが,韓国語では第三者を高める割合が高く,絶対敬語を基調としていること,その一方で,親族に対する敬語使用においては相対敬語的な一面があることが明らかになった。さらに,日韓に共通してみられる動向として,最上位者の前で上位者に対し尊敬語を用いる傾向が強く,第三者も聞き手も両方高めてしまう新しい敬語法が使われており,このような傾向は,男性よりは女性,40代・50代よりは20代・30代で顕著であった。第三者敬語と聞き手敬語の相関関係については,日本語のほうが,聞き手と第三者を同時に高める「第三者敬語の聞き手敬語化」が顕著であることが明らかになった。
Delbarre Franck デルバール フランク
本論文では三つの学生群(1年生)を対象としたフランス語教育上の長期的実験の最後の段階について述べられています。この実験はフランス語における結果状態表現に(être+過去分詞)に対する暗示的教え方と明示的な教え方による結果の比較を目的としており、それに合わせてフランス語教育対策の改善を促すものです。2010年に発行された著者の論文では日本語の文章を参照してフランス語で動作または結果状態を表す動詞の形態の中から正しいものを選ぶ形のアンケートを通して、明示的な教育を受けたフランス語学習者のほうが暗示的な教育を受けた学習者より日本語に対応したフランス語の正しい動詞の形態を当てることに成功したということが明らかになりました。ですが、長期的にはその明示的な教え方の影響が続いているかどうか解明するためには、最初の段階のアンケートが行われた一か月間以上後にあらためてそれらのアンケートに類似した日本語の文章を載せた日仏訳の問題を同じ学習者に受けさせました。今回の日仏訳の形で行われたのは自ら結果状態を表すフランス語の動詞形態が正しく作成できるかどうか確かめるためなのです。この形でも、明示的な教育を受けた学習者群による成功率のほうがはるかに高いという事実が明らかになりました。しかし、その結果が学習環境によって変わるかどうか確かめるためにはほかの大学で行う必要があるでしょう。
山口 喜七郎 新城 和治 吉田 一晴 屋良 朝夫 長浜 克重 Yamaguchi Kishichiro Shinjo Kazuharu Yoshida Kazuharu Yara Asao Nagahama Katsushige
那覇市の市街地にある4校と中頭地区の同じく市街地内の1校の計5つの中学校の男女それぞれ約600人にアンケート形式で調査した。調査項目は現在の理科に対するすき・きらいの度合,すき・きらいの理由,分野別の好み,および,小学校時代の理科のすき・きらいについての四項目である。\nすき・きらいの実態は高学年程理科のすきな生徒は減り,女子は男子に比べすきな生徒は少いといった学年差や男女差がある。\nすき・きらいの理由についてはすきな理由には実験・観察のたのしきと理科の内容のおもしろさをあげ,きらいな理由には授業のわかりにくさと内容のむつかしさをあげている。すきな分野は第2分野で第1分野の2~3倍の生徒が選んでいる。\n現在の理科へのすき・きらいにどういった要因がより強く作用するのかを連関係数を用いて考察した。その結果,過去の小学校時代の影響よりも現在の学習の諸条件がより強く作用するということである。\n以上のことに基づいて,理科ぎらいの生徒に理科をすきにさせ,理科のすきな生徒をより一層すきにさせるような指導上のいくつかの留意点をあげてみた。
副島 健作 Soejima Kensaku
シテアルとシテイルとの使い分けについては従来、意図性が関与していると考えられ、日本語教育においてもそのように説明されてきた。しかし、その多くは、動詞の自他という語彙的側面とシテアル、シテイルという文法的側面を混同した結果導出されたものであり、実情を反映しているとは言えない。そこで本稿は、沖縄県内大学に在籍している日本語母語話者にたいしてシテアルの自然さと他動性にかんするアンケート調査を行い、シテイルとの使い分けと使用条件について考察した。その結果、シテアルが実現しやすいのは他動性のもっとも高いプロトタイプ的他動詞であることがあきらかになった。また、それ以外の動詞の場合でも以前に成立した運動の影響が主体に残っていると認識される状況が設定されれば、シテアルが可能であることがわかった。これらの結果から、シテアルとシテイルの違いも、シテアルの対象指向的な特性から説明できることを確認した。
福田 英昭 Fukuda Hideaki
平成17年度-平成18年度 科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書 / 研究概要:平成17年度は大学生8名を対象に,また,平成18年度は中学1年生の生徒10名を対象にして,学校用家具使用時の動作分析と筋活動の計測を行った。使用した机・椅子は,JIS規格の2号から6号までの号数で高さの調節が可能な木製机・椅子である。被験者の身長から割り出した適正号数の机・椅子の高さを基準とし,その高さから1号分高い高さと,1号分低い高さの机・椅子も使用し,この3段階に高さを変えて,体圧分布測定システムを用い,着座時の荷重値の変化,荷重分布重心の移動等を分析した。また,同時に,表面筋電計を用いて筋活動を調べるために,脊柱起立筋および僧帽筋に電極を取り付けて計測を行い,RMS法の分析手法で筋疲労について検討した。被験者には同じ号数の机・椅子で書き写し作業を行ってもらい,その後,机・椅子に関する意識アンケート調査を行った。\n この実験の結果,大学生対象の場合,脊柱起立筋では,適正号数よりも1号分高い机・椅子を使用したときに他の高さよりも疲労度が比較的小さくなったが,僧帽筋では顕著な差はみられなかった。また,中学生では,脊柱起立筋と僧帽筋では特に差はなかった。大学生の場合,適正号数の机・椅子を使用した場合に,身体の荷重分布重心の動きが抑えられ,1号分高い机・椅子を使用した場合に,座面の座骨結節点周辺部の体圧が大腿部の裏側へ移動し圧力が分散されることがわかった。中学生の場合は3段階の高さの違いによる荷重分布重心の移動距離の変化は特にみられなかった。また,アンケートによる意識調査から,大学生の場合は,適正号数の机・椅子を使用したときに適切な高さだと回答する人が多く,中学生の場合は1号分高い机・椅子が適切な高さだという回答が多かった。大学生と中学生ともに,1号だけ低い机・椅子を使用した場合に最も疲れ,大学生の場合は特に腰と右肩に,中学生の場合は右肩と手・腕に疲れを訴える回答が多くなった。
東盛 キヨ子 桂 正子 外間 ゆき Higashimori Kiyoko Katura Masako Hokama Yuki
薬理効果のあるとされる食品材料の発掘を行い、その成人病予防因子についての科学的立証のための基礎資料を得る目的で、タイの人々の健康に対する意識、養生食に対する意識および薬理効果のあるとされる食品材料の利用状況についてのアンケート調査を行い、次の結果を得た。\n1)調査対象者の58%は自分はふだん健康だと感じており、約32%は太っているほうだと思うと答えた。\n2)約77%の人が生活習慣病は食事に気を付けると予防できると答え、その割合は年齢が高くなるにつれて多くなっていた。養生食の効果を信じると答えたのは約34%で、どちらとも言えないは約54%であった。養生食について家族から聞いたことがあると答えたのは三世代家族の方で多く、約71%は子や孫に伝えたいと思うと答えていた。\n3)薬理効果のあるとされる食品材料として、高血圧症にセロリー、ファーターライチョーン、糖尿病ににがうり、チークの木、ニガニガグサなど、腎臓病にマツカサバレリヤ、にんにくなど、がんにきのこ類、にんにく、チークの葉など、便秘にパパイア、エビスグサモドキなどが挙げられていた。\n4)薬理効果のある食品や薬草の調理手法には汁物(煎じものを含む)が多く用いられている。
新本 光孝 砂川 季昭 Aramoto Mitsunori Sunakawa Sueaki
この研究は、 亜熱帯的自然景観をほぼ完全に保有する西表島をとりあげ、 森林レクリェーション利用者の動向を把握するためにおこなったものである。調査の結果を要約するとつぎのとおりである。1.入域者の分析1)西表島における過去3ケ年間(昭和48年、 同49年、 同50年)の入域者は漸次増加の傾向にある。2)西表島における森林レクリェーション利用のタイプは、 春および夏を中心とする二季型であることが認められる。3)西表島(西部地区)の夏季における森林レクリェーション利用者の類型は、 県外の利用者が宿泊型であるに対し、 県内の利用者は日帰り型であることが明らかとなった。2.アンケート調査の分析1)吸引圏 吸引圏は、 北は北海道から南は沖縄までほぼ全国的におよんでいる。2)交通構造 交通手段は、 本土・那覇間、 那覇・石垣間ともに航空機よりも船舶を利用しているものが多い。3)利用者の年代および職業 利用者は若い層が多く、 10代と20代で全体の約90%を占めている。職業は学生・生徒がもっとも多い。4)行動の規模 利用者の構成は、 友人グループ(2&amp;acd;4人)とつれだってくるものが多い。滞在期間は2&amp;acd;4泊を中心とする宿泊型が大きな比重を占めている。5)利用上の性格 森林レクリェーション利用上の性格は、 風景鑑賞と自然探勝が中心課題である。
笹澤 吉明 小林 稔 姜 東植 Sasazawa Yosiaki Kobayashi Minoru Kang Dongshik
R 大学の公開講座として行われた、2011年度から2015年度の5年に亘る小学生を対象としたビーチサッカー教室事業について、スポーツ経営学における、エリア・サービス、プログラム・サービス、クラブ・サービスの3つの観点から、事業内容を検討した。沖縄県の中部西に位置する西原きらきらビーチにてビーチサッカー教室は行われ、5年間の延べ400名の児童が参加した。砂浜で裸足にて行うビーチサッカーは、土踏まずの形成や体力向上に結び付き、児童の発育発達にとって大きな可能性のある教材であると考察された。事前事後のアンケート調査の結果からも、海やビーチで遊ぶ動機づけや、海やビーチのことを学びたい意欲や、ビーチスポーツ参加への動機づけや、ビーチサッカーの楽しさが増加するなどの心理面が向上した。ビーチクリーンを行うことで、スポーツの安全教育や、自然保護を養う効果も期待される。しかしながら、内陸での本事業の開催の難しさや、水難事故などの安全面のリスクなどの課題も考察された。概ね、本事業の成功が総括され、学校教育における裸足サッカーの教材化などが提言された。
長嶺 聖子 Nagamine Seiko
韓国語と日本語は語順がほぼ同じで、文法も類似しており、中高年層の韓国語学習者も少なくない。中高年層の多くが好きな映画やドラマの内容を韓国語で知りたいと望んでいるようだが、筆者が教えている大多数の大学生も会話主体の韓国語の学習を強く希望している。ところで、韓国語には、格式体表現と非格式体表現があり、映画やドラマなどでは、後者の非格式体表現、つまり会話体の打ち解けた言い方である「パンマル」体が非常に多く使われている。しかし、最近日本の一部の著書において、この韓国語の「パンマル」と日本語の「ためロ」がまるで同一であるかのように扱われていることがよくある。本稿では、この安易な同一視から生じる誤解や混乱を避けるため、まず韓国語における「パンマル」の概念を明確にし、次に日本語の「ためロ」に関する一般的概念を、筆者が実施したアンケート調査を基に明らかにして、その基本的な違いを比較する。その上で、「パンマル」を含めた待遇表現の指導方法を提示する。
比嘉 善一 Higa Zenichi
コンピュータの最も基本的な操作であるキーボード操作をスムーズに習得させる目的で、キー入力学習用コースウエアをFCAIを用いて作成し\nた。それを中学生を対象に試行し、学習経過時間、所要時間、反応時間、正打率について分析した。またアンケートの結果から、「もっと学習し\nたい」、「楽しかった」、「途中でやめたいと思わなかった」などの回答が多く、生徒の興味や学習意欲については良い結果が得られた。
森山 克子 高吉 裕士 Moriyama Katsuko Takayoshi Yuji
学校給食においては、食中毒を防止し、安全かつ安心で美味しい学校給食を提供することが最も重要であり、その調理業務を担う調理員の貢献は大きい。平成20年、学校給食法が改正され、食中毒防止策など衛生管理の基準を規定し徹底させつつ、学校給食の主な目的を従来の「栄養改善」から「食育」に転換された。学校給食における食育の推進には、栄養教諭等の資質向上は無論、調理業務を行う調理員の食育に対する職業意識の在り方が今後求められると推察するが、調理員にとって最大の使命は、安全な給食を提供することである。そこで、本研究では、「食育」を推進するにあたり、ますは、調理員の職業意識等の中でも衛生管理に関する意識の実態を明らかにする必要があると考え、沖縄県内の学校給食施設に勤める学校給食調理員438名に衛生管理意識に関するアンケート調査を実施した。その結果、387名の回収があった。調理員の衛生管理意識は雇用形態や経験年数などで有意差がなく、調理員一人一人が高い衛生管理意識を持っていた。平成8年O157事件以降、調理員の衛生管理意識は調査者全員が変わったと回答している。その理由としては衛生管理体制の確立や講習会が主にあげられていた。また、経験年数13年以上の栄養士に対してO157食中毒事件以降調理員の衛生管理意識の変化について「良くなった」「やや良くなった」と答えたのは100%であったことからO157食中毒事件以降調理員の衛生管理意識の変化は、客観的にも検証できたと考える。
東盛 キヨ子 桂 正子 外間 ゆき Higashimori Kiyoko Katura Masako Hokama Yuki
薬理効果のあるとされる食品材料の発掘を行い、その成人病予防因子についての科学的立証のための基礎資料を得る目的で、沖縄の人々の健康に対する意識、養生食に対する意識および薬理効果のあるとされる食品材料の利用状況についてのアンケート調査を行い、次の結果を得た。\n1)調査対象者の約半数はふだん健康だと感じており、健康保持のため、栄養のバランスを考えて食事をし、十分な睡眠と休養を取るように心掛けている。\n2)成人病と食事の関係に対する意識は、90%以上の者が成人病は食事で予防できると答え、食事の重要性を認識していた。また、70%以上の者が養生食の効果を信じ、養生食を子や孫にも伝えたいと思っている。養生食について家族から聞いたことがあるとしたのは三世代家族の方で多くなっていた。\n3)薬理効果のあるとされる食品材料として、がん予防にきのこ類、便秘に野菜類、海藻類、高血圧症lこよもぎ、こんぶ等、糖尿病にグァバの葉、あしたば、腎臓病にはとうがん、クミスクチン等が挙げられた。\n4)薬理効果のある食品や薬草の調理手法には汁物(煎じものを含む)が多く用いられている。\n5)沖縄において、日常食で摂取される頻度の高い食品は米、油、卵、人参、豆腐、豚肉、牛乳等であった。また、薬理効果のある食品として挙げられたもので日常食で利用頻度の高かったものは豆腐、牛乳、にんじん、ほうれんそうであった。
平良 勉 金城 文雄 濱元 盛正 大城 喜一郎 伊野波 盛一 古堅 瑛子 Taira Tsutomu Kinjo Fumio Hamamoto Morimasa Oshiro Kiichiro Inoha Seiichi Furugen Eiko
健康の維持増進を目的とする中高年ジョガー8名を対象に、最大酸素摂取量とマラソン走行時の消費エネルギーと運動強度を測定、またアンケートによる日常のトレーニングの実態を調査、以下のような結果を得た。1.最大酸素摂取量は相対値で平均39.4ml/min・kg(±8.90)で、健康維持のための目標値を1例を除きほぼクリアしていた。2.日常のトレーニング処方は、強度、頻度、時間ともにアメリカ大学スポーツ医学協会が示す基準の範囲内であり、適切であった。3.マラソン走行時の消費エネルギーは、全被験者の平均、168.8kcal(±721.8)であり、競技を目的とするエリートランナーの消費エネルギーより高い値であった。このことは、マラソン走行時間は平均4hr41minでエリートランナーに比べ長時間であることによるものと推定された。4.最高心拍数を基準とする平均運動強度は90.2% of HRmax,85.6% of HRmaxRであり、また、最大酸素摂取量を基準とする平均強度は87.4% of Vo2maxで他の報告に比べやや高い強度であった。5.分時消費エネルギーは平均11.1kcal(±2.29)でVery heavyで、完走のみを目的とする市民マラソンであってもかなり高い強度であった。
鈴木, 卓治 Suzuki, Takuji
本稿では,2012年夏に国立歴史民俗博物館(歴博)が開催した企画展示「楽器は語る」のために開発したマルチメディアコンテンツについて,展示に組込む形で提供した5種類のコンテンツの内容と展示との関連を交えて解説する。また,同時に実施した,来館者が持参したスマートフォンやタブレット端末等のWi-Fi機能を備えた携帯端末向けに情報コンテンツを配信する実験について,来館者アンケートとコンテンツへのアクセスログから,実験に参加した来館者の傾向を読み取ることを試みたので合わせて報告する。
葦原 恭子
琉球大学では,1998年から2021年にかけて世界42カ国・128の協定大学から1、204名の留学生を受け入れてきた。この間に,留学生の受け皿は,留学生センターからグローバル教育支援機構の国際教育センターに移行した。2019年度には,交換留学生69名が来沖し,2020年度には交換留学志願者が80名以上と過去最高となった。しかし,その後,2019年末から全世界に広がったコロナ禍の影響が顕著となったことにより,留学志願を取り消し・延期する志願者が相次ぎ,2021年度前学期には,実際に登録した交換留学生数は37名に減少した。さらに 2020年度および2021年度には,対面授業からオンライン授業に切り替えることを余儀なくされた。本稿は,コロナ禍において,オンライン授業として実施された、 留学生対象の日本語科目の一つである「アカデミック日本語C1S」という授業を取り上げ,実践報告するものである。当該授業後に実施されたアンケート調査においては,受講生から日本語学習に対する積極的かつ肯定的なコメントが得られた。このことから,オンライン授業であったとはいえ,当該授業を実施したことには意義があったことが明らかとなった。
宮国 泰史 福本 晃造 杉尾 幸司 前野 昌弘 伊禮 三之 古川 雅英 Miyaguni Yasushi Fukumoto Kozo Sugio Koji Maeno Masahiro Irei Mitsuyuki Furukawa Masahide
近年では、従来の学校教育において中心的な指導法として行われてきた「一斉学習」に加え、「個別学習」や「協働学習」など、さまざまな授業形態の活用が求められている。このような授業形態の一つである「反転授業」では、授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませる必要があるため、家庭等で情報通信技術(ICT)を活用した学習を行う必要がある。このような学習形態を支えるためにはe ラーニングプラットフォームの学習管理システム(LMS: Learning Management System)が必要である。「Moodle(ムードル)」は世界中で利用されている代表的なLMS の一つであり、日本においても、全国の大学等、多数の高等教育機関などで利用され、多くの教育実践事例が報告されている。一方で、初等中等教育における、Moodle の導入・活用事例についての報告は少なく、特に小中学校で活用する場合にどのような課題が生じるかの知見は不足している。本稿では、琉球大学が2018 年度に運用を開始したMoodle 型プラットフォームe − Learning システム、「琉大ハカセ塾Moodle」の2017 年度の運用状況と受講生へのアンケート調査の結果をもとに、小中学校段階の児童・生徒に対してe − Learningシステムを構築する際の課題について議論する。
金澤, 裕之 KANAZAWA, Hiroyuki
本稿は,現在まさに大学生活のただ中にいる学生たちの一部が,「〔大学生活を〕充実して(または,させて)過ごす」という表現において,「充実に過ごす」という形式を採用しつつあるらしいことを,アンケートの結果より指摘するものである。そしてこの形式が,単なる思い違いや誤用ではないかもしれないという可能性について少しく考察するとともに,この現象に関しては,日本語学習者である留学生たちの状況が参考になるかもしれないという点についても言及してみる。
森山 克子 Moriyama Katsuko
学校給食から沖縄の食文化継承をめざすことを目的として中学校生徒における家庭の食環境を明らかにする質問紙調査を行った。対象者は、N市のK中学校の中学生1・2年生男女262名にアンケートを依頼し237名の回答を得た。回収率は90.5%であった。本報では食環境を家族構成、主な食事の担い手、食事の担い手の年代、食事の担い手の就業状況、仏壇の有無、近隣に祖母在住の有無等を調査した。これらの調査の結果、次のことが明らかになった。1)核家族が79%、拡大家族が21%で同居する人数は平均49人であった。この数値はN市の1世帯あたりの人員2.51人に比べ著しく多かった。2)同居者の構成は、母親が91.5%、姉弟が88.9%、父親73.4%、祖母が18.8%の順であった。ほとんどが母親や姉弟と同居であったが4人に1人は父親不在であった。3)主な食事の担い手は母のみが71.3%、祖母のみが9.3%、父と母が6.3%であった。4)生徒と同居で食事を担っているのは、母親が94.0%、祖母が75%、父親が13.8%であり、ほとんどの中学校生徒の食生活は母親と祖母により担われていた。5)食事の担い手の年代は、30代が37%、40代が29%、50代が29%であった。6)食事の担い手で有職者は74.7%、無職が24.9%人、終日勤務が45.6%、パート勤務が22.8%であった。7)仏壇の有無は、仏壇がある生徒は62%、ないと答えた生徒は38%であった。8)祖母との関係は同居が18.6%で、非同居が81.4%であった。「非同居で近隣にいる」が42.2%で、60.8%の生徒が祖母と同居または、近隣在住であった。
山田 広幸
私が担当する自然系科目「大気の科学」は、新型コロナウイルス感染症流行に伴い授業が遠隔化された2020年度から2年連続でプロフェッサー・オブ・ザ・イヤーに選出されました。授業で解説する内容と到達目標を大幅に修正したわけではないので、遠隔授業のやり方を工夫したことが学生評価の向上につながったのではないかと考えております。本稿では、対面授業で感じていた課題と、遠隔授業への転換時に行った私なりの工夫と、授業評価アンケートから見えてくる学生の捉え方について述べたいと思います。
森山 克子 金城 千秋 高吉 裕士 Moriyama Katsuko Kinjyo Chiaki Takayoshi Yuji
平成22年、子供たちが、「食育」から「海洋」を学ぶことができる食育情報教材Q-食マスターを開発した。その効果を検討するために、平成23年11月~3月、沖縄県那覇市立城東小学校の特別支援教室で授業を行った。児童や教諭のアンケートから、本教材は、児童の海洋に関する理解、興味、関心を高めることが可能であるとわかった。また、本教材は、家庭科、道徳、学級活動、給食指導と幅広い教科等で、「食育」から「海洋」を学習する食育情報教材としての期待ができることもわかった。
川満 芳信 與儀 喜代政 濱上 昭人 野瀬 昭博 比嘉 正和 Kawamitsu Yoshinobu Yogi Kiyomasa Hamagami Akito Nose Akihiro Higa Masakazu
本研究では、N67-10、ボゴール、ジュピー、ペローラ、N86、クリームの6品種の果実を用いて部位別の各化学成分を分析した。また、下部においてはブロメライン活性などを測定した。品種N67-10の8月から12月までの各種成分の季節的変化を調査した。さらに、各貯蔵温度下における未熟果及び適熟果の各化学成分の経時変化を調査した。結果を要約すると以下のようになる。1.ボゴール、N86は糖含量が高く、ボゴールは全糖中ショ糖の比率が高かった(約70%)。ジュピー、ペローラは糖及び有機酸含量が低く、クリームは両方とも高かった(図1、2、4)。2.ブロメライソ活性はペローラで有意に高く、N67-10で有意に低かった(図5)。3.食味アンケートの結果、舌の痛みとブロメライン活性との関係は一致せず、むしろ有機酸含量と傾向が類似していた(図6)。4.糖含量は夏実から冬実にかけて殆ど変化はなく、一方、有機酸含量については冬実において夏実の約3.6倍も増加した(図7、8)。5.ブロメライン活性は8月果で低く、秋及び冬実で高い傾向を示した(図12)。6.未熟果においては、糖・有機酸は4℃保存で上昇し25℃保存では減少した。15℃保存では糖は減少し有機酸は上昇した(図15、16)。7.適熟果においては、4℃保存は糖は上昇し有機酸は変化ぜす、15℃保存では糖及び有機酸が上昇し、25℃保存は糖・有機酸ともに減少した(図18、19)。8.未熟果は4℃保存で、適熟果は4℃保存及び15℃保存でリンゴ酸の増加率が顕著であった(図16、19)。
本村 真 Motomura Makoto
本稿では、児童養護施設のケアワーカーに対する効果的な研修会を実施するための方法に関して、何を研修で伝えていくかという内容の側面ではなく、いかにその内容を伝えていくかという姿勢に焦点を絞って述べている。今回、考察の対象となった沖縄県内児童養護施設の職員に対する6回の継続研修会の講義内容及び各研修会の終了時点に実施されたアンケート結果の分析により、本研修における講師の参加者に対する基本姿勢の中心であるソリューション・フォーカスト・アプローチ的姿勢が、今回の研修会の効果へ大きな影響を与えたということを示す。
吉田 浩之 来田 宣幸 Yoshida Hiroyuki Kida Noriyuki
本研究では、中学生を対象にして、部活動において生徒が存在感を認識している内容と不安に感じている内容から、生徒に必要な援助ニーズが示唆される資料を教師が得ることができる尺度を作成することを目的とした。研究1では、中学生306名を対象に項目を収集し、8つの質問項目を抽出した。因子分析の結果、2つの因子を抽出し、それらを下位尺度とする「部活動存在感・不安感尺度」を作成した。研究2では、中学生840名が本尺度とQ-Uアンケート(河村、1999c)および学習意欲尺度(河村、1999b)に回答し、本尺度の妥当性がみとめられた。
牛窪 潔 平良 柾史 兼本 円 大城 郁寛
古謝 瑞幸 Koja Zuiko
1.宜野座村における農業情報メディアの普及とそれに対する農民の態度についてアンケート調査を行なった。2.全村の農家640戸にアンケートを配布して回答を依頼したが、 回収率は約65%にとどまった。それでこの調査は65%、 即ち415戸を対象とする。3.調査の結果はすべて1965年9月1日現在とする。4.テレビジョンをもっている農家は415戸の中59.3%である。テレビジョンによる農業教育番組を希望する者が415人の中、 73.5%もいる。5.ラジオをもっている農家は415戸の中、 86.5%をしめている。6.ラジオの話の内容がわかりやすいとする者は415人の中、 52%で、 その他はむずかしいとか、 わからない人たちである。7.ラジオの話を農業に応用したことのある人は415人中、 45%をしめている。8.新聞を購読している農家は415人中、 約64%をしめている。9.新聞の農業記事の内容がわかりやすいとする者は415人中45%である。10.新聞記事としては普通の農民の成功物語よりも、 科学的な新技術の紹介を好む人の数が少し多い。11.宜野座村におけるラジオと新聞の比率は1.7 : 1でラジオが多い。12.琉球政府農業改良課発行の月刊普及誌農家の友は6か年以上の発行歴をもつが、 それを見たことのある人は415人の中、 47%しかいない。13.農家の友は約10戸に1部の割当で、 毎月読んでいる人は415人の中わずか3%である。14.農家の友の記事がわかりやすいとする人は415人の中52%で、 半分以上の人がよく読解していることになる。しかし、 この比率は新聞の同じ項目よりも16%低い。15.農家の友の発行部数をふやすことを望む人は415人の約42%に達している。多くの人に読んでもらうために現発行部数を拡張することが望ましい。16.琉球大学農学部発行の月刊普及誌農家便りは9か年余の発行歴をもつが、 それを見たことのある人は415人の中28%しかいない。17.農家便りは農家戸数約20戸に対して1部の割であるが、 毎月それを読んでいる人は415人の中約2%にすぎない。年に2&amp;acd;3回読むのが約21%で、 最も多いグループである。18.農家の友も農家便りも自宅で読む人の数が多い。それに次ぐのが公民館である。19.農家便りの内容がわかりやすいとする人は415人の中約22%である。その他はむずかしいとかわからないとする人たちである。20.農家便りを農業や生活面に応用したことのある人は415人中、 約22%である。これは農家の友より約14%低い。21.農家便りの現行発行部数をふやすことを望む人は415人中、 約25%である。みたことのある人が極少であることと、 リーダー育成の見地からもっとふやすことが望ましい。22.購読されている農業雑誌の中、 最も多いのは家の光で415人の25%をしめている。養鶏や園芸などの専門雑誌は1%程度で非常に少ない。23.農業の相談相手としていちばん好まれているのはラジオで、 415人中約30%の人がそれを選んでいる。次は新聞、 テレビジョンの順である。農業雑誌でいちばん好まれているのは家の光で、 全体の4位で、 テレビジョンに次ぐ。
福武, 亨 FUKUTAKE, Tooru
本稿では、愛知医科大学の事例を中心に実務的な立場から私立医科大学の現状と課題を把握し、今後の私立医科大学における大学アーカイブズの展望を示すため,アンケート調査と取材を行い他大学との比較を通して考察を試みる。私立医科大学アーカイブズは,機関アーカイブズと収集アーカイブズの側面から課題がある。機関アーカイブズにおける課題は、アーカイブズが法人文書の廃棄、移管について関わっている大学が少ないことである。そこには大学アーカイブズ側と文書を流入させる側の課題がある。大学アーカイブズ側の課題は、大学アーカイブズが法人文書の評価選別を行う際の課題であり,大学内の特定の個人や集団に由来した偏りのある判断を避け,学内外に説得的であることが重要である。文書を流入させる側の課題は,各部署による大学アーカイブズへの移管がうまくいかず廃棄されるという課題であり、大学アーカイブズは、各部署に出向いて現物をみる、現況等を聞くといった各部署とのやりとりが重要である。次に、収集アーカイブズにおける課題は、所蔵点数が少ないことである。愛知医科大学アーカイブズの事例に加え、聖路加国際大学の事例では,学生への広報を取り上げ,金沢医科大学の事例では,所蔵点数の多さを裏付ける出版物、写真等の自動的収集について取り上げる。今後の展望として医科大学においてはカルテ等も大学アーカイブズの収集対象になりえることも触れる。
清水, 享 SHIMIZU, Toru
本報告は巍山地区における碑文調査の概要である。巍山地区の調査を実施するまでの経緯、生態史研究における碑文資料の有効性と拓本採取・写真撮影・抄録などの調査方法について簡述する。調査地域である巍山地域の地理的歴史的概況と調査日程、補充調査の経過について触れ、調査で収集した主要な碑文をその特徴なども含めて簡単に報告する。また拓本採取・写真撮影・抄録など調査を実施上のさまざまな問題点を整理し、今後の調査の効率化を目指したい。あわせて現地の碑文の保存に関する問題点にも言及し、碑文調査の緊急性を報告する。
近藤, 功行 Kondo, Noriyuki
本研究では,これまでの与論島を中心とした琉球文化圏における筆者のフィールドワークを発展させて,現在用語構築を模索して概観する。本用語は長寿科学研究における新たな用語として提言したいものである。筆者は琉球文化圏における長寿科学研究をとおして,社会・文化的要因の解明に努めてきた。そのプロセスや現在携わる医療福祉教育を通して,今後のわが国の長寿科学研究には「長寿」や「死生観」「QOL」といった概念を統合した形での『適寿』の必要性を感じた。そこで,これまでの筆者の研究結果や学生へのアンケートから『適寿』について考察し,今後の長寿科学研究を見据える材料として提示してみる。
笹澤 吉明 Sasazawa Yosiaki 喜屋武 玲菜 Kyan Reina 姜 東植 Kang Dongshik 小林 稔 Kobayashi Minoru
沖縄県女子サッカー選手の競技力向上に向けて,全国強豪校とのスポーツキャリア・競技環境・心理的競技能力の三点の相違を明らかにすることを目的とする。対象は沖縄県予選大会の過去5年間に上位成績を収めた6校130名及び,全日本高等学校女子サッカー選手権大会の過去5年間に上位成績を収めた5校195名である。オンラインによるアンケート調査を行い,スポーツキャリア,競技環境,心理的競技能力(DIPCA.3)のデータを収集した。その結果,スポーツキャリアにおいては,沖縄は61%が高校からサッカーを開始しているのに対し,全国は97.5%が小学校からサッカーを開始し,中高と継続していた。競技環境は,沖縄は94%が土のグラウンドで練習を行っているのに対し,全国は43%が芝で練習を行っており,リーグ戦の試合数も沖縄は年間5~10試合が66.1%に対し,全国は10~15試合が32.1%,15~20試合以上が40.1%と公式戦も含め年間の試合数に大きな差がみられた。心理的競技力は,DIPCA.3の総合得点,競技意欲,自信については全国が沖縄より高得点を示したが,リラックス能力を含む精神の安定においては全国よりも沖縄が高得点だった。沖縄県女子サッカー選手の競技力向上には,小学校から継続できるサッカークラブの普及,芝のグラウンドでの練習環境の整備,競技意欲,自信などの心理的競技力の向上が示唆される。
城間 盛市 下地 敏洋 Shiroma Seiichi Shimoji Toshihiro
琉球大学では,2007年度入学生から新たなカリキュラムで教員養成が図られた。また,教育職員免許法および同法施行規則改正(2019年4月1日)の施行に伴い,履修内容を充実した教職課程が開始された。本稿の目的は,2007年の導入から2019年の新教職課程導入までの13年間に,大学の教員養成が当初の意図した計画通り実施されたのか,また学生の質が十分保障されたのか,について検証することである。 「教職指導」は,教師の適性,教師の役割や使命感,悩み,実際の現場の観察など多様な内容を網羅した講義内容で,学生自身が教職に対する意識が大きく変化したことが把握でき,教職に真剣に向き合う姿勢が成就されているように考えられる。特に,学校現場での一日体験は,受講生からの評価も高いものがある。 「学校教育実践研究I」は,学習指導案の作成,模擬授業,模擬授業後の授業研究会が主な内容であり,授業評価アンケートで「模擬授業を全員に課したことは良かった」は4.48(最高は5.00),「教育実習における授業実践につながる内容であった」4.72,「授業全体を通して,意欲的に取り組める授業内容であった」4.61で,総合的にも高い評価を得たことが考えられる。 従って,1年次で実施する「教職指導」と3年次「学校教育実践研究Ⅰ」は,4年次の「学校教育実践研究Ⅱ」に繋がる重要な位置づけと捉えることができる。今後,資質の高い教員養成の取り組みが求められている「学校教育実践研究Ⅱ」の授業及び授業後の授業評価アンケートを考察することで,本来の目的を達成する授業構築になっているか検証したい。
丁, 美貞 JEONG, Mijeong
本稿では,国立国語研究所の経年調査研究である岡崎敬語調査データの「荷物預け」場面を用いて,第1次調査から第3次調査までの反応文を機能的要素について分析した結果について述べる。
岡﨑, 滋樹
本稿は、「畜産」と「台湾」という視点から、戦前農林省による資源調査活動の実態に迫り、政策との関わりによって調査の性格が如何に変わっていたのかを明らかにした。これまでの満鉄や興亜院を中心とした資源調査に関する研究では、調査方法そのものについて詳細な検討が進められてきたが、その調査がいかに政策と関わっていたのかという部分は検討の余地が残されていた。したがって、本稿では、まず調査を左右する政策立案の実態を検討し、その政策が調査に対して如何なる影響を与えていたのか、調査報告が如何に政策に左右されていたのかという、当時指摘されていた「政治的」な調査活動の側面に注目した。
吉永 安俊 酒井 一人 與名嶺 真徳 Yoshinaga Anshun SAkai Kazuhito Yonamine Shintoku
1. 沖縄の3箇所の下水浄化センターの排水は、 重金属等の有害物質の含有量の観点では、 潅漑用水として十分利用可能な状況にある。しかし、 ウイルスなどの病原体の調査が行われておらず、 潅漑利用にあたっては十分な調査が必要である。2. 処理水の潅漑使用に対する意識は年齢、 性、 地域、 職業別に異なる。たとえば、 高齢者より若年者の方が、 また、 男性より女性が処理水利用には厳しい意識をもっている。職業別では食品販売業が最も寛容で、 飲食業関係者が最も厳しい。また、 水資源の乏しい地域ほど処理水使用には比較的肯定的である。3. 農業者は使用方法を問わなければ、 80%以上が、 処理水の潅漑利用に肯定的であり、 水源水質をそれほど問題にしていない。しかし、 消費者同様、 女性が男性より処理水利用には厳しい意識がある。4. 処理水を潅漑利用することに対する否定的な感情は、 処理水は汚いものという先入観によるものが大きい。なお、 本調査は沖縄開発庁農林水産部土地改良課の「農村環境保全調査報告書・再利用水の農業利用可能性に関する調査」の一環として行われたものであり、 アンケート調査は沖縄県農林水産部が担当した。関係者には感謝の意を表する。
朝日, 祥之 ASAHI, Yoshiyuki
本稿では,独創・発展型共同研究プロジェクト「接触方言学による『言語変容類型論』の構築」で企画・実施された調査研究の成果を紹介した。最初に,研究目的と実施された調査の設計を述べた。その後,研究期間中に実施された様々な調査のうち,北海道札幌市と釧路市で実施された実時間調査と愛知県岡崎市で実施された敬語と敬語意識調査で取り扱われた「道教え」場面調査の調査結果,ならびに国内4地点における空間参照枠に関する調査結果を取り上げた。また「言語変容類型論」構築の試案を提示し,その提示の方法,試案の有用性,反省点,今後の当該分野に関する展望を行った。
大角 玉樹 Osumi Tamaki
1.はじめに 平成24年度沖縄県「産学人材育成ネットワーク形成促進事業において、沖縄県の自立的経済発展及び地域活性化のために必要とされる人材像ならびに新たな産学官連携の在り方が調査検討された。その結果、1.イノベーションを担う人材が不可欠であること、2.そのためには、起業家精神を有する人材の早期育成が必要であり、3.この実現のために、産学官が連携したネットワーク構築と沖縄の地域特性を踏まえたイノベーション・エコシステムの形成の有用性が確認された。起業家育成教育が効果的であることも関係者から指摘されているものの、長期に渡り、起業家教育は会社を設立するための実務教育であると勘違いされ、本来、起業家精神を醸成し、起業家的なものの見方や考え方と行動特性、すなわち、マインド・セットとスキル・セットを習得するための教育であることが忘れられているようである。筆者が座長を務める同事業検討委員会では、他大学の先進的な起業家育成教育ならびにビジネス・プランコンテストの視察、県内ベンチャー企業が実施しているシリコンバレー派遣プログラムの視察、県内教育機関の取組状況に関する調査と意見交換が行われ、何よりも、県内教育機関には、正規のカリキュラムの中に、ベンチャー育成や起業家育成の講座が提供されていない点が指摘された。この状況を打破し、時代や社会が求めている起業家及び起業家精神に溢れる人材の育成を加速するために、まずは県内大学と高等専門学校が連携した実践的なベンチャー講座が開設できないかという提案がなされた。この提案を受けて、琉球大学が過去5年にわたって実施してきた「沖縄学生アイデア・コンテスト」と、平成24年度に実施したビジネス・トライアルコンテストの内容を再検討し、平成25年度より、琉球大学の共通科目として、「ベンチャー起業入門」と「ベンチャー起業実践jが開設されるに至った。本稿では、ベンチャー講座開設の契機となった沖縄学生ビジネス・アイデア・コンテストとビジネス・トライアルコンテストの概要を紹介し、学生アンケートの分析を参考に、今後の改善点と課題について議論している。
竹田, 晃子 三井, はるみ TAKEDA, Koko MITSUI, Harumi
国立国語研究所における「全国方言文法の対比的研究」に関わる調査資料群のうち,調査I・調査IIIという未発表の調査資料について,調査の概要をまとめ,具体的な言語分析を行った。調査I・調査IIIは,統一的な方法で方言文法の全国調査を行うことによって,方言および標準語の文法研究に必要な基礎的資料を得ることを目的とし,1966-1973(昭和41-48)年度に地方研究員53名・所員4名によって行われ,全国94地点の整理票が現存する。具体的なデータとして原因・理由表現を取り上げ,データ分析を試みることによって資料の特徴を明らかにした。3節では,異なり語数の比較や形式の重複数から,『方言文法全国地図』が対象としなかった意味・用法を含む幅広い形式が報告された可能性があることを指摘し,意味・用法については主節の文のタイプ,推量形への接続の可否,終助詞的用法の観点から回答結果を概観した。4節では,調査時期の異なる他の調査資料との比較によって,ハンテ類の衰退とサカイ類の語形変化を指摘した。「対比的研究」の調査結果は興味深く,現代では得がたい資料である。今後,この調査報告の活用が期待される。
山里 勝己 我部 政明 仲程 昌徳 高良 鉄美 石原 昌英 吉田 茂 小倉 暢之 等々力 英美 宮平 勝行 喜納 育江 山城 新 Yamazato Katsunori Gabe Masaaki Nakahodo Masanori Takara Tetsumi Ishihara Masahide Yoshida Shigeru Ogura Nobuyuki Todoriki Hidemi Miyahira Katsuyuki Kina Ikue Yamashiro Shin
研究概要:1945年以降の沖縄の歴史は異文化接触の歴史であり、それは戦後日本でも極めて特異な歴史であった。本研究は、このような戦後沖縄におけるアメリカ文化との異文化接触により生起した現象を、国際政治、憲法、沖縄文学、アメリカ文学・文化、言語政策、コミュニケーション論、食品学、農業経済、建築学、公衆衛生の各領域において分析し、最終的には学際的な総合化をとおして異文化接触の全体像を理解することを目的として進めた。さらに、このような研究をとおして、異文化接触のメカニズムを解明し、普遍的なモデルの構築を試みつつ21世紀の国際社会における相互理解に寄与することを最終的な目標として研究を展開した。このような目的、目標を達成するために、平成14年から16年において、以下のような研究活動を推進した。 1) 特に米国公文書館をはじめとして公文書館等における文書の収集、戦後沖縄に直接に関わった沖縄及び日米の関係者に対するアンケート・聞き取り調査等を含めて、新しい知見を得るべく、実証的かつ総合的な研究を遂行した。 2) 研究分担者間の相互連携及び異文化接触に関する理論的深化をはかるために、研究組織内で研究会を開催し、同時に国内の関連分野から講師を招聘しつつ研究を進めた。 3) 平成15年度は、カリフォルニア大学デイヴィス校において、アメリカ側の研究者とともに国際シンポジウム(&#34;Symposium : Cross-Cultural Contact between the U.S. and Okinawa&#34;)を開催し、国際的な連携を図りつつ研究を推進した。 4) 以上の活動を基礎に、研究分担者がそれぞれの課題について研究報告をまとめた。
田島, 孝治 TAJIMA, Koji
街路の看板や張り紙に書かれた文字・言語が作り出す景観は言語景観と呼ばれ,言語学分野だけでなく,地理学,社会学など社会科学の諸分野で調査・研究が行われてきた。本稿では,著者が開発した調査用のツールを紹介すると共に,動作検証を目的として行った,神奈川県鎌倉市における「稲村ガ崎」の表記調査結果を報告する。開発したツールはスマートフォン用の調査ツールと,パソコン上で動作するデータ確認用のツールに分かれている。調査の道具としてスマートフォンを使うことで,調査結果の整理を簡単に行えるようになった。一方,ソフトウェアの処理結果は専用フォーマットになる部分を可能な限り少なくすることで,データの共有と再利用が容易になるように設計した。動作検証のための調査は約2時間行い,収集したデータは従来型の調査と比べ遜色ない結果を得られた。また,調査結果の分類作業が大幅に短縮されたためツールの有用性も確認することができた。
田中, ゆかり TANAKA, Yukari
文化庁国語課による『国語に関する世論調査』の平成7年度調査から平成10年度調査までの4回の調査結果に基づく報告を行う。報告は,各年度ごとの調査項目において被調査者属性が説明力を持たない/弱い項目を抽出することが中心である。被調査者属性が説明力を持たない/弱い項目とは,地域的・社会的属性などの「被調査者属性による偏りのない項日」ということになる。日本全国16歳以上の男女を対象とした無作為抽出による大規模な調査において,どのような項目が,「偏りを持たない」つまり,「衆目の一致する」項日に該当したか,ということを知ることは,今後の「共通語」あるいは「共通語」的認識を知る上で有効であると考える。典型的な「偏りを持たない」項目は,従来的な言語規範意識に関わる項目,従来「誤用/誤認識」「新形/新認識」とされてきたもののうちすでに「共通語」的位置にある項目,回答数が非常に少ないために偏りが抽出されない項目であることが分かった。また,項目と被調査者属性との関わりだけでなく,項目間における説明力を持たない項目の抽出も行った。
Arakaki Hiroko Sho Hiroko 新垣 博子 尚 弘子
本報は1959年9月9日より同11日に久米島の具志川、仲里の両小学校において4年次児童232名について行なった栄養調査の結果である。私共の健康が毎日の食事の摂り方と密接な関係がある事は周知の通りである。殊に児童の栄養は将来の健康を大きく左右する。児童の栄養調査に就いては黒田氏に依る沖縄学童の栄養状態調査についての報告があるが、これは専ら身体症候調査に依るもので食事調査と医師による精密検査を同時に行なったものがない。ここで今度医療および食事の両面から之を行ない、今後の栄養教育と農業生産指導の一資料とする事を目的とした。調査は医療牡と栄養斑に分れ、夫々数名の助手の協力の下に行なった。医療柾は琉球民政肘公衆衛生部長マーシャル医師とフランセス医師の指導の下に軍病院より2名の医師と那覇保健所の技術員および公衆衛生看護婦の協力を得て本調査を施行した。尚本調査はInterdepartmental Committee on Nutrition for National Defenseの調査方法に基いて施行し、学童227名について身体症候調査を行ない、5名に1名の割で精密検査を行なった。栄養牡に筆者等が当たり琉球大学家政学科職員2名および久米島高等学校家庭科担当教官の協力を得て栄養摂取量の調査を行なった。方法は24時間回顧法を採用し、学童の回顧を助けるため調査地に於ける最も代表的な1日の食事のsample(予備調査により資料を得る)を数種作り面接の際に用いた。身体症候調査および精密検査の結果は第1表、第2表、第3表に、食品摂取状況と実際摂取量は第4表第5表に、栄養摂取量は性別、学校別、全体平均に分けまとめた。これ等の表より身体症候調査による栄養欠乏率と栄養摂取量調査に見られる栄養欠乏率に強度の差はあるが相関関係が見られた。
米盛 徳市 新里 里春 中里 治男 Yonemori Tokuichi Shinzato Rishun Nakazato Haruo
本調査研究は、第1報を踏まえて3年次実習生の実習の意識を4年次との比較でもって特徴を明らかにすることとした。対象は平成2年10月に附属学校で教育実習2を終了した本学部3年次学生である。調査は平成2年12月の事後指導の時限に参加者全員に実施した。調査に協力した学生は、小学校課程男子17名、女子59名、中学校課程男子11名、女子15名であった。調査用紙は第1報と同一のものを用いた。質問項目は第1報を参照。調査は学生に調査目的を述べ、了解を得た上で無記名で実施した。
清水, 享 SHIMIZU, Toru
本報告は中国雲南省紅河州、文山州における碑文調査の概要である。生態環境史研究における碑文調査の有効性と雲南省南部の紅河州と文山州の調査を実施するまでの経緯を簡述する。調査地域の紅河州、文山州の地理的歴史的概況に触れ、調査日程と調査した碑文について、その概要を含め簡単に報告する。また、生態史に関わる碑文の現状を碑文の立地と保存情況および碑文と村落との関わりについて封山護林碑、水利碑、民約碑に分けて概観し、村落内における碑文の価値、文物としての碑文の保護について論じる。
中尾, 七重 坂本, 稔 今村, 峯雄 永井, 規男 西島, 眞理子 モリス, マーティン 丸山, 俊明 Nakao, Nanae Sakamoto, Minoru Imamura, Mineo Nagai, Norio Nishijima, Mariko Morris, Martin Maruyama, Toshiaki
放射性炭素年代測定を用いた住まいの建築年代調査において,庶民住居である民家と上層住宅の¹⁴C年代調査法の比較研究を行った。民家3棟と住宅4棟の事例報告を行い,年代調査の目的と,¹⁴C年代調査に適した部材選択の条件について検討した。
千田, 嘉博 Senda, Yoshihiro
中世城館の調査はようやく近年,文献史学,歴史地理学,考古学など,さまざまな方法からおこなわれるようになった。こうした中でも,城館遺跡の概要をすばやく,簡易に把握する方法として縄張り調査は広く進められている。縄張り調査とは地表面観察によって,城館の堀・土塁・虎口などの防御遺構を把握することを主眼とする調査をいう。そしてその成果は「縄張り図」にまとめられる。
齊藤 由紀子 富永 篤 杉尾 幸司 Saito Yukiko Tominaga Atsushi Sugio Koji
ケリ 綾子 Kelly Ayako
日本語を習得する上で、日本を理解し学習意欲を向上させるために、日本事情のテーマとしてふさわしいものは何か、そしてどのようにして授業を進めていくのが効果的なのかを、アンケート結果をもとに考察しカリキュラムを構成し実践した。その結果、特に実習、体験学習、見学を通して学ぶことに留学生は意義を見い出していることがわかった。また留学生の発表する活動については、教室外での学習を促すことになり、自ら取り組み理解を深めることができた様子がうかがえた。つまり、日本事情のカリキュラムの組み立てや内容を考えるにあたっては、情報を与えるに留まらず、能動的な活動を取り入れる必要性があると言える。さらに異文化を理解し、受け入れ、また自国文化との相違点や共通点などを考え、意見を述べることが出来るようなテーマを選ぶ必要があると考えられる。
新崎 綾子 廣瀬 等 Arasaki Ayako Hirose Hitoshi
小学校2年生から6年生までの343名を対象に質問紙法でソーシャルスキルと学校適応感,およびその関連について,発達的変化を検討した。質問紙は,学校現場で教員が手軽に使用できることを念頭におき,学校適応感の測定には「学校楽しぃーと」(鹿児島県立総合教育センター),ソーシャルスキルの測定には「行動をふりかえるアンケート」(佐賀県教育センター)を使用した。分析では,まず各尺度についての因子分析を行い,その因子をもとに小学校2年生から6年生までの児童のソーシャルスキルと学級適応感の発達的な変化,およびその関連性を明らかにした。分析の結果,ソーシャルスキルと学校適応感において各因子により発達的変化が異なるという結果が示された。また,ソーシャルスキルと学校適応感との関連については,学年が上がるにつれてその関連は強くなっていくことが示された。
上野, 和男 Ueno, Kazuo
本稿は「日本歴史における地域性の総合的研究」のうち「民俗の地域差と地域性」班の一調査として、一九八六年以降調査研究を試みてきた奈良県天理市荒蒔の社会構造、とくに村落組織、家族、宮座に関する調査報告である。荒蒔は日本の中央部の村落社会の構造的特徴をよく示している村落であると考えられ、また区有文書、村神主文書など文書記録も数多くのこされており、村落の社会変化を民俗調査と文書調査を併用して明らかにするにふさわしい村落として選定した。
藤原 幸男 津田 正之 平田 幹夫 蔵根 美智子 久高 友明 Fujiwara Yukio Tsuda Masayuki Hirata Mikio Kurane Michiko Kudaka Tomoaki
平山 琢二 田崎 駿平 藤原 望 眞榮田 知美 大泰司 紀之 Hirayama Takuji Tasaki Shumpei Fujiwara Nozomi Maeda Tomomi Ohtaishi Noriyuki
西表島周辺におけるジュゴンの定着の可能性について調査する目的で、ジュゴンによる食痕調査およびジュゴンに関する伝聞や目撃情報などの聞き取り調査を行った。食痕調査では4地域を行った。また、聞き取り調査では石垣島およひ西表島で計41名を対象に行った。ジュゴンの食痕調査では、いずれの地域においてもジュゴンによる食痕は確認できなかった。また、ジュゴンの目撃に関する情報は、石垣島およひ西表島ともに全くなかった。伝聞に関しては30件の情報を得た。このようなことから、今回のジュゴンの食痕調査および聞き取り調査から、現在は西表島周辺にジュゴンは定着していないと思われた。しかし、かつてジュゴンが棲息していた地域における海草藻場の広がりは極めて良好であり、南西諸島海洋の生物多様性の面からも非常に重要な地域である。西表島西岸は、定期船の往来も少なく、良好な藻場を有していることから、西表島におけるジュゴン定着の可能性は極めて高いものと推察された。
本多 正尚 杉本 善嗣 大中 玲奈 中村 宏三 村島 正浩 藤本 昌也 井上 哲子 山脇 敬一 横町 数則 Honda Masanao Sugimoto Yoshitugu Ohnaka Reina Nakamura Kouzou Murashima Masahiro Fujimoto Masanari Inoue Tetsuko Yamawaki Keiichi Yokocho Kazunori
宮島, 達夫 MIYAJIMA, Tatsuo
国立国語研究所は創立当初から統計的な語彙調査をめざし,新聞・雑誌・教科書・テレビ放送など各種の資料について大規模な調査を行ってきた。それは統計的処理の面で先進的なものだったが,最近の英語圏の調査にくらべると代表性・規模などで問題がある。一方,大量の現代語用例にもとづく記述も国立国語研究所が開拓したものであり,現在開発中の1億語コーパスは,語彙調査と実証的記述の伝統を発展させるものとして期待できる。
小田島, 建己 Odajima, Takemi
1997(平成9)年度から1998(平成10)年度にかけて,日本全国の47都道府県を対象に,1960年代前後と1990年代前後の葬送墓制習俗の現状が調査され,その結果は4冊の資料調査報告書『死・葬送・墓制資料集成』にまとめられ,1999(平成11)年に国立歴史民俗博物館から発行された。武田正によって当時調査された山形県東置賜郡高畠町時沢において,2011年に執り行われた葬儀の事例を調査し,約15年前との変化を確認した。
村上, 忠喜 Murakami, Tadayoshi
日本民俗学の資料である伝承そのものは,資料として批判することが困難である。それというのも,伝承資料自体の持つ性格と,伝承を取り出す際の調査者の意図や,調査者と伝承保持者との人間関係など,さまざまな因子に影響を受けるからである。フィールドワークを土台とする学問でありながら,資料論や調査論の深化が阻まれていたことは不幸であり,その改善に向けての具体策を模索していくべきである。
原勢 二郎 Harase Jirou
琉球大学短期交換プログラムは2001年発足し、学生交流協定を結んだ海外の大学の学生約20名を受入れ、単位互換制度の下に1年間英語による授業と、日本語教育を行う。本プログラムが提供する科目はすべて選択科目であるが、本プログラムの特徴である英語による授業科目は各学期4単位以上履修することを義務づけている。本プログラムに対する二期生の満足度は一期生のそれと比較してかなり向上した。二期生の満足度が向上した項目は一期生へのアンケート結果に基づいて対策を取った項目であった。残された主な課題は英語による授業科目の数を増やし質の向上を図ることである。しかしこれを直ちに実現するのは困難なので、学生が希望する課題について指導教官のもとで勉学・研究することを英語による授業科目とみなして単位を与えることで、単位取得の目的だけで希望しない英語による授業科目を履修することがないようにした。
大角 玉樹 Osumi Tamaki
観光産業科学部では、早期キャリア教育の一環としての東京派遣プログラム、かりゆし人財育成基金を活用したハワイ研修、シンガポール研修、および国内研修等、数多くの充実した研修プログラムを実施している。しかしながら、就労しながら学んでいる社会人学生にとっては、研修期間が長すぎることがネックとなっており、比較的短期間で設計された社会人学生向けの研修プログラムの開催を望む声が多く出されていた。産業経営学科は夜間主コースを提供しており、社会人学生も多く学んでいることから、これまで社会人特別経費を活用して、ITやサービス分野の第一線で活躍する講師陣を招聘した産学官連携講座や特別セミナーを実施してきた。しかしながら、夜間の時間帯や土曜日を利用した講義運営が難しいことと、県外ないしは海外での特別研修を希望する声が強いことを受け、本年度は試行として、北海道での研修を実施することとなった。北海道も沖縄同様、観光に力を入れており、産業振興のための産学官連携も数多くみられ、社会人学生が政策の調査、比較検討を行う場として適した環境にある。周知のとおり、沖縄県民は北の地の雪に憧れ、北海道民は冬に南国沖縄の暖かさを夢見ると言われている。いわばお互いが憧れの地の一つでもある。また、北海道は、「食と観光」に関連する政策にも力を入れており、沖縄との連携による新製品開発、販路拡大や物流経路の拡大などの可能性も広がっている。観光と経営を学んでいる学生にとっては、今後の政策を身近に考える格好の教材ともいえるロケーションである。本稿では、今回の研修の目的、内容、及び現地での活動と参加者のアンケートを整理し、政策課題でもある交流産業創出と産学連携によるイノベーションを促進するための社会人学生研修プログラム・デザインに向けた課題と方向性を議論している。
松林, 公蔵 奥宮, 清人 石根, 昌幸 鈴木, 健太郎 酒井, 茂樹 石森, 綾子 臼田, 加代子 MATSUBAYASHI, Kozo OKUMIYA, Kiyohito ISHINE, Masayuki SUZUKI, Kentaro SAKAI, Shigeki ISHIMORI, Ayako USUDA, Kayo
2004年2月の一次調査で、ラハナム村在住高齢者の包括的機能評価を含む医学調査を行い、高血糖や貧血を有する高齢者の頻度が高いことを報告した。今回の調査では、ソンコン郡の中心部のパクソン住民に対し、同様の調査を行い、疾患、生活機能と環境の違いについて、ラハナム住民と比較分析を行うとともに、ラハナムとパクソンの高血糖に対し、経口ブドウ糖負荷テストによる、糖尿病の正確な疫学調査を施行し、インスリン分泌能と反応性の分析や経済調査との関連から、発症原因について考察した。糖尿病その他の疾患に関する、住民と現地医療従事者への情報提供を実施した。高血糖の有無による、合併症の発症や死亡に対する予後を今後追跡していく必要がある。
中野, 洋
語彙についての統計的法則がある。本発表では、国立国語研究所が行った9つの語彙調査を用いて、異なる内容の調査対象間にも共通に存在する語彙とその使用率の関係について述べる。
狩俣 繁久 Karimata Shigehisa
平成17-19年度科学研究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書 / 研究概要 : 沖縄県石垣市白保集落は、1771年に発生した大地震と津波によって全滅し波照間島からの移住者によって再建されたが、両者の方言が同じ方言であることはよく知られている。しかし、233年間の両者の変化がどの程度か、変化はどんな面にあらわれているかについては明らかではない。2年度目である本年 (18)度には、石垣島白保集落での臨地調査を2回、竹富町波照間島での調査を1回実施した。また、これまでに収集した波照間島方言の語彙資料のパソコンへの入力とデータベース化など研究のための基礎データの整備等をひきつづきおこなった。先行研究がすくなく、代表者自身の所有する既存の調査データに少なかった白保方言の調査、研究を重点的に行なった。今年度は、とくに、周辺方言や日本語標準語からの影響や借用がすくないと考えられる文法事項、とくに名詞に接続する格助辞と係助辞をおおく含ふむ文法調査票を使用して、その形式のみならず、文法的な意味、用法をあきらかにするための例文によって調査した。また、おなじ調査票を使用した臨地調査を波照間島でもおこなった。文法調査でも、調査前の予想を超えて日本語標準語の影響がつよく、また、白保方言の変容に大きな影響をあたえたと考えられる石垣島の中央方言である四箇(石垣、登野城、新川、大川の4字)方言について臨地調査の必要性を感じた。ふたつの方言間の比較研究をおこなうとき、類似の現象が共通祖語(祖方言)にさかのぼるものか、分岐後の別々におきたものなのか、判断にまようケースがあって、単語を個別的に比較するだけでなく、音韻体系の比較、変化の要因の蓋然性や、変化が新しいものなのか、古い変化なのか、音韻変化の体系性、音韻変化の構造についても調査する必要性を感じた。なお、その点については、一部のデータに関して調査と分析を行なった。
田中, ゆかり 林, 直樹 前田, 忠彦 相澤, 正夫 TANAKA, Yukari HAYASHI, Naoki MAEDA, Tadahiko AIZAWA, Masao
2015年8月に実施した,全国に居住する20歳以上の男女約1万人から回答を得たWeb調査に基づく最新の全国方言意識調査の概要と「方言・共通語意識」項目についての報告,ならびにその結果を用いた地域類型の提案を行う。
國吉 緑 堀之内 歩 琉 美智子 赤嶺 依子 真栄城 千夏子 宇座 美代子 渡嘉敷 めぐみ Kuniyoshi Midori Horinouchi Ayumi Ryu Michiko Akamine Yoriko Maeshiro Chikako Uza Miyoko Tokashiki Megumi
野山, 広 NOYAMA, Hiroshi
本稿では,独創・発展型共同研究プロジェクト「定住外国人の日本語習得と言語生活の実態に関する学際的研究」で企画・実施された縦断調査研究の成果を紹介した。最初に,研究目的と実施された調査の設計(方法・姿勢等)について述べた。その後,研究期間中に実施されたさまざまな調査のうち,秋田県A市で実施された調査結果と群馬県B町で実施された調査結果を取り上げた。また「話し合いの場(多人数会話の場面)」作りの試案を提示し,その提供の方法,試案の有用性,反省点を示した。最後に,今後の当該分野に関する課題の提示や展望を行った。
西村, 慎太郎 NISHIMURA, Shintaro
本稿は記録史料群の整理・調査方法のうち、段階的整理に則って行われる概要調査あるいは現状記録の方法を振り返り、現在的な課題の中でどのような考え方や方法に基づくべきかを提示するものである。但し、ここでは文書館・博物館・図書館などの資料保存機関に収蔵されている記録史料群ではなく、個人住宅などの民間に所在する資料を対象としたい。最初に概要調査と現状記録の理念について、研究蓄積を振り返り民間所在資料を扱う場合のスタンスについて私見を述べる。次に概要調査と現状記録についての実際の方法について検証する。概要調査にしろ、現状記録にしろ、1980年代に提起されて以降見直されていないため、方法の検証が必要であるものと思われる。次に民間所在資料で求められる概要調査と現状記録の考え方と方法についての筆者の考えを述べ、デジタルカメラを多用する方法を提起する。また、実験段階ではあるがiPadを用いた方法も提起する。
藤田, 盟児 Fujita, Meiji
宮島にある厳島神社の門前町には,オウエという吹き抜けになった部屋をもつ町家群があり,中部・北陸地方の町家形式に酷似する。平成17年度から18年度にかけて実施した伝統的建造物群保存対策調査で,それらの建造年代を形式や技法の新旧関係から推定する編年を行ったが,18世紀後期と推定した田中家住宅と飯田家作業所について¹⁴C年代調査を行ったところ,両方とも17世紀後期の建築である可能性が高まった。このことから,厳島神社門前町の町家建築の編年を見直して,¹⁴C年代調査が民家調査の編年に及ぼす影響について述べた。
池口, 明子
本稿では、2005 年度におこなった村落世帯悉皆調査について、その研究視点と方法、今後の課題を述べた。近年、自然環境の利用の変化を分析する方法として、世帯調査の重要性が増している。とくに、世帯を均一な社会単位としてではなく、年齢・性やその文化的理解の構成を捉える視点が重要視されつつある。今後の課題として、本調査をもとに多様な資源利用の実態を把握し、その世帯経済におけるその位置づけや世帯差を明らかにすること、そのうえで、2006 年度の資源利用活動調査を進めることをあげた。
大城 賢 宮里 征吾 石川 瑞起 小笠原 剛士 Oshiro Ken Miyazato Seigo Ishikawa Mizuki Ogasawara Tsuyoshi
木田, 歩 KIDA, Ayumi
人類学・民族学における学術的資料が、2000 年に上智大学から南山大学人類学博物館に寄贈された。これらは、白鳥芳郎を団長とし、1969 年から1974 年にかけて3 回おこなわれた「上智大学西北タイ歴史・文化調査団」が収集した資料である。本報告では、まず、調査団の概要について、白鳥による研究目標をもとに説明し、次に寄贈された資料を紹介する。最後に、今後の調査課題と研究の展望について提示する。
横山, 詔一 笹原, 宏之 エリク, ロング 谷本, 玲大 YOKOYAMA, Shoici SASAHARA, Hiroyuki ERIC, Long TANIMOTO, Sachihiro
新聞漢字調査について,豊島(1999)の論考を羅針盤としながら国内の状況を概観し,今後の調査に資する視点の設定を日指した。おもに新聞記事を電子化する際に原紙と電子化テキストの間で齟齬が生じる背景を考察し,メディア変換に伴って必然的に発生する諸問題の整理を試みた。そして,以下の提言を行った。将来,独立行政法人・国立国語研究所が新聞漢字調査を実施する場合は,調査精度と費用のバランスという観点から,大量の原紙を研究所側で電子化する作業は避けつつ,また外部から購入した電子化テキストを無批判に受け入れることもないよう,新聞社等の協力を得ながら原紙の組版に使用された文字データを分析するのが望ましいと考える。
津波 高志 稲村 務 Tsuha Takashi Inamura Tsutomu
民俗調査は人々の「声」の調査であり、生活の実態についての複合的な調査である。しかし、これまでのデータベースはそれぞれの声を文脈がわからない程に分解し、統合するという過程であり、「声」にとって一番重要な文脈を保存できておらず、複眼的な比較もできなかった。本稿ではICレコーダーとコンピュータソフトを使い、従来にないWeb型のデータベースの構築を提唱する。そうすることによって、民俗語彙、視覚情報、個々人の声、研究者の仮説とを有機的にリンクさせたデータベースの構築が可能になることを、奄美諸島の中の与論町における墓地にかんする調査のデータ化と大和村における人々の植物に対する認識のデータ化の事例を用いたデータベース構築を例として示す。
王 怡人 Wang Yi-jen 金丸 輝康 Kanamaru Teruyasu
本稿は,中小製造企業の情報発信の実態に関する質問票調査の結果を整理したものである。中小企業は大手広告代理店を利用しないため,メディア利用状況と情報発信の実態は把握されにくい。その実態を把握するために,中小製造企業に焦点を当て,「メディアの利用状況」,「発信される情報の内容」,「消費者や取引相手(顧客)の反応」という 3 つのカテゴリーにわけて質問票調査を行った。調査結果の詳細を以下に記す。
笹原, 宏之 小沼, 悦
国立国語研究所言語体系研究部第三研究室では、1994年度に刊行された月刊雑誌を対象に、標本抽出に基づく用字・表記の大量調査と、それに対する研究を実施している。また、日本語の名詞の一角を占める固有名詞の用字・表記について、笹原は科学研究費により日本全国の地名の全数調査とスカウト式用例採集調査に基づく研究も行っている。それらの概要をまとめておく。
平野, 宏子 HIRANO, Hiroko
1節では,本研究が国立国語研究所共同研究プロジェクト「日本語教育のためのコーパスを利用したオンライン日本語アクセント辞書の開発」の一部であり,web辞書構築の土台となる韻律教育の効果を,紙媒体を使って検証してきたものであることを述べた。2節では,音声の特徴と,学習者の日本語らしい音声習得へのニーズの高さについて述べた。3節では,日本と中国で学習者の日本語音声に対する関心は高くても,音声教育が体系的に行われていないこと,従来の教科書には単音や語のアクセント型の記述はあっても,連語のアクセントや文のイントネーションの記述は少ないこと,しかし最近は韻律の重要性の認識が高まり,韻律学習を目的とした教材の出版が顕著に増えているが,現在のカリキュラムや教材の中で音声教育が自然に導入されることが理想的であることを述べた。4節では,中国語話者の日本語発話の韻律的特徴について述べた。中国語話者のピッチパターンでは,文節ごとの急峻なピッチの上下変動がみられ,音響的な意味のまとまりの形成を阻害すること,日本語にはないアクセント型が出現しやすいことを述べた。5節では,従来の音声教育の問題点を踏まえ,web辞書OJAD開発に関わる教育効果を検証するために,開発と並行して行ってきた紙媒体での音声教育の実践方法について述べた。6節では,音声教育実践の効果についてアンケート調査をもとに分析を行った。ゼロ初級からの音声教育は従来のカリキュラムを変更することなく行え,韻律視覚化教材使用によって教師と学習者間で音声に関して様々な気づきと対話が生まれ,教師は基準をもとに自信を持って指導することができるようになり,学習者は音声学習を負担に感じるよりむしろ面白いと答えた。7節では,教材のweb化,OJADの開発について紹介した。
片岡 淳 Kataoka Jun
研究概要:本研究は、平成5年度から8年度まで沖縄県教育委員会から調査嘱託委員として調査した織物品378点、染物品139点のデータベースの構築を行うことであった。平成10年度・11年度、その情報の入力作業をしていく内に、服装の採寸調査項目の不備、繊維鑑定の見解の相違などがわかった。正確なデータを入力するためにも再検討・再調査を加えた。そして12年度は、繊維の顕微鏡写真の収集に力をいれた。その結果、琉球服装の調査項目を改善し、両身頃を調査した結果、大袖衣について物差を使わない「手度法」であることを確認できた。また、胴衣の袖と脇あきに特色があることがわかった。沖縄県各地の織物組合の素材以外にも、各島々に芭蕉・苧麻・木綿の染織品があることがわかった。その織物技術は、織密度や意匠が優れたものであり、またその多様性は広く今後、公開していきたい。歴代宝案や混効験集に見られる緞・細嫩蕉布・蜻蛉羽衣等、どのような染織布であるか、断定はできないが、資料の収集と拡大写真のデータが得られた。研究対象が神衣装であり、教育委員会や個人の協力により、さらに各島々に残る染織資料を調査研究していきたい。
西内, 沙恵
多義語のプロトタイプ的意味の認定には、意味的出現の高頻度・想起の容易さ・用法上の制約の少なさ・歴史的出現の順序・習得段階など、様々な手法が提起されている。本研究では、意味の移り変わりを前提とした、再調査可能なデザインの量的調査による認定手法を提案する。調査では、多義的形容詞の実例と脱文脈化した語の類似度を調べ、その結果に基づいてプロトタイプ的意味の認定を行う。発表では、この手法の妥当性を多角的に検討する。
前川, 喜久雄
国立国語研究所が山形県鶴岡市で収集した共通語化調査データのうち第1~3回調査の音声項目データを用いて、方言音声共通語化過程の統計モデルを構築した。既に報告した第1回調査データと同様、第2回・第3回調査データも二項分布に基づくロジスティック回帰モデルを適用するには分散が大きすぎる(過分散状態)。そのため、ベルヌーイ分布の成功確率が種々の要因によって変動するベイズモデルを考案した。7種のモデルの性能をF値・平均予測誤差・WAICの三者で評価した結果、回帰直線の切片が話者と語彙の要因によって変動し、傾きが語彙の要因によって変動するモデルが良モデルとなった。このモデルのF値は0.95に達しており、強い説明力を有している。さらにこのモデルにおける話者の個体性情報を「性別・言語形成地域・教育歴」の情報で置換したモデルを評価したところ、第2・第3回調査データについては、良モデルとほぼ同等の性能を発揮するものの第1回調査については性能がかなり低下することが判明した。
井上, 史雄 INOUE, Fumio
国立国語研究所がこれまで半世紀以上にわたって継続した調査のうち,岡崎敬語に関して成果を報告する。調査の回答(反応文)の長さを出発点にする。3回の調査結果のグラフの線がこれまで観察されたことのないパターンを示したので,まずその位置付けについて論じる。そのあと敬語関連現象のグラフに解説を加え,相互の論理的つながりについて考える。これまで岡崎の「ていただく」や「丁寧さ」の分析を進める際に,反応文の長さが問題になった。調査次とともに長くなるが,若い人は短い。時勢とともに「ていただく」が増え,丁寧さを示す表現が増えたから,回答文が長くなったと考えられる。敬語の成人後採用と深い関係が認められる。
- 2021/9/8 16:09
人口調査に関係する文書。作成年代、筆者不明。「壱番」「弐番」「参番」と三つの調査内容が記されているが、全て同じ内容である。年代は不明だが、史料に「酉札改以後」(トリフダアラタメイゴ)とあり、前回調査は酉年だったことが分かる。「真栄里親雲上」(マエザトペーチン)という記述が見られるが、地域は特定できない。この時期の八重山の総人口は「一万五千七拾人」とある。
- 2009/6/5 16:47
人口調査に関係する文書。作成年代、筆者不明。「壱番」「弐番」「参番」と三つの調査内容が記されているが、全て同じ内容である。年代は不明だが、史料に「酉札改以後」(トリフダアラタメイゴ)とあり、前回調査は酉年だったことが分かる。「真栄里親雲上」(マエザトペーチン)という記述が見られるが、地域は特定できない。この時期の八重山の総人口は「一万五千七拾人」とある。
Ikehara Atsuko Shayesteh Yoko 池原 敦子 シャイヤステ 榮子
現在,アメリカ合衆国では,社会の移民の人口増加に伴い,学校教育における多文化教育の必要性が問われている。音楽教育においても,音楽を通しての異文化理解と国際理解の実践が提案されている。児童の異文化音楽に対する興味や関心は,多文化音楽教育を実践するにあたって重要な影響をあたえる。同様に,異文化音楽の指導方法を研究するのも必要である。当報告は,アメリカ合衆国の小学校第2学年の児童40名を2つのグループに分け,沖縄伝統音楽を教材とした多文化音楽授業を行い,そのなかで2種類の指導方法,1.受け身的鑑賞指導のみ 2.鑑賞に加えて,エイサー太鼓のダンス指導を取り入れた体験学習,を比べ,児童の異文化音楽における興味と指導方法に対する態度をアンケートによって採取したものである。結果は,2つの指導効果に有意差は見られなかったものの,両グループ共に異文化音楽に対する興味や関心を示した。受け身的鑑賞指導と体験学習については,継続的な指導のもとに,体験学習の指導効果が期待できると考えられる。
吉田 安規良 中尾 達馬 齊藤 由紀子 福本 晃造 吉岡 由恵 比嘉 源和 高田 勝 翁長 朝 山本 暁 中村 智映 田名 俊仁 Yoshida Akira Nakao Tatsuma Saito Yukiko Fukumoto Kozo Yoshioka Yoshie Higa Genwa Takada Masaru Onaga Hajime Yamamoto Akira Nakamura Tomoaki Dana Toshihito
本研究の目的は,2008年度から2015年度までの授業評価アンケートを用いながら,琉球大学教育学部理科教育講座が提供する「沖縄こどもの国における校外学習を用いた生活科科目」についての実践報告を行い,今後の生活科に関する科目のあり方について議論することであった。受講生324名は,総じて「小学校教諭を目指す大学生にとって沖縄こどもの国での校外学習を取り入れた生活科の教師教育実践は有意義である」と評価していた。また,自由記述の内容分析からは,沖縄こどもの国での体験(たとえば,ヘビが生きたネズミを捕食する様子の観察)を通して,受講生たちはこれらを直接教材にできるかどうかだけではなく,「教師の学びとしての重要性」や「自然との関わりを児童にどのように学ばせるのか」についても考えを巡らせているようで、あった。今後は,小学校第3学年以上で学ぶ理科の授業とのつながりを意識した授業内容や天候に依存しない授業内容を検討する必要がある。
橋本, 雄太 Hashimoto, Yuta
国立歴史民俗博物館共同研究「中世文書の様式と機能および国際比較と活用の研究」(2016~2018年)の成果公開の一環として,中世文書資料のオンライン展示システム『日本の中世文書WEB』(以下,『中世文書WEB』)を開発した。『中世文書WEB』は文書画像の拡大・縮小表示に対応する画像ビューワーに加えて,読み上げ音声の再生とアニメーションによる翻字の強調表示機能を備えている。さらに利用者の情報交換を可能にするフォーラム機能を実装した。2020年1月8日のシステム公開後,1週間の評価期間中に5,000人を超える人々がWebサイトを訪問するなど,本システムを通じて中世の古文書に対して多数の人々が関心を寄せていることが明らかになりつつある。システムの利用者に対して実施したアンケートでは,音声読み上げとアニメーションを組み合わせたインターフェイスが,資料内容の理解に大きく寄与することが分かった。IIIF(International Image Interoperability Framework)をベースにした本システムは高い拡張性を備えており,機関横断型の古文書展示プラットフォームや,任意のWebサイトに組み込み可能な音声読み上げ対応のIIIFビューワーとして発展する可能性を備えている。
髙橋 美奈子 Takahashi Minako 渡真利 聖子 Tomari Seiko 平良 ゆかり Taira Yukari
本調査では,「外国人児童生徒のための JSL 対話型アセスメント DLA」(文部科学省 2014)で作成された JSL 評価参照枠<全体>をもとに,日本語指導が必要な児童生徒の状況を把握するための調査票を作成し,沖縄県内で比較的日本語支援体制が整備されている北谷町のすべての学級担任を対象に,自身の学級内の外国につながる児童生徒ならびに彼らの学級参加と日本語力を調査した。結果として,学級担任は,文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 30 年度)」結果の 3 倍以上もの児童生徒に日本語指導等の特別な指導が必要だと認識していること,さらにそのうちの三分の一以上の児童生徒は無支援状態であることが明らかとなった。本調査により、 無支援状態の児童生徒ならびに学級担任の把握と実際の取り出し指導の差に当たる児童生徒については,DLA を実施して支援の要否や支援内容を正確に測る必要性が示唆された。
横山, 詔一 YOKOYAMA, Shoichi
言語変化の経年調査データから将来の言語変化を数量的に予測するモデル(横山・真田2010)について紹介した。このモデルは「臨界期記憶+調査年効果 → 共通語化」という図式にしたがって共通語化を説明・予測する。国立国語研究所が山形県鶴岡市を定点観測フィールドとして経年的に約20年間隔で過去3回実施した共通語化調査の大量データを,このモデルで解析した結果,アクセント共通語化などにおいて予測値と観測値が精度よく一致することが示された。
津波 高志 池田 榮史 町田 宗博 後藤 雅彦 石田 肇 土肥 直美 稲村 務 Tsuha Takashi Ikeda Yoshifumi Machida Munehiro Ishida Hajime Doi Naomi Inamura Tsutomu
研究概要:(平成18年度時点)研究第二年目にあたる本年度は調査対象地を奄美諸島のうち、徳之島と奄美大島に設定した。4月はまず琉球弧において洗骨儀礼が現在観察可能な与論に行き、洗骨儀礼の観察を行った。次に、概念構築のための比較例として沖縄側の墓制の変遷が明確に辿れる久米島を調査した。その後、徳之島・奄美大島に赴き、現地研究者との情報交換や聖地・葬地の踏査を行いながら、前年度に引き続き徳之島伊仙町面縄地区を中心に聖地・葬地の基礎的な調査を実施した。面縄地区は先史時代から近現代の葬地まで確認することができ、本研究の研究課題である聖地と葬地の関りを時間軸の中で捉えることができる地域として重要である。これらを踏まえて平成19年2月に伊仙町面縄地区において8日間の考古学的調査を実施した。考古班(後藤)は面縄の按司墓と伝承される積石遺構の実測と周辺地形の測猛調査を実施し、実測図を完成させた。また、徳之島でアムトと呼ばれている祭祀場において、所有者の了解を得た上でレーダー探査などの初歩的な調査を行った。文化人類学班(津波・稲村)は葬地を中心としたデジタル・データベースの構築と聖地・葬地に関するインタヴュー調査を行った。また、奄美大島では以前から継続調査をしている大和村において葬墓制に関する親族、儀礼、伝承の調査を行い、関連する文献資料の収集も行った。これらの資料はデジタル化された形で整理されている。形質人類学班(石田)は徳之島伊仙町における既知の出土人骨に関する情報を収集・検討を行い、町田は聖地、葬地および現在の集落、墓地などの関連性について航空写真や現地情報をもとに地理情報学的にGISを駆使して分析をすすめた。また、各分野での調査成果の共有と仮説や問題点の検討のために現地での打ち合わせを行い、今後の研究のフレームワークの構築を図った。
山田, 貞雄 中山, 典子
明治初期刊行の英和辞書を資料として,漢語訳語の網羅的調査結果の電子化モデルを作成し,分析を可能にした。また,フリガナつき対訳訳語資料『英和字彙』の訳語について網羅的調査と分析をすすめた。
鄭, 毅
「満鉄調査研究資料」は、南満洲鉄道株式会社が、中国東北部を対象に行った長期的かつ大規模な調査の成果であり、日本植民地時代の「満洲文化遺産」として極めて重要な資料である。こうした資料が蓄積された背景として、「調査」「学術」「帝国」という三つの視座の存在を指摘することができるだろう。現在ではそのほとんどが中国の図書館と公文書館に所蔵されている。1950 年代から中国の研究者たちはその価値を認め、整理と研究に取りくみ、実りの多い成果を成し遂げた。
ザトラウスキー, ポリー SZATROWSKI, Polly
本研究は,食べ物を評価する際に用いられる「客観的表現」と「主観的表現」について考察する。そのために食べ物を評価する語句が,語句のみの場合(調査A),食べ物を評価する語句が,文脈なしの発話に置かれた場合(調査B),食べ物を評価する語句が,実際の会話で用いられた場合(調査C)のそれぞれにおいて,その語句/発話が肯定的/否定的な意味を持つかどうかの3種類の調査を行った。資料は試食会のコーパスから取った,20代の女性3人が3つのコースからなる食事を食べながら話している実際の試食会の会話を録音・録画したものである。調査Aでは語句のリスト,調査Bでは(調査Aの語句が含まれている)文脈から切り取った発話のリストをもとに,それぞれの語句や発話が肯定的か否定的かを5段階で被験者に判断してもらった。調査Cでは(調査Bの発話が入っている)試食会のビデオを見せながら,被験者にビデオの参加者が評価していると思う発話に対して,それらが肯定的か否定的かを会話の文字化資料に+,-で記してもらった。その結果,いわゆる客観的な語句であっても,個別の語句もその語句が含まれた文脈なしの発話も肯定的/否定的な意味を持つこと(調査A,B),それが試食会の会話の場合では一層顕著であること(調査C)が分かった。このように,いわゆる客観的な語句で主観的な好みが示される。そして試食会の相互作用の中での使用を分析した結果,参加者は食べ物に関する知識と過去の経験との比較に基づいて評価すると同時に自分のアイデンティティを見せ,ほかの人との意見・考えの異同を確認し合い連携し,親疎の人間関係を作ること,食べ物の評価は動的に作り上げられ,時間とともに展開し,変わっていく社会的な活動であることが確認された。「客観的表現」と「主観的表現」は,従来の意味論の研究においては語句中心か文脈なしの文で考察されてきたが,実際の様々な種類の談話の相互作用の中で考察する必要がある。本研究は,食べ物を評価する形容詞等の意味に関する研究,異文化間の理解,食べ物に関する研究にも貢献できるものである。
吉田 安規良 柄木 良友 富永 篤 YOSHIDA Akira KARAKI Yoshitomo TOMINAGA Atsushi
平成22年度に引き続き、平成23年度も琉球大学教育学部附属中学校は「体験!琉球大学 -大学の先生方による講義を受けてみよう-」と題した特別講義を、総合的な学習の時間の一環として全学年の生徒を対象に実施した。「中学校で学んでいることが、将来どのように発展し社会や生活と関わるのか、また大学における研究の深さ、面白さを体験させる」という附属中学校側の意図を踏まえて、筆者らはそれぞれの専門性に裏打ちされた特別講義を3つ提供した。そのうちの2つは自然科学(物理学・生物学)の専門的な内容に関する講義であり、残りの1つは教師教育(理科教育学)に関するものである。今回の3つの実践は、「科学や学問の世界への興味、関心を高める」と「総合キャリア教育」という観点で成果が見られ、特に事後アンケートの結果から参加した生徒達の興味を喚起できたと評価できる。しかし、内容が理解できたかどうかという点では、全員が肯定的な評価をしたものから、評価が二分されたものまで様々であった。
平山 琢二 小倉 剛 須藤 健二 上原 一郎 比嘉 辰雄 向井 宏 大泰司 紀之 Hirayama Takuji Ogura Go Sudo Kenji Uehara Ichiro Higa Tatsuo Mukai Hiroshi Otaishi NoriYuki
本調査では、沖縄県の八重山諸島にある西表島の道路交通手段が絶たれている西岸について海草の生息状況、種類およびその分布について行った。調査地は、沖側から水深が5m程度になる付近から岸側に向かって干出する所まで行った。調査は基本的に沖側から岸側に向かってトランセクト状にスノーケリングで行ったが、水深が浅く、船上から海草が確認できる場合にはマンタ法や船上から行った。今回調査した西表島西岸の海草藻場は、沖縄島の嘉陽海岸で調査した海草藻場と比較すると非常に海草の繁茂および被度が高く、広大で比較的良好な藻場であったことから、南西諸島海洋の生物多様性の面からも非常に重要なものと推察される。また、仮に八重山諸島においてジュゴンの個体群の復活がはかられた場合、ジュゴンにとって極めて豊富な餌資源を現在でも擁していると思われる。
金城 克哉 Kinjo Katsuya
今回、MSMの男性が利用する出会い系掲示板の投稿文の分析調査を行った。調査ではさまざまな特徴的な言葉が見られたが、本稿では文末表現(助動詞)「です」の代替表現「す」「っす」に議論を絞る。
上野, 善道 UWANO, Zendo
奄美徳之島浅間方言のアクセント資料の続きを提示する。今回は,上野(1983, 1985)の5~8モーラ語,および上野(1987b)の4モーラ語の2種類の語彙リストを用いて調査をした結果を掲げる。本稿で扱う調査項目は1400語あまりとなる。
吉村, 典子 Yoshimura, Noriko
本論文は愛媛県大洲市上須戒における夫婦共同型出産習俗について、主に一九八四年(昭和五九年)七月〜一九八七年十二月に集中的に調査し、その後二〇〇六年三月まで、数度にわたって補足調査した報告である。
島村, 直己 SHIMAMURA, Naomi
一つ一つの語について児童・生徒の理解程度を調査するのに,児童・生徒にそれらの理解程度を評定させるテストを行うことが多い。本稿は,このようなテストの信頼性・妥当性,理解程度の段階数,1回のテストに提出する語の数を検討することを目的として行った調査の報告である。
小倉, 慈司 Ogura, Shigeji
本稿は,日本古代の史料に押捺された印影を主に収録した摸古印譜(日本古印譜)について,その系譜を明らかにすることを目的とした調査の中間報告である。今回は特に日本古印の研究の基礎を築きその後の日本古印譜作成に大きな影響を与えた藤貞幹が登場する以前の時期に焦点をあてて調査を行なった。
中筋, 由紀子 Nakasuji, Yukiko
本論考は,先祖祭祀をめぐるインタビュー調査において,筆者が出会った二つの異質な場における「語り」のあり方を分析することによって,調査対象となるフィールドにおける,「語り」の構造とその変容について考察するものである。
山村, 規子 YAMAMURA, Noriko
本紹介は、国文学研究資料館の中庄新川家文書調査の一環であり、先の調査研究報告第三六号の鶴﨑裕雄報告、三七号の鶴﨑・小高道子・大利直美報告、本号の鶴﨑・小高報告と一連のものである。
薦田, 治子 Komoda, Haruko
本論文は平成21年度に国立歴史民俗博物館で行われた紀州徳川家伝来楽器コレクションの琵琶の調査の報告と,その結果に関する論考である。今回の調査の対象としたのは,同コレクション内の23面の琵琶のうち,中国琵琶を除く日本の琵琶22面である。
Christy Alan クリスティ アラン
ゲイル・プロジェクトとは、米国陸軍大尉チャールズ・ユージン・ゲイルによって1952 年に撮影された一連の写真を通し、アメリカによる初期の沖縄占領(1945 年から1960 年)の実態についての理解を深めようとする日米共同の歴史学的な取り組みであり、今後、アメリカと日本で写真やそれに関連する資料の巡回展を開催することが予定されている。本プロジェクトでは、沖縄における米軍のプレゼンスが形成された時代について、口述歴史調査と文献資料調査という二つの調査方法で、広範囲な歴史調査も行う。本稿では、歴史的証拠としての写真の重要性について述べると同時に、アメリカで行う沖縄の歴史の教育実践において、筆者が写真資料をどのように活用しているのかについて論じる。
多田, 伊織
一九九九年一二月、雲南省昆明市と香港で明治以前の日本書及び文書の調査を行った。これまであまり報告のなかった地域である。この調査では、伊澤蘭軒が校訂を加えた手抄本の「療諸病薬方六十道」(『華氏中蔵経』巻下)を雲南大学図書館善本室で、J. R. MacEwan旧蔵の伊藤仁斎『古学先生別集』稿本第一冊を香港大学平山図書館で目睹し得た。雲南大学の日本書は、旧貴州大学蔵書であり、このコレクションの分割先である西南地域の大学図書館の調査が望まれる。末尾に雲南大学図書館善本室の沈継延先生が作成された「日本書目録」の一部を掲載した。
神田, 邦彦 KANDA, Kunihiko
『方丈記』の諸本については、古本・流布本・略本の関係が長く論争になっているが、一方で、そうした問題を考えるうえで重要な、伝本のまとまった調査・研究は、鈴木知太郎・簗瀬一雄・青木伶子・草部了円ら以来、三十年以上行われていない。この三十年の間には、新たに出現した伝本もあるであろうし、所蔵者が変わったものもあるであろう。そこで、『方丈記』諸本の再調査を略本から進めているが、本稿では三系統ある略本のうち、延徳本系統・最簡略本系統について調査したところをまとめる。
柳村, 裕 YANAGIMURA, Yu
本研究では,岡崎敬語調査資料の分析に基づき,「敬語の使用」と「話者の職業」がどのような関係にあるかを探る。敬語使用の特徴に関わる指標として発話の「丁寧さ」と「長さ」を集計し,話者の職業は「事務系」「接客系」「労務系」の三つを区別した。これらの敬語使用の特徴が話者の職業によってどう異なるかを調べた。また,岡崎敬語調査資料の複数の調査時点での多様な生年・年齢の話者を比較することにより,職業による敬語使用特徴の差異のパターンがどのように変化してきたか,また,個人内でどのように変化するかを調べた。
照屋 晴奈 田中 敦士 Teruya Haruna Tanaka Atsushi
本研究は沖縄県内の特別支援学校の学校図書館の現状を、1.学校図書館としての業務、2.特別支援学校の学校図書館機能、3.学校図書館としての役割の3つの視点から明らかにすることを目的とし、宮古特別支援学校、沖縄盲学校、沖縄ろう学校の3校に対し実態調査を行った。その結果、司書教諭の配置、図書館業務は学校司書が中心であること、圧倒的な予算不足、司書教諭発令に関する基準との矛盾、学校現場の実情と負のスパイラル等が明らかとなった。本研究により、現在、全国で行われている学校図書館を対象とした調査である、文部科学省実施の「学校図書館の現状に関する調査」と、全国学校図書館協議会実施の「学校図書館調査」では明らかにすることができない学校図書館を取り巻く現状や課題が明らかとなった。
熊谷, 智子 木谷, 直之 KUMAGAI, Tomoko KITANI, Naoyuki
本稿では,三者間談話の一つとして2名の回答者に対する面接調査を取り上げ,そこに見られる回答者間の相互作用を分析した。調査者と回答者の間の質問-回答という基本的枠組みを持つ面接調査において,回答者間の相互作用は逸脱的行動にもなり得るが,実際には回答行動として機能していた。相互作用の種類としては,同意要求・情報確認とそれへの応答,もう一人の回答へのコメントとそれに対する応答・反応,互いの発話をふまえた回答,もう一人の回答への相づち・反応が観察された。本稿では,これらの相互作用が,回答行動のパターンに「調査者の質問に各々の回答者が個別に答える」以外の各種のサブタイプを出現させると同時に,回答者による談話行動においても回答以外のサブタイプを可能にしていたことを指摘する。
この本は、沿岸の浅海域における音響資源量調査を行うための機器について紹介しています。市販の魚群探知機を利用した簡易型計量魚群探知システムのハードウエアーからソフトウエアーまでを網羅しており、低コストで浅海域の音響資源量調査を始めたい方に、お勧めします。
中西, 麻美 NAKANISHI, Asami
焼畑農耕後の森林植生の復元力を評価することを目的とし,植生および埋土種子についての予備調査をラオス北部のウドムサイ県ラ郡において実施した。フアイペー村の焼畑耕作地の土壌中には,生残種子が確認された。フアイペー村の焼畑休閑林の特徴として,焼畑耕作後は1年目にユーパトリウムが出現すること,遷移に伴いブナ科の樹種が出現してくることが確認されていることから,今後の調査では,これらの撹乱依存種や遷移後期種に的を絞った調査を検討している。
王 怡人 Wang Yi-jen 金丸 輝康 Kanamaru Teruyasu
本稿は,消費者の中小製造企業に対するネット口コミ状況に関する質問票調査の結果を整理したものである。調査では,ネット口コミを「自発的情報発信」と「情報拡散」に分け,「企業への態度」,「企業や商品の利用経験」,「メディアの種類」,「ネット口コミの動機」のという 4 つの変数を用いて質問票を構築した。その結果の詳細を以下に記す。
宮田, 公佳 竹内, 有理 安達, 文夫 Miyata, Kimiyoshi Takeuchi, Yuri Adachi, Fumio
今日,わが国においても観客の視点に立った博物館運営の重要性が認識されつつある。それを実現するには,観客の側からみた博物館の評価が欠かせないものとなる。これまで以上に観客について知ること,来館者の博物館体験について知ることが求められており,国立歴史民俗博物館においても,観客調査を試み始めている。本論文では,当館で実施している様々な観客調査の中から来館者の観覧行動を分析した調査を取り上げ,その結果について報告する。観覧行動の具体的な調査方法と分析方法について検討を行い,来館者の見学順路,各展示室の在室時間および在館時間,そして展示室別入室者数の時間的推移を定量的に分析することによって,博物館の建物の構造や展示室の配置が来館者の観覧行動に与える影響などを明らかにした。
吉野, 晃 YOSHINO, Akira
筆者が1988 ~ 1989 年に調査を行ったユーミエン村落PY 村で陸稲耕作に関する追跡調査を行った。この村では1990 年以降焼畑耕作ができなくなり、常畑耕作に移行した。また、世帯構成についても、父系合同家族から核家族への変化が観察される。
中渡瀬, 秀一 加藤, 文彦 大向, 一輝
言語資源データの引用情報調査に基づいて、そのデータを活用した研究文献の発見可能性について論じる。このために言語処理学会年次大会発表論文集を対象として「現代日本語書き言葉均衡コーパス」などの引用情報を調査した。本稿ではその結果と今後の課題について報告する。
山盛 直 平田 永二 新本 光孝 砂川 季昭 安里 昌弘 Yamamori Naoshi Hirata Eiji Aramoto Mitsunori Sunakawa Sueaki Asato Masahiro
与那演習林および西表島の熱帯農学研究施設に設定された択伐試験地ならびに西表国有林内で林分調査を行ったオキナワウラジロガシ林の森林土壌の調査を行った。土壌型の異なる場所で代表的地点を選んで試孔を掘って断面調査を行った。また、 各層位から試料を採取し、 土壌の理化学性の分析を行った。分析結果は表1および表2に示したとおりである。調査結果および文献調査から、 沖縄の森林に主として分布する赤黄色土は、 褐色森林土と比較して容積重が大きく、 透水性が悪く、 粗孔隙量が小さい特徴がみられた。また、 土壌断面にみられた堅密度は堅&amp;acd;固結が多く、 堅密な土壌であることがいえる。土壌の化学性も褐色森林土に比べて劣るが、 黄色土の一般的性質がみられた。与那と西表の森林土壌のちがいは、 土性によく表れていた。これは母材のちがいによるものと考えられる。この研究をとりまとめるに当たって、 特に土壌の分析に林学科学生下地輝史君の協力を得た。記して深謝の意を表する。
西本 裕輝 Nishimoto Hiroki
全国的に少人数学級化の動きが加速している。それは学級規模が小さければ小さいほど教育効果は高まるとする仮説に基づいていると言える。しかしながら、こうした仮説を支持する研究データはほとんどない。そうしたことから本研究では校長・教員を対象とした全国調査の結果から、学級規模と教育効果の関係について検討を行った。\n分析から、学級規模が小さくなるほど教育効果は高まるという結果が得られた。これは校長調査の結果も教員調査の結果も同様である。このことから、少なくとも校長や教員の意識の上では、少人数教育の効果はあると結論づけることができる。\nただし、この結果からただちに「少人数学級化によって教育効果は高まる」「学級規模が小さいほど教育効果は高まる」と結論づけるわけにはいかない。今後行う児童生徒調査の結果も踏まえて、慎重に結論を出す必要がある。
山本, 雄大 石本, 雄大 宮嵜, 英寿 梅津, 千恵子 YAMAMOTO, Takehiro Ishimoto, Yudai Miyazaki, Hidetoshi UMETSU, Chieko
アフリカ農村社会にまでグローバル化が進行するなかで、現代における食生活の把握が求められている。本稿は、ザンビア南部州のカリバ湖に近いトンガ農村部における食生活の実態を把握することを目的とする。食事調査は、標高の異なる3 つのサイトにおいて、まず2009 年5 月から2010 年5 月まで13 か月間、補足的に2013 年10 月から11 月までおこなわれた。食生活の分析は、調査結果のうち特に副食の材料に注目し、各食品や食品群ごとの登場頻度をあらわすグラフを用い、補足調査の情報を加えながらおこなった。
速水, 融
日本における第一回の国勢調査は、大正九年のことで、主要工業国のなかでは最も遅く始まった。しかし、全国的人口統計は早くから行われ、徳川時代においてさえ、幕府は、享保六年から弘化三年の間、六年に一回、国ごと、男女別の人口調査を行っている。
山盛 直 大山 保表 Yamamori Naoshi Oyama Hohyo
リュウキュウマツ幼令林の生長パターンおよび環境の異なる箇所における生長のちがいなどを知るために本調査を実施した。試験地は琉球大学与那演習林内にあって、 風衝地および抱護樹帯内側の2箇所に調査区を設置した(表1)。調査結果は次のとおりである。1.調査区別の伸長量は、 風衝地よりも抱護樹帯内側の調査区において大きかった。2.生育シーズン中における生長パターンは、 総体的にみて生長ピークを2&amp;acd;3回持っている。その中で3月のピークが最も大きく、 7月のピークがこれにつぎ、 10月のピークは最も小さい(図2)。また各月とも1cm以上の伸長量があって年中生長を経続していることがわかった。3.針葉の伸長は3月からはじまり、 最大の伸長ピークは5月で、 第2回目および第3回目の伸長ピークは、 頂芽の伸長ピークと同時期の7月および10&amp;acd;11月あった。4.芽の出方を区分すると、 1型 : 冬芽のみを出すタイプ、 2型 : 秋芽を1回出すタイプ、 3型 : 秋芽を2回出すタイプの3型に分けられ、 これら3タイプの中で2型の伸長が最も大きかった。本研究の現地における調査および測定には与那演習林の田場和雄技官の協力によって、 また実験室における測定および資料の整理には林学料学生屋良一洋、 新垣 徹の両君の助力を得た。特記して厚くお礼申し上げる。
仲田 栄二 Nakata Eiji
(1)この調査は伊是名島の耕作田の雑草群落を分類する目的でおこなった。(2)植生調査はチューリッヒ・モンペリエー学派の植物社会学的方法でおこなった。(3)伊是名島の水田から14個の植生調査資料が得られた。これらの資料をチューリッヒ・モンペリエー学派のテーブル処理法で表操作した結果,次の植生単位が明らかになった。 A.イネクラス (A)タマガヤツリーイヌビエオーダー 1.イネーイヌビエ群団 (1)コウキヤガラ群集 (2)コウキヤガラ―コナギ群落 a.ツルノゲイトウ亜群落 b.ナンゴクデンジソウ亜群落 (4)コウキヤガラ群衆とツルノゲイトウ亜群落は乾田に生育し,ナンゴクデンジソウ亜群落は湿田に生育している。
福田, アジオ Fukuta, Azio
本稿は、今回の研究計画の定点調査地の一つである静岡県沼津市大平において継続的な調査を行なってきた結果の報告である。個別地域の個性は、自らの地域の歴史認識によって大きく支えられ、あるいは形成されるものと予想しつつ、調査を行なった。人々の自分たちの社会に対する認識が歴史を作り出すと言ってもよいであろう。史実としての歴史だけでなく、意識される歴史、あるいは時には作り出される架空の歴史的世界も含めて、民俗的歴史世界を文字資料と現実の民俗事象の双方から追いかけることを意図した。
加藤, 久美子 ヤーナターン, イサラー KATO, Kumiko YANATAN, Isra
聞き取り調査で得た情報をもとに、ドンクワーイ村の人口変化と稲作の変化の傾向を示し、考察した。その内容は以下のようである。
長谷川 裕 Hasegawa Yutaka
研究概要:(平成18年度時点)本研究の目的は、一方で(ア)教育における「能力主義」とはいかなるものなのかを、改めて原理的に社会理論的に考察すること、他方で(イ)今日の教育の実態の中では、能力主義の原理がどのような顕れ方をしているかを社会調査の方法によって把握すること、である。昨年度は、これらのうちとりわけ、教育における能力主義の原理論である(ア)に関わる作業に専心したが、今年度も、一方でこの作業を継続して行った。昨年度はその研究成果の一部として、日本の教育研究における能力主義論の重要な論者の一人である黒崎勲の諸説を検討する論考を執筆したが、今年度は特に、その黒崎が依拠する政治哲学者J・ロールズをはじめとするリベラリズムの理論・思想と、それに対抗する諸潮流の理論・思想との検討作業を行った。 (イ)は、教育における能力主義の実態論である。本研究ではとりわけ、子ども・若者の意識・行動が、教育における能力主義によって、教育領域外のそれとも絡み合いながら、どのように規定されているかを、主として調査票調査の方法によって、実証的に明らかにすることを計画している。本年度は、その調査を実施する準備として必要な文献・資料(類似したテーマに関する調査の報告書など)を収集し読み込み、それを踏まえて調査票を作成する作業を行った。年度当初は、そのようにしていったん仕上がった調査票を用いてプリテストを行う計画であったが、そこまでは到達できなかった。新年度は、その作業から開始する予定である。
米田, 正人 YONEDA, Masato
国立国語研究所では昭和25年度と昭和46年の2度にわたって文部省科学研究費の交付を受け,山形県鶴岡市において地域社会に於ける言語生活の実態調査を実施した。それにより,戦後四半世紀の急激な社会変化の中で方言が共通語化していく過程について,その実態や社会的な要因を明らかにした。本研究は,これらの成果を受け継ぎ,鶴岡市において約20年間隔の第3次調査を実施するとともに,言語変化を将来に向けて経年的に調査記述していくための基礎構築を目的として行われた。また,本報告は平成3年度および4年度の文部省科学研究費補助金(総合研究(A)),研究課題名「地域社会の言語生活-鶴岡市における戦後の変化-」(課題番号03301060)(研究代表者 江川清)の交付を受けて行った調査研究のうち,音声,アクセントの共通語化について一部をまとめたものであり,平成5年8月,カナダのビクトリア大学で行われたMethods Ⅷ (方言研究の方法論に関する国際会議)で口頭発表した内容に加筆訂正したものである。
小西, 円 Konishi, Madoka
本研究では、日本語学習者のための類義表現の記述方法に関する研究の一環として、上級日本語学習者が日本語の文章を読む際に文体をどのように把握しているかを探るために調査を行った。本研究は、その調査をケーススタディとして、分析を行うものである。調査には「BCCWJ図書館サブコーパス文体情報」を用いて、そこで示された指標と本研究の調査との差を分析した。その結果、文体的な指標では特に「硬度」「くだけ度」の理解に難しさが見られたが、その理解を生む過程が、学習者によって異なっていることがわかった。丁寧体・普通体の理解が学習者によって異なり、それが影響している側面があった。また、自分が知らない語や漢字語を硬く感じる、オノマトペを軟らかく感じるなどの特徴が見られた。また、「客観的で硬い」のに「くだけている」文章の文体的な理解が難しいこともわかった。
尾崎, 喜光 OZAKI, Yoshimitsu
国立国語研究所では,山形県鶴岡市において,方言の共通語化を主たる研究課題とする調査を,1950年(昭和25年),1972年(昭和47年),1991年(平成3年)と約20年間隔で多数の市民を対象に継続し,その間の共通語化の進行状況をとらえてきた。しかし,方言/共通語を用いると判定された回答者も,いつも方言/共通語を用いるわけではなく,会話の相手や場の改まりの度合いなど広い意味での「場面」の違いにより,方言と共通語を使い分けていることが予想される。そこで,第3回調査の翌年の1992年(平成4年)に,場面による使い分けの状況を見るとともに,「ふつう何と言うか」と問うことにより日常的な場面を想定させて求め続けてきた過去3回の調査結果が言語生活全体のどの側面をとらえてきたかを検証するために「場面差調査」を実施した。分析の結果,さまざまな言語要素において使い分けがなされていることが確認された。
相澤, 正夫 AIZAWA, Masao
進行中の共同研究プロジェクト「多角的アプローチによる現代日本語の動態の解明」の一環として,2010年12月に全国規模の方言意識調査を実施した。本稿では,この調査で得られたデータに基づく最新の研究成果2件について紹介する。いずれも,言語使用に関する地域類型を統計手法によって検討したものである。田中(2011a,2011b)は,調査データに「クラスター分析」を適用した結果,2つの大きな地域類型と6つの下位類型を見出した。田中・前田(2012)は,言語使用に関する個人レベルでの確率的なクラスタリングを得るため,同一の調査データに対して「潜在クラス分析」を適用した結果,「クラス1:積極的方言話者」「クラス2:共通語話者」「クラス3:消極的使い分け派」「クラス4:積極的使い分け派」「クラス5:判断逡巡派」のような5つの潜在クラスを抽出した。これにより,話者分類に基づいて地域の類型化を行うことが初めて可能となった。
柳村, 裕 YANAGIMURA, Yu
岡崎敬語の「丁寧さ」のレベルについて,第3次調査の結果を加えることで明らかになった敬語の大きな変化傾向を報告する。丁寧さが3回の調査を通して数十年にわたって増加し,特に第3次調査で大幅に増加したことが分かった。1940年代前後に生まれた人たちは,3度の調査の対象になったが,半世紀経って丁寧さを増やしている。「成人後習得(late adoption)」が丁寧さでも認められた。これは実時間(real time)による。一方,3回の調査すべてで,世代差という見かけの時間(apparent time)で,中年層以上が丁寧で,若年層はぶっきらぼうという傾向が見られる。また,場面による使い分けについては,依頼関係の有無という個人間の心理的関係に左右されるようになってきたことが読み取れた。さらに,話者の社会的属性と丁寧さの関係については,どの時代においても,女性の丁寧さが高く,学歴が高いほど丁寧さが高いことが分かった。そして,これらの話者属性は丁寧さの経年変化とも密接に関わることが分かった。すなわち,丁寧さの増加を牽引するのは男性であり,また,学歴の高い話者の割合が増加する高学歴化によって,全体の丁寧さが増加したと解釈される。
垣花 シゲ 當間 孝子 久田 友治 古謝 安子 太田 光紀 Kakinohana Shige Toma Takako Kuda Tomoharu Koja Yasuko Ota Mitsunori
研究概要:ラオスの2基幹病院における院内感染のエビデンス調査を教材とした「感染看護教育プログラム」を開発した。プログラムの内容は、1.施設の管理者からなる感染対策チーム支援組織の構築、2.看護師を中心とした調査チーム(実働チーム)の組織、3.入院患者の感染徴候・症状の調査、4.感染部位の特定、5.検体採取、6.検査結果のフィードバック、7.3~6をふまえたディスカッション、8.感染ルートの特定、9.感染ルートに沿った感染対策策定であった。この教育プログラムは院内感染の実態を強く意識付ける効果があり、概念の理解および対策樹立に貢献できる。
島津, 美子 岡田, 靖 SHIMADZU, Yoshiko OKADA, Yasushi
江戸時代後期になると、それまで京都を中心に行われてきた仏像の造像活動が、地方においても盛んになる。これらの仏像には彩色が施されていることが多いものの、彩色の調査や色材分析の事例はそれほど多くない。この点に着目し、現在、山形県下に安置されている仏像群の彩色調査を行った。調査の対象は、いずれも一九世紀に造られた彩色の木彫像で、京都七条仏師による作から、その流れをくむ地方仏師らによって造られた仏像群である。
鑓水, 兼貴 YARIMIZU, Kanetaka
首都圏の言語は,構成員の多様さのため非常に複雑であるとされる。しかし現代の共通語は,東京の言語を基盤としており,東京における言語変化の影響を受けている。そのため東京および周辺地域における言語動態の調査は,共通語形成過程の解明にとって不可欠である。首都圏若年層の言語の地域差を把握するための調査には,大量のデータを必要とする。そのためには授業場面での学生を対象とした調査が実施しやすい。しかし学生の回答意欲の低下や,授業時間の圧迫といった問題が考えられる。本研究では,そうした問題を解決する方法を検討し,携帯メールを用いた「リアルタイム携帯調査(RMS)システム」を開発した。RMSシステムは,首都圏若年層の言語形式の収集に適しており,大量データから,詳細な分布状況を明らかにすることが可能となる。
田中, 弥生 柏野, 和佳子 角田, ゆかり 伝, 康晴 小磯, 花絵 SUMIDA, Yukari
2016 年度から「大規模日常会話コーパス」プロジェクトによるコーパス『日本語日常会話コーパス』の構築が始まった。本発表では,日常会話の収録手続きの詳細や進捗状況について報告する。本プロジェクトでは,日常場面の中で自然に生じた会話を対象とするために,性別・年代などの点からバランスを考慮して選別された調査協力者に収録機材等を2 3 ヶ月程度貸し出し,協力者に日常会話を収録してもらう方法を採用している。研究者は収録場面に介在せず一般の協力者により独力で収録してもらうため,収録手続きや手順書などを工夫する必要がある。本コーパスの規模として,調査協力者40 名程度,合計時間200 時間を目指している。これまでに,18 名の調査協力者によって約190 時間の収録が完了している(うち6 名は収録調査中)。発表では収録に使用した機材や作成した手順書などについても具体的に紹介する。
西本 裕輝
本稿の目的は、2020 年4月に実施した大学院生調査をとおして、大学院教育の成果、特に高度専門教育プログラムの成果を把握することである。調査項目としては、「満足度」「スキル・能力の修得度」等であったが、すべての項目において、8割を超える肯定的な回答が得られた。よって結果から、高度専門教育プログラムに限らずすべてのプログラムにおいて成果があがっていると判断できた。
辻, 加代子 TSUJI, Kayoko
本稿では,愛知県岡崎市で3次にわたって行われた大規模言語調査の中心部分,敬語行動に関する面接調査の回答を対象として分析し,この地の方言敬語に起こった変化について報告する。分析するにあたって,(1)まず,回答に出現した形式を標準語形・方言伝統形・方言新形・中間形に分類し,その全体的使用状況,(2)場面ごとの使用状況,(3)場面ごとの方言敬語形の使用状況を調査した。方言新形には,ミエル・チョーダイなどを含めた。中間形には,方言形と標準語が連続した表現や,要素の形態は標準語と同一で組み合わせや承接の仕方が異なる表現を含めた。中間形は標準語を指向しつつも方言の干渉により産出したと考えられる表現であり,丁寧語と関わる表現に多く見られた。分析の結果次のことが明らかになった。 1.全場面標準語形だけを使用する話者は大幅に増大し,逆に方言伝統形使用者は激減,中間形は第2次調査で微増,第3次調査で激減している。場面別分析により,標準語形ないし方言形は場面にあわせて選ばれていることが確認された。例えば,電報局のような公共機関や東京での道聞きといった非方言場面では方言使用が避けられる傾向にある。中間形は非方言場面で多く出現する傾向にあったが,第3次調査では方言自体の使用が激減し,それに伴いほとんど使用されなくなった。 2.方言敬語形は,第1次調査時は多様な形式を残しつつも出現数は少なく,第3次調査時には伝統形(ラ)レル,新形ミエル以外ほぼ壊滅状態であった。伝統形が使われる場合内輪の方言場面で多く使われる傾向にあった。敬意の低い形式であった(ラ)レルは上位場面に使用場面を広げ,ミエルともども他の尊敬語と重ねて盛んに使われるようになり,標準語的な用法への変化をうかがわせる。 3.中間形の存在は,一部の方言話者にとって丁寧語の習熟が意外に難しいこと,標準語の敬語運用能力は均質なものではないことをうかがわせる。
仲田 栄二 Nakada Eiji
1.本調査は沖縄自動車道のり面植生の分類と遷移系列を明らかにする目的で行なった。2.植生調査はチューリッヒ・モリペリエー学派の植物社会学的方法で行なった。3.沖縄自動車道のり面植生から144点の植生調査が得られた。この資料をチューリッヒ・モンペリエー学派のテーブル処理法で表操作を行なった結果,次の植生単位が明らかになった。(本文参照)4.一次植生から二次植生への遷移は,アメリカハマグルマ群落を除き,スムーズに進行している。二次植生相互間の遷移は退行遷移のコウライシバ―チガヤ群落と偏行遷移のギンネム群落・パラグラス群落・タイワンクズ群落・タチアワユキセンダングサ群落を除き,比較的順調に置換されている。
大西, 秀之 山内, 太郎 ONISHI, Hideyuki YAMAUCHI, Taro
本報告は、ラオス・サワナケット県ラハナム地区において2004年8-9月と11-12月の二回にわたり実施した現地調査に基づくものである。同調査では、ラハナム地域の一村落であるドンバンを対象として、一年間に従事する生業活動と家計に関する聞き取りを行うなかから、世帯ごとの生計戦略の全容を明らかにするとともに年間の現金収入・支出の総額の概算につとめた。これと併行して、11-12月には、性別や世代を加味して7名の村人を選定し12時間のタイムアロケーション(個体追跡)調査を行い、農閑期における個々人の行動選択の把握を試みた。
小島, 美子 Kojima, Tomiko
日本音楽の起源を論じる場合に,他分野では深い関係が指摘されているツングース系諸民族についてその音楽を検討してみなければならない。しかしこれまではモンゴルの音楽についての情報は比較的多かったが,ツングース系諸民族の音楽については,情報がきわめて乏しかった。そのため私は満族文化研究会の共同研究「満族文化の基礎的資料に関する緊急調査研究―とくに民俗学と歴史学の領域において―」(トヨタ財団の研究助成による)に加わり,1990年2月に満族の音楽について調査を行った。本稿はその調査の成果に基づく研究報告である。
上里 健次 比嘉 美和子 Uesato Kenji Higa Miwako
沖縄におけるヒカンザクラの開花期と地域差および標高差について、 1994年開花の同植物を対象に比較調査を行った。調査地域は八重岳山道の3ケ所の他、 那覇の2ケ所、 浦添、 宜野湾と名護、 今帰仁、 大宜味、 国頭の2ケ所である。調査は開花および出葉の程度を10レベルに分けて定期的に行い、 それぞれのグループ毎の比較を行った。得られた調査結果の概要は次の通りである。1. 八重岳の低標高地と中南部における開花の地域差については、 中南部が遅い開花を示す中で嘉数区とは差がないが、 伊祖、 末吉とは差があり、 与儀とは大きな差が見られた。2. 北部地区内における地域差については、 喜如嘉では八重岳と同様の早い開花で、 他の地域についてはわずかな遅れが見られる程度であった。3. 八重岳の山道における標高差については、 山頂、 麓付近で開花が早く、 中腹付近は有意差のあるほどの遅れであった。4. 出葉は開花直後に始まって開花とほぼ同様の遅速の傾向を示すが、 八重岳の麓付近では開花終了前に出葉し始める個体が多く、 一般の発育の様相と異なる面も見られた。5. 名護、 那覇における最低温度は本調査年度の12月、 1月においてかなり大きく、 開花期の早晩における地域差、 標高差への関与が伺われた。
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